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巨人国 侵攻編
本隊との合流
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「ちょっと、なんか地上の方で豆粒みたいなのが動いているわよ」
「……あれは豆粒じゃなくて巨人族の兵士、こっちに気付いたみたい」
「どれどれ……本当だ、5人ぐらいいるね」
「どんな視力してんのよあんたら……あ、遠視のスキルを使ってんのね」
リディアが窓の外から地上を移動する兵士の存在に気付き、どうやら狩猟を行っていたのか兵士の傍には大きな鹿のような魔獣が倒れていた。兵士達は空中を移動する氷飛行機の存在に気付き、慌てふためきながらも魔獣の死骸を放置して岩山に建設された要塞の方角へ向かう。それを見たギルスは地上へ着地するようにルノに頼む。
「ここらで下ろしてくれ、このまま要塞の中へ突入するのは不味い……俺の方から連絡を取るからここで待っていて欲しい」
「行くならあんただけ行きなよ。兵士達には悪いけどここで待機させな」
「分かっている……すぐに戻る」
ギルスの言葉に従い、ルノは氷飛行機を着地させると巨人国軍の兵士以外の全員が降りる。ギルスは岩山の方に視線を向け、覚悟を決めた表情を浮かべるとルノに頼み込む。
「俺を要塞まで運んでくれないか?サムカ、出来ればお前も同行して欲しいのだが……」
「まあ、しょうがないね。坊主も構わないかい?」
「いいですよ。じゃあ、移動する前に魔物に襲われないように準備しておきますね」
「ちょっと、何をする気よ……嫌な予感しかしないんだけど」
ルノは他の人間が待機している間、野生の魔獣に襲われないようにするため、両手を広げて氷塊の魔法を発動させる。そして巨人兵が乗り込んでいる氷飛行機の真上に氷竜を生み出し、氷飛行機を守護するようにその上に立たせる。ただの氷像ではあるが魔物を恐れさせるのには十分な威圧感があるため、これで荒野の魔物も迂闊には近づかないだろう。
「ふうっ……こんな感じかな、竜種がここにいれば魔物に襲われる心配はないよね?」
「……多分、大丈夫。ここまで精巧な氷像なら普通の人間でも竜種だと見間違える」
「はあっ……驚いたね。異世界人というのはこんな事も出来るのかい!!」
「もう、この程度の事では驚かないわよ……」
「な、何と見事な氷像だ……!!」
氷飛行機に乗り込んだ氷竜の姿に全員が圧倒される中、ルノは氷塊の魔法で氷車を作り出し、サムカとギルスだけを乗せて岩山に向かう。
「じゃあ、コトネとリディアは悪いけどここに残っててよ。すぐに戻ってくるからね、もしも魔物が現れたら氷飛行機の中に避難してね」
「……分かった。リディアと一緒にしりとりして待ってる」
「いや、しないわよ」
全員で向かう方が安全かもしれないが、念のために巨人兵達を見張る人間も居た方が良いと判断し、それに大人数で敵の拠点に移動すると人質に取られる可能性があるため3人だけで向かう。大分乗り物にも慣れてきたのかギルスは氷車に乗り込んでも吐き気は催さず、道案内を行う。
「報告によれば岩山の頂上部に司令部が存在するはずだ。予定では既に本隊も待機しているはずだ」
「頂上部ですね」
「それにしてもこんなデカい岩山を要塞に作り替えるとは……巨人族の労働力も馬鹿に出来ないね」
岩山の規模は高度が300メートルは存在し、接近すると大勢の巨人族が岩を削り取り、頂上部にまで繋がる階段や岩壁を掘り進んで自分達が住める住居を作り出していた。大柄で怪力という点からあまり器用さを持ち合わせていないと思われがちの巨人族だが、彼等の建築技術は決して馬鹿に出来ない。
だが、気になる事があるとすればどうしてこのような場所に要塞を築いたのかという点であり、ここからホクヘキ山脈までかなりの距離が存在し、他国の侵入を警戒して要塞を作り出しているとしてもわざわざ岩山を利用して城を作り出す理由はない。普通に平地で城づくりを行えば十分かと思われるが、試しにルノはギルスに質問をする。
「どうして巨人国軍の人達はこんなに大きい岩山で要塞を建築しようとしてるんですか?わざわざこんな場所に住むより、平地で城を作り出した方が良いと思いますけど……」
「この要塞はそもそも外部からの侵入を考慮して作り出された物ではない。言ってみれば兵士達の訓練場でもある」
「どういう意味だい?」
外部からの侵入に備えて建設を行っているわけではないという説明にルノとサムカが疑問を抱くと、ギルスが仕方がないとばかりに説明を行う。
「我々、巨人国の将兵は武勇を磨くだけはなく、物作りの力、つまり建築力も磨かねばならない。我々はお前達よりも体格が優れている分、他国に攻め込むときに色々と不都合が多い。例えば人間基準の街では我々は建物に入る事も難しい。そこで我々は他国へ攻め込むときは自分達の拠点を即座に作り出すための技術力を身に付けなければならん。自分の安全を確保するため、我々は現地調達した材料を利用して早急に陣地を作り出す訓練も行っている。この岩山は建築力を磨くために敢えて住みにくい環境下に挑んで巨人が住める環境を整えようとしている」
「なる、ほど……?」
「ちょいと分かりにくい説明だけど、要するに自分達が休める拠点を作り出す訓練も兼ねてこの岩山で要塞の建設をしているわけかい?また、面倒な訓練をしているね……」
