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最終章 〈魔王と初級魔術師〉
城内の不審者
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「今回は熱する温度を強めてみましょうかね。調合の手順も変えてみます」
「ううっ」
「おっと、何ですかミリアさん?大丈夫ですよ、すぐに治してあげますからね」
「あううっ」
ミリアが不安そうな表情を浮かべてリーリスの服の裾を掴み、不思議そうにリーリスは彼女に振り返ると、ミリアは首を横に振って窓を指差す。彼女は実験の間は暇なので他の二人が居る間は遊び相手をしてもらうが、ナオとジャンヌはユニコーンの元へ向かっているため研究室にはリーリスとミリアしか存在しなかった。
ミリアの行動が気になったリーリスは何事かと窓に視線を向けると、中庭の方で兵士達が忙しなく動き回っている事に気付き、何か問題が起きたのかと窓を開いて兵士の一人を呼び止めた。
「すいません、何かあったんですか?」
「あ、リーリス様!!申し訳ありません、城内に賊が侵入したようで……」
「え?賊?大丈夫なんですか?」
「はい、既に侵入者は捕まえています。ですが、どうも侵入者というのが元々この城に仕えていた者らしく、取り調べを行うために拘束しています」
「ええい、離せ!!離さんか貴様等!?」
会話の最中に中年男性の大声が響き渡り、どうやら侵入者と思われる男が大勢の兵士に囲まれた状態で廊下を歩かされていた。リーリスにも見覚えのある顔で過去に城内に仕えていた兵士だが、ルノが訪れる前に城門の警備隊長に任命された兵士である事に気付く。
「あのおっさんがその侵入者とやらですか?」
「はい。この男が城内でうろついている所を我々が発見して拘束しました」
「そうですか……まあ、取り調べなら私も出るまでもないでしょうし、あとはお願いしますよ」
「ん!?ま、待て!!おい、そこのお前……!!」
「こら、大人しくしろ!!」
リーリス達の方向に視線を向けた男は何かに気付いたように声を上げるが、即座に兵士に抑えつけられた。その反応を見てリーリスは不思議に思い、自分に対して何か言いたいことがあったのかと疑問を抱くが、今は薬の調合に集中するために窓を閉める。
「お仕事ご苦労様です」
「いえ……では、私はこれで失礼します」
兵士は即座に拘束されている男の元へ駆け出し、その様子を見てため息を吐きながらリーリスは研究を再開しようとしたとき、ミリアがうずくまっている事に気付く。
「ミリアさん?どうかしたんですか?」
「あ、あうっ……あああっ!!」
「ミリアさん!?」
ミリアは取り乱したようにリーリスの身体に抱き着き、彼女は涙を流しながら窓を指差す。その反応に疑問を抱いたリーリスは彼女を落ち着かせるために両肩に手を置き、何を伝えたいのかを知るために羊皮紙とペンを差しだす。
「ほら、落ち着いて下さい。大丈夫ですよ……何があったんです?」
「うう、あああっ……」
「落ち着いて一文字ずつ書いて下さい……何があっても守ってあげますからね」
「う、うん……」
震える指でミリアは羊皮紙に文字を記すと、ジャンヌに差しだす。彼女はミリアの反応を不思議に思いながらも羊皮紙に記された文字を確認しようとした時、扉が開かれてナオとジャンヌが戻って来た。
「リーリス、取ってきましたよ。流石に何度も角を削るからユニコーンも不機嫌になってましたが、こんなに取れましたよ」
「何か中庭の方が騒がしかったけど、何かあったんですか?」
「お帰りなさい、ちょっとすいませんけどミリアさんの事を見て貰えますか?」
戻って来た二人から素材を受け取るとリーリスはミリアをジャンヌに任せ、涙を浮かべながら震える彼女を見てジャンヌは驚くが、その間にリーリスはミリアから受け取った羊皮紙に目を通す。
「一体何が……!?」
「ううっ……!!」
羊皮紙に目を向けた瞬間、リーリスは目を見開き、ミリアはジャンヌの身体にしがみ付く。その内容はリーリスが先ほど出くわした兵士が「クズノ」であると記されており、咄嗟にリーリスは窓に駆けつけて先ほどの兵士の姿を探す。
「そんなまさか!!」
「リーリス?どうしたのです?」
「……居ない」
「えっ?」
それほど時間が経過したわけでもないのにリーリスは先ほど遭遇した兵士の姿が消えている事に気付き、壁に拳を叩きつける。彼女はクズノと遭遇した事はあるがあの時は暗い洞窟内でまともに顔を見る事も出来ず、兵士の恰好で兜を深く被っていたせいかクズノだと気づく事は出来なかった。だが、何度もクズノと相対しているミリアは彼の正体に気付いたらしく、怯えた様子でジャンヌに抱き着く。
声は覚えていたのだが会話の最中は「変声」と呼ばれるスキルを利用したのかリーリスは気付く事が出来ず、彼女は城内に侵入した男の存在を思い出し、窓を飛び越えて兵士達に連行されていく男の元へ駆け出す。
「そこの人達、待ってください!!」
「リーリス!?」
「リーリスさん!?」
