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最終章 〈魔王と初級魔術師〉
クズノの成れの果て
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『はははははっ!!遂に、遂に成功しましたよ!!これで私は全ての生物を超越する存在に成り得た!!』
「な、何だ!?喋り出したぞこいつ!?」
「これは……!?」
ルノ達の目の前で集まったネオ・オリハルコンの破片から形成された金属の球体は笑い声をあげると、そのまま人型へと変形し、やがて死んだはずのクズノと瓜二つの姿へと変わり果てる。その様子を確認した誰もが驚愕の表情を浮かべる中、リーリスはいち早くクズノのこれまでの説明を思い出し、ある結論に辿り着く。
「この人、まさか自分の魂を利用して金属に憑依したんですか!?まるで死霊使いの使役術のように……!!」
『おや、中々勘の鋭い娘さんですね……ですが、少し違います。私は生まれ変わったのですよ!!この完璧な存在に!!』
「し、信じられない……自分から化物になったのか!?」
変わり果てたクズノの姿に誰もが呆然とした表情を浮かべるが、当のクズノ本人は自分の身体の変化に満足したように自由に手足を変形させ、やがて何かを確かめるように位置的に距離が一番遠い場所に存在した皇帝へと視線を向け、指先を構えた。
『まずは貴方から死んでもらいましょう……喰らえっ!!』
「ぬうっ!?」
「いけない!!」
「くそがっ……!!」
クズノが指先を構えた瞬間、指の部分が伸びて真っすぐに皇帝の胸元を狙う。咄嗟にコトネが両手の苦無を振り翳し、ダンテが大盾を構えて皇帝を守ろうとしたが、クズノの指先は縦横無尽に軌道を変更させて二人を回避すると皇帝の胸元を狙う。
「いかん!!弟よ!!」
「兄上!?」
咄嗟に先帝が皇帝に抱き着いて地面に伏せ、自分の身体を盾にしようとしたが、それを確認したクズノは指先をしならせて上空へと移動させる。攻撃を中断したわけではなく、対象を二人に変更して頭上から身体を貫通させようとしたのだ。
『さあ、死になさい!!』
「止めろっ!!」
咄嗟にルノはクズノの本隊に向けて蹴りを放ち、後頭部を強打したクズノは狙いを外して二人の顔の真横に指先を突き刺す。邪魔をされた事にクズノは怒りを抱くが、その一方でルノは痛む足を抑え、やはり生身で挑むには少々無謀な相手だと悟る。
「いててっ……お前、もう許さないぞ!!」
『やはり最後は貴方が邪魔をしますか……いいでしょう、ならばここで決着を着けてやりましょう!!』
「ルノさん!!私達は離れますから全力でやっちゃってください!!もうこの城が崩壊するぐらいの勢いで!!」
「リーリス、お前なんてことをっ!?」
リーリスの言葉に他の者達が抗議しようとしたが、ルノとしても加減が出来る相手ではないので最初から本気で挑む事を決め、まずは魔法を吸収されないように全身を「氷鎧」で武装を行う。その間にクズノの方も足元に落ちていたデュランダルを拾い上げ、ルノに目掛けて振り回す。
『さあ、私に跪きなさい!!』
「断る!!」
激しい金属音が中庭に鳴り響き、ネオ・オリハルコンの肉体とデュランダルを手にしたクズノと氷鎧で武装したルノが渡り合う。皮肉にも最初に倒された魔王軍の幹部であるデキンが装着していた「鬼武者」を模した姿のルノが最後の幹部であるクズノと戦う事になった。
金属生命体へと変化したクズノは生前の頃よりも驚異的な運動能力を手にしているのか、重量感のあるデュランダルを軽々と扱い、頑丈な氷塊で構成されたルノの氷鎧を削り取る。単純な硬度や耐久力はどうやらルノの氷塊よりもデュランダルが上回るらしく、徐々に全身に亀裂が生じ始めた。
『そらそらっ!!貴方の硬さはその程度なのですか!?』
「うっ、くっ……舐めるな!!」
『無駄ぁっ!!』
負けじとルノも反撃を繰り出すが、クズノは自分の顔面に向けられて迫る拳を身体全体をスライムのように変形させて回避を行い、がら空きの胴体部分にデュランダルの刃を振り翳す。金属ではあるが液体のように柔軟に変化を行うクズノの肉体に損傷を与える事は難しく、ルノだけが徐々に氷鎧に損傷を追う。
『その程度ですか帝国の英雄の力とは!!お得意の初級魔法はどうしたのです!?』
「くうっ……」
本音を言えば氷鎧を解除してルノも魔法の力で対抗したいところだが、魔王との戦闘で迂闊に魔法の力を使うと相手に吸収され、何倍もの威力で反撃を喰らう事を知っている。そのために迂闊に氷塊以外の魔法は扱えず、どうにかルノはクズノを取り抑えようとしたが、掴もうとするたびに身体を液状に変形させて回避するクズノを捕まえる事は容易ではない。
『貴方が魔法を使わないというのであれば私が使うまでです!!さあ、見せてあげますよ……私の真の力を!!』
「何だって!?」
この状態でも魔法が扱えるのかとルノが驚くと、クズノは自分の人間の死体に手を伸ばし、懐に隠していた7つの色合いの「魔水晶」を取り出すと、体内に吸収する。そして内部に取り込まれた魔水晶が光り輝き、全身から煙を噴き出す。
