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最終章 〈魔王と初級魔術師〉

四天王の意地

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「残りの魔力を全て注ぎます!!アイスカノン!!」
「ルノさん直伝……風圧!!」


鎧武者に向けてドリアは水属性の上級魔法を発動させ、杖先から展開した魔法陣から冷気の光線を放つ。それに王子てリーリスも同時に風属性の初級魔法を繰り出し、ギリョウに止めを刺そうとしていた鎧武者を撃ち抜く。


『冷気……!?』
「お、おおっ!?効いてやがるのか!?」
「これは……!?」


変形している最中に強烈な冷気を浴びた鎧武者は徐々に全身が凍り付き、動作が鈍る。その様子を確認したダンテはギリョウを後ろから抱きかかえて避難すると、ドリアが更に出力を強めて鎧武者の全身を氷結化させた。


「はあああっ!!」
「ぐぬぬぬっ……!!」
『全体、氷結……阻止、不可……!?』
「おっしゃあっ!!その調子だ!!」


全体が凍り付き始めた鎧武者は逃げる事も反撃する事も出来ず、やがて氷像と化す。全身が氷で覆われた事で変形する暇もなく、鎧武者は完全に動作を停止した。その様子を確認したドリアとリーリスは全身から汗を流しながら膝を付き、根こそぎ魔力を消耗してしまう。


「や、やった……勝ったんですね!?」
「た、多分……ああ、もう!!ルノさんがいれば一瞬で片が付いたのに!!」
「何を言うか、お前達はよくやったぞ。後は儂等に任せろ」
「これは何の騒ぎじゃ!?」
「大丈夫ですか!?」


鎧武者が停止すると、騒動を聞きつけて大勢の兵士を引き連れた皇帝と先帝が姿を現し、彼等の後ろにはナオとエルフ王国の一行も存在した。全員が中庭で氷像と化した鎧武者の姿を見て驚くが、一体何が起きたのかを尋ねる。


「リーリス!!これは何の騒ぎだ?またお前の変な実験かっ!!」
「ちょっと!!こっちは命懸けで戦ってたのにその言い草はないんじゃないですかっ!?」
「陛下、落ち着いて下さい。この者は侵入者です」
「侵入者だと……こ、これは!?どうしてこの聖剣がここにある!?」
「聖剣?」


先帝が中庭の地面に突き刺さったデュランダルの存在に気付いて大声を上げると、他の者達は不思議そうに彼に視線を向ける。だが、エルフ王国の国王だけは聖剣を確認すると目を見開く。


「こ、これは……!?間違いない、これは漆黒の剣聖が使用していたデュランダルではないか!!何故この大聖剣がここに!?」
「父上?知っていらっしゃるのですか?」
「うむ……この大聖剣は初代勇者が残した七大聖剣の一振り、その力は大地を切り裂くと言われる程の破壊力を誇る聖剣じゃ」
「大地を!?」


二人の説明を受けたルノ達は驚きを隠せず、先帝はデュランダルの元に近付きながら大聖剣が誕生した秘密を明かす。


「このデュランダルはかつて勇者の一人である「漆黒の剣聖」が地竜を打ち倒した後に封印された大聖剣じゃ……聖剣の力はあまりにも強大で国同士の諍いに利用される事を恐れた勇者が直々に封印し、次の世代の勇者が必要とした時だけ使用する事を許されていた。しかし、七大聖剣の殆どはこのデュランダルを除き、勇者が世界各地に封印したのじゃ」
「そんな過去が……しかし、その大聖剣がどうしてここに?」
「私達がどうにか氷漬けに成功した奴が地面を割ってここに現れたんですよ。多分、地下室辺りに封印されている大聖剣を奪ってここまで来たんでしょう」
「有り得ん!!大聖剣の封印を解くことが出来るのは勇者のみのはず!!他の人間が台座に突き刺さった大聖剣に触れようとするだけで弾かれてしまうのじゃぞ!?」


地下室に封印されたデュランダルはこの世界の人間では取り扱う事は出来ず、過去に先帝が先々代の皇帝から位を引き継ぐ際に大聖剣が封印されている部屋に訪れた事があったが、その時に先帝がデュランダルに不用意に触れようとした時は刃から衝撃波のような物が発生して弾かれた事がある。

大聖剣を封印している台座は理屈は不明だが、勇者以外の存在が聖剣に触れる事を拒む仕組みが施されているらしく、勇者と同じ異世界人であるルノやナオならば触れられる可能性はあったが普通の人間では触るだけで弾かれてしまう。


「多分ですけど、この氷像の中身は普通の人間じゃありません。というか、人間ですらありません。きっと金属で構成された生命体……分かりやすく言えばメ〇ルスライムみたいな生き物だと思います」
「えっ!?メ〇ルスライム!?倒せば経験値いっぱい貰えるの!?」
「な、ナオ様?」
「その説明はよく分からんが……ともかく、こいつは人間ではないという事か?」


リーリスの説明にド〇クエ好きのナオは反応してしまうが、他の者達は説明がよく理解出来ず、ともかく鎧武者の正体が人間ではない事だけは理解した。リーリスもあくまでも自分の推測にしか過ぎないが、この鎧武者が人間でなければデュランダルを封印から解放した理由を話す。
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