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巨人国 侵攻編
再び宇宙へ
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「やった……倒したのか?」
ルノは粉々に砕け散った魔王ニ式に視線を向け、恐る恐る様子を調べる。前回の魔王は破損しても瞬時に再生したが、今回の魔王ニ式にも再生能力が備わっている可能性は高い。
『破壊……再生、開始』
「うわ、まだ生きてるのか!?」
砕けた破片が磁石に吸い寄せられるように一か所に集まり、徐々に元の形へと戻っていく。その光景を見てルノは完全に再生を果たす前に何とかしようとするが、氷塊の魔法で一か八か封じ込められないのかを試す。
「凍りつけ!!」
『温度、低下……氷結化……!?』
再生を果たす前に氷塊の魔法で集まった破片を氷の中に閉じ込めると、魔王ニ式は再生を果たせずに凍り付いてしまう。しかし、いずれ氷が解けてしまえば完全に再生してしまうため、その前に次の手段を打たねばならない。
クズノの話ではこの世界で最も硬い金属で構成され、更に砕けても再生機能を持つ金属生命体を完全に倒すにはどうすればいいか、その答えは簡単だった。動けないように封じ込め、この星の外へ排出すれば問題はないのだ。
「行くぞぉっ!!」
『ッ――!?』
――魔王ニ式を封じ込めた氷を抱えた状態でルノは飛翔術を発動させ、一気に加速して大気圏へ向けて上昇する。氷塊の魔法では射程範囲に限界があるため、人類が生命活動を維持できる高度まで上昇した後、氷塊の魔法を使用して大気圏まで突入する。
十分な距離まで上昇するとルノは氷塊の形を「ロケット」に変更させ、宇宙にまで届く勢いで射出する。氷によって閉じ込められた魔王ニ式は抵抗する術はなく、宇宙空間に到達した時点でルノの魔法の効果は解除されるが、魔王ニ式は慣性の法則に従って速度を落とさぬまま宇宙空間を漂う。
「……上手く行ったかな?」
大気圏に突入する寸前で引き返したルノは空を見上げ、無事に魔王ニ式を宇宙へ追放させた事を祈り、地上へ向けて帰還する。今回はルノ自身は宇宙まで同行していないので何事もなく巨人国の王都にまで引き返す事が出来たが、地上へ戻る頃には城内の中庭ではリディア達が待ち構えていた。
「あ、ちょっと戻って来たわよ!!ほら、こっちよ!!」
「……凄い音がしたけど、ルノは無事?」
「人間が空を飛んでおる!?いや、ここまで来るともうそれほど驚くべき事ではないな……」
「私は十分に驚いているよ!!何だいあの人間は!?」
「へえ、気持ちよさそうだね!!初級魔法を極めたらあたしもあんな風に飛ぶことが出来るのかい?」
中庭に降り立ったルノの元にコトネとリディアが真っ先に駆けつけ、どうにか救出に成功したのか巨人国の国王を抱えたコウとチウも現れ、最後にサムカが魔王ニ式が所持していた大太刀を抱えて近づく。サムカが所持している武器を見てルノは驚き、どうやら魔王ニ式が粉々に砕け散った時に落としたらしい。
「サムカさん、それ……」
「ああ、そこに落ちてたんだよ。中々の名刀みたいだからね、一応は回収しておいたんだよ」
「ちょっと、それ拾って大丈夫な物なの?」
「……帝国に持ち帰ってリーリスに調べてもラった方が良い。あの男が言っていた「ネオ・オリハルコン」という金属の正体が掴めるかもしれない」
「なら、その前にここへ訪れた用事を済ませようか」
ルノはサムカから大太刀を受け取り、危なっかしいので収納石を利用して異空間に収め、帝国に戻り次第にリーリスに分析を頼む事にした。そして改めてルノ達はコウとチウに抱えられている巨人国の国王の方へ振り返り、容体を伺う。
「国王さんは大丈夫なんですか?」
「国王さんってあんたね……この方を一体誰だと思って……」
