534 / 657
巨人国 侵攻編
玉座の間では……
しおりを挟む
「玉座の間はこっちの方角で合ってるんですか?」
「うむ、問題ない!!見えて来たぞ!!」
「あのデカい扉かい!?」
氷戦車に乗り込んだルノ達は正面に存在する巨大な扉を発見し、そのまま戦車を加速させて突っ込む。見張りに立っていた兵士達は接近する氷戦車を見て驚愕の表情を浮かべ、慌てて左右に飛ぶ。
「う、うわぁあああっ!?」
「何だっ!?」
「失礼します!!」
扉に向けて氷戦車が衝突すると内側に施された鍵を破壊して広間へと突入し、その際の衝撃で氷戦車に乗り込んでいた者達は地面に落ちてしまう。
「あぐっ!?」
「ぬおっ!?」
「……着地っ」
「あいでぇっ!?」
コトネだけは華麗に着地を行うが、その他の人間は床に転倒して身体を痛めてしまう。その間にもルノは氷戦車を停止させ、鍵を破壊した扉の前に移動させて出入口を塞ぐ。こうすれば外側から洗脳された兵士達が入り込む事は出来ない。
「皆、大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃないわよ……あいてて、お尻がぁっ」
「ぐうっ……こ、腰がやられたかもしれん」
「いてて、こっちは義足が駄目になったよ。新調したばかりだってのに……」
「全く、だらしない奴等だね。ほら、さっさと立な」
「……そういうサムカも頭に大きなたん瘤が出来てる」
ルノとコトネ以外の全員が衝突の際に軽く負傷してしまうが、それでも重症を負った人間はおらず、コウとチウは他の者の手を借りてどうにか立ち上がると広間内に拍手が響き渡る。
「いやはや、中々に面白い見世物でしたよ」
「クズノ……!!貴様、やはりここに居たか!!」
――拍手を行ったのは何食わぬ顔で玉座に座り込むクズノであり、その姿を目撃したコウは激怒しながらも国王の姿を探す。だが、玉座の間にはクズノ以外の巨人は存在せず、彼一人だけが玉座に黙って座り込んでいた。
巨人族用の玉座に人間が座り込むと子供が大人用の椅子に乗っているようにしか見えないので滑稽な光景だが、当のクズノ本人は特に気にした様子も見せずに頬杖をつきながらルノに視線を向ける。こうして相対するのはお互いに初めてではあるが、どちらも他の人間から相手の情報を聞き出している。
「お前が魔王軍の最高幹部……クズノか」
「初めまして……というべきですかね?こうしてちゃんと顔を合わせるのは初めてかもしれませんが、私の方は貴方が最初の実験体を空の果てまで吹き飛ばしたときに実はあの場に居たんですよ」
「実験体……?」
クズノの言葉にルノは不思議に思い、彼の告げた「空の果て」が何を示しているのかと考えると、すぐに白原で自分が宇宙の果てに吹き飛ばした「魔王」の存在を思い出す。
(まさか、あの時に居たのか?いや、そういえばあの時は白霧が漂っていた……それにカイという人がクズノが現れたと言っていたけど、この男は洗脳以外にも能力を隠しているのか?)
魔王軍の幹部だった「カイ」は魔王に殺害される前にクズノが「霧を操る」と説明した事を思い出し、実際に魔王との戦闘の前に白原の方では白霧が漂っていた。もしも霧の中に紛れてクズノがルノの存在を確認していたというのならば話は繋がる。
だが、それならばどうしてクズノが魔王の存在を「実験体」と呼ぶのか理解出来ず、魔王との戦闘時にルノは魔王本人から「今世の魔王」「魔王軍の黒幕ではない」という言葉を聞き出していた。
(あの時、魔王は自分が黒幕かと問われた時に「それはどうかな」と答えていた……どういう意味だ?魔王軍は魔王が設立したわけじゃないのか?そういえばリディアも魔王軍を統率していたのはクズノだと言っていたけど……)
これまでに相対した人物の言葉を思い返し、ルノは一つの答えを導き出そうとしていた。だが、ルノが明確な答えに辿り着く前にクズノは立ち上がり、拍手を辞めて全員を見下ろす。
「改めまして自己紹介しましょうか?私は魔王軍の最高幹部にして巨人族の軍師を務めるクズノと申します。どうかお見知りおきを……」
「ふざけるな!!貴様、国王様を何処へ隠した!?」
飄々と自分が魔王軍である事を語るクズノに対してコウは怒鳴りつけると、クズノはわざとらしい笑顔を浮かべて天井を指差す。
「まだお気づきになりませんか?国王様はこの場に居ますよ……上を見なさい」
「上?」
「あ、あれは!?」
全員が天井を見上げると、そこには身体中を鎖で縛りつけられた状態で天井に突き刺さった十字架に括りつけられた状態の老人の巨人が存在し、まだ生きてはいるのか時折身体を震わせるが、意識は失っている様子だった。
「こ、国王様!!おのれ、クズノぉおおおっ!!」
「おっと、動かない方が良いですよ。私はこの距離からでも国王様の命を奪えますよ?」
変わり果てた国王の姿を目撃してコウは怒りに任せてクズノに近寄ろうとしたが、そんな彼に対してクズノは懐からある物を取り出す。
「うむ、問題ない!!見えて来たぞ!!」
「あのデカい扉かい!?」
氷戦車に乗り込んだルノ達は正面に存在する巨大な扉を発見し、そのまま戦車を加速させて突っ込む。見張りに立っていた兵士達は接近する氷戦車を見て驚愕の表情を浮かべ、慌てて左右に飛ぶ。
「う、うわぁあああっ!?」
「何だっ!?」
「失礼します!!」
