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最終章 〈魔王と初級魔術師〉

勇者自慢

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――帝都へリーリス達が帰還してから2日程経過した頃、エルフ王国の一行を連れたナオが赴き、今後の対応に関して話し合いを行うために会議室には先帝と皇帝、更にコトネを除く帝国四天王も集まっていた。


「では、今回の議題はエルフ王国の復興に関してバルトロス王国はどのように協力すればいいのか申してくれ」
「皇帝よ、我等はしばらくの間だけ白原に留めさせて貰うだけで構わんのだ。時期が訪れれば我等はアトラス大森林に戻り、自分達の力だけで国を再興する。これ以上に貴国の世話になるわけにはいかん……」
「何を言うか、バルトロス王国とエルフ王国は同盟国である以上は力を貸す事を惜しまん」


皇帝の言葉にエルフ王国の国王は申し訳なさそうな表情を浮かべるが、そんな彼等に皇帝と先帝が朗らかな笑みを浮かべる。王都を失ってしまったエルフ王国の王族、兵士、民衆は住む所失くしてしまい、仮にアトラス大森林に帰還したとしても完全に焼け野原と化した王都に引き返して再び暮らす事は出来ない。


「それに実際問題、お主達だけで国を再興するのは難しいだろう。着の身着のままでこの地に避難してきたお主達に国を再興する程の財力も残っているとは思えん」
「それを言われると耳が痛いが……我が領地にはいくつもの里が存在する。そこにはまだ数千の兵士を滞在させておる。軍事力という点においては我等はまだ戦える力を持っているぞ」
「我々は王都を失いましたがそれでも国を防衛する程度の戦力は残っています。それに我々にはナオ様も居ます。勇者であるこの御方の力は決して貴国のルノ殿にも劣りません!!」
「いや……ルノ君と比べられても」


先帝の言葉に対して国王は言い返すと、隣に座っていたリンが自分の恋人でもあるナオの力を誇張する。だが、ナオ本人としてはルノと自分が対等の力を持っているとは思っておらず、あまり大言壮語は控えて欲しいと内心ではリンの発言に冷や冷やとしていた。


「ふむ、今の言葉聞き捨てならんのう。我が国のルノ殿はこれまでに数体の竜種を屠り、更には1万を超えるゴーレムを打ち倒し、S級冒険者を幾人も相手にして勝利を収めておるのだぞ?」
「確かにそのような噂は耳にしている。実際に我々もルノ殿の力の一旦を確認しておるが……ナオ殿はその気になれば一瞬にして大人数の森人族を転移させる事が出来る。ルノ殿の方はそのような芸当が出来るのか?」
「ぬうっ……リーリス、ルノ殿は転移魔法は扱えるのか?」
「扱えるわけないじゃないですか、初級魔術師ですよ?初級魔法以外の魔法は出来ませんって」
「ほほう、という事はやはりナオ殿の方がルノ殿よりも優秀という事かな?」


皇帝が我が子を自慢するようにルノを褒め称えると、国王の方も負けじとルノでは真似する事が出来ない魔法を扱えるナオを自慢する。それを聞いた他の面々もお互いの国の「異世界人」の自慢を始めた。


「それは聞き捨てならんのう。ルノ殿の強さは決して魔法の力ではなく、身体能力も非常に素晴らしい。儂の元で数年も修行させれば剣士としての頂点も極める事も出来るだろう」
「お待ちくださいませ、その点に関してはナオ殿も負けてはいませんわよ!!ナオ様は召喚された時は赤子のようにひ弱なお方ですが、数日も経過しない内に様々なスキルを身に着け、今では100を超えるスキルを身に着けてますのよ!!」
「100のスキルだと!?それは少し大げさではないのか?」
「いえ、俺の異能の「貧弱」はステータスの初期値が最低値の代わりに魔物を倒す度にSPを確実に獲得できる能力なんです」
「それは凄いですね、確かスキルの中には魔法や身体能力を増強させるスキルも豊富何ですよね?それを全て覚えられるという事ですか……その点はルノさんも真似できませんね」


ナオは勇者でありながらステータスの能力値はこの世界の人間の中でも最低値の状態で召喚された。だが、彼の能力の利点として「レベルの制限が存在せず、どのような魔物でも1体倒す事に1レベル上昇」という能力を持つ。この点を利用してナオは大量のスキルを獲得する事で自分のステータスを強化してこれまで生き延びる事が出来た。

ちなみにルノが習得しているスキルの数はナオと比べても圧倒的に少ない。スキルを習得するSPに関しては有り余る程に保有しているが、大抵の事は魔法の力で解決する事が出来るのでスキルを覚える機会が少ないからである。


「ふむ、やはり正真正銘の勇者として召喚されたナオ殿の方がルノ殿よりも存在能力が高いのでしょうね」
「おい、ふざけた事を言うなよ!!こっちの坊主はな一か月程度で竜種を屠れる力を手に入れたんだぞ!?そこの坊主に同じような真似が出来るのかよ!!」
「いや、それはちょっと……」
「ならば戦闘力という点ではルノ様の方が圧倒的に優れていうようですね。それならばやはりナオ殿よりもルノ様の方が優れているのでは?」


ダンテの言葉にナオは慌てて首を振り、それを見てドリアも誇らしげに自分達のルノの方が優れている事を宣言すると、負けずにリンも言い返す。
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