調合の最中に外へ抜け出したリーリスを見てナオとジャンヌは驚くが、二人に事情を説明する暇もないのでリーリスは兵士達の元へ向かう。
「ううっ」
「おっと、何ですかミリアさん?大丈夫ですよ、すぐに治してあげますからね」
「あううっ」
ミリアが不安そうな表情を浮かべてリーリスの服の裾を掴み、不思議そうにリーリスは彼女に振り返ると、ミリアは首を横に振って窓を指差す。彼女は実験の間は暇なので他の二人が居る間は遊び相手をしてもらうが、ナオとジャンヌはユニコーンの元へ向かっているため研究室にはリーリスとミリアしか存在しなかった。
ミリアの行動が気になったリーリスは何事かと窓に視線を向けると、中庭の方で兵士達が忙しなく動き回っている事に気付き、何か問題が起きたのかと窓を開いて兵士の一人を呼び止めた。
「すいません、何かあったんですか?」
「あ、リーリス様!!申し訳ありません、城内に賊が侵入したようで……」
「え?賊?大丈夫なんですか?」
「はい、既に侵入者は捕まえています。ですが、どうも侵入者というのが元々この城に仕えていた者らしく、取り調べを行うために拘束しています」
「ええい、離せ!!離さんか貴様等!?」
会話の最中に中年男性の大声が響き渡り、どうやら侵入者と思われる男が大勢の兵士に囲まれた状態で廊下を歩かされていた。リーリスにも見覚えのある顔で過去に城内に仕えていた兵士だが、ルノが訪れる前に城門の警備隊長に任命された兵士である事に気付く。
「あのおっさんがその侵入者とやらですか?」
「はい。この男が城内でうろついている所を我々が発見して拘束しました」
「そうですか……まあ、取り調べなら私も出るまでもないでしょうし、あとはお願いしますよ」
「ん!?ま、待て!!おい、そこのお前……!!」
「こら、大人しくしろ!!」
リーリス達の方向に視線を向けた男は何かに気付いたように声を上げるが、即座に兵士に抑えつけられた。その反応を見てリーリスは不思議に思い、自分に対して何か言いたいことがあったのかと疑問を抱くが、今は薬の調合に集中するために窓を閉める。
「お仕事ご苦労様です」
「いえ……では、私はこれで失礼します」
兵士は即座に拘束されている男の元へ駆け出し、その様子を見てため息を吐きながらリーリスは研究を再開しようとしたとき、ミリアがうずくまっている事に気付く。
「ミリアさん?どうかしたんですか?」
「あ、あうっ……あああっ!!」
「ミリアさん!?」
ミリアは取り乱したようにリーリスの身体に抱き着き、彼女は涙を流しながら窓を指差す。その反応に疑問を抱いたリーリスは彼女を落ち着かせるために両肩に手を置き、何を伝えたいのかを知るために羊皮紙とペンを差しだす。
「ほら、落ち着いて下さい。大丈夫ですよ……何があったんです?」
「うう、あああっ……」
「落ち着いて一文字ずつ書いて下さい……何があっても守ってあげますからね」
「う、うん……」
震える指でミリアは羊皮紙に文字を記すと、ジャンヌに差しだす。彼女はミリアの反応を不思議に思いながらも羊皮紙に記された文字を確認しようとした時、扉が開かれてナオとジャンヌが戻って来た。
「リーリス、取ってきましたよ。流石に何度も角を削るからユニコーンも不機嫌になってましたが、こんなに取れましたよ」
「何か中庭の方が騒がしかったけど、何かあったんですか?」
「お帰りなさい、ちょっとすいませんけどミリアさんの事を見て貰えますか?」
戻って来た二人から素材を受け取るとリーリスはミリアをジャンヌに任せ、涙を浮かべながら震える彼女を見てジャンヌは驚くが、その間にリーリスはミリアから受け取った羊皮紙に目を通す。
「一体何が……!?」
「ううっ……!!」
羊皮紙に目を向けた瞬間、リーリスは目を見開き、ミリアはジャンヌの身体にしがみ付く。その内容はリーリスが先ほど出くわした兵士が「クズノ」であると記されており、咄嗟にリーリスは窓に駆けつけて先ほどの兵士の姿を探す。
「そんなまさか!!」
「リーリス?どうしたのです?」
「……居ない」
「えっ?」
それほど時間が経過したわけでもないのにリーリスは先ほど遭遇した兵士の姿が消えている事に気付き、壁に拳を叩きつける。彼女はクズノと遭遇した事はあるがあの時は暗い洞窟内でまともに顔を見る事も出来ず、兵士の恰好で兜を深く被っていたせいかクズノだと気づく事は出来なかった。だが、何度もクズノと相対しているミリアは彼の正体に気付いたらしく、怯えた様子でジャンヌに抱き着く。
声は覚えていたのだが会話の最中は「変声」と呼ばれるスキルを利用したのかリーリスは気付く事が出来ず、彼女は城内に侵入した男の存在を思い出し、窓を飛び越えて兵士達に連行されていく男の元へ駆け出す。
「そこの人達、待ってください!!」
「リーリス!?」
「リーリスさん!?」
調合の最中に外へ抜け出したリーリスを見てナオとジャンヌは驚くが、二人に事情を説明する暇もないのでリーリスは兵士達の元へ向かう。
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