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最終章 〈魔王と初級魔術師〉
精霊薬さえ作れれば
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「正直に言えば、今の儂等が差し出す事が出来る価値のある品物はこの樹液だけ……だが、ナオ殿から話は聞いたのだが、そこにいるリーリス殿は薬師として非常に優秀な人材だと伺っている」
「優秀……?」
「え、優秀?」
「ぬう、優秀じゃと……?」
「いや、喧嘩売ってんですか?それなら買いますよ?この城ごと崩壊させましょうか?」
国王の言葉にダンテ、ドリア、ギリョウは首を傾げ、そんな彼等の反応にリーリスは怪しい色合いの液体が入った薬瓶を取り出すと慌てて先帝が宥める。
「ま、まあまあ、落ち着くのじゃ。確かにリーリスは我が国で一番の薬師である事は間違いないであろう?」
「性格は最悪だがな……」
「ダンテさん、これから貴方がどんな怪我を負おう治療しませんからね!!」
「「まあまあ」」
ダンテの呟きにリーリスが怒りを露わにするがドリアとギリョウに抑えられ、普段の言動はともかく、確かにリーリスは薬師としては非常に優秀な人物である事には違いない。実際にルノが発見した調合本を参考にしたとはいえ、これまでに様々な薬を作り出した事は間違いなく、医者としての腕は王国の中でも彼女に並ぶ人物はいない。
ナオからリーリスが優れた薬師だと聞いていた国王は彼女ならば世界樹の樹液とユニコーンの角を調合して精霊薬を作り出す手がかりを見つけ出せる事が出来るのではないかと考え、脱出の際に持ち込む事が出来た全ての素材を引き渡す。
「これも受け取ってほしい。我が国で保管していたユニコーンの角の粉末じゃ。こちらは死亡したユニコーンの角を回収した代物だが、きっと役に立つであろう」
「おお!!これは有難いですね、貰ってもいいんですか?」
「うむ。今の我々が所持していても仕方がない物だからな……」
「なら遠慮なく貰いますね。ふむふむ、この二つを組み合わせれば精霊薬が生み出せるんですか……それなら私の手で見つけ出してあげますよ。精霊薬の製作法を!!」
「その薬ならノース公爵の娘さんも助ける事が出来るのかな?」
嬉しそうに樹液の瓶とユニコーンの角の粉末が入った袋を受け取ったリーリスに対し、ナオは「不死病」と呼ばれる思い病を患ったノース公爵の娘の事を尋ねる。精霊薬はあらゆる病気、怪我を治す事が出来ると伝えられており、もしも伝承通りの効能を誇るのならば不死病の患者でも治せるはずだった。
「精霊薬で不死病を治したという前例はないので保証は出来ませんが、少なくとも可能性はあります。よし、それなら早速実験に取り掛かりますよ!!あ、ナオさんも一緒に手伝ってください。どうせ暇でしょ?」
「え!?いや、俺は……ああ~」
「な、ナオ様ぁっ!?」
「リーリス!!まだ会議中じゃぞ!?」
素材を抱えたリーリスはナオの服を掴むと無理やりに引きずって会議室を退室し、リンと皇帝が引き留める前に部屋を抜け出す。その様子を見て居た会議室の面々は唖然とするが、皇帝は咳ばらいを行って国王と向かい合う。
「ご、ごほん……うちのリーリスが色々と失礼をして申し訳ない」
「いや……まあ、元気な娘さんじゃな」
「だが、お主達の誠意は伝わった。王国内に居る限り、我々は出来る限りの援助を行う事を約束しよう」
エルフ王国が現在差し出せる対価を受け取った皇帝は国内に滞在している限りはエルフ王国の支援を行う事を約束し、エルフ王国が本格的に再興を行うまでの間は彼等が王国領地内で滞在する事を許可した――
――その一方、ナオを引き連れて部屋を抜け出したリーリスは急いでジャンヌの部屋の元まで移動し、彼女の協力を得るために扉を叩く。
「ジャンヌ王女、リーリスですよ!!ここを開けてください!!」
「ちょ、リーリス将軍!?いくら四天王だからといっても、王女様に対してなんて無礼な……!!」
『その声はリーリスですか?何事ですか?』
見張りの兵士が慌てた様子で扉を叩くリーリスを止めようとしたが、部屋の中からジャンヌの声が響き、すぐに扉が開かれる。どうやらノース公爵の娘のミリアも一緒だったらしく、全身をフードで覆い隠したミリアがジャンヌの後ろから顔を出す。
「う、ああっ……」
「あ、丁度良かった。ミリアちゃんもここに居たんですね。探す手間が省けました」
「ええ、ミリアさんが他の人と一緒だと落ち着かないので私の部屋で休ませていました」
「ミリアちゃん、元気だった?」
「あうっ」
ナオが挨拶を行うとミリアは軽く頷き、最初の頃に比べると心なしか顔の血色が良くなっていた。だが、それでも外見は「アンデッド」のような容貌である事に変わりはなく、もしも事情を知らない者が彼女の顔を見ると騒ぎ出すかもしれないので城内に存在する間はフードで全身を覆い隠すように暮らしていた。
ミリアの存在の事は一応は皇帝にも知らせは入っているが、未だにジャンヌの護衛を務める兵士達は彼女の顔を見ると若干警戒してしまう。そもそも最近になって重病が治ったばかりのジャンヌが不死病の患者と接触する事を快くは思ってはおらず、本来ならばミリアは隔離する予定だったがまだいたいけな子供を誰一人知り合いもいない環境に閉じ込める事を嫌ったジャンヌが彼女を自分と共に生活を過ごす様に配慮したのだ。
