最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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最終章 〈魔王と初級魔術師〉

ルノとナオの違い

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「お言葉ですが戦闘力が秀でているからといってルノ様がナオ様に勝るとは思いません。ナオ様は確かに戦闘には向いていませんが、ナオ様の能力は非常に素晴らしいです」
「確かにナオ殿の空間魔法に関しては凄いですよね。というか、もしもナオさんが昆虫種の襲撃の時にエルフ王国に残っていれば転移結晶なんて使用せずに全員を安全な場所へ避難させる事が出来たんじゃないですか?」
「その通りです!!ルノ様は確かに王都で国王様をお救い下さいましたが、ナオ様だってあの場に居れば同じことが出来たはずです!!」
「確かに転移魔法は素晴らしいですが……ルノ様も高速で移動する術を持っていますよ!!」


転移魔法を扱えるナオに対してルノは飛翔術等の移動魔法を生み出した事をドリアが宣言し、両国の王族と将軍が睨み合う。その光景を見て今後の話し合いを行うはずが何時の間にかお互いの勇者の自慢を行っている事にリーリスは呆れてしまう。


「ちょっと待ってくださいよ、話が脱線してません?今はエルフ王国の再建に関して話し合いを行うんじゃなかったんですか?」
「うむ、リーリスの言う通りじゃ。ルノ殿とナオ殿の素晴らしさはお互いによく分かっただろう」
「リン……もう恥ずかしいから話を進めて欲しいんだけど」
「ナオ様……も、申し訳ありません」
「儂等も熱くなり過ぎたのう」


呆れたリーリスと先帝の言葉にナオは恥ずかしそうに頬を赤く染め、彼等の反応を見て他の者達も冷静になって本題に入る。


「率直に尋ねるが、王国を再建させると言っても具体的な方法はあるのか?お主達が暮していた王都を復興させるのか?」
「いや、あそこはもう駄目じゃ。ナオ殿に調べて貰ったが、焼け崩れた世界樹が城下町を完全に押しつぶし、湖も大量の灰が浮かんでいた……あそこはもう我々でも住める場所ではない」
「父上、それならばどうするつもりですか?」
「うむ、既にエルフ王国は最早国としては機能出来ない程に追い詰められている……それならばいっその事、新天地で新たな国を築こうかと思っているのじゃ」
「新天地?」


国王の言葉に皇帝は不思議に思うと、すぐにリンが長机の上に大きな羊皮紙を広げ、現在のエルフ王国の領地が記された地図を晒す。


「これが現在の我々が管理していた土地です。見て分かる通り、我々もアトラス大森林の全てを把握しているわけではありません」
「ほほう、これは貴重な資料ですね。エルフ王国はてっきりアトラス大森林の全てを管理しているのかと思っていましたが……」
「知っての通り、アトラス大森林は世界で一番の規模を誇る樹海じゃ。数百年も暮らしている我々でさえもアトラス大森林の全貌を把握しているわけではない」
「この地図を確認する限り、エルフ王国の王都はアトラス大森林の北部に存在するんですね」


地図上では意外な事にエルフ王国はアトラス大森林の北部に存在し、更に北の地方はバルトロス王国の領地だった。地図上を確認する限りでは両国はそれほど離れていない。


「見ての通り、我々の王都は北部に存在した。だが、今後は我等は南部の方に移動を行い、まずは都作りを行おうと思う」
「しかし、人員はどうする?此度の襲撃で大勢の森人族が犠牲になったと聞いているが……」
「確かに数多くの兵士を失ったが、どれだけ時間が掛かろうと我々は国を再建する。森人族にとって安住の地はこのアトラス大森林だけである以上、他の土地に移り住む事も出来ん」


森人族が最も過ごしやすい環境は緑の自然に覆われた場所のため、森が存在しない場所には長く住む事は出来ない。だからこそどれだけの危険と時間を重ねようとエルフ王国の一行はアトラス大森林に帰還する事を宣言する。


「我々が王国に協力して欲しい事は都を築いてアトラス大森林に戻るまでの間、食料、衣料品などの援助をしてほしい。無論、無償で貰うわけではない。我々もそれ相応の対価を渡そう」
「対価?父上、それは一体何ですか?」


王都から逃れる際に貴重品の殆どは残した状態で白原に避難したため、現在のエルフ王国の一行は高価で価値のある代物など持ち込んでいないはずだが、国王は配下に命じてある物を用意させる。


「これを貴国に渡そう。どうか収めてくれ」
「ぬ?これは……回復薬?いや、しかしこの色合いは……」


国王が机の上に差しだしたのはジョッキ程の大きさが存在する大きな水晶製の瓶だった。中身は緑色の液体が入っているようだが、最初にそれを見た皇帝は回復薬が思ったが、市販の物よりも色合いが濃く、全体が光り輝いていた。

机の上に置かれた薬瓶を見て全員が訝し気な表情を浮かべる中、エルフ王国の一行は国王が取り出した物の正体に気付き、イヤンが大声を上げる。


「ち、父上!!まさかそれは……!?」
「うむ、世界樹の樹液じゃ。つまり……精霊薬の素材でもある」
「え!?精霊薬!?」
「あの伝説の秘薬か!?」


精霊薬という言葉を聞いた瞬間にリーリスは立ち上がり、興奮を収めない状態で机の上に置かれた薬瓶に手を伸ばし、鼻息を荒くしながら覗き込む。





※更新が遅れて申し訳ありません!! OTL
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