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最終章 〈魔王と初級魔術師〉
本物の精霊薬
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「それよりも見てくださいよこれ!!遂にエルフ王国が精霊薬の生成方法を明かしたんです!!しかも世界樹の樹液とユニコーンの角の粉末も渡してくれました!!」
「精霊薬?あの伝説の秘薬の事ですか?」
「確か王女様の病気を治したときにリーリスさんが作り出した薬じゃ……」
「いえ、あれも確かに精霊薬なんですが、私が作り出したのはあくまでも調合本を参考にして作り出した試作品です。どうやら完全な精霊薬を生み出すためにはもう一つの素材が必要だったようなんですよ」
過去にアイリスはジャンヌの「呪毒」を治すために精霊薬を制作したが、あの時に使用した素材は「ユニコーンの角」と彼女が独自に集めていた数種類の薬草を組合せて作り出した。だが、本物の精霊薬と比べると効能は落ちるらしく、実際に帝国に戻った後にリーリスが作り出した精霊薬は不死病を患ったミリアを治す事は出来なかった。
「本物の精霊薬を作り出すにはやっぱり素材が足りなかったんです。ですが、その素材も手に入りました。ここからは実験を繰り返して本物の精霊薬を作り出しますよ!!」
「その例の調合本には載ってないの?」
「一応は調べたんですけど、残念ながらこの著者も精霊薬の生成法は私が試した方法以外は知らないようですね。ですけど素材さえ判明すればあとはトライ&エラーです!!さあ、行きますよ科学民!!ナイタール液を作るよりは楽なはずですから!!」
「科学民って何!?」
「ないたーるとは何ですか……?」
「あう~?」
リーリスは3人を引き連れて自分の実験室に向かい、まずは素材の準備を行う。世界樹の生成に必要不可欠な「世界樹の樹液」「ユニコーンの角」は既に確保したが、この二つ以外にも精霊薬を構成する為に必要と思われる薬草なども探し当てねばならない。
ここから重要になるのは精霊薬を作り出すまでに素材を使い切らない事になり、実験を無暗に繰り返して素材を消耗するのは避けなければならない。だが、すぐに集められる素材ならば早急に回収すれば特に問題はない。
「ジャンヌ王女は庭の方で呑気にくつろいでいる駄馬から角を削り取ってきてください!!ナオさんはエルフ王国の人達を呼び出して王国で捕れる薬草の種類を聞き出してください!!」
「わ、分かった!!」
「駄馬とはユニコーンの事ですか!?いくらなんでもその呼び方はあんまりです!!」
「ほら、ミリアさんはお姉ちゃんと一緒に行きますよ!!薬の効果を試すために付き合ってもらいます!!」
「あううっ!?」
ミリアを肩車しながらリーリスは颯爽と自分の実験室に向かい、指示されたナオは慌てて空間魔法を駆使して知り合いの森人族の元へ向かい、ジャンヌは自分が契約したユニコーンの元へ向かう――
――1時間後、リーリスの実験室には大量の薬草と実験器具が並べられ、全ての準備を整えるとリーリスは精霊薬の制作に励む。粉末状にした薬草を調合し、更に世界樹の樹液とユニコーンの角の粉末も加え、出来上がった回復液をミリアに渡す。
「さあ、今度はこの薬です!!ユニコーンの粉末を多めに作りましたよ!!」
「うぐっ……うぐっ……ぷはぁっ」
「……変わりはありませんね」
味は美味しいかったのか受け取った回復液を飲み干したミリアは満足そうにコップを机の上に置くが、特に身体に変化は訪れず、失敗に終わる。仕方なく完成した回復液を水晶製の小瓶に入れた後、リーリスは4回目の薬の調合を試みた。
「この方法も失敗ですか……なら、今度は樹液の方を多めに入れてみましょう。それと薬草の種類も増やしましょうかね……」
「大丈夫ですかリーリス?先ほどから動きっぱなしですが……」
「他に人を呼んで手伝って貰った方が……」
「いえ、それは駄目です。素材に限りがある限り、大人数で実験を繰り返すとすぐに尽きてしまいます。ここは私に任せてください……といっても、ユニコーンの角の方が心もとないですね。王女様、ユニコーンの角をこれでかち割ってください」
「分かりました……って、これはトンカチではないですか!!こんなので叩いたら角が砕けてしまいますよ!?」
さり気無くトンカチを渡してくるリーリスにジャンヌは叱りつけるが、ここまでの実験で素材も消耗しているのは事実だった。ジャンヌがユニコーンを従えさせた事は幸運であり、薬草に関してもナオが空間魔法と千里眼を利用すればすぐに見つけ出して運んでくるので問題はない。
「よし、今度のは自信作ですよ!!喰らいなさい!!」
「う~……まいっ!!」
「喋った!?やった、成功したの!?」
「いえ、これはただの私が作ったアイスコーヒーです」
「紛らわしい!!」
