最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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巨人国 侵攻編

国境へ

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「おい、あいつらって巨人国の兵士じゃないか?何で配給なんか……」
「大丈夫なのかしら……」
「どうでもいいよ、腹減ってんだからさっさと食わせてくれ!!」


巨人兵の元に空腹に耐えかねた民衆が殺到し、次々と食料を受け取る。兵士達は自分達が用意した食料を渡す事に苦い表情を浮かべるが、最早この状況では逆らう事も出来ず、デブリとガーゴイルに急かされて渋々と食料を分け与える。


「うん、この様子なら大丈夫かな……何かあった時はガー君がリディアに連絡を取るから、異変が起きたらすぐに知らせてねデブリ王子」
「お任せください師匠!!おい、よろしく頼むぞガー君とやら」
「シャアッ」
「何で仲良くなってんのよあんたら……」


ルノの言葉にデブリは敬礼し、相方となるガーゴイルと腕を組み合う。その様子を見てリディアは呆れた表情を浮かべるが、この場は二人に任せてルノはまずは拘束している巨人国の軍隊を国境に送り届けるために氷飛行機に乗り込む。


「ほら、リディアとコトネも早く乗ってよ。すぐに国境に向かわないと……」
「待って……この恰好で行くと凍える。ここで防寒着を買った方が良い」
「え?そんなに寒い場所にあるの?」
「国境付近は年中雪が積もっている。ちゃんとした防寒対策を行わずに行くのは危険過ぎる」
「そんな場所に氷の乗り物で行くの!?辿り着く前に凍死するじゃない!!」
「しょうがない……なら、冬服用に取っておいた服を出すね」


コトネによると帝国と巨人国の国境付近は常に雪で覆われた土地らしく、仕方なく収納石から念のために普