「止めよチウ、彼等は我々の恩人じゃぞ。国王様は気を失っているだけだ、怪我の治療は既に済ませている。だが、しばらくの間は目を覚まさないだろうが……」
「それは困るね、あたしらがここへ来たのはあんた達がうちの国に侵攻を止めさせるためにここに来たんだよ」
「それも分かっている。だが、この状態の国王様を無理に起こす事は出来ん。国王様が目覚めるまで待ってくれんか?」
「どうするのよ?」
「う~ん……さっきのクズノの事が気になるから出来れば急いで帝国に戻りたいところだけど、国王さんを無理やり起こすわけにもいかないし……」
「そういう事ならあたしが代わりに残ってやるよ。別に話し合いをするだけならあたし一人でも十分だからね」
「いいんですか?」
姿を消したクズノの事が気掛かりなルノに対してサムカは自分の胸を叩き、この場は自分に任せてルノ達は先へ帝国へ戻るように促す。国の脅威であったクズノは姿を消し、彼の悪事が判明した以上は巨人国も帝国に対する侵攻を中止するのは間違いないため、ルノ達はこの場をサムカに任せて自分達は先へ帝国へ戻る事にした。
「じゃあ、サムカさんにお願いします。用事が終え次第、すぐに迎えに行きます」
「ああ、分かったよ。あんた達もそれで問題ないね?」
「う、うむ……面倒を掛けたな魔術師殿、この恩は決して忘れんぞ」
「いえ、困ったときはお互い様ですから……」
ルノは最後にコウと握手を交わし、帝国へ帰還するために氷塊の魔法を発動させ、氷飛行機を生み出す。巨人国の事はサムカに任せ、まずは帝国領地へ帰還してノーズ公爵の街に残したデブリを迎えに行くためにルノ達は氷飛行機に乗り込む。
「それではお達者で!!」
「……国王様もお大事に」
「おう!!こっちの事は任せときな!!」
サムカ達と別れの挨拶を告げた後、ルノ達を乗せた氷飛行機は浮上し、帝国地方へ向けて発進した――
※宇宙空間に飛ばされた魔王ニ式の様子
魔王ニ式「(ノД`)タスケテー」
ルノは粉々に砕け散った魔王ニ式に視線を向け、恐る恐る様子を調べる。前回の魔王は破損しても瞬時に再生したが、今回の魔王ニ式にも再生能力が備わっている可能性は高い。
『破壊……再生、開始』
「うわ、まだ生きてるのか!?」
砕けた破片が磁石に吸い寄せられるように一か所に集まり、徐々に元の形へと戻っていく。その光景を見てルノは完全に再生を果たす前に何とかしようとするが、氷塊の魔法で一か八か封じ込められないのかを試す。
「凍りつけ!!」
『温度、低下……氷結化……!?』
再生を果たす前に氷塊の魔法で集まった破片を氷の中に閉じ込めると、魔王ニ式は再生を果たせずに凍り付いてしまう。しかし、いずれ氷が解けてしまえば完全に再生してしまうため、その前に次の手段を打たねばならない。
クズノの話ではこの世界で最も硬い金属で構成され、更に砕けても再生機能を持つ金属生命体を完全に倒すにはどうすればいいか、その答えは簡単だった。動けないように封じ込め、この星の外へ排出すれば問題はないのだ。
「行くぞぉっ!!」
『ッ――!?』
――魔王ニ式を封じ込めた氷を抱えた状態でルノは飛翔術を発動させ、一気に加速して大気圏へ向けて上昇する。氷塊の魔法では射程範囲に限界があるため、人類が生命活動を維持できる高度まで上昇した後、氷塊の魔法を使用して大気圏まで突入する。
十分な距離まで上昇するとルノは氷塊の形を「ロケット」に変更させ、宇宙にまで届く勢いで射出する。氷によって閉じ込められた魔王ニ式は抵抗する術はなく、宇宙空間に到達した時点でルノの魔法の効果は解除されるが、魔王ニ式は慣性の法則に従って速度を落とさぬまま宇宙空間を漂う。
「……上手く行ったかな?」
