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巨人国 侵攻編
氷戦車
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『ここから先は、通しません!!』
「ちいっ!?まだ居るのかい!!」
「殺してはならん!!彼等は操られているだけだ!!」
次々と通路から姿を現す兵士達にサムカは面倒そうに蹴り飛ばし、他の面子も兵士達を気絶させて先に進む。だが、途中でリディアだけはルノに注意する。
「ちょっと待って……こいつら、まるで私達がここへ来ることを予測して洗脳した兵士を配置しているようにしか思えないわ」
「じゃあ、俺達は罠に嵌められたの?」
「……違う、罠だとしても私達がこんなに早く訪れるなんて予想出来るはずがない。つまり、この兵士達は玉座の間に誰も近づけないように事前に配置されていただけ」
「という事は……いかん!!国王様が危ない!!」
次々と押し寄せる兵士達を蹴散らしながらルノ達は玉座の間に向かうが、普通の人間よりも体格と怪力を誇る巨人族の兵士は気絶させるだけでも手間取り、少しでも意識が残っているとルノ達を阻もうと行動してくる。そのため、彼等は気絶させるか動けない程度に痛めつけるしかないのだが、後方から新手の兵士が出現した。
「ここから先は……」
「通さない!!」
「なっ!?後ろからも……」
うわごとのように同じ言葉を繰り返しながら兵士が押し寄せ、通路の中で挟み撃ちになったルノ達は完全に囲まれてしまう。邪魔者を排除するように洗脳されているらしく、しかもヨツバ王国の森人族の場合は魔法に対する耐性を所持していたのでクズノの洗脳の効果は薄かったが、魔法に関しては六種族の中で最も不得手とする巨人族には効果は高いのか誰一人としてまともに話を聞かない。
「お前達!!このコウの言う事を聞けんのか!!」
「……ここから先は……」
「駄目だね……反応すらしないよ」
四柱将のコウの言葉でも兵士達は虚ろな瞳で武器を構えて接近し、流石に疲労が現れ始めたサムカとコウは背中を合わせて周囲の兵士を睨みつける。チウも片足を引きずりながらも壁際を背にして武器を構え、リディアはコトネの背中に隠れながらルノに怒鳴りつける。
「ちょ、ちょっとあんた!!こういう時こそあんたの魔法で蹴散らしなさいよ!!こんな奴等、跡形もなく吹き飛ばせるんでしょ!?」
「そりゃ出来なくはないけど、いくらなんでも可哀想だよ……この人達は何も悪くないのに」
「だからといってこのままだとあたし達の方がヤバイね……流石に足も疲れて来たよ!!」
「ぐえっ!?」
正面から迫る兵士の股間を蹴りつけるサムカを見てルノは考え込み、自分一人だけならば強行突破も出来るのだが、全員を連れて移動するとなると方法は限られてしまう。
風圧の魔法で吹き飛ばすか、氷塊の魔法で蹴散らすか、それとも電撃の魔法で全員を痺れさせるべきか考えていると、不意にコトネが肩を掴む。
「ルノ、こうなったらあれで無理やり突破するしかない」
「え、あれって?」
「……スラミンと最初に会った時の事を思い出して」
「スラミン……あ、そういう事か!!」
「何かいい方法を思いついたのかい!?」
コトネの言葉にルノは納得した表情を浮かべ、早速魔法を発動させるために両手を構えた。だが、そんな彼を邪魔するかのように兵士達が一気に押し寄せてきた。
「ここから先はぁあああっ!!」
「通さないぃいいいっ!!」
「ひいいっ!?アンデッドみたいに近づいてくるわよ!?」
「ちょっと待ってて……よし、出来た!!」
迫りくる兵士の姿にリディアは悲鳴をあげる中、ルノは意識を集中させて氷塊の魔法を発動させ、通路に乗物を作り出す。今回の形状は氷車ではなく、装甲車を想像させる形状の氷塊を生み出して全員を呼び寄せる。
「皆さん、これの上に乗ってください!!一気に行きますから!!」
「ちょ、何だいこれ!?」
「氷像!?こんな物で一体何を……」
「二人とも、今は驚いている場合ではない!!ルノ殿の言葉に従うのじゃ!!」
装甲車の上に移動したルノの言葉を聞いて全員が慌てて上り詰めると、兵士達が即座に装甲車を取り囲む。だが、全員が装甲車に乗り込んだ時点でルノは「氷戦車」と名付けるべき氷像を操作して発進させた。
「必殺!!ひき逃げぇええっ!!」
「……惨すぎる」
『ぐああああっ!?』
氷戦車が発進した瞬間に巨人族の兵士達は圧倒的な力によってなすすべもなく吹き飛ばされ、何人かはキャタピラの部分に押しつぶされそうになるがルノが操作して氷戦車を僅かに浮上させる事で最悪の事態を避けた。氷戦車は次々と邪魔者を蹴散らし、通路を進む。
「こ、これは凄まじい……何という馬力じゃ!?」
「あっはっはっ!!こいつはいいね、気に入ったよ!!」
「笑ってる場合かい!!こっちは兵士達がとんでもない目に遭ってんだよ!?」
「すいません、後で回復薬を置いていきますから……あ、玉座の間はこの方向で合ってますか?」
「何であんたはそんなに冷静なのよ……きゃあっ!?」
「危ないっ」
