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巨人国 侵攻編
巨人国の国境
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――その一方、巨人国の国境には獣人国の軍勢を率いたガオンは既に巨人国内の領地に侵攻し、1万の軍勢を率いて国境付近に迫っていた。副将としてコネコも賛同し、遂に5万の巨人軍を率いる四柱将のリキと向かい合う。
数の差は巨人国軍の方が獣人国軍を上回り、さらに体格と言う点でも獣人兵よりも巨人兵の方が勝るため、実際の数よりも巨人兵の方が圧倒的に多いように錯覚してしまう。両軍は向き合い、お互いの大将が前に出た。
「我が名は四柱将のリキ!!獣人国の将よ、前に出ろ!!」
「おおっ!!望むところだ!!」
四柱将の中ではコウに続いて年長者のリキは年齢は50代の将軍だが、その実力は四柱将の中でも非常に高く、単純な武力はギルスやパワードを勝る。そんなリキに呼び出されたガオンは勇んで彼の前に赴くとリキと正面から向かい合う。ガオンも獣人兵の間では大柄な方だが、それでも2倍近くの体格の差が存在し、まるで大人と子供が向かい合っているように見えた。
「ガオン将軍よ!!また性懲りもなく我々の国を狙うか!!」
「何を言うか!!此度の戦、義は我等の方にある!!三国同盟を破り、バルトロス帝国に対して侵攻を始めた貴様等を止めるために我々は出撃したのだ!!正義は我等に有り!!」
「同盟など只の口実、お前達の目的は我が国の領地であろう!?」
リキはガオンが軍勢を引き連れて訪れたのは同盟を破った巨人国を牽制するためではなく、この機を利用して巨人国の領地を奪うために訪れたのかと思った。実際に今までのガオンならば彼の言葉通りに巨人国への侵攻を行っていたところだろうが、今回の彼は雰囲気が違った。
「我等は動いたのはあくまでも帝国を守るため!!もしもお前達が帝国への侵攻を辞めるというのであれば大人しく引き下がってやろうではないか!!」
「何だと……?」
「今現在、我々の国は混乱の最中にある。本来ならば軍勢を動かす余裕もないと考えたのだろう?だが、我々の獣人国の新しい王は恩義を重んじるお方だ!!大恩ある帝国ののために我々は軍を出した!!」
「大恩だと?一体何の話をしている!?」
帝国と獣人国の間に何が起きたのか知らないリキはガオンの言葉に戸惑うが、ガオンはここへ訪れたのは功績を立てるためではなく、自国を救ってくれたルノ達に対して恩を報いるために訪れた事を話す。
「我等が目的はただ一つ!!お主達の非道を正し、帝国の恩を返すために訪れたのだ!!もう一度言うぞ、義は我等に有り!!此度の戦は我等のためではなく、帝国のために戦う事を誓う!!」
『うおおおおおっ!!』
ガオンの言葉に反応して獣人兵は歓声を放ち、獣の咆哮を想像させる大きな声に巨人兵は怯む。その一方でリキの方も今回のガオンは自分の知る彼とは違う事に気付き、警戒心を緩めて無意識に問い質す。
「ガオン将軍……お主、一体何が起きた?以前と雰囲気が違うぞ……」
「ふっ……我々にも色々とあったのだ。最近に出来た友人たちのお陰で俺は長年の葛藤から抜け出す事が出来た……だからこそ、この俺も彼等のために戦う。それだけの話だ」
「彼等だと……一体何の話だ?」
獣人国で起きた騒動の事はまだリキの耳にも届いておらず、以前のガオンならば帝国が巨人国に侵攻を仕掛けられても動く事はなく、仮に巨人国に仕掛けるとしても万全な体勢を整えてから動くだろう。しかし、今回のガオンが率いた兵士の数は1万程度で巨人軍の5分の1にしか満たない。それでも彼が動いたのは巨人国の利益のためではなく、帝国を救う一心で軍を率いたとしか考えられなかった。
「リキよ、お前とは何度も殺し合った仲だが、それでもこれだけは忠告しておくぞ。我々は最後の一兵になろうと退くことはない」
「ガオン将軍……どうしてそこまで他国に肩入れする?お主の語る恩義とは何だ?」
「一言では言い表せぬが……強いて言うならば俺の腐った人生を変えてくれた友人のためにここへ訪れた。それだけだ」
リキはガオンの言葉を聞いて彼が本当に我欲のためではなく、誰かの助けになるために訪れた事を知り、その行動が人情を重んじる巨人族の琴線に触れた。俄然としてリキはガオンの語る友人とやらに興味を抱き、武器を下ろしてガオンと向かい合う。
「……戦は中断だ。お主の語る人物に興味が湧いてきた。一体お主の間に何が起きたのか教えてくれぬか?」
「ほう、戦わぬのか?」
「戦うかどうかはお主の話を聞いてからだ。場合によっては我等が退く事になるかもしれん。さあ、どうする?お主が話したくないというのであれば今すぐに開戦しても構わんが……」
「ふん、まあいいだろう。では、何処から語るべきか……」
両軍に挟まれる形でリキとガオンは地面に座り込み、これまでに何が起きたのかを話し合う。過去に幾度もお互いに殺し合った関係ではあるが、それだけに相手の事をお互いに知りつくしており、ガオンはリキが話が分かる巨人だと判断して自分の身に起きた事を話す――
※森人族と同様に獣人族は恩義を重んじる性格の人間が多いです。
数の差は巨人国軍の方が獣人国軍を上回り、さらに体格と言う点でも獣人兵よりも巨人兵の方が勝るため、実際の数よりも巨人兵の方が圧倒的に多いように錯覚してしまう。両軍は向き合い、お互いの大将が前に出た。
「我が名は四柱将のリキ!!獣人国の将よ、前に出ろ!!」
「おおっ!!望むところだ!!」
四柱将の中ではコウに続いて年長者のリキは年齢は50代の将軍だが、その実力は四柱将の中でも非常に高く、単純な武力はギルスやパワードを勝る。そんなリキに呼び出されたガオンは勇んで彼の前に赴くとリキと正面から向かい合う。ガオンも獣人兵の間では大柄な方だが、それでも2倍近くの体格の差が存在し、まるで大人と子供が向かい合っているように見えた。
「ガオン将軍よ!!また性懲りもなく我々の国を狙うか!!」
「何を言うか!!此度の戦、義は我等の方にある!!三国同盟を破り、バルトロス帝国に対して侵攻を始めた貴様等を止めるために我々は出撃したのだ!!正義は我等に有り!!」
「同盟など只の口実、お前達の目的は我が国の領地であろう!?」
リキはガオンが軍勢を引き連れて訪れたのは同盟を破った巨人国を牽制するためではなく、この機を利用して巨人国の領地を奪うために訪れたのかと思った。実際に今までのガオンならば彼の言葉通りに巨人国への侵攻を行っていたところだろうが、今回の彼は雰囲気が違った。
「我等は動いたのはあくまでも帝国を守るため!!もしもお前達が帝国への侵攻を辞めるというのであれば大人しく引き下がってやろうではないか!!」
「何だと……?」
「今現在、我々の国は混乱の最中にある。本来ならば軍勢を動かす余裕もないと考えたのだろう?だが、我々の獣人国の新しい王は恩義を重んじるお方だ!!大恩ある帝国ののために我々は軍を出した!!」
「大恩だと?一体何の話をしている!?」
帝国と獣人国の間に何が起きたのか知らないリキはガオンの言葉に戸惑うが、ガオンはここへ訪れたのは功績を立てるためではなく、自国を救ってくれたルノ達に対して恩を報いるために訪れた事を話す。
「我等が目的はただ一つ!!お主達の非道を正し、帝国の恩を返すために訪れたのだ!!もう一度言うぞ、義は我等に有り!!此度の戦は我等のためではなく、帝国のために戦う事を誓う!!」
『うおおおおおっ!!』
ガオンの言葉に反応して獣人兵は歓声を放ち、獣の咆哮を想像させる大きな声に巨人兵は怯む。その一方でリキの方も今回のガオンは自分の知る彼とは違う事に気付き、警戒心を緩めて無意識に問い質す。
「ガオン将軍……お主、一体何が起きた?以前と雰囲気が違うぞ……」
「ふっ……我々にも色々とあったのだ。最近に出来た友人たちのお陰で俺は長年の葛藤から抜け出す事が出来た……だからこそ、この俺も彼等のために戦う。それだけの話だ」
「彼等だと……一体何の話だ?」
獣人国で起きた騒動の事はまだリキの耳にも届いておらず、以前のガオンならば帝国が巨人国に侵攻を仕掛けられても動く事はなく、仮に巨人国に仕掛けるとしても万全な体勢を整えてから動くだろう。しかし、今回のガオンが率いた兵士の数は1万程度で巨人軍の5分の1にしか満たない。それでも彼が動いたのは巨人国の利益のためではなく、帝国を救う一心で軍を率いたとしか考えられなかった。
「リキよ、お前とは何度も殺し合った仲だが、それでもこれだけは忠告しておくぞ。我々は最後の一兵になろうと退くことはない」
「ガオン将軍……どうしてそこまで他国に肩入れする?お主の語る恩義とは何だ?」
「一言では言い表せぬが……強いて言うならば俺の腐った人生を変えてくれた友人のためにここへ訪れた。それだけだ」
リキはガオンの言葉を聞いて彼が本当に我欲のためではなく、誰かの助けになるために訪れた事を知り、その行動が人情を重んじる巨人族の琴線に触れた。俄然としてリキはガオンの語る友人とやらに興味を抱き、武器を下ろしてガオンと向かい合う。
「……戦は中断だ。お主の語る人物に興味が湧いてきた。一体お主の間に何が起きたのか教えてくれぬか?」
「ほう、戦わぬのか?」
「戦うかどうかはお主の話を聞いてからだ。場合によっては我等が退く事になるかもしれん。さあ、どうする?お主が話したくないというのであれば今すぐに開戦しても構わんが……」
「ふん、まあいいだろう。では、何処から語るべきか……」
両軍に挟まれる形でリキとガオンは地面に座り込み、これまでに何が起きたのかを話し合う。過去に幾度もお互いに殺し合った関係ではあるが、それだけに相手の事をお互いに知りつくしており、ガオンはリキが話が分かる巨人だと判断して自分の身に起きた事を話す――
※森人族と同様に獣人族は恩義を重んじる性格の人間が多いです。
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