最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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最終章 〈魔王と初級魔術師〉

ルノ、到着!!

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「クズノ!!お前の目的が魔王という名前の兵器を作る事だというのか!?」
「その通りですよ。魔王軍が結成された理由は魔王様の完全復活でしたが、私にとってはそんな事はどうでもよかった。むしろ、あれほどの完璧な肉体を与えてやったというのに一人の人間に負けるような存在など敬う価値があるかどうかも疑わしいですが……」
「その魔王という兵器を使って一体何を企んでいるんですか?まさか、世界征服でもする気ですか?」
「ふっ……それも悪くはないですが、私の真の目的は別にあります。それはこの私自身が究極の存在に至る時が来たのです!!」
「何言ってんだこいつ……頭イカれてんのか?」


唐突におかしな事を言い出し始めたクズノにダンテは冷たく反応するが、そんな彼に対してクズノは睨みつけると、舌打ちを行う。


「ふんっ……ダンテ将軍、貴方の事は前々から気に喰わない男だと思っていましたよ。聞いた話によると、貴方は産まれた時から一度も病に侵された事がないのでしょう?世界でも希少な「健康体」と呼ばれるスキルをお持ちだとか……」
「ああ?それがどうしたってんだ?羨ましいのか?」


ダンテは産まれた時からあらゆる病に侵される事がない「健康体」と呼ばれる固有スキルを習得しており、このスキルのお陰で彼は二十数年の人生で一度も病気になった事がない。ちなみに北の国境を守護する「サムカ」も同じスキルを習得している。

どうして急に自分に話を振って来たのかとダンテは訝しむと、クズノは忌々しそうに自分の胸元に手を押し当て、これまで隠していた自身の身体の秘密を告げた。


「私は昔から病気になりやすくて体も弱く、医者からは大人になっても長くは生きられないだろうと言われた事もあります。そんな私がここまで生き延びる事が出来たのも、今日この日のために研究を重ねて来たからですよ」
「ああ?何の話だよ?」
「……そろそろ時間稼ぎも終わらせましょう。やっと準備も整ったようですしね」


クズノは上空に視線を向けると、他の者達も空を見上げる。すると遥か上空から接近する飛行物体を発見し、それがデブリとコトネとリディアを乗せたルノの「氷自動車」である事が判明した。


「皆!!そこ退いてぇっ!!」
「ちょ、危なっ……!?」
「いかん!!全員避けろっ!!」


慌ててリーリス達はその場を離れると、氷自動車は中庭に墜落するように着陸し、氷自動車に乗り込んでいた4人は中庭の地面に放り出される。


「ふげっ!?」
「あいたぁっ!?」
「……着地」
「いててて……ちょっとスピード出し過ぎたかな」


デブリは顔面から地面に衝突し、リディアは中庭に植えられている樹木の枝に絡まり、コトネだけが見事に地面に着地する。ルノの方は着地の際に少し身体が汚れた程度で特に怪我はなく、地面に埋もれた氷自動車を素手で引き抜く。


「やっぱりスピードを上げるとなるとこの車の形じゃ問題あったね。今度からは普通に飛行機で移動しよう」
「……私はこっちの方が楽しめた」
「何が楽しいのよ!?いいから早く私を下ろしなさいよ!!」
「ぐうっ……鍛え方が足りなかったか。この程度で鼻血を噴き出す様では師匠にはまだまだ及ばない」


鼻血を抑えながらデブリは起き上がり、コトネが枝に引っかかったリディアの救出を試みる中、ルノは氷自動車を持ち上げた状態で周囲を振り返る。中庭には唖然とした表情を浮かべるリーリス達の姿が存在する事に気付くと、不思議そうな表情を浮かべた。


「あれ……?何で皆さんここに居るんですか?今回は連絡してないのに俺達がここに戻ってくるのを知ってたんですか?」
「おお、父上、兄上、姉上もここに居たのですか!!不肖デブリ、只今戻りましたぞ!!」
「……ただいまっ」
「いやいやいやっ……そんな軽い調子で挨拶しないで下さい!!状況!!状況をよく理解してください!!」
「状況……あ、お前は!?」


ルノ達が久しぶりに再会した友達や家族や同僚に挨拶を行うと、リーリスが慌てた様子で上空に浮かぶクズノを指差す。流石のクズノもルノ達の登場の仕方に冷や汗を流し、動揺を完全には隠しきれない様子だった。


「ず、随分と面白い帰還をしてきましたね……それにしても、もう少し戻るまで時間が掛かると思っていましたが、随分と早く戻ってこられたようですね。一体どのような手段で戻ってこれたのですか?」
「どのような手段と言われても……とりあえず、頑張ったから?」
「……その一言の説明だけて納得できる辺り、貴方の規格外さは本当に嫌気が差しますね」


ルノの言葉にクズノは多少の理不尽を覚えてしまうが、相手が魔王さえも及ばない存在である事を考慮すれば納得せざるを得ない。


「いだだだっ!?ちょ、足を引っ張らないでよ!?枝が絡まって痛いのよ!?」
「文句言わない……筋肉王子、そっちの足を引っ張る」
「筋肉だと!?その呼び方は僕にとっては誉め言葉だ!!こっちの足を引っ張ればいいんだな?」
「ちょ、止めっ……ぎゃああっ!?」


一方で中庭の隅の方ではリディアがコトネとデブリの大雑把な救出方法で枝の上から解放され、背中から勢いよく地面に衝突してしまう。
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