巨人族は体躯が恵まれている分、他の国では色々と苦労するらしく、巨人国の兵士達は「建築力」という技術を身に付けなければならないらしい。
「……あれは豆粒じゃなくて巨人族の兵士、こっちに気付いたみたい」
「どれどれ……本当だ、5人ぐらいいるね」
「どんな視力してんのよあんたら……あ、遠視のスキルを使ってんのね」
リディアが窓の外から地上を移動する兵士の存在に気付き、どうやら狩猟を行っていたのか兵士の傍には大きな鹿のような魔獣が倒れていた。兵士達は空中を移動する氷飛行機の存在に気付き、慌てふためきながらも魔獣の死骸を放置して岩山に建設された要塞の方角へ向かう。それを見たギルスは地上へ着地するようにルノに頼む。
「ここらで下ろしてくれ、このまま要塞の中へ突入するのは不味い……俺の方から連絡を取るからここで待っていて欲しい」
「行くならあんただけ行きなよ。兵士達には悪いけどここで待機させな」
「分かっている……すぐに戻る」
ギルスの言葉に従い、ルノは氷飛行機を着地させると巨人国軍の兵士以外の全員が降りる。ギルスは岩山の方に視線を向け、覚悟を決めた表情を浮かべるとルノに頼み込む。
「俺を要塞まで運んでくれないか?サムカ、出来ればお前も同行して欲しいのだが……」
「まあ、しょうがないね。坊主も構わないかい?」
「いいですよ。じゃあ、移動する前に魔物に襲われないように準備しておきますね」
「ちょっと、何をする気よ……嫌な予感しかしないんだけど」
ルノは他の人間が待機している間、野生の魔獣に襲われないようにするため、両手を広げて氷塊の魔法を発動させる。そして巨人兵が乗り込んでいる氷飛行機の真上に氷竜を生み出し、氷飛行機を守護するようにその上に立たせる。ただの氷像ではあるが魔物を恐れさせるのには十分な威圧感があるため、これで荒野の魔物も迂闊には近づかないだろう。
「ふうっ……こんな感じかな、竜種がここにいれば魔物に襲われる心配はないよね?」
「……多分、大丈夫。ここまで精巧な氷像なら普通の人間でも竜種だと見間違える」
「はあっ……驚いたね。異世界人というのはこんな事も出来るのかい!!」
「もう、この程度の事では驚かないわよ……」
「な、何と見事な氷像だ……!!」
氷飛行機に乗り込んだ氷竜の姿に全員が圧倒される中、ルノは氷塊の魔法で氷車を作り出し、サムカとギルスだけを乗せて岩山に向かう。
「じゃあ、コトネとリディアは悪いけどここに残っててよ。すぐに戻ってくるからね、もしも魔物が現れたら氷飛行機の中に避難してね」
「……分かった。リディアと一緒にしりとりして待ってる」
「いや、しないわよ」
全員で向かう方が安全かもしれないが、念のために巨人兵達を見張る人間も居た方が良いと判断し、それに大人数で敵の拠点に移動すると人質に取られる可能性があるため3人だけで向かう。大分乗り物にも慣れてきたのかギルスは氷車に乗り込んでも吐き気は催さず、道案内を行う。
「報告によれば岩山の頂上部に司令部が存在するはずだ。予定では既に本隊も待機しているはずだ」
「頂上部ですね」
「それにしてもこんなデカい岩山を要塞に作り替えるとは……巨人族の労働力も馬鹿に出来ないね」
岩山の規模は高度が300メートルは存在し、接近すると大勢の巨人族が岩を削り取り、頂上部にまで繋がる階段や岩壁を掘り進んで自分達が住める住居を作り出していた。大柄で怪力という点からあまり器用さを持ち合わせていないと思われがちの巨人族だが、彼等の建築技術は決して馬鹿に出来ない。
だが、気になる事があるとすればどうしてこのような場所に要塞を築いたのかという点であり、ここからホクヘキ山脈までかなりの距離が存在し、他国の侵入を警戒して要塞を作り出しているとしてもわざわざ岩山を利用して城を作り出す理由はない。普通に平地で城づくりを行えば十分かと思われるが、試しにルノはギルスに質問をする。
「どうして巨人国軍の人達はこんなに大きい岩山で要塞を建築しようとしてるんですか?わざわざこんな場所に住むより、平地で城を作り出した方が良いと思いますけど……」
「この要塞はそもそも外部からの侵入を考慮して作り出された物ではない。言ってみれば兵士達の訓練場でもある」
「どういう意味だい?」
外部からの侵入に備えて建設を行っているわけではないという説明にルノとサムカが疑問を抱くと、ギルスが仕方がないとばかりに説明を行う。
「我々、巨人国の将兵は武勇を磨くだけはなく、物作りの力、つまり建築力も磨かねばならない。我々はお前達よりも体格が優れている分、他国に攻め込むときに色々と不都合が多い。例えば人間基準の街では我々は建物に入る事も難しい。そこで我々は他国へ攻め込むときは自分達の拠点を即座に作り出すための技術力を身に付けなければならん。自分の安全を確保するため、我々は現地調達した材料を利用して早急に陣地を作り出す訓練も行っている。この岩山は建築力を磨くために敢えて住みにくい環境下に挑んで巨人が住める環境を整えようとしている」
「なる、ほど……?」
「ちょいと分かりにくい説明だけど、要するに自分達が休める拠点を作り出す訓練も兼ねてこの岩山で要塞の建設をしているわけかい?また、面倒な訓練をしているね……」
巨人族は体躯が恵まれている分、他の国では色々と苦労するらしく、巨人国の兵士達は「建築力」という技術を身に付けなければならないらしい。
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