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外伝〈転移石を求めて〉
第四階層
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ナオの空間移動によってルノ達は砂漠の中に建造物内に転移すると、ヨツバ王国の秘宝である「転移結晶」と酷似した水晶で異の台座を発見した。外見は似ているが台座の上に浮かぶ水晶は大きさが異なり、発動方法も異なるらしい。
「ふむ、どうやら塔の入口にあった水晶と同じ物ですね。発動させるには触れた状態で名前を呼べばいいんですか?」
「……そう。ちなみに外に出たいときは「外界へ」という言葉で戻れる」
「ほほう、確かにうちの国の転移結晶と似ているな……だが、水晶の周りに魔法陣が浮かんでませんぞ?」
「ヨツバ王国の転移結晶は発動させるのに大量の魔力を必要とするんでしたね。この台座が同じ原理で発動していると考えた場合はもしかしたら別の方法で魔力を供給しているのかもしれません。例えば大迷宮の建物自体と繋がっていて魔力を送り込まれているからとか……」
「な、なるほど……リーリスさんは頭が良いね」
「科学者だからね」
「喧嘩売ってんですかっ」
リーリスは台座を調べ終えると現在の状況では原理を解明する事は難しく、仕方なく先に進むために全員が触れ合った状態で台座の上の水晶に触れる。
「第四階層!!」
言葉を発した瞬間、全員の肉体に浮揚感が襲い掛かり、視界の風景が一瞬にして移り変わる。そして5人が辿り着いたのは煉瓦で構成された通路だった。
「おおっ……本当に転移しましたね。ここが第四階層ですか?」
「そう……ここから先は気を付けた方が良い。危険度の高い魔物が出てくる」
「ふんっ!!そんな奴等、僕と師匠の敵ではないですぞ!!」
「そのですぞという語尾は癖になったんですか?それとも気に入ってたんですか?」
「ん……ちょっと待って、何か気配がする!!」
「……私も感じた」
先に進もうとした時、ナオとコトネが全員を呼び止めると暗殺者ならではの鋭い感覚で自分達の周囲から気配を感じ居る。しかし、ルノ達は特に何も違和感を感じず、一本道の通路が広がっているだけでおかしな点はない。
「どうしたの二人とも?何を感じたの?」
「殺気というか……とにかく、嫌な気配がする」
「……同じく」
「何を言っている?別に何もいないぞ?何処に敵がいるんだ?」
二人の言葉にデブリは不思議そうに前後の道を見渡すが、魔物どころか人影さえ見つからず、特に異変はない。念のために上空や地面を確認するが特に気になるような物はなく、生物が隠れているようには思えない。
ルノは試しに「観察眼」の能力を発動させ、コトネが得意とする「擬態」のような能力で自分の存在感を消した生物が近づいているのかと警戒するが、観察眼を発動しても何も見当たらない。だが、ナオとコトネは確かに魔物の気配を感じるらしく、全員がお互いの背中を合わせる。
「二人とも敵の位置は分からないんですか?」
「それが、どういう事か捉えられないんです。嫌な気配は感じるのに何処から俺達を見ているのか分からなくて……」
「この感覚……思い出した。皆、壁際に近付いちゃ駄目」
「壁?壁がどうかしたのか?」
「あ、デブリ!!迂闊に近づいちゃ……」
コトネの言葉にデブリは不思議そうに左右に広がる壁を覗き込んだ瞬間、唐突に煉瓦製の壁から人間の顔のような窪みが誕生し、目元の部分を赤色に光り輝かせると通路内に鳴き声が上がる。
――オオオオオオオオッ!!
通路の全体に次々と人面を想像させる窪みが現れ、目元を輝かせて咆哮を放つ。その光景にルノ達は圧倒され、リーリスは怖がるようにルノの背中に飛びつく。
「ちょ、なんですかこのホラー展開は!?私、怖いの苦手なんですけど!!」
「え、リーリスも怖いのあるの?」
「どういう意味ですかそれは!!幽霊とか、お化けとか、非科学的な存在は大の苦手なんですよ!!」
「意外だな……リーリスさんにも怖い物があったのか」
「……アンデッドも苦手?」
「いや、呑気に話している場合じゃないぞ!?うおお、壁から手が伸びてきたぁっ!?」
『オオオッ……!!』
壁際に一番近くに存在したデブリの元に壁の一部が変形して腕のような形になると、デブリを捉えようと無数の煉瓦の腕が伸びる。その腕に対してデブリは振り払おうとしたが、腕の数が多すぎて両手両足、胴体に至るまで掴まれてしまう。
「ぐああっ!?」
「デブリ王子!?この、離せっ!!」
『オアッ……!!』
咄嗟にナオがデブリを救うために指弾の戦技を発動させ、足元の小石を弾丸のように撃ち込むが煉瓦の腕は全て弾き返す。どうやら硬度も相当に高いらしく、壁際に拘束されたデブリは苦悶の表情を浮かべる。
「ぐううっ!?」
「デブリ!!今助けに……」
「ぬおおおおっ!!」
『オオッ……!?』
だが、デブリは雄たけびを上げると全身の血管を浮かび上がらせ、筋肉を膨張させたかと思うとまずは両手の腕を振り払い、次は胴体の腕を掴むと無理やりに引き剥がす。最後に両足を掴む腕を振り払うと、振り返って握り締めた拳を壁に叩きつけた。
「ぬぅんっ!!」
『オウッ!?』
「嘘っ!?」
壁に浮かび上がった人面の一つに拳を叩きつけると、壁に亀裂が生じる程に強烈な衝撃が走り、人面の1つが砕け散る。
※デブリの戦闘力は巨人族を上回ります。非力なはずの森人族がここまで鍛え上げるとは……恐るべし、ナオの「ぷろていーん」(; ゚Д゚)
「ふむ、どうやら塔の入口にあった水晶と同じ物ですね。発動させるには触れた状態で名前を呼べばいいんですか?」
「……そう。ちなみに外に出たいときは「外界へ」という言葉で戻れる」
「ほほう、確かにうちの国の転移結晶と似ているな……だが、水晶の周りに魔法陣が浮かんでませんぞ?」
「ヨツバ王国の転移結晶は発動させるのに大量の魔力を必要とするんでしたね。この台座が同じ原理で発動していると考えた場合はもしかしたら別の方法で魔力を供給しているのかもしれません。例えば大迷宮の建物自体と繋がっていて魔力を送り込まれているからとか……」
「な、なるほど……リーリスさんは頭が良いね」
「科学者だからね」
「喧嘩売ってんですかっ」
リーリスは台座を調べ終えると現在の状況では原理を解明する事は難しく、仕方なく先に進むために全員が触れ合った状態で台座の上の水晶に触れる。
「第四階層!!」
言葉を発した瞬間、全員の肉体に浮揚感が襲い掛かり、視界の風景が一瞬にして移り変わる。そして5人が辿り着いたのは煉瓦で構成された通路だった。
「おおっ……本当に転移しましたね。ここが第四階層ですか?」
「そう……ここから先は気を付けた方が良い。危険度の高い魔物が出てくる」
「ふんっ!!そんな奴等、僕と師匠の敵ではないですぞ!!」
「そのですぞという語尾は癖になったんですか?それとも気に入ってたんですか?」
「ん……ちょっと待って、何か気配がする!!」
「……私も感じた」
先に進もうとした時、ナオとコトネが全員を呼び止めると暗殺者ならではの鋭い感覚で自分達の周囲から気配を感じ居る。しかし、ルノ達は特に何も違和感を感じず、一本道の通路が広がっているだけでおかしな点はない。
「どうしたの二人とも?何を感じたの?」
「殺気というか……とにかく、嫌な気配がする」
「……同じく」
「何を言っている?別に何もいないぞ?何処に敵がいるんだ?」
二人の言葉にデブリは不思議そうに前後の道を見渡すが、魔物どころか人影さえ見つからず、特に異変はない。念のために上空や地面を確認するが特に気になるような物はなく、生物が隠れているようには思えない。
ルノは試しに「観察眼」の能力を発動させ、コトネが得意とする「擬態」のような能力で自分の存在感を消した生物が近づいているのかと警戒するが、観察眼を発動しても何も見当たらない。だが、ナオとコトネは確かに魔物の気配を感じるらしく、全員がお互いの背中を合わせる。
「二人とも敵の位置は分からないんですか?」
「それが、どういう事か捉えられないんです。嫌な気配は感じるのに何処から俺達を見ているのか分からなくて……」
「この感覚……思い出した。皆、壁際に近付いちゃ駄目」
「壁?壁がどうかしたのか?」
「あ、デブリ!!迂闊に近づいちゃ……」
コトネの言葉にデブリは不思議そうに左右に広がる壁を覗き込んだ瞬間、唐突に煉瓦製の壁から人間の顔のような窪みが誕生し、目元の部分を赤色に光り輝かせると通路内に鳴き声が上がる。
――オオオオオオオオッ!!
通路の全体に次々と人面を想像させる窪みが現れ、目元を輝かせて咆哮を放つ。その光景にルノ達は圧倒され、リーリスは怖がるようにルノの背中に飛びつく。
「ちょ、なんですかこのホラー展開は!?私、怖いの苦手なんですけど!!」
「え、リーリスも怖いのあるの?」
「どういう意味ですかそれは!!幽霊とか、お化けとか、非科学的な存在は大の苦手なんですよ!!」
「意外だな……リーリスさんにも怖い物があったのか」
「……アンデッドも苦手?」
「いや、呑気に話している場合じゃないぞ!?うおお、壁から手が伸びてきたぁっ!?」
『オオオッ……!!』
壁際に一番近くに存在したデブリの元に壁の一部が変形して腕のような形になると、デブリを捉えようと無数の煉瓦の腕が伸びる。その腕に対してデブリは振り払おうとしたが、腕の数が多すぎて両手両足、胴体に至るまで掴まれてしまう。
「ぐああっ!?」
「デブリ王子!?この、離せっ!!」
『オアッ……!!』
咄嗟にナオがデブリを救うために指弾の戦技を発動させ、足元の小石を弾丸のように撃ち込むが煉瓦の腕は全て弾き返す。どうやら硬度も相当に高いらしく、壁際に拘束されたデブリは苦悶の表情を浮かべる。
「ぐううっ!?」
「デブリ!!今助けに……」
「ぬおおおおっ!!」
『オオッ……!?』
だが、デブリは雄たけびを上げると全身の血管を浮かび上がらせ、筋肉を膨張させたかと思うとまずは両手の腕を振り払い、次は胴体の腕を掴むと無理やりに引き剥がす。最後に両足を掴む腕を振り払うと、振り返って握り締めた拳を壁に叩きつけた。
「ぬぅんっ!!」
『オウッ!?』
「嘘っ!?」
壁に浮かび上がった人面の一つに拳を叩きつけると、壁に亀裂が生じる程に強烈な衝撃が走り、人面の1つが砕け散る。
※デブリの戦闘力は巨人族を上回ります。非力なはずの森人族がここまで鍛え上げるとは……恐るべし、ナオの「ぷろていーん」(; ゚Д゚)
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