最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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巨人国 侵攻編

巨人軍の解放

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「あの氷飛行機……あ、氷の塊の中には帝国領地で暴れていた軍隊を閉じ込めています。確か、四柱将のギルスという人が指揮官です」
「何だって!?という事は巨人軍の奴等はもう帝国領地へ忍び込んでいたのかい!?」
「ギルス将軍が手引きして1年がかりで1万人の兵士を内部に忍び込ませていた……らしい」
「ちっ、こそこそと人様の国に入ってくるなんて無粋な奴等だね……男なら堂々とあたしらを倒してから入ってこないかい!!この腑抜け!!」


自分達の知らぬところで侵入を許していたという事実にサムカは怒りを抱き、氷塊に向けて怒鳴りつける。まさか国境を突破するのではなく、長い期間を掛けて観光客に紛れて兵士を送り込まれていた事はサムカも予想出来ず、怒りを露わにして雪玉を氷塊に投げつけて罵倒した。


「このっ!!このっ!!どうだい、参ったか!?」
「あの……多分、気づいていないと思います」
「ルノ、サムカは見た目は大人で中身は子供だから説明しても理解できない。だから直接会わせた方が良い」
「そうなの?じゃあ、ギルス将軍だけを連れてきますね」
「おう!!早く連れてきてくれ!!一発ぶん殴ってやる!!」


ルノの言葉にサムカは鼻息を鳴らすと、即座に氷飛行機の中に搭乗していたギルスを連れ出し、地上へと下ろす。ここまでの道中で再び乗り物酔いをしてぐったりとしていたギルスをルノは抱えて降りると、早速サムカが駆けつけてギルスの襟首を掴む。


「おい、こら!!あたしの顔を覚えているかい!?サムカだよサムカ!!」
「ぐえっ……く、苦しい!!」
「何だいその死にそうな顔つきは!!おら、とっとと立ち上がりな!!一発ぶん殴ってやる!!」
「ま、待て……俺の話を聞いてくれ」
「将軍!!落ち着いて下さい!!」


今にもギルスを押し倒しそうなサムカを他の兵士達が抑えつけ、興奮する彼女は兵士を振り払おうとしたが、その間にルノ達がギルスの解放を行う。


「これ、噛む。かなり苦いけど乗り物酔いによく聞く薬草」
「背中をさすりましょうか?」
「ほら、吐くならさっさと吐いた方が楽になるわよ……二重の意味で」
「ううっ……まさかこんな子供に同情されるとは、屈辱だ」
「おい、あんた!!親切にしてくれる人達に何てこと言うんだい!!この恥知らずがっ!!」
「将軍!!落ち着いて!?」


ルノ達に解放されるギルスの情けない姿にサムカは容赦なく怒鳴りつけ、そんな彼女の言葉が身に染みたのかギルスはあまりの自分の惨めさにため息を吐き出し、どうにか乗り物酔いから回復するとその場で正座して頭を下げる。


「……この度の一件、誠に申し訳ございません。敵国の将軍である俺の命を救ってくれただけではなく、狼藉を犯した部下の命を救ってくれて感謝する」
「あ、いや……悪い事をしなければ別に怒りませんよ?」
「……ちゃんと国に戻ったら他の人も説得する」
「もう諦めなさいとあんた等の国の王様に言いなさいよ。こいつが帝国に居る限り、あんた達が勝てるはずがないんだから」
「何だい何だい、本当に情けない奴だね!!子供相手に土下座とは……」


頭を下げたギルスに対して今度は小馬鹿にしたようにサムカは呟き、彼女の言葉を聞いたギルスは歯を食いしばるが、敗者である自分が文句を言う権利はない事は重々承知しているので何も言い返せない。そんな彼の元に兵士を振りはらったサムカが訪れ、座り込んでも尚自分達よりも身長が高いギルスに目掛けて張り手をくらわす。


「ふんっ!!」
「ぐはっ!?」
「嘘っ!?」


人間の女性が繰り出す威力とは思えない程にギルスの身体が吹き飛び、地面に積もった雪の上に倒れ込む。その怪力にリディアは驚きの声を上げ、一方でコトネは思い出したように呟く。


「……サムカは帝国の中でも最もレベルが高い女将。だから他国では帝国の雪女ならぬ雪ゴリラと言われてる」
「雪ゴリラ?」
「ちょっとあんた、恥ずかしい渾名をばらすんじゃないよ!!レベルだって70を超えた程度で騒ぐんじゃないよ全く……」
「70越え!?もう英雄の領域じゃない!!」
「英雄……?」
「レベルを70まで向かえた人間はどの職業であろうと歴史上の英雄に匹敵する能力を持つと言われている……つまり、レベル99のルノは神の領域」
「それは言い過ぎだと思うけど……」


コトネの説明によるとサムカは帝国の中で最もレベルが高く、最強の将軍だと言われている。事実、帝国四天王を差し置いて彼女が重要な国境の警備を任せられている辺り、信頼度が伺える。


「ちなみにサムカは元々は帝国四天王だった。でも、10年ほど前から四天王の座を他の人間に譲ってこの城を守り続けている」
「えっ!?そうだったんですか!?」
「ああ、懐かしいね……別に四天王の座なんてどうでも良かったんだけど、ギリョウの爺さんがどうしてもというから四天王を名乗ってたんだけどね。あの頃はダンテもドリアもひよっこで使い物にならなかったね」


驚愕の事実にルノは驚き、その一方でサムカは昔の事を思い出すように感慨深い表情を浮かべる。ちなみにコトネとリーリスは比較的に最近に四天王の座に就いたのでサムカとの付き合いは実は他の四天王よりも短い。
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