531 / 657
巨人国 侵攻編
巨人王
しおりを挟む
――巨人国の王都は大型の魔物さえも寄せ付けないほどの分厚い巨大な壁に覆われ、数万人の民衆によって栄えていた。王都の中心地に存在する王城は恐らくは世界樹の内部で暮らしているエルフ王国を除けば世界最大規模を誇る巨大な城だった。
領地内には小髭族も数多く、彼等のお陰で巨人国の建設技術は非常に高く、帝国の王城の3倍の規模は誇る城内には一千を超える近衛兵が訓練を行っていた。彼等は巨人国の中でも精鋭の類で近衛兵を率いる隊長の中には元四柱将を務めた者も居る。兵士達は武術の訓練に励み、何時如何なる時も外敵から国王や国民を守るために精進する。
「腹筋100回!!腕立て伏せ100回!!これを交互に行いながら合計で1000回超えるまでやり通せ!!」
『はっ!!』
「終了次第、休憩を挟んでから今度は王城の外周20週すれば昼食を許可する!!もしも時間内に終わらせなければ昼食は抜きだ!!」
木刀を握り締めた指導官の指示に新兵の兵士達が従い、兵士達は急いで時間内に終わらせるために訓練に励む。普通の人間よりも食事量を必要とする巨人族にとって昼食だけでも抜かれる事は厳しく、必死になって腹筋と腕立て伏せを行う。
指導官を務めるのは片足が義足で右目に眼帯をした女性であった。彼女はコウの妻であり、元四柱将の一角ではあったが引退してギルスにその座を譲る。名前は「チウ」で四柱将を務めていた時は夫よりも目立ち、四柱将の筆頭を務めていたほどの実力者だった。
「ほらほら、もっと腕を下げな!!そこ、途中で休むんじゃないよ!!身体を動かし続けない方が逆にきつくなるからね!!」
「は、はい!!」
「申し訳ありません!!」
「よし、許す!!さあ、頑張りな!!」
木刀を握り締めながら新兵達の指導を行い、チウは訓練中の兵士達に注意を行う。だが、途中から腹筋を行っていた兵士達が身体を止め、空に視線を向けた状態で固まる。その様子を確認したチウはすぐに注意を行う。
「ほら、勝手に休むんじゃないよ!!まだ半分も終わっていないんだよ!!」
「ち、チウ指導官……あ、あれを見て下さい!!」
「何だってんだい……うおっ!?なんじゃありゃあっ!?」
腹筋をしていた兵士達が上空を指差したのでチウは視線を向けると、そこには空から王城に接近する物体が存在し、城内の中庭で訓練に励んでいたチウ達の元へ降下する。慌てて兵士達は着地点から離れると、物体の正体が氷の乗物である事に気付く。
「ここで降りていいんですか?」
「うむ、問題ない……それにしてもこんな短時間で辿り着くとは、魔法というのは凄まじいのう」
「言っておくけど、こいつがおかしいだけで普通の魔術師はこんな真似は出来ないわよ」
「あっはっはっ!!こっちの乗物の方が爽快感があって面白いね!!」
「……着地」
氷車に乗り込んだルノ達が中庭に降りると、慌てて兵士達を掻き分けてチウが5人の元へ向かい、突如として帰還してきた自分の夫の姿を見て驚愕する。
「こ、コウ!?どうしてあんたがここに……というか、誰だいこいつらは!?」
「おお、我が妻よ……やはりお前もここに居たか」
「え?コウさんの奥さん?どうも初めまして、帝国からやってきたルノと言います」
「あ、こりゃどうも……じゃなくて、一体何事なんだいこれは!?」
律儀にお辞儀を行うルノに対して危うく頭を下げそうになったチウだが、慌てて顔を上げて夫に詰め寄る。彼が空の上から現れた事も驚きだが、明らかに部外者を連れ出して無断で城内に入って来た事の方が問題だった。
「おい、あんたは本当にうちの夫かい!?それならあたしがあんたにプロポーズした時の言葉を教えな!!」
「ぬう……確か、俺のために毎日ブタンの丸焼き肉を作ってくれ、だったかのう?」
「いや、どんなプロポーズよ……」
チウとコウのやり取りにリディアは呆れた表情を浮かべるが、その間にルノは氷車の解除を行い、改めて城の様子を伺う。巨人族が住む事を想定して作り出された城のため、建物の構造も巨人族に適した間取りとなっており、扉の大きさも普通ではない。ルノの場合だと精いっぱい背伸びをしてもドアノブにまで手が届かず、まるで自分が子供に戻ったような感覚に陥る。
「へえ、ここが巨人族のお城かぁっ……思っていたよりもずっと凄いな」
「……むう、帝国の王城の方が綺麗」
「はあっ……凄いね、まさか生きている間に他の国の王城に入り込む機会に巡り合うなんて思わなったよ」
「なんであんた達は観光気分なのよ。もうちょっと緊張感持ちなさいよ……ここは敵の城の中なのよ?」
ルノと同様に城内の様子を物珍しそうに見ているコトネとサムカに対してもリディアは呆れ、この城の何処かにクズノが潜伏しているかもしれないと考えると彼女だけは緊張感を抱かざるを得ない。
領地内には小髭族も数多く、彼等のお陰で巨人国の建設技術は非常に高く、帝国の王城の3倍の規模は誇る城内には一千を超える近衛兵が訓練を行っていた。彼等は巨人国の中でも精鋭の類で近衛兵を率いる隊長の中には元四柱将を務めた者も居る。兵士達は武術の訓練に励み、何時如何なる時も外敵から国王や国民を守るために精進する。
「腹筋100回!!腕立て伏せ100回!!これを交互に行いながら合計で1000回超えるまでやり通せ!!」
『はっ!!』
