564 / 657
最終章 〈魔王と初級魔術師〉
ルノ、到着!!
しおりを挟む
「クズノ!!お前の目的が魔王という名前の兵器を作る事だというのか!?」
「その通りですよ。魔王軍が結成された理由は魔王様の完全復活でしたが、私にとってはそんな事はどうでもよかった。むしろ、あれほどの完璧な肉体を与えてやったというのに一人の人間に負けるような存在など敬う価値があるかどうかも疑わしいですが……」
「その魔王という兵器を使って一体何を企んでいるんですか?まさか、世界征服でもする気ですか?」
「ふっ……それも悪くはないですが、私の真の目的は別にあります。それはこの私自身が究極の存在に至る時が来たのです!!」
「何言ってんだこいつ……頭イカれてんのか?」
唐突におかしな事を言い出し始めたクズノにダンテは冷たく反応するが、そんな彼に対してクズノは睨みつけると、舌打ちを行う。
「ふんっ……ダンテ将軍、貴方の事は前々から気に喰わない男だと思っていましたよ。聞いた話によると、貴方は産まれた時から一度も病に侵された事がないのでしょう?世界でも希少な「健康体」と呼ばれるスキルをお持ちだとか……」
「ああ?それがどうしたってんだ?羨ましいのか?」
ダンテは産まれた時からあらゆる病に侵される事がない「健康体」と呼ばれる固有スキルを習得しており、このスキルのお陰で彼は二十数年の人生で一度も病気になった事がない。ちなみに北の国境を守護する「サムカ」も同じスキルを習得している。
どうして急に自分に話を振って来たのかとダンテは訝しむと、クズノは忌々しそうに自分の胸元に手を押し当て、これまで隠していた自身の身体の秘密を告げた。
「私は昔から病気になりやすくて体も弱く、医者からは大人になっても長くは生きられないだろうと言われた事もあります。そんな私がここまで生き延びる事が出来たのも、今日この日のために研究を重ねて来たからですよ」
「ああ?何の話だよ?」
「……そろそろ時間稼ぎも終わらせましょう。やっと準備も整ったようですしね」
クズノは上空に視線を向けると、他の者達も空を見上げる。すると遥か上空から接近する飛行物体を発見し、それがデブリとコトネとリディアを乗せたルノの「氷自動車」である事が判明した。
「皆!!そこ退いてぇっ!!」
「ちょ、危なっ……!?」
「いかん!!全員避けろっ!!」
慌ててリーリス達はその場を離れると、氷自動車は中庭に墜落するように着陸し、氷自動車に乗り込んでいた4人は中庭の地面に放り出される。
「ふげっ!?」
「あいたぁっ!?」
「……着地」
「いててて……ちょっとスピード出し過ぎたかな」
デブリは顔面から地面に衝突し、リディアは中庭に植えられている樹木の枝に絡まり、コトネだけが見事に地面に着地する。ルノの方は着地の際に少し身体が汚れた程度で特に怪我はなく、地面に埋もれた氷自動車を素手で引き抜く。
「やっぱりスピードを上げるとなるとこの車の形じゃ問題あったね。今度からは普通に飛行機で移動しよう」
「……私はこっちの方が楽しめた」
「何が楽しいのよ!?いいから早く私を下ろしなさいよ!!」
「ぐうっ……鍛え方が足りなかったか。この程度で鼻血を噴き出す様では師匠にはまだまだ及ばない」
鼻血を抑えながらデブリは起き上がり、コトネが枝に引っかかったリディアの救出を試みる中、ルノは氷自動車を持ち上げた状態で周囲を振り返る。中庭には唖然とした表情を浮かべるリーリス達の姿が存在する事に気付くと、不思議そうな表情を浮かべた。
「あれ……?何で皆さんここに居るんですか?今回は連絡してないのに俺達がここに戻ってくるのを知ってたんですか?」
「おお、父上、兄上、姉上もここに居たのですか!!不肖デブリ、只今戻りましたぞ!!」
「……ただいまっ」
「いやいやいやっ……そんな軽い調子で挨拶しないで下さい!!状況!!状況をよく理解してください!!」
「状況……あ、お前は!?」
ルノ達が久しぶりに再会した友達や家族や同僚に挨拶を行うと、リーリスが慌てた様子で上空に浮かぶクズノを指差す。流石のクズノもルノ達の登場の仕方に冷や汗を流し、動揺を完全には隠しきれない様子だった。
「ず、随分と面白い帰還をしてきましたね……それにしても、もう少し戻るまで時間が掛かると思っていましたが、随分と早く戻ってこられたようですね。一体どのような手段で戻ってこれたのですか?」
「どのような手段と言われても……とりあえず、頑張ったから?」
「……その一言の説明だけて納得できる辺り、貴方の規格外さは本当に嫌気が差しますね」
ルノの言葉にクズノは多少の理不尽を覚えてしまうが、相手が魔王さえも及ばない存在である事を考慮すれば納得せざるを得ない。
「いだだだっ!?ちょ、足を引っ張らないでよ!?枝が絡まって痛いのよ!?」
「文句言わない……筋肉王子、そっちの足を引っ張る」
「筋肉だと!?その呼び方は僕にとっては誉め言葉だ!!こっちの足を引っ張ればいいんだな?」
「ちょ、止めっ……ぎゃああっ!?」
一方で中庭の隅の方ではリディアがコトネとデブリの大雑把な救出方法で枝の上から解放され、背中から勢いよく地面に衝突してしまう。
