最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
525 / 657
巨人国 侵攻編

火竜の討伐

しおりを挟む
「止めろぉおおおっ!!」
「グガァッ……!?」


飛翔術を利用してマッハを超えた速度でルノは火竜に接近すると、そのまま魔法を使用せずに火竜の腹部に体当たりを行う。火炎の吐息を吐いている途中で強烈な衝撃を受けた火竜は悲鳴を上げながら体勢を崩し、そのまま地上へ落下しかけた瞬間、ルノが火竜の尻尾を掴んで空中で持ち上げる。


「せぇのぉっ!!」
「ガアアッ……!?」


火竜を掴んだ状態で飛翔したルノは巨体を引き寄せながら更に上空へ浮上すると、尻尾を離して今度は背中側に両足を叩き込んで地上へと墜落させる。


「でりゃああああっ!!」
「アアアアッ――!?」


背中から強烈な衝撃を受けた状態で火竜は地上へ向けて衝突し、派手な土煙が舞い上がった。その様子を見た巨人軍の兵士達は目を丸くさせ、一体何が起きているのか理解できない。


「な、何だ!?急に火竜の奴が暴れ出したぞ!?」
「違う、誰かが火竜に攻撃を仕掛けたんだ!!」
「馬鹿を言うなよ、そんな事が有り得るはずがないだろうが!!一体誰が攻撃したって言うんだよ!?」


兵士達が騒いでいる間、土煙から抜け出したルノは空中に滞空すると、地面にめり込んだ状態で瀕死状態の火竜に視線を向ける。既に放っておいても問題はなさそうだが、用心のために止めを刺すため、氷飛行機を待機させた方角に掌を構えた。


「お、おい、あれを見ろ!!嘘だろ、おい!!」
「何だ!?また火竜が現れたのか!?」
「でも……身体の色が青いぞ!?」



数秒後、氷飛行機の傍で待機させていた「氷竜」が出現し、ルノが右手を地面に下ろすと氷竜は地上に倒れた火竜に向けて接近し、その巨体を利用して火竜の肉体を踏みつぶす。



――グガァアアアアッ……!?



火竜の断末魔の悲鳴が荒野に広がり、氷竜は火竜の首筋に牙を食い込ませると一気に引き千切って頭部を引き離し、地面に放り捨てる。その光景を見た兵士達は青色の火竜が餌を喰らうようにしか見えず、今度は自分達の番なのかと恐れを抱く。

だが、彼等の予想に反して役目を終えた氷竜は徐々に身体が崩れ去ると、やがて霞と化して消え去っていく。その光景に兵士達は唖然とした表情を浮かべ、一体何が起きているのか理解できなかった。


「な、何だったんだ……あれ?」
「俺達、夢でも見たのか……?」
「もう、訳が分からない……」


消えてしまった氷竜と地面に押しつぶされた火竜の死体に兵士達は理解が追い付かず、その間にルノは火竜を倒した事で安心すると、岩山の方へ向けて移動する。


「只今戻りました。すいません、話の途中で抜け出しちゃって……」
「ひいっ!?」
「る、ルノ殿……い、今のは一体……」
「はあっ……まさか、噂には聞いていたけど本当にあんたって凄いんだね」


火竜を討伐した事で落ち着いたルノが岩山の帰還すると、パワードは先ほどまでの態度はどうしたのか情けない悲鳴をあげ、ギルスも顔色を青くして後ずさり、サムカだけは感心したように頷く。周囲に存在する巨人兵達は恐怖の表情を浮かべて距離を取り、そんな彼等の反応を見てルノは驚かせた事を謝罪した。


「すいません、勝手な行動をして……でも、火竜は討伐しました。それとすぐに兵士の人達を治療した方が良いと思います」
「あ、ああっ……おい、早く衛生兵を搔き集めてこい!!ありったけの医療品も運び出せ!!」
「は、はい!!」


ルノの言葉にパワードは無意識に彼の言葉には従わなければならないと判断し、兵士達に命じて火竜の被害を受けたリキ将軍率いる兵士達の元へ急がせる。その間にルノはこの際に氷飛行機に待機しておいた全員を呼び寄せる事を決め、許可を取ってから氷飛行機で待機しているはずのコトネ達の元へ向かう――




――数十分後、岩山には大勢の兵士達が溢れかえり、火竜の襲撃によって負傷した兵士達の治療が行われていた。時間的には数十秒の間に数千人の兵士が負傷し、死傷者は数百名も生まれた。それでも竜種の襲撃を受けてこの程度の被害だけで済んだ事が奇跡に等しく、本来は帝国を攻めるために用意した薬品を使用して負傷兵の治療を行う。

負傷した兵士達の大半は火竜の火炎の吐息を受けた際の火傷による重症のため、ルノが氷塊の魔法を利用して大量の氷を用意すると衛生兵から感謝され、すぐに彼等の熱を冷ます。


「これぐらいあれば十分ですか?」
「は、はい!!ありがとうございます!!」
「ねえ、こっちの奴は意識を取り戻したわよ」
「……この薬丸を飲めばすぐに治る」
「たくっ、あんたらはお人好しだね……わざわざ他の国の兵士の治療を手伝うなんて」


氷飛行機に待機させていた兵士達を解放した後、ルノ達は交渉の前に負傷した兵士達の治療を手伝い、サムカも呆れながらも手伝ってくれた。本来の予定では四柱将たちと交渉を終えた後に兵士を返却する予定だったのだが、治療の人手を増やすためにルノは氷飛行機に閉じ込めていた兵士達を解放させ、治療を手伝わせた。
しおりを挟む
感想 1,841

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。