「終了次第、休憩を挟んでから今度は王城の外周20週すれば昼食を許可する!!もしも時間内に終わらせなければ昼食は抜きだ!!」
木刀を握り締めた指導官の指示に新兵の兵士達が従い、兵士達は急いで時間内に終わらせるために訓練に励む。普通の人間よりも食事量を必要とする巨人族にとって昼食だけでも抜かれる事は厳しく、必死になって腹筋と腕立て伏せを行う。
指導官を務めるのは片足が義足で右目に眼帯をした女性であった。彼女はコウの妻であり、元四柱将の一角ではあったが引退してギルスにその座を譲る。名前は「チウ」で四柱将を務めていた時は夫よりも目立ち、四柱将の筆頭を務めていたほどの実力者だった。
「ほらほら、もっと腕を下げな!!そこ、途中で休むんじゃないよ!!身体を動かし続けない方が逆にきつくなるからね!!」
「は、はい!!」
「申し訳ありません!!」
「よし、許す!!さあ、頑張りな!!」
木刀を握り締めながら新兵達の指導を行い、チウは訓練中の兵士達に注意を行う。だが、途中から腹筋を行っていた兵士達が身体を止め、空に視線を向けた状態で固まる。その様子を確認したチウはすぐに注意を行う。
「ほら、勝手に休むんじゃないよ!!まだ半分も終わっていないんだよ!!」
「ち、チウ指導官……あ、あれを見て下さい!!」
「何だってんだい……うおっ!?なんじゃありゃあっ!?」
腹筋をしていた兵士達が上空を指差したのでチウは視線を向けると、そこには空から王城に接近する物体が存在し、城内の中庭で訓練に励んでいたチウ達の元へ降下する。慌てて兵士達は着地点から離れると、物体の正体が氷の乗物である事に気付く。
「ここで降りていいんですか?」
「うむ、問題ない……それにしてもこんな短時間で辿り着くとは、魔法というのは凄まじいのう」
「言っておくけど、こいつがおかしいだけで普通の魔術師はこんな真似は出来ないわよ」
「あっはっはっ!!こっちの乗物の方が爽快感があって面白いね!!」
「……着地」
氷車に乗り込んだルノ達が中庭に降りると、慌てて兵士達を掻き分けてチウが5人の元へ向かい、突如として帰還してきた自分の夫の姿を見て驚愕する。
「こ、コウ!?どうしてあんたがここに……というか、誰だいこいつらは!?」
「おお、我が妻よ……やはりお前もここに居たか」
「え?コウさんの奥さん?どうも初めまして、帝国からやってきたルノと言います」
「あ、こりゃどうも……じゃなくて、一体何事なんだいこれは!?」
律儀にお辞儀を行うルノに対して危うく頭を下げそうになったチウだが、慌てて顔を上げて夫に詰め寄る。彼が空の上から現れた事も驚きだが、明らかに部外者を連れ出して無断で城内に入って来た事の方が問題だった。
「おい、あんたは本当にうちの夫かい!?それならあたしがあんたにプロポーズした時の言葉を教えな!!」
「ぬう……確か、俺のために毎日ブタンの丸焼き肉を作ってくれ、だったかのう?」
「いや、どんなプロポーズよ……」
チウとコウのやり取りにリディアは呆れた表情を浮かべるが、その間にルノは氷車の解除を行い、改めて城の様子を伺う。巨人族が住む事を想定して作り出された城のため、建物の構造も巨人族に適した間取りとなっており、扉の大きさも普通ではない。ルノの場合だと精いっぱい背伸びをしてもドアノブにまで手が届かず、まるで自分が子供に戻ったような感覚に陥る。
「へえ、ここが巨人族のお城かぁっ……思っていたよりもずっと凄いな」
「……むう、帝国の王城の方が綺麗」
「はあっ……凄いね、まさか生きている間に他の国の王城に入り込む機会に巡り合うなんて思わなったよ」
「なんであんた達は観光気分なのよ。もうちょっと緊張感持ちなさいよ……ここは敵の城の中なのよ?」
ルノと同様に城内の様子を物珍しそうに見ているコトネとサムカに対してもリディアは呆れ、この城の何処かにクズノが潜伏しているかもしれないと考えると彼女だけは緊張感を抱かざるを得ない。
1
お気に入りに追加
11,314
あなたにおすすめの小説
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
貴族の四男に生まれて居場所がないのでゴブリンの村に移住して村長をします
佐藤スバル
ファンタジー
15歳の誕生日を迎えたゲッターは、リスモンズ王国の教会で洗礼を受け、神から『加工』というスキルを授かる。しかし、そのスキルは周囲から期待外れと見なされ、父・コンタージュ伯爵の失望の眼差しが彼を苦しめる。ゲッターは自分の道を見つけるため、アイナと共に魔の森を越え、グリプニス王国へと旅立つことを決意する。
しかし彼らが魔の森に足を踏み入れると、思わぬ出会いが待ち受けていた。飢えたゴブリンたちとの遭遇を経て、ゲッターは彼らの苦しい状況を知り、共存の道を模索することに。戦うことが全てではないと気づいた彼は、スキルを活かして彼らを助け、信頼を築くことを選ぶ。
この物語は、ゴブリンとの絆を深め、成長していくゲッターの冒険を描いています。ゲッターの旅は、ただの冒険ではなく、自己発見と共存の物語へと進化していきます。
さあ、あなたもゲッターとアイナと共に、未知なる冒険の扉を開けてみませんか?
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。