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巨人国 侵攻編

玉座の間では……

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「玉座の間はこっちの方角で合ってるんですか?」
「うむ、問題ない!!見えて来たぞ!!」
「あのデカい扉かい!?」


氷戦車に乗り込んだルノ達は正面に存在する巨大な扉を発見し、そのまま戦車を加速させて突っ込む。見張りに立っていた兵士達は接近する氷戦車を見て驚愕の表情を浮かべ、慌てて左右に飛ぶ。


「う、うわぁあああっ!?」
「何だっ!?」
「失礼します!!」


扉に向けて氷戦車が衝突すると内側に施された鍵を破壊して広間へと突入し、その際の衝撃で氷戦車に乗り込んでいた者達は地面に落ちてしまう。


「あぐっ!?」
「ぬおっ!?」
「……着地っ」
「あいでぇっ!?」


コトネだけは華麗に着地を行うが、その他の人間は床に転倒して身体を痛めてしまう。その間にもルノは氷戦車を停止させ、鍵を破壊した扉の前に移動させて出入口を塞ぐ。こうすれば外側から洗脳された兵士達が入り込む事は出来ない。


「皆、大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃないわよ……あいてて、お尻がぁっ」
「ぐうっ……こ、腰がやられたかもしれん」
「いてて、こっちは義足が駄目になったよ。新調したばかりだってのに……」
「全く、だらしない奴等だね。ほら、さっさと立な」
「……そういうサムカも頭に大きなたん瘤が出来てる」


ルノとコトネ以外の全員が衝突の際に軽く負傷してしまうが、それでも重症を負った人間はおらず、コウとチウは他の者の手を借りてどうにか立ち上がると広間内に拍手が響き渡る。


「いやはや、中々に面白い見世物でしたよ」
「クズノ……!!貴様、やはりここに居たか!!」



――拍手を行ったのは何食わぬ顔で玉座に座り込むクズノであり、その姿を目撃したコウは激怒しながらも国王の姿を探す。だが、玉座の間にはクズノ以外の巨人は存在せず、彼一人だけが玉座に黙って座り込んでいた。



巨人族用の玉座に人間が座り込むと子供が大人用の椅子に乗っているようにしか見えないので滑稽な光景だが、当のクズノ本人は特に気にした様子も見せずに頬杖をつきながらルノに視線を向ける。こうして相対するのはお互いに初めてではあるが、どちらも他の人間から相手の情報を聞き出している。


「お前が魔王軍の最高幹部……クズノか」
「初めまして……というべきですかね?こうしてちゃんと顔を合わせるのは初めてかもしれませんが、私の方は貴方が最初の実験体を空の果てまで吹き飛ばしたときに実はあの場に居たんですよ」
「実験体……?」


クズノの言葉にルノは不思議に思い、彼の告げた「空の果て」が何を示しているのかと考えると、すぐに白原で自分が宇宙の果てに吹き飛ばした「魔王」の存在を思い出す。


(まさか、あの時に居たのか?いや、そういえばあの時は白霧が漂っていた……それにカイという人がクズノが現れたと言っていたけど、この男は洗脳以外にも能力を隠しているのか?)


魔王軍の幹部だった「カイ」は魔王に殺害される前にクズノが「霧を操る」と説明した事を思い出し、実際に魔王との戦闘の前に白原の方では白霧が漂っていた。もしも霧の中に紛れてクズノがルノの存在を確認していたというのならば話は繋がる。

だが、それならばどうしてクズノが魔王の存在を「実験体」と呼ぶのか理解出来ず、魔王との戦闘時にルノは魔王本人から「今世の魔王」「魔王軍の黒幕ではない」という言葉を聞き出していた。


(あの時、魔王は自分が黒幕かと問われた時に「それはどうかな」と答えていた……どういう意味だ?魔王軍は魔王が設立したわけじゃないのか?そういえばリディアも魔王軍を統率していたのはクズノだと言っていたけど……)


これまでに相対した人物の言葉を思い返し、ルノは一つの答えを導き出そうとしていた。だが、ルノが明確な答えに辿り着く前にクズノは立ち上がり、拍手を辞めて全員を見下ろす。


「改めまして自己紹介しましょうか?私は魔王軍の最高幹部にして巨人族の軍師を務めるクズノと申します。どうかお見知りおきを……」
「ふざけるな!!貴様、国王様を何処へ隠した!?」


飄々と自分が魔王軍である事を語るクズノに対してコウは怒鳴りつけると、クズノはわざとらしい笑顔を浮かべて天井を指差す。


「まだお気づきになりませんか?国王様はこの場に居ますよ……上を見なさい」
「上?」
「あ、あれは!?」


全員が天井を見上げると、そこには身体中を鎖で縛りつけられた状態で天井に突き刺さった十字架に括りつけられた状態の老人の巨人が存在し、まだ生きてはいるのか時折身体を震わせるが、意識は失っている様子だった。


「こ、国王様!!おのれ、クズノぉおおおっ!!」
「おっと、動かない方が良いですよ。私はこの距離からでも国王様の命を奪えますよ?」


変わり果てた国王の姿を目撃してコウは怒りに任せてクズノに近寄ろうとしたが、そんな彼に対してクズノは懐からある物を取り出す。
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