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巨人国 侵攻編
火竜の討伐
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「止めろぉおおおっ!!」
「グガァッ……!?」
飛翔術を利用してマッハを超えた速度でルノは火竜に接近すると、そのまま魔法を使用せずに火竜の腹部に体当たりを行う。火炎の吐息を吐いている途中で強烈な衝撃を受けた火竜は悲鳴を上げながら体勢を崩し、そのまま地上へ落下しかけた瞬間、ルノが火竜の尻尾を掴んで空中で持ち上げる。
「せぇのぉっ!!」
「ガアアッ……!?」
火竜を掴んだ状態で飛翔したルノは巨体を引き寄せながら更に上空へ浮上すると、尻尾を離して今度は背中側に両足を叩き込んで地上へと墜落させる。
「でりゃああああっ!!」
「アアアアッ――!?」
背中から強烈な衝撃を受けた状態で火竜は地上へ向けて衝突し、派手な土煙が舞い上がった。その様子を見た巨人軍の兵士達は目を丸くさせ、一体何が起きているのか理解できない。
「な、何だ!?急に火竜の奴が暴れ出したぞ!?」
「違う、誰かが火竜に攻撃を仕掛けたんだ!!」
「馬鹿を言うなよ、そんな事が有り得るはずがないだろうが!!一体誰が攻撃したって言うんだよ!?」
兵士達が騒いでいる間、土煙から抜け出したルノは空中に滞空すると、地面にめり込んだ状態で瀕死状態の火竜に視線を向ける。既に放っておいても問題はなさそうだが、用心のために止めを刺すため、氷飛行機を待機させた方角に掌を構えた。
「お、おい、あれを見ろ!!嘘だろ、おい!!」
「何だ!?また火竜が現れたのか!?」
「でも……身体の色が青いぞ!?」
数秒後、氷飛行機の傍で待機させていた「氷竜」が出現し、ルノが右手を地面に下ろすと氷竜は地上に倒れた火竜に向けて接近し、その巨体を利用して火竜の肉体を踏みつぶす。
――グガァアアアアッ……!?
火竜の断末魔の悲鳴が荒野に広がり、氷竜は火竜の首筋に牙を食い込ませると一気に引き千切って頭部を引き離し、地面に放り捨てる。その光景を見た兵士達は青色の火竜が餌を喰らうようにしか見えず、今度は自分達の番なのかと恐れを抱く。
だが、彼等の予想に反して役目を終えた氷竜は徐々に身体が崩れ去ると、やがて霞と化して消え去っていく。その光景に兵士達は唖然とした表情を浮かべ、一体何が起きているのか理解できなかった。
「な、何だったんだ……あれ?」
「俺達、夢でも見たのか……?」
「もう、訳が分からない……」
消えてしまった氷竜と地面に押しつぶされた火竜の死体に兵士達は理解が追い付かず、その間にルノは火竜を倒した事で安心すると、岩山の方へ向けて移動する。
「只今戻りました。すいません、話の途中で抜け出しちゃって……」
「ひいっ!?」
「る、ルノ殿……い、今のは一体……」
「はあっ……まさか、噂には聞いていたけど本当にあんたって凄いんだね」
火竜を討伐した事で落ち着いたルノが岩山の帰還すると、パワードは先ほどまでの態度はどうしたのか情けない悲鳴をあげ、ギルスも顔色を青くして後ずさり、サムカだけは感心したように頷く。周囲に存在する巨人兵達は恐怖の表情を浮かべて距離を取り、そんな彼等の反応を見てルノは驚かせた事を謝罪した。
「すいません、勝手な行動をして……でも、火竜は討伐しました。それとすぐに兵士の人達を治療した方が良いと思います」
「あ、ああっ……おい、早く衛生兵を搔き集めてこい!!ありったけの医療品も運び出せ!!」
「は、はい!!」
ルノの言葉にパワードは無意識に彼の言葉には従わなければならないと判断し、兵士達に命じて火竜の被害を受けたリキ将軍率いる兵士達の元へ急がせる。その間にルノはこの際に氷飛行機に待機しておいた全員を呼び寄せる事を決め、許可を取ってから氷飛行機で待機しているはずのコトネ達の元へ向かう――
――数十分後、岩山には大勢の兵士達が溢れかえり、火竜の襲撃によって負傷した兵士達の治療が行われていた。時間的には数十秒の間に数千人の兵士が負傷し、死傷者は数百名も生まれた。それでも竜種の襲撃を受けてこの程度の被害だけで済んだ事が奇跡に等しく、本来は帝国を攻めるために用意した薬品を使用して負傷兵の治療を行う。
負傷した兵士達の大半は火竜の火炎の吐息を受けた際の火傷による重症のため、ルノが氷塊の魔法を利用して大量の氷を用意すると衛生兵から感謝され、すぐに彼等の熱を冷ます。
「これぐらいあれば十分ですか?」
「は、はい!!ありがとうございます!!」
「ねえ、こっちの奴は意識を取り戻したわよ」
「……この薬丸を飲めばすぐに治る」
「たくっ、あんたらはお人好しだね……わざわざ他の国の兵士の治療を手伝うなんて」
氷飛行機に待機させていた兵士達を解放した後、ルノ達は交渉の前に負傷した兵士達の治療を手伝い、サムカも呆れながらも手伝ってくれた。本来の予定では四柱将たちと交渉を終えた後に兵士を返却する予定だったのだが、治療の人手を増やすためにルノは氷飛行機に閉じ込めていた兵士達を解放させ、治療を手伝わせた。