ミリアも回復薬ばかりでは飽きるだろうと判断してリーリスはアイスコーヒーを与えると、彼女は失敗した回復液が詰められた薬瓶を確認してこれまでの調合を記した資料を読み直す。薬草を多めに含んだ薬、樹液の割合が高い薬、粉末の量を大幅に増加した薬、様々な方法を試す。
「精霊薬?あの伝説の秘薬の事ですか?」
「確か王女様の病気を治したときにリーリスさんが作り出した薬じゃ……」
「いえ、あれも確かに精霊薬なんですが、私が作り出したのはあくまでも調合本を参考にして作り出した試作品です。どうやら完全な精霊薬を生み出すためにはもう一つの素材が必要だったようなんですよ」
過去にアイリスはジャンヌの「呪毒」を治すために精霊薬を制作したが、あの時に使用した素材は「ユニコーンの角」と彼女が独自に集めていた数種類の薬草を組合せて作り出した。だが、本物の精霊薬と比べると効能は落ちるらしく、実際に帝国に戻った後にリーリスが作り出した精霊薬は不死病を患ったミリアを治す事は出来なかった。
「本物の精霊薬を作り出すにはやっぱり素材が足りなかったんです。ですが、その素材も手に入りました。ここからは実験を繰り返して本物の精霊薬を作り出しますよ!!」
「その例の調合本には載ってないの?」
「一応は調べたんですけど、残念ながらこの著者も精霊薬の生成法は私が試した方法以外は知らないようですね。ですけど素材さえ判明すればあとはトライ&エラーです!!さあ、行きますよ科学民!!ナイタール液を作るよりは楽なはずですから!!」
「科学民って何!?」
「ないたーるとは何ですか……?」
「あう~?」
リーリスは3人を引き連れて自分の実験室に向かい、まずは素材の準備を行う。世界樹の生成に必要不可欠な「世界樹の樹液」「ユニコーンの角」は既に確保したが、この二つ以外にも精霊薬を構成する為に必要と思われる薬草なども探し当てねばならない。
ここから重要になるのは精霊薬を作り出すまでに素材を使い切らない事になり、実験を無暗に繰り返して素材を消耗するのは避けなければならない。だが、すぐに集められる素材ならば早急に回収すれば特に問題はない。
「ジャンヌ王女は庭の方で呑気にくつろいでいる駄馬から角を削り取ってきてください!!ナオさんはエルフ王国の人達を呼び出して王国で捕れる薬草の種類を聞き出してください!!」
「わ、分かった!!」
「駄馬とはユニコーンの事ですか!?いくらなんでもその呼び方はあんまりです!!」
「ほら、ミリアさんはお姉ちゃんと一緒に行きますよ!!薬の効果を試すために付き合ってもらいます!!」
「あううっ!?」
ミリアを肩車しながらリーリスは颯爽と自分の実験室に向かい、指示されたナオは慌てて空間魔法を駆使して知り合いの森人族の元へ向かい、ジャンヌは自分が契約したユニコーンの元へ向かう――
――1時間後、リーリスの実験室には大量の薬草と実験器具が並べられ、全ての準備を整えるとリーリスは精霊薬の制作に励む。粉末状にした薬草を調合し、更に世界樹の樹液とユニコーンの角の粉末も加え、出来上がった回復液をミリアに渡す。
「さあ、今度はこの薬です!!ユニコーンの粉末を多めに作りましたよ!!」
「うぐっ……うぐっ……ぷはぁっ」
「……変わりはありませんね」
味は美味しいかったのか受け取った回復液を飲み干したミリアは満足そうにコップを机の上に置くが、特に身体に変化は訪れず、失敗に終わる。仕方なく完成した回復液を水晶製の小瓶に入れた後、リーリスは4回目の薬の調合を試みた。
「この方法も失敗ですか……なら、今度は樹液の方を多めに入れてみましょう。それと薬草の種類も増やしましょうかね……」
「大丈夫ですかリーリス?先ほどから動きっぱなしですが……」
「他に人を呼んで手伝って貰った方が……」
「いえ、それは駄目です。素材に限りがある限り、大人数で実験を繰り返すとすぐに尽きてしまいます。ここは私に任せてください……といっても、ユニコーンの角の方が心もとないですね。王女様、ユニコーンの角をこれでかち割ってください」
「分かりました……って、これはトンカチではないですか!!こんなので叩いたら角が砕けてしまいますよ!?」
さり気無くトンカチを渡してくるリーリスにジャンヌは叱りつけるが、ここまでの実験で素材も消耗しているのは事実だった。ジャンヌがユニコーンを従えさせた事は幸運であり、薬草に関してもナオが空間魔法と千里眼を利用すればすぐに見つけ出して運んでくるので問題はない。
「よし、今度のは自信作ですよ!!喰らいなさい!!」
「う~……まいっ!!」
「喋った!?やった、成功したの!?」
「いえ、これはただの私が作ったアイスコーヒーです」
「紛らわしい!!」
ミリアも回復薬ばかりでは飽きるだろうと判断してリーリスはアイスコーヒーを与えると、彼女は失敗した回復液が詰められた薬瓶を確認してこれまでの調合を記した資料を読み直す。薬草を多めに含んだ薬、樹液の割合が高い薬、粉末の量を大幅に増加した薬、様々な方法を試す。
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