「優秀……?」
「え、優秀?」
「ぬう、優秀じゃと……?」
「いや、喧嘩売ってんですか?それなら買いますよ?この城ごと崩壊させましょうか?」
国王の言葉にダンテ、ドリア、ギリョウは首を傾げ、そんな彼等の反応にリーリスは怪しい色合いの液体が入った薬瓶を取り出すと慌てて先帝が宥める。
「ま、まあまあ、落ち着くのじゃ。確かにリーリスは我が国で一番の薬師である事は間違いないであろう?」
「性格は最悪だがな……」
「ダンテさん、これから貴方がどんな怪我を負おう治療しませんからね!!」
「「まあまあ」」
ダンテの呟きにリーリスが怒りを露わにするがドリアとギリョウに抑えられ、普段の言動はともかく、確かにリーリスは薬師としては非常に優秀な人物である事には違いない。実際にルノが発見した調合本を参考にしたとはいえ、これまでに様々な薬を作り出した事は間違いなく、医者としての腕は王国の中でも彼女に並ぶ人物はいない。
ナオからリーリスが優れた薬師だと聞いていた国王は彼女ならば世界樹の樹液とユニコーンの角を調合して精霊薬を作り出す手がかりを見つけ出せる事が出来るのではないかと考え、脱出の際に持ち込む事が出来た全ての素材を引き渡す。
「これも受け取ってほしい。我が国で保管していたユニコーンの角の粉末じゃ。こちらは死亡したユニコーンの角を回収した代物だが、きっと役に立つであろう」
「おお!!これは有難いですね、貰ってもいいんですか?」
「うむ。今の我々が所持していても仕方がない物だからな……」
「なら遠慮なく貰いますね。ふむふむ、この二つを組み合わせれば精霊薬が生み出せるんですか……それなら私の手で見つけ出してあげますよ。精霊薬の製作法を!!」
「その薬ならノース公爵の娘さんも助ける事が出来るのかな?」
嬉しそうに樹液の瓶とユニコーンの角の粉末が入った袋を受け取ったリーリスに対し、ナオは「不死病」と呼ばれる思い病を患ったノース公爵の娘の事を尋ねる。精霊薬はあらゆる病気、怪我を治す事が出来ると伝えられており、もしも伝承通りの効能を誇るのならば不死病の患者でも治せるはずだった。
「精霊薬で不死病を治したという前例はないので保証は出来ませんが、少なくとも可能性はあります。よし、それなら早速実験に取り掛かりますよ!!あ、ナオさんも一緒に手伝ってください。どうせ暇でしょ?」
「え!?いや、俺は……ああ~」
「な、ナオ様ぁっ!?」
「リーリス!!まだ会議中じゃぞ!?」
素材を抱えたリーリスはナオの服を掴むと無理やりに引きずって会議室を退室し、リンと皇帝が引き留める前に部屋を抜け出す。その様子を見て居た会議室の面々は唖然とするが、皇帝は咳ばらいを行って国王と向かい合う。
「ご、ごほん……うちのリーリスが色々と失礼をして申し訳ない」
「いや……まあ、元気な娘さんじゃな」
「だが、お主達の誠意は伝わった。王国内に居る限り、我々は出来る限りの援助を行う事を約束しよう」
エルフ王国が現在差し出せる対価を受け取った皇帝は国内に滞在している限りはエルフ王国の支援を行う事を約束し、エルフ王国が本格的に再興を行うまでの間は彼等が王国領地内で滞在する事を許可した――
――その一方、ナオを引き連れて部屋を抜け出したリーリスは急いでジャンヌの部屋の元まで移動し、彼女の協力を得るために扉を叩く。
「ジャンヌ王女、リーリスですよ!!ここを開けてください!!」
「ちょ、リーリス将軍!?いくら四天王だからといっても、王女様に対してなんて無礼な……!!」
『その声はリーリスですか?何事ですか?』
見張りの兵士が慌てた様子で扉を叩くリーリスを止めようとしたが、部屋の中からジャンヌの声が響き、すぐに扉が開かれる。どうやらノース公爵の娘のミリアも一緒だったらしく、全身をフードで覆い隠したミリアがジャンヌの後ろから顔を出す。
「う、ああっ……」
「あ、丁度良かった。ミリアちゃんもここに居たんですね。探す手間が省けました」
「ええ、ミリアさんが他の人と一緒だと落ち着かないので私の部屋で休ませていました」
「ミリアちゃん、元気だった?」
「あうっ」
ナオが挨拶を行うとミリアは軽く頷き、最初の頃に比べると心なしか顔の血色が良くなっていた。だが、それでも外見は「アンデッド」のような容貌である事に変わりはなく、もしも事情を知らない者が彼女の顔を見ると騒ぎ出すかもしれないので城内に存在する間はフードで全身を覆い隠すように暮らしていた。
ミリアの存在の事は一応は皇帝にも知らせは入っているが、未だにジャンヌの護衛を務める兵士達は彼女の顔を見ると若干警戒してしまう。そもそも最近になって重病が治ったばかりのジャンヌが不死病の患者と接触する事を快くは思ってはおらず、本来ならばミリアは隔離する予定だったがまだいたいけな子供を誰一人知り合いもいない環境に閉じ込める事を嫌ったジャンヌが彼女を自分と共に生活を過ごす様に配慮したのだ。
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