「その通りですよ。魔王軍が結成された理由は魔王様の完全復活でしたが、私にとってはそんな事はどうでもよかった。むしろ、あれほどの完璧な肉体を与えてやったというのに一人の人間に負けるような存在など敬う価値があるかどうかも疑わしいですが……」
「その魔王という兵器を使って一体何を企んでいるんですか?まさか、世界征服でもする気ですか?」
「ふっ……それも悪くはないですが、私の真の目的は別にあります。それはこの私自身が究極の存在に至る時が来たのです!!」
「何言ってんだこいつ……頭イカれてんのか?」
唐突におかしな事を言い出し始めたクズノにダンテは冷たく反応するが、そんな彼に対してクズノは睨みつけると、舌打ちを行う。
「ふんっ……ダンテ将軍、貴方の事は前々から気に喰わない男だと思っていましたよ。聞いた話によると、貴方は産まれた時から一度も病に侵された事がないのでしょう?世界でも希少な「健康体」と呼ばれるスキルをお持ちだとか……」
「ああ?それがどうしたってんだ?羨ましいのか?」
ダンテは産まれた時からあらゆる病に侵される事がない「健康体」と呼ばれる固有スキルを習得しており、このスキルのお陰で彼は二十数年の人生で一度も病気になった事がない。ちなみに北の国境を守護する「サムカ」も同じスキルを習得している。
どうして急に自分に話を振って来たのかとダンテは訝しむと、クズノは忌々しそうに自分の胸元に手を押し当て、これまで隠していた自身の身体の秘密を告げた。
「私は昔から病気になりやすくて体も弱く、医者からは大人になっても長くは生きられないだろうと言われた事もあります。そんな私がここまで生き延びる事が出来たのも、今日この日のために研究を重ねて来たからですよ」
「ああ?何の話だよ?」
「……そろそろ時間稼ぎも終わらせましょう。やっと準備も整ったようですしね」
クズノは上空に視線を向けると、他の者達も空を見上げる。すると遥か上空から接近する飛行物体を発見し、それがデブリとコトネとリディアを乗せたルノの「氷自動車」である事が判明した。
「皆!!そこ退いてぇっ!!」
「ちょ、危なっ……!?」
「いかん!!全員避けろっ!!」
慌ててリーリス達はその場を離れると、氷自動車は中庭に墜落するように着陸し、氷自動車に乗り込んでいた4人は中庭の地面に放り出される。
「ふげっ!?」
「あいたぁっ!?」
「……着地」
「いててて……ちょっとスピード出し過ぎたかな」
デブリは顔面から地面に衝突し、リディアは中庭に植えられている樹木の枝に絡まり、コトネだけが見事に地面に着地する。ルノの方は着地の際に少し身体が汚れた程度で特に怪我はなく、地面に埋もれた氷自動車を素手で引き抜く。
「やっぱりスピードを上げるとなるとこの車の形じゃ問題あったね。今度からは普通に飛行機で移動しよう」
「……私はこっちの方が楽しめた」
「何が楽しいのよ!?いいから早く私を下ろしなさいよ!!」
「ぐうっ……鍛え方が足りなかったか。この程度で鼻血を噴き出す様では師匠にはまだまだ及ばない」
鼻血を抑えながらデブリは起き上がり、コトネが枝に引っかかったリディアの救出を試みる中、ルノは氷自動車を持ち上げた状態で周囲を振り返る。中庭には唖然とした表情を浮かべるリーリス達の姿が存在する事に気付くと、不思議そうな表情を浮かべた。
「あれ……?何で皆さんここに居るんですか?今回は連絡してないのに俺達がここに戻ってくるのを知ってたんですか?」
「おお、父上、兄上、姉上もここに居たのですか!!不肖デブリ、只今戻りましたぞ!!」
「……ただいまっ」
「いやいやいやっ……そんな軽い調子で挨拶しないで下さい!!状況!!状況をよく理解してください!!」
「状況……あ、お前は!?」
ルノ達が久しぶりに再会した友達や家族や同僚に挨拶を行うと、リーリスが慌てた様子で上空に浮かぶクズノを指差す。流石のクズノもルノ達の登場の仕方に冷や汗を流し、動揺を完全には隠しきれない様子だった。
「ず、随分と面白い帰還をしてきましたね……それにしても、もう少し戻るまで時間が掛かると思っていましたが、随分と早く戻ってこられたようですね。一体どのような手段で戻ってこれたのですか?」
「どのような手段と言われても……とりあえず、頑張ったから?」
「……その一言の説明だけて納得できる辺り、貴方の規格外さは本当に嫌気が差しますね」
ルノの言葉にクズノは多少の理不尽を覚えてしまうが、相手が魔王さえも及ばない存在である事を考慮すれば納得せざるを得ない。
「いだだだっ!?ちょ、足を引っ張らないでよ!?枝が絡まって痛いのよ!?」
「文句言わない……筋肉王子、そっちの足を引っ張る」
「筋肉だと!?その呼び方は僕にとっては誉め言葉だ!!こっちの足を引っ張ればいいんだな?」
「ちょ、止めっ……ぎゃああっ!?」
一方で中庭の隅の方ではリディアがコトネとデブリの大雑把な救出方法で枝の上から解放され、背中から勢いよく地面に衝突してしまう。
0
お気に入りに追加
11,307
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。