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巨人国 侵攻編

3人目の四柱将

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「おい、ここに居たのか!!探したぞ!!」
「ギルス、もう少し口調を気を付けろ……彼等は恩人だぞ」
「おお、この御方たちが我々の命を救ってくれたのか……」


治療を手伝うルノ達の元に慌てた様子のギルスとパワードが現れ、さらに二人の肩を借りながら全身に包帯を巻いた巨人族の老人が存在した。彼の姿を見てルノはすぐに二人が先ほど話していた「コウ」という名前の四柱将だと気づき、コウはルノ達の前に移動すると丁寧に頭を下げる。


「儂は四柱将のコウと申す。此度の助力、誠に感謝いたす。主等の助太刀がなければ我々は火竜に殺されていただろう……ありがとう」
「へえ、驚いたね……四柱将のコウと言えばあの有名な鬼将軍だって聞いてたのに随分と礼儀正しいんだね」
「はっはっはっ!!鬼将軍とは懐かしい渾名じゃのう!!」
「お、お前!!コウ将軍になんて口の利き方を……!!」
「よいよい、儂は気にしておらん。見た所、お主が帝国のサムカ将軍じゃな?お主に我等が軍が何度も痛めつけられたと聞いておるぞ」
「はんっ、人様の土地に勝手に入り込もうとする方が悪いんだよ」


コウと呼ばれる四柱将の中でも最年長と思われる老人はどうやらパワードとギルスよりも立場が上らしく、サムカの言葉に対しても気分を害した様子も見せずに普通に応対する。年齢を重ねているだけ貫禄もあり、他の二人よりも落ち着いていた。

これで3人の四柱将が揃った事になるが、最後のリキ将軍と呼ばれる四柱将は現在は獣人国軍の対応を行っているため、この場に訪れることはないだろう。コウはギルスとパワードが用意した大きな車いすに座ると、痛む身体を抑えながらルノ達と向かい合う。


「コウ将軍、どうぞこちらにおかけください」
「おお、すまんな……くう、火竜の奴め……30年前に追い払った復讐のために我々の前に姿を現したか」
「あの、怪我をしているなら回復薬を差し上げますけど……」
「いや、儂の事は言い。老体になると回復魔法も回復薬の効果も遅くなるからのう……儂の治療よりも今は他に負傷した兵士の治療を頼みたい」
「安心しな、何故かこの坊主たちは大量の薬草と回復薬を持っているからね、遠慮せずに使いな!!」
「あんたね……自分が用意したわけでもないのにどうしてそんなに偉そうなのよ」


火竜の襲撃を受けた巨人軍の兵士の治療には岩山に元々備蓄していた薬剤だけでは足りず、ルノがこれまでに入手した物資を提供して兵士達の治療を行っていた。幸いというべきか海獄島、獣人国、帝国の北方領地を回った時に回収しておいた物資が腐る程存在するため、ルノは惜しみなく兵士達に提供した。


「どうぞ、物資なら有り余るほどありますから遠慮しないでください」
「いや、それは有難いが……どうしてここまで我等のために尽くしてくれる?こういうのもなんだが、我々の国と帝国は現在は戦争している。何故、敵である我等にここまでの援助を……」
「う~ん……それはそうなんですけど、だけど何となくですけどここで皆さんを助けなかったら後で後悔する事になるかもしれないと思うんです」


大量の回復薬が入った木箱を運び込みながらルノはコウに対して回復薬を渡し、自分達がこの国へ訪れた目的を話す。


「俺達がここへ訪れたのは帝国に侵入した巨人国の兵士を送り返す事と、巨人国に魔王軍の存在を警告するために来たんです」
「魔王軍……それは確か、帝国で暴れているという輩の事か?」
「そうよ。あんた達の王様の傍にクズノとかいう男がいるでしょ?そいつが魔王軍を率いている最高幹部、要するに黒幕ね」
「何だと!?あの野郎……いけ好かない奴だとは思っていたがやっぱりろくでもない奴だったのか!!」
「ふむ、あのクズノ殿がか……」


クズノの存在を怪しく考えていたのはギルスだけではなく、パワードとコウも疑っていたらしく、あっさりとルノ達の話を信じてくれた。


「……クズノという男は名前の通りに屑野郎。この男のせいで帝国はこれまでに大きな被害を受けている」
「帝国だけじゃないわよ。獣人国やエルフ王国の方もこいつのせいで大きな被害を受けているわ」
「あんた等が帝国に侵入して襲おうとしたのも、そのクズノとかいう奴が関わっているんだろ?心当たりはないのかい?」
「言われてみれば確かに……」
「今回の作戦、国王陛下によればクズノが発案したと言っていたが……まさか、奴の目的は我々を利用して帝国を滅ぼすつもりだったのか……!?」


今回の巨人国が実行した作戦に関してもどうやらクズノが提案したらしく、1年以上の帰還を費やして内密に巨人国の兵士を帝国領地へ送り込み、ノーズ公爵の娘の命を人質に協力させた。獣人国に関してもほぼ同時期にガオンと接触して彼に反乱の計画を立てるように促したり、ヨツバ王国に関しては封印されていた昆虫種を利用して国その物を滅ぼそうとしていた。
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