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最終章 〈魔王と初級魔術師〉
最高幹部の最期
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「これでも……喰らいなさいっ!!」
「リーリス!?」
クズノに向けてリーリスは複数の薬瓶を投げつけると、それを見たクズノは即座に腕を伸ばして空中にて薬瓶を全て刃物で切り裂く。その際に中身の液体が張り付いたが、特に毒物でもないのか変わった様子はない。
『何ですかこれは……回復薬?こんな物で私を倒せると思っているのですか?』
「ええ、それは私が作り出した失敗作ですよ。ですけど……それを浴びてしまいましたね」
『……浴びたからどうしたというのですか?この肉体に毒が効くとでも思っているのですか?』
リーリスの言葉にクズノは腕に触れた液体に視線を向けるが、特に腕に変化はなく、ただの回復薬でしかなかった。だが、液体が垂れる腕を見てルノはある事に気付き、一か八かの賭けに出た。
「氷鎖!!」
『ぐっ!?隙を突いたつもりですか!!』
ルノはクズノがリーリスに注意を引いた隙に攻撃を仕掛けると、迫りくる氷の鎖に対してクズノは腕を伸ばし、敢えて腕に巻きつかせる。片腕を拘束されてしまったが、別にナオを取り抑えている腕さえ無事ならば問題ない。
『こんな物で私を拘束したつもりですか?この程度の拘束など……こ、これは!?』
「やった!!」
だが、氷の鎖の拘束を解除させようと腕を振りぬこうとしたクズノは自分の腕が「氷結化」している事に気付き、一体何が起きたのか理解するのに時間が掛かる。この肉体にはあらゆる魔法は受け付けず、仮にルノが水属性の強化スキルである「絶対零度」を発動させたとしてもクズノの肉体は凍り付くことはない。
クズノの肉体を構成する金属の「ネオ・オリハルコン」はあらゆる魔法を吸収する「吸収石」を取り入れた特殊金属のため、仮に魔法の力で生み出した冷気を浴びたとしても凍り付く事はない。だが、現実にクズノの片腕は完全に凍り付いてしまい、動かす事が出来なかった。凍るはずがない自分の肉体が凍り付いた事にクズノは激しく動揺するが、即座に先ほどのリーリスの行動を思い出す。
『くそっ!!まさか、さっき回復薬を私に掛けたのは……!?』
「正解です。貴方自身が凍り付かなくとも、私が振りかけた回復薬の液体ならルノさんの魔法で凍らせる事が出来ますからね!!」
「なるほど……そういう事か」
クズノの肉体は魔法を受け付けずとも、彼の肉体の表面に付着した回復液ならば話は別であり、ルノの氷塊の魔法によって氷結化させる事は容易い。即座にクズノは氷が張り付いた腕を動かそうとしたが、完全に腕の表面が凍り付いた事で肉体を変形させる事も出来ず、仕方なく凍り付いた腕の部分を破壊するためにナオを手放す。
『邪魔です!!退きなさいっ!!』
「させるかっ!!」
『ぬあっ!?』
「ナイス!!ナオ君!!」
ナオは解放された瞬間、手の中に隠していた小石をクズノの片腕に打ち込み、氷結化した腕の部分を破壊する。片腕を失ったクズノは忌々し気な表情を浮かべてルノの元に駆けつけようとするナオに向けて腕を伸ばす。
『このっ……屑がっ!!』
「屑はお前の方だっ!!」
「おい、それ俺の盾だぞ!?」
しかし、クズノが刃物に変形させて伸ばした右腕はナオに届くことはなく、ダンテの反鏡盾を抱えたデブリが間に割って入ると、盾を使用してナオを守る事に成功する。思わぬ妨害にクズノは驚くが、助けられたナオはデブリに礼を言う。
「デブリ王子!!あ、ありがとう……!!」
「友達を守るのは当然の事だからな!!」
「今です!!奴に何でもいいですからとにかく液体をかけてください!!あ、魔法の力は使っちゃ駄目ですよ!!」
『おのれっ……!!』
白衣の中からどれだけ隠していたのかリーリスはクズノに向けて次々と薬瓶を投げこみ、下手に触れて全身に液体を浴びる事を恐れたクズノは回避に専念するが、そんな彼の背後から傷を負いながらも酒が入ったひょうたんを抱えたギリョウが近づく。
「仕事終わりに飲むのを楽しみにしていた逸品じゃが……止むを得ん!!」
「僕の水筒も喰らえっ!!」
『なっ!?』
ギリョウが酒、ドリアが魔力回復薬が込められた水筒の中身を放つと、薬瓶にのみ意識を集中していたクズノは避けきれずに浴びてしまう。酒と回復液を浴びてしまったクズノは慌てて身体から振り払おうとしたが、その隙を逃さずにコトネがクズノの足元に目掛けて苦無を放つ。
「今度は役に立つ……日影流奥義、捕縛陣!!」
『こ、こんな物……ぬあっ!?』
「鉄線ですか!?そんな物まで持ってたんですねコトネさん!!」
コトネが放った苦無には鉄線が括りつけられ、クズノの足元に絡みついて地面に拘束させる。クズノは足元を奪われて転倒してしまい、すぐに全身を変形させて退避しようとしたが、既に両手に氷塊の魔法で作り出した氷を抱えたルノが迫っていた。
「これで終わりだ!!クズノぉおおおっ!!」
『ま、待て!!こんなっ……こんな馬鹿なっ!?こんな事でこの私がぁあああっ!?』