氷戦車が滑り落ちそうになったリディアをコトネが掴み上げ、天井付近にまで上昇した氷戦車は兵士達の妨害を突破して玉座の間に向けて一直線に直進する。
「ちいっ!?まだ居るのかい!!」
「殺してはならん!!彼等は操られているだけだ!!」
次々と通路から姿を現す兵士達にサムカは面倒そうに蹴り飛ばし、他の面子も兵士達を気絶させて先に進む。だが、途中でリディアだけはルノに注意する。
「ちょっと待って……こいつら、まるで私達がここへ来ることを予測して洗脳した兵士を配置しているようにしか思えないわ」
「じゃあ、俺達は罠に嵌められたの?」
「……違う、罠だとしても私達がこんなに早く訪れるなんて予想出来るはずがない。つまり、この兵士達は玉座の間に誰も近づけないように事前に配置されていただけ」
「という事は……いかん!!国王様が危ない!!」
次々と押し寄せる兵士達を蹴散らしながらルノ達は玉座の間に向かうが、普通の人間よりも体格と怪力を誇る巨人族の兵士は気絶させるだけでも手間取り、少しでも意識が残っているとルノ達を阻もうと行動してくる。そのため、彼等は気絶させるか動けない程度に痛めつけるしかないのだが、後方から新手の兵士が出現した。
「ここから先は……」
「通さない!!」
「なっ!?後ろからも……」
うわごとのように同じ言葉を繰り返しながら兵士が押し寄せ、通路の中で挟み撃ちになったルノ達は完全に囲まれてしまう。邪魔者を排除するように洗脳されているらしく、しかもヨツバ王国の森人族の場合は魔法に対する耐性を所持していたのでクズノの洗脳の効果は薄かったが、魔法に関しては六種族の中で最も不得手とする巨人族には効果は高いのか誰一人としてまともに話を聞かない。
「お前達!!このコウの言う事を聞けんのか!!」
「……ここから先は……」
「駄目だね……反応すらしないよ」
四柱将のコウの言葉でも兵士達は虚ろな瞳で武器を構えて接近し、流石に疲労が現れ始めたサムカとコウは背中を合わせて周囲の兵士を睨みつける。チウも片足を引きずりながらも壁際を背にして武器を構え、リディアはコトネの背中に隠れながらルノに怒鳴りつける。
「ちょ、ちょっとあんた!!こういう時こそあんたの魔法で蹴散らしなさいよ!!こんな奴等、跡形もなく吹き飛ばせるんでしょ!?」
「そりゃ出来なくはないけど、いくらなんでも可哀想だよ……この人達は何も悪くないのに」
「だからといってこのままだとあたし達の方がヤバイね……流石に足も疲れて来たよ!!」
「ぐえっ!?」
正面から迫る兵士の股間を蹴りつけるサムカを見てルノは考え込み、自分一人だけならば強行突破も出来るのだが、全員を連れて移動するとなると方法は限られてしまう。
風圧の魔法で吹き飛ばすか、氷塊の魔法で蹴散らすか、それとも電撃の魔法で全員を痺れさせるべきか考えていると、不意にコトネが肩を掴む。
「ルノ、こうなったらあれで無理やり突破するしかない」
「え、あれって?」
「……スラミンと最初に会った時の事を思い出して」
「スラミン……あ、そういう事か!!」
「何かいい方法を思いついたのかい!?」
コトネの言葉にルノは納得した表情を浮かべ、早速魔法を発動させるために両手を構えた。だが、そんな彼を邪魔するかのように兵士達が一気に押し寄せてきた。
「ここから先はぁあああっ!!」
「通さないぃいいいっ!!」
「ひいいっ!?アンデッドみたいに近づいてくるわよ!?」
「ちょっと待ってて……よし、出来た!!」
迫りくる兵士の姿にリディアは悲鳴をあげる中、ルノは意識を集中させて氷塊の魔法を発動させ、通路に乗物を作り出す。今回の形状は氷車ではなく、装甲車を想像させる形状の氷塊を生み出して全員を呼び寄せる。
「皆さん、これの上に乗ってください!!一気に行きますから!!」
「ちょ、何だいこれ!?」
「氷像!?こんな物で一体何を……」
「二人とも、今は驚いている場合ではない!!ルノ殿の言葉に従うのじゃ!!」
装甲車の上に移動したルノの言葉を聞いて全員が慌てて上り詰めると、兵士達が即座に装甲車を取り囲む。だが、全員が装甲車に乗り込んだ時点でルノは「氷戦車」と名付けるべき氷像を操作して発進させた。
「必殺!!ひき逃げぇええっ!!」
「……惨すぎる」
『ぐああああっ!?』
氷戦車が発進した瞬間に巨人族の兵士達は圧倒的な力によってなすすべもなく吹き飛ばされ、何人かはキャタピラの部分に押しつぶされそうになるがルノが操作して氷戦車を僅かに浮上させる事で最悪の事態を避けた。氷戦車は次々と邪魔者を蹴散らし、通路を進む。
「こ、これは凄まじい……何という馬力じゃ!?」
「あっはっはっ!!こいつはいいね、気に入ったよ!!」
「笑ってる場合かい!!こっちは兵士達がとんでもない目に遭ってんだよ!?」
「すいません、後で回復薬を置いていきますから……あ、玉座の間はこの方向で合ってますか?」
「何であんたはそんなに冷静なのよ……きゃあっ!?」
「危ないっ」
氷戦車が滑り落ちそうになったリディアをコトネが掴み上げ、天井付近にまで上昇した氷戦車は兵士達の妨害を突破して玉座の間に向けて一直線に直進する。
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