大気圏に突入する寸前で引き返したルノは空を見上げ、無事に魔王ニ式を宇宙へ追放させた事を祈り、地上へ向けて帰還する。今回はルノ自身は宇宙まで同行していないので何事もなく巨人国の王都にまで引き返す事が出来たが、地上へ戻る頃には城内の中庭ではリディア達が待ち構えていた。
「あ、ちょっと戻って来たわよ!!ほら、こっちよ!!」
「……凄い音がしたけど、ルノは無事?」
「人間が空を飛んでおる!?いや、ここまで来るともうそれほど驚くべき事ではないな……」
「私は十分に驚いているよ!!何だいあの人間は!?」
「へえ、気持ちよさそうだね!!初級魔法を極めたらあたしもあんな風に飛ぶことが出来るのかい?」
中庭に降り立ったルノの元にコトネとリディアが真っ先に駆けつけ、どうにか救出に成功したのか巨人国の国王を抱えたコウとチウも現れ、最後にサムカが魔王ニ式が所持していた大太刀を抱えて近づく。サムカが所持している武器を見てルノは驚き、どうやら魔王ニ式が粉々に砕け散った時に落としたらしい。
「サムカさん、それ……」
「ああ、そこに落ちてたんだよ。中々の名刀みたいだからね、一応は回収しておいたんだよ」
「ちょっと、それ拾って大丈夫な物なの?」
「……帝国に持ち帰ってリーリスに調べてもラった方が良い。あの男が言っていた「ネオ・オリハルコン」という金属の正体が掴めるかもしれない」
「なら、その前にここへ訪れた用事を済ませようか」
ルノはサムカから大太刀を受け取り、危なっかしいので収納石を利用して異空間に収め、帝国に戻り次第にリーリスに分析を頼む事にした。そして改めてルノ達はコウとチウに抱えられている巨人国の国王の方へ振り返り、容体を伺う。
「国王さんは大丈夫なんですか?」
「国王さんってあんたね……この方を一体誰だと思って……」
「止めよチウ、彼等は我々の恩人じゃぞ。国王様は気を失っているだけだ、怪我の治療は既に済ませている。だが、しばらくの間は目を覚まさないだろうが……」
「それは困るね、あたしらがここへ来たのはあんた達がうちの国に侵攻を止めさせるためにここに来たんだよ」
「それも分かっている。だが、この状態の国王様を無理に起こす事は出来ん。国王様が目覚めるまで待ってくれんか?」
「どうするのよ?」
「う~ん……さっきのクズノの事が気になるから出来れば急いで帝国に戻りたいところだけど、国王さんを無理やり起こすわけにもいかないし……」
「そういう事ならあたしが代わりに残ってやるよ。別に話し合いをするだけならあたし一人でも十分だからね」
「いいんですか?」
姿を消したクズノの事が気掛かりなルノに対してサムカは自分の胸を叩き、この場は自分に任せてルノ達は先へ帝国へ戻るように促す。国の脅威であったクズノは姿を消し、彼の悪事が判明した以上は巨人国も帝国に対する侵攻を中止するのは間違いないため、ルノ達はこの場をサムカに任せて自分達は先へ帝国へ戻る事にした。
「じゃあ、サムカさんにお願いします。用事が終え次第、すぐに迎えに行きます」
「ああ、分かったよ。あんた達もそれで問題ないね?」
「う、うむ……面倒を掛けたな魔術師殿、この恩は決して忘れんぞ」
「いえ、困ったときはお互い様ですから……」
ルノは最後にコウと握手を交わし、帝国へ帰還するために氷塊の魔法を発動させ、氷飛行機を生み出す。巨人国の事はサムカに任せ、まずは帝国領地へ帰還してノーズ公爵の街に残したデブリを迎えに行くためにルノ達は氷飛行機に乗り込む。
「それではお達者で!!」
「……国王様もお大事に」
「おう!!こっちの事は任せときな!!」
サムカ達と別れの挨拶を告げた後、ルノ達を乗せた氷飛行機は浮上し、帝国地方へ向けて発進した――
※宇宙空間に飛ばされた魔王ニ式の様子
魔王ニ式「(ノД`)タスケテー」
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