倒れたクズノに向けて両手で氷塊の剣を構えたルノが突き刺した瞬間、表面に張り付いていた液体によってクズノの身体は一瞬にして氷結化され、中庭にクズノの姿形をした氷像が誕生した――
「リーリス!?」
クズノに向けてリーリスは複数の薬瓶を投げつけると、それを見たクズノは即座に腕を伸ばして空中にて薬瓶を全て刃物で切り裂く。その際に中身の液体が張り付いたが、特に毒物でもないのか変わった様子はない。
『何ですかこれは……回復薬?こんな物で私を倒せると思っているのですか?』
「ええ、それは私が作り出した失敗作ですよ。ですけど……それを浴びてしまいましたね」
『……浴びたからどうしたというのですか?この肉体に毒が効くとでも思っているのですか?』
リーリスの言葉にクズノは腕に触れた液体に視線を向けるが、特に腕に変化はなく、ただの回復薬でしかなかった。だが、液体が垂れる腕を見てルノはある事に気付き、一か八かの賭けに出た。
「氷鎖!!」
『ぐっ!?隙を突いたつもりですか!!』
ルノはクズノがリーリスに注意を引いた隙に攻撃を仕掛けると、迫りくる氷の鎖に対してクズノは腕を伸ばし、敢えて腕に巻きつかせる。片腕を拘束されてしまったが、別にナオを取り抑えている腕さえ無事ならば問題ない。
『こんな物で私を拘束したつもりですか?この程度の拘束など……こ、これは!?』
「やった!!」
だが、氷の鎖の拘束を解除させようと腕を振りぬこうとしたクズノは自分の腕が「氷結化」している事に気付き、一体何が起きたのか理解するのに時間が掛かる。この肉体にはあらゆる魔法は受け付けず、仮にルノが水属性の強化スキルである「絶対零度」を発動させたとしてもクズノの肉体は凍り付くことはない。
クズノの肉体を構成する金属の「ネオ・オリハルコン」はあらゆる魔法を吸収する「吸収石」を取り入れた特殊金属のため、仮に魔法の力で生み出した冷気を浴びたとしても凍り付く事はない。だが、現実にクズノの片腕は完全に凍り付いてしまい、動かす事が出来なかった。凍るはずがない自分の肉体が凍り付いた事にクズノは激しく動揺するが、即座に先ほどのリーリスの行動を思い出す。
『くそっ!!まさか、さっき回復薬を私に掛けたのは……!?』
「正解です。貴方自身が凍り付かなくとも、私が振りかけた回復薬の液体ならルノさんの魔法で凍らせる事が出来ますからね!!」
「なるほど……そういう事か」
クズノの肉体は魔法を受け付けずとも、彼の肉体の表面に付着した回復液ならば話は別であり、ルノの氷塊の魔法によって氷結化させる事は容易い。即座にクズノは氷が張り付いた腕を動かそうとしたが、完全に腕の表面が凍り付いた事で肉体を変形させる事も出来ず、仕方なく凍り付いた腕の部分を破壊するためにナオを手放す。
『邪魔です!!退きなさいっ!!』
「させるかっ!!」
『ぬあっ!?』
「ナイス!!ナオ君!!」
ナオは解放された瞬間、手の中に隠していた小石をクズノの片腕に打ち込み、氷結化した腕の部分を破壊する。片腕を失ったクズノは忌々し気な表情を浮かべてルノの元に駆けつけようとするナオに向けて腕を伸ばす。
『このっ……屑がっ!!』
「屑はお前の方だっ!!」
「おい、それ俺の盾だぞ!?」
しかし、クズノが刃物に変形させて伸ばした右腕はナオに届くことはなく、ダンテの反鏡盾を抱えたデブリが間に割って入ると、盾を使用してナオを守る事に成功する。思わぬ妨害にクズノは驚くが、助けられたナオはデブリに礼を言う。
「デブリ王子!!あ、ありがとう……!!」
「友達を守るのは当然の事だからな!!」
「今です!!奴に何でもいいですからとにかく液体をかけてください!!あ、魔法の力は使っちゃ駄目ですよ!!」
『おのれっ……!!』
白衣の中からどれだけ隠していたのかリーリスはクズノに向けて次々と薬瓶を投げこみ、下手に触れて全身に液体を浴びる事を恐れたクズノは回避に専念するが、そんな彼の背後から傷を負いながらも酒が入ったひょうたんを抱えたギリョウが近づく。
「仕事終わりに飲むのを楽しみにしていた逸品じゃが……止むを得ん!!」
「僕の水筒も喰らえっ!!」
『なっ!?』
ギリョウが酒、ドリアが魔力回復薬が込められた水筒の中身を放つと、薬瓶にのみ意識を集中していたクズノは避けきれずに浴びてしまう。酒と回復液を浴びてしまったクズノは慌てて身体から振り払おうとしたが、その隙を逃さずにコトネがクズノの足元に目掛けて苦無を放つ。
「今度は役に立つ……日影流奥義、捕縛陣!!」
『こ、こんな物……ぬあっ!?』
「鉄線ですか!?そんな物まで持ってたんですねコトネさん!!」
コトネが放った苦無には鉄線が括りつけられ、クズノの足元に絡みついて地面に拘束させる。クズノは足元を奪われて転倒してしまい、すぐに全身を変形させて退避しようとしたが、既に両手に氷塊の魔法で作り出した氷を抱えたルノが迫っていた。
「これで終わりだ!!クズノぉおおおっ!!」
『ま、待て!!こんなっ……こんな馬鹿なっ!?こんな事でこの私がぁあああっ!?』
倒れたクズノに向けて両手で氷塊の剣を構えたルノが突き刺した瞬間、表面に張り付いていた液体によってクズノの身体は一瞬にして氷結化され、中庭にクズノの姿形をした氷像が誕生した――
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