「な、何だ!?喋り出したぞこいつ!?」
「これは……!?」
ルノ達の目の前で集まったネオ・オリハルコンの破片から形成された金属の球体は笑い声をあげると、そのまま人型へと変形し、やがて死んだはずのクズノと瓜二つの姿へと変わり果てる。その様子を確認した誰もが驚愕の表情を浮かべる中、リーリスはいち早くクズノのこれまでの説明を思い出し、ある結論に辿り着く。
「この人、まさか自分の魂を利用して金属に憑依したんですか!?まるで死霊使いの使役術のように……!!」
『おや、中々勘の鋭い娘さんですね……ですが、少し違います。私は生まれ変わったのですよ!!この完璧な存在に!!』
「し、信じられない……自分から化物になったのか!?」
変わり果てたクズノの姿に誰もが呆然とした表情を浮かべるが、当のクズノ本人は自分の身体の変化に満足したように自由に手足を変形させ、やがて何かを確かめるように位置的に距離が一番遠い場所に存在した皇帝へと視線を向け、指先を構えた。
『まずは貴方から死んでもらいましょう……喰らえっ!!』
「ぬうっ!?」
「いけない!!」
「くそがっ……!!」
クズノが指先を構えた瞬間、指の部分が伸びて真っすぐに皇帝の胸元を狙う。咄嗟にコトネが両手の苦無を振り翳し、ダンテが大盾を構えて皇帝を守ろうとしたが、クズノの指先は縦横無尽に軌道を変更させて二人を回避すると皇帝の胸元を狙う。
「いかん!!弟よ!!」
「兄上!?」
咄嗟に先帝が皇帝に抱き着いて地面に伏せ、自分の身体を盾にしようとしたが、それを確認したクズノは指先をしならせて上空へと移動させる。攻撃を中断したわけではなく、対象を二人に変更して頭上から身体を貫通させようとしたのだ。
『さあ、死になさい!!』
「止めろっ!!」
咄嗟にルノはクズノの本隊に向けて蹴りを放ち、後頭部を強打したクズノは狙いを外して二人の顔の真横に指先を突き刺す。邪魔をされた事にクズノは怒りを抱くが、その一方でルノは痛む足を抑え、やはり生身で挑むには少々無謀な相手だと悟る。
「いててっ……お前、もう許さないぞ!!」
『やはり最後は貴方が邪魔をしますか……いいでしょう、ならばここで決着を着けてやりましょう!!』
「ルノさん!!私達は離れますから全力でやっちゃってください!!もうこの城が崩壊するぐらいの勢いで!!」
「リーリス、お前なんてことをっ!?」
リーリスの言葉に他の者達が抗議しようとしたが、ルノとしても加減が出来る相手ではないので最初から本気で挑む事を決め、まずは魔法を吸収されないように全身を「氷鎧」で武装を行う。その間にクズノの方も足元に落ちていたデュランダルを拾い上げ、ルノに目掛けて振り回す。
『さあ、私に跪きなさい!!』
「断る!!」
激しい金属音が中庭に鳴り響き、ネオ・オリハルコンの肉体とデュランダルを手にしたクズノと氷鎧で武装したルノが渡り合う。皮肉にも最初に倒された魔王軍の幹部であるデキンが装着していた「鬼武者」を模した姿のルノが最後の幹部であるクズノと戦う事になった。
金属生命体へと変化したクズノは生前の頃よりも驚異的な運動能力を手にしているのか、重量感のあるデュランダルを軽々と扱い、頑丈な氷塊で構成されたルノの氷鎧を削り取る。単純な硬度や耐久力はどうやらルノの氷塊よりもデュランダルが上回るらしく、徐々に全身に亀裂が生じ始めた。
『そらそらっ!!貴方の硬さはその程度なのですか!?』
「うっ、くっ……舐めるな!!」
『無駄ぁっ!!』
負けじとルノも反撃を繰り出すが、クズノは自分の顔面に向けられて迫る拳を身体全体をスライムのように変形させて回避を行い、がら空きの胴体部分にデュランダルの刃を振り翳す。金属ではあるが液体のように柔軟に変化を行うクズノの肉体に損傷を与える事は難しく、ルノだけが徐々に氷鎧に損傷を追う。
『その程度ですか帝国の英雄の力とは!!お得意の初級魔法はどうしたのです!?』
「くうっ……」
本音を言えば氷鎧を解除してルノも魔法の力で対抗したいところだが、魔王との戦闘で迂闊に魔法の力を使うと相手に吸収され、何倍もの威力で反撃を喰らう事を知っている。そのために迂闊に氷塊以外の魔法は扱えず、どうにかルノはクズノを取り抑えようとしたが、掴もうとするたびに身体を液状に変形させて回避するクズノを捕まえる事は容易ではない。
『貴方が魔法を使わないというのであれば私が使うまでです!!さあ、見せてあげますよ……私の真の力を!!』
「何だって!?」
この状態でも魔法が扱えるのかとルノが驚くと、クズノは自分の人間の死体に手を伸ばし、懐に隠していた7つの色合いの「魔水晶」を取り出すと、体内に吸収する。そして内部に取り込まれた魔水晶が光り輝き、全身から煙を噴き出す。
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この子のおかげで作家デビューできました
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