扉に向けて氷戦車が衝突すると内側に施された鍵を破壊して広間へと突入し、その際の衝撃で氷戦車に乗り込んでいた者達は地面に落ちてしまう。
「あぐっ!?」
「ぬおっ!?」
「……着地っ」
「あいでぇっ!?」
コトネだけは華麗に着地を行うが、その他の人間は床に転倒して身体を痛めてしまう。その間にもルノは氷戦車を停止させ、鍵を破壊した扉の前に移動させて出入口を塞ぐ。こうすれば外側から洗脳された兵士達が入り込む事は出来ない。
「皆、大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃないわよ……あいてて、お尻がぁっ」
「ぐうっ……こ、腰がやられたかもしれん」
「いてて、こっちは義足が駄目になったよ。新調したばかりだってのに……」
「全く、だらしない奴等だね。ほら、さっさと立な」
「……そういうサムカも頭に大きなたん瘤が出来てる」
ルノとコトネ以外の全員が衝突の際に軽く負傷してしまうが、それでも重症を負った人間はおらず、コウとチウは他の者の手を借りてどうにか立ち上がると広間内に拍手が響き渡る。
「いやはや、中々に面白い見世物でしたよ」
「クズノ……!!貴様、やはりここに居たか!!」
――拍手を行ったのは何食わぬ顔で玉座に座り込むクズノであり、その姿を目撃したコウは激怒しながらも国王の姿を探す。だが、玉座の間にはクズノ以外の巨人は存在せず、彼一人だけが玉座に黙って座り込んでいた。
巨人族用の玉座に人間が座り込むと子供が大人用の椅子に乗っているようにしか見えないので滑稽な光景だが、当のクズノ本人は特に気にした様子も見せずに頬杖をつきながらルノに視線を向ける。こうして相対するのはお互いに初めてではあるが、どちらも他の人間から相手の情報を聞き出している。
「お前が魔王軍の最高幹部……クズノか」
「初めまして……というべきですかね?こうしてちゃんと顔を合わせるのは初めてかもしれませんが、私の方は貴方が最初の実験体を空の果てまで吹き飛ばしたときに実はあの場に居たんですよ」
「実験体……?」
クズノの言葉にルノは不思議に思い、彼の告げた「空の果て」が何を示しているのかと考えると、すぐに白原で自分が宇宙の果てに吹き飛ばした「魔王」の存在を思い出す。
(まさか、あの時に居たのか?いや、そういえばあの時は白霧が漂っていた……それにカイという人がクズノが現れたと言っていたけど、この男は洗脳以外にも能力を隠しているのか?)
魔王軍の幹部だった「カイ」は魔王に殺害される前にクズノが「霧を操る」と説明した事を思い出し、実際に魔王との戦闘の前に白原の方では白霧が漂っていた。もしも霧の中に紛れてクズノがルノの存在を確認していたというのならば話は繋がる。
だが、それならばどうしてクズノが魔王の存在を「実験体」と呼ぶのか理解出来ず、魔王との戦闘時にルノは魔王本人から「今世の魔王」「魔王軍の黒幕ではない」という言葉を聞き出していた。
(あの時、魔王は自分が黒幕かと問われた時に「それはどうかな」と答えていた……どういう意味だ?魔王軍は魔王が設立したわけじゃないのか?そういえばリディアも魔王軍を統率していたのはクズノだと言っていたけど……)
これまでに相対した人物の言葉を思い返し、ルノは一つの答えを導き出そうとしていた。だが、ルノが明確な答えに辿り着く前にクズノは立ち上がり、拍手を辞めて全員を見下ろす。
「改めまして自己紹介しましょうか?私は魔王軍の最高幹部にして巨人族の軍師を務めるクズノと申します。どうかお見知りおきを……」
「ふざけるな!!貴様、国王様を何処へ隠した!?」
飄々と自分が魔王軍である事を語るクズノに対してコウは怒鳴りつけると、クズノはわざとらしい笑顔を浮かべて天井を指差す。
「まだお気づきになりませんか?国王様はこの場に居ますよ……上を見なさい」
「上?」
「あ、あれは!?」
全員が天井を見上げると、そこには身体中を鎖で縛りつけられた状態で天井に突き刺さった十字架に括りつけられた状態の老人の巨人が存在し、まだ生きてはいるのか時折身体を震わせるが、意識は失っている様子だった。
「こ、国王様!!おのれ、クズノぉおおおっ!!」
「おっと、動かない方が良いですよ。私はこの距離からでも国王様の命を奪えますよ?」
変わり果てた国王の姿を目撃してコウは怒りに任せてクズノに近寄ろうとしたが、そんな彼に対してクズノは懐からある物を取り出す。
1
お気に入りに追加
11,319
あなたにおすすめの小説
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
レンタル従魔始めました!
よっしぃ
ファンタジー
「従魔のレンタルはじめました!」
僕の名前はロキュス・エルメリンス。10歳の時に教会で祝福を受け、【テイム】と言うスキルを得ました。
そのまま【テイマー】と言うジョブに。
最初の内はテイムできる魔物・魔獣は1体のみ。
それも比較的無害と言われる小さなスライム(大きなスライムは凶悪過ぎてSランク指定)ぐらいしかテイムできず、レベルの低いうちは、役立たずランキングで常に一桁の常連のジョブです。
そんな僕がどうやって従魔のレンタルを始めたか、ですか?
そのうち分かりますよ、そのうち・・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。