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外伝〈転移石を求めて〉
帰還の方法の手掛かり
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――転移の間に設置された台座が破壊されてから翌日、リーリスの調査の結果、残念ながら台座を修復する事は不可能だと判明した。台座が破壊された事で転移魔法陣が失われ、修理を施そうにも元々どのような原理で転移魔法陣を発動させていたのかも不明のため、残念ながら現代の技術ではどうしようもないというのがリーリスの推測だった。
「駄目ですね、この台座は完全に壊れています。一応は錬金術師の職業の人を呼び出して表面上は台座を元に戻す事は出来ますが、肝心の転移魔法陣が浮かび上がりません」
「直せないという事は……俺達、元の世界に戻れないの?」
転移の間にて虫眼鏡で台座を調べるリーリスの言葉にルノは困った風に魔法陣が消えてしまった台座に触れ、この場所からルノ達はこの世界に召喚されたのだが、現在の台座には召喚時には存在したはずの紋様が完全に消えていた。台座を元に戻しても魔法陣が戻る事はなく、残念ながら破壊された時に台座の効力は消えたとしか考えられない。
「全く、クズノの奴もとんだ置き土産を残していきましたね。といっても、仮に台座が無事だったとしても元の世界に戻る事は難しかったと思いますけど……」
「え?どうして?」
「この転移の間の転移魔法陣を使用するには「転移石」と呼ばれる特別な魔石が必要なんです。ルノさん達を召喚する時もこの転移石を使用したんですが、実は帝国が保有する転移石はもう残ってないんです」
「えっ!?そうなの!?」
「前にも話したかもしれませんが、この転移石は非常に希少な魔石なので滅多に手に入る事はありません。しかもデキン大臣がどうやら内密に転移石を管理していたようで、前回の召喚の時に使用した転移石以外は全て消息不明の状態なんです。恐らくは魔王軍の奴等が何処かに隠したんでしょうね」
「そんな……」
異世界から勇者と呼ばれる存在を呼び出すには「転移石」と呼ばれる魔石が必ず使用され、恐らくこの転移石こそがこちらの世界と地球を繋ぐために必要な魔石である事は間違いない。だが、魔王軍によって送り込まれたデキンは大臣という立場を利用して転移石を内密に回収し、魔王軍に送り込んだ証拠が残っていた。
転移石は魔石の中でも最も希少価値が高く、そもそも帝国が保有していた転移石も元々は勇者が入手した代物であり、何処で入手出来るのかは一切資料が残っていなかった。勇者が何故この転移石を入手した際の情報を残さなかったのかは不明だが、一説では本来はこの世界に存在しない魔石だったが、勇者が作り出した魔石ではないのかと考えられている。
「勇者に関わる文献や資料を確認してみましたが、やはり転移石に関する情報だけが抜けてますね。もしかしたら勇者が元の世界に戻る事を恐れた帝国の先人さんが資料を破棄した可能性も否定出来ません。あるいはデキンが事前に処分していたか……」
「魔王軍にとって勇者は危険な存在だから?」
「そういう事ですね。でも、可能性としては前者の方が高いと思います。そもそも前回の勇者召喚はデキンの発案で行われましたからね。本当に勇者という存在を恐れていたのならわざわざ召喚をする必要がありません。まあ、そのお陰でルノさんがこっちの世界に来れたんですけど……」
デキンがどのような理由で勇者召喚を行う様に進言したのかはリーリス達には分からないが、考えられるとすれば勇者という未知の存在を呼び出し、その力を利用して悪事に働かせようとしていたか、あるいは別の目論見があったのかもしれない。最も魔王軍は壊滅したので今更彼等がどのような理由で勇者召喚を行わせたのかは分からず、問題なのは転移石の居所である。
「転移石を他の国が持っている可能性はないの?」
「あるとしたらエルフ王国……いや、今はヨツバ王国でしたね。あの国も帝国と同じように勇者召喚の技術が残っていますし……ですけど、世界樹が崩壊した時に失われた可能性は高いですね」
「でも、もしかしたら国を脱出する時に持ち込んだかもしれないし、話を聞いてみたらどうかな?」
「そうですね、なら白原の方に向かいましょうか」
ルノの提案にリーリスは賛成し、二人は転移の間を後にしてヨツバ王国の森人族達が仮住まいしている白原へ向かおうとした時、コトネが二人の前に姿を現す。
「……話は聞いていた。白原に向かわずともミャク国王ならこの城に滞在している。今は会議室で皇帝陛下と今後の話し合いを行っている」
「うわ、びっくりした!!何処に隠れてたんですか!?というか、何処まで話を聞いてたんですか?」
「まあまあ、落ち着いて……」
唐突に現れたコトネにリーリスは驚かされるが、ルノが彼女を宥めるとコトネは皇帝と国王が話し合いを行っている会議室まで案内を行う。
「二人は第一会議室の方に居る。きっと、まだ話し合っているはず」
「ああ……そういえば国を復興するために帝国も援助を行う予定でしたね。その話し合いでもしてるんでしょうね」
「でも、国を立て直すのって凄く時間が掛かるんじゃないの?その間に他の国とかが攻め込んだりしてこないの?」
「面白い冗談……帝国にルノが存在する限り、他国の軍勢が動くはずがない」
「ですね、ルノさんの武勇伝は最早世界中に伝わってますから」
「ええっ……」
これまでの旅路で色々とやらかしたルノは世界中にその力を知らしめてしまい、獣人国も巨人国も日の国さえもルノという存在を恐れ、帝国に手出しすることはない。無論、現在は帝国の庇護下に世話になってるヨツバ王国にも干渉する事はなく、安心してヨツバ王国の再建に取り組める。
「駄目ですね、この台座は完全に壊れています。一応は錬金術師の職業の人を呼び出して表面上は台座を元に戻す事は出来ますが、肝心の転移魔法陣が浮かび上がりません」
「直せないという事は……俺達、元の世界に戻れないの?」
転移の間にて虫眼鏡で台座を調べるリーリスの言葉にルノは困った風に魔法陣が消えてしまった台座に触れ、この場所からルノ達はこの世界に召喚されたのだが、現在の台座には召喚時には存在したはずの紋様が完全に消えていた。台座を元に戻しても魔法陣が戻る事はなく、残念ながら破壊された時に台座の効力は消えたとしか考えられない。
「全く、クズノの奴もとんだ置き土産を残していきましたね。といっても、仮に台座が無事だったとしても元の世界に戻る事は難しかったと思いますけど……」
「え?どうして?」
「この転移の間の転移魔法陣を使用するには「転移石」と呼ばれる特別な魔石が必要なんです。ルノさん達を召喚する時もこの転移石を使用したんですが、実は帝国が保有する転移石はもう残ってないんです」
「えっ!?そうなの!?」
「前にも話したかもしれませんが、この転移石は非常に希少な魔石なので滅多に手に入る事はありません。しかもデキン大臣がどうやら内密に転移石を管理していたようで、前回の召喚の時に使用した転移石以外は全て消息不明の状態なんです。恐らくは魔王軍の奴等が何処かに隠したんでしょうね」
「そんな……」
異世界から勇者と呼ばれる存在を呼び出すには「転移石」と呼ばれる魔石が必ず使用され、恐らくこの転移石こそがこちらの世界と地球を繋ぐために必要な魔石である事は間違いない。だが、魔王軍によって送り込まれたデキンは大臣という立場を利用して転移石を内密に回収し、魔王軍に送り込んだ証拠が残っていた。
転移石は魔石の中でも最も希少価値が高く、そもそも帝国が保有していた転移石も元々は勇者が入手した代物であり、何処で入手出来るのかは一切資料が残っていなかった。勇者が何故この転移石を入手した際の情報を残さなかったのかは不明だが、一説では本来はこの世界に存在しない魔石だったが、勇者が作り出した魔石ではないのかと考えられている。
「勇者に関わる文献や資料を確認してみましたが、やはり転移石に関する情報だけが抜けてますね。もしかしたら勇者が元の世界に戻る事を恐れた帝国の先人さんが資料を破棄した可能性も否定出来ません。あるいはデキンが事前に処分していたか……」
「魔王軍にとって勇者は危険な存在だから?」
「そういう事ですね。でも、可能性としては前者の方が高いと思います。そもそも前回の勇者召喚はデキンの発案で行われましたからね。本当に勇者という存在を恐れていたのならわざわざ召喚をする必要がありません。まあ、そのお陰でルノさんがこっちの世界に来れたんですけど……」
デキンがどのような理由で勇者召喚を行う様に進言したのかはリーリス達には分からないが、考えられるとすれば勇者という未知の存在を呼び出し、その力を利用して悪事に働かせようとしていたか、あるいは別の目論見があったのかもしれない。最も魔王軍は壊滅したので今更彼等がどのような理由で勇者召喚を行わせたのかは分からず、問題なのは転移石の居所である。
「転移石を他の国が持っている可能性はないの?」
「あるとしたらエルフ王国……いや、今はヨツバ王国でしたね。あの国も帝国と同じように勇者召喚の技術が残っていますし……ですけど、世界樹が崩壊した時に失われた可能性は高いですね」
「でも、もしかしたら国を脱出する時に持ち込んだかもしれないし、話を聞いてみたらどうかな?」
「そうですね、なら白原の方に向かいましょうか」
ルノの提案にリーリスは賛成し、二人は転移の間を後にしてヨツバ王国の森人族達が仮住まいしている白原へ向かおうとした時、コトネが二人の前に姿を現す。
「……話は聞いていた。白原に向かわずともミャク国王ならこの城に滞在している。今は会議室で皇帝陛下と今後の話し合いを行っている」
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「ええっ……」
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