「グガァッ……!?」
飛翔術を利用してマッハを超えた速度でルノは火竜に接近すると、そのまま魔法を使用せずに火竜の腹部に体当たりを行う。火炎の吐息を吐いている途中で強烈な衝撃を受けた火竜は悲鳴を上げながら体勢を崩し、そのまま地上へ落下しかけた瞬間、ルノが火竜の尻尾を掴んで空中で持ち上げる。
「せぇのぉっ!!」
「ガアアッ……!?」
火竜を掴んだ状態で飛翔したルノは巨体を引き寄せながら更に上空へ浮上すると、尻尾を離して今度は背中側に両足を叩き込んで地上へと墜落させる。
「でりゃああああっ!!」
「アアアアッ――!?」
背中から強烈な衝撃を受けた状態で火竜は地上へ向けて衝突し、派手な土煙が舞い上がった。その様子を見た巨人軍の兵士達は目を丸くさせ、一体何が起きているのか理解できない。
「な、何だ!?急に火竜の奴が暴れ出したぞ!?」
「違う、誰かが火竜に攻撃を仕掛けたんだ!!」
「馬鹿を言うなよ、そんな事が有り得るはずがないだろうが!!一体誰が攻撃したって言うんだよ!?」
兵士達が騒いでいる間、土煙から抜け出したルノは空中に滞空すると、地面にめり込んだ状態で瀕死状態の火竜に視線を向ける。既に放っておいても問題はなさそうだが、用心のために止めを刺すため、氷飛行機を待機させた方角に掌を構えた。
「お、おい、あれを見ろ!!嘘だろ、おい!!」
「何だ!?また火竜が現れたのか!?」
「でも……身体の色が青いぞ!?」
数秒後、氷飛行機の傍で待機させていた「氷竜」が出現し、ルノが右手を地面に下ろすと氷竜は地上に倒れた火竜に向けて接近し、その巨体を利用して火竜の肉体を踏みつぶす。
――グガァアアアアッ……!?
火竜の断末魔の悲鳴が荒野に広がり、氷竜は火竜の首筋に牙を食い込ませると一気に引き千切って頭部を引き離し、地面に放り捨てる。その光景を見た兵士達は青色の火竜が餌を喰らうようにしか見えず、今度は自分達の番なのかと恐れを抱く。
だが、彼等の予想に反して役目を終えた氷竜は徐々に身体が崩れ去ると、やがて霞と化して消え去っていく。その光景に兵士達は唖然とした表情を浮かべ、一体何が起きているのか理解できなかった。
「な、何だったんだ……あれ?」
「俺達、夢でも見たのか……?」
「もう、訳が分からない……」
消えてしまった氷竜と地面に押しつぶされた火竜の死体に兵士達は理解が追い付かず、その間にルノは火竜を倒した事で安心すると、岩山の方へ向けて移動する。
「只今戻りました。すいません、話の途中で抜け出しちゃって……」
「ひいっ!?」
「る、ルノ殿……い、今のは一体……」
「はあっ……まさか、噂には聞いていたけど本当にあんたって凄いんだね」
火竜を討伐した事で落ち着いたルノが岩山の帰還すると、パワードは先ほどまでの態度はどうしたのか情けない悲鳴をあげ、ギルスも顔色を青くして後ずさり、サムカだけは感心したように頷く。周囲に存在する巨人兵達は恐怖の表情を浮かべて距離を取り、そんな彼等の反応を見てルノは驚かせた事を謝罪した。
「すいません、勝手な行動をして……でも、火竜は討伐しました。それとすぐに兵士の人達を治療した方が良いと思います」
「あ、ああっ……おい、早く衛生兵を搔き集めてこい!!ありったけの医療品も運び出せ!!」
「は、はい!!」
ルノの言葉にパワードは無意識に彼の言葉には従わなければならないと判断し、兵士達に命じて火竜の被害を受けたリキ将軍率いる兵士達の元へ急がせる。その間にルノはこの際に氷飛行機に待機しておいた全員を呼び寄せる事を決め、許可を取ってから氷飛行機で待機しているはずのコトネ達の元へ向かう――
――数十分後、岩山には大勢の兵士達が溢れかえり、火竜の襲撃によって負傷した兵士達の治療が行われていた。時間的には数十秒の間に数千人の兵士が負傷し、死傷者は数百名も生まれた。それでも竜種の襲撃を受けてこの程度の被害だけで済んだ事が奇跡に等しく、本来は帝国を攻めるために用意した薬品を使用して負傷兵の治療を行う。
負傷した兵士達の大半は火竜の火炎の吐息を受けた際の火傷による重症のため、ルノが氷塊の魔法を利用して大量の氷を用意すると衛生兵から感謝され、すぐに彼等の熱を冷ます。
「これぐらいあれば十分ですか?」
「は、はい!!ありがとうございます!!」
「ねえ、こっちの奴は意識を取り戻したわよ」
「……この薬丸を飲めばすぐに治る」
「たくっ、あんたらはお人好しだね……わざわざ他の国の兵士の治療を手伝うなんて」
氷飛行機に待機させていた兵士達を解放した後、ルノ達は交渉の前に負傷した兵士達の治療を手伝い、サムカも呆れながらも手伝ってくれた。本来の予定では四柱将たちと交渉を終えた後に兵士を返却する予定だったのだが、治療の人手を増やすためにルノは氷飛行機に閉じ込めていた兵士達を解放させ、治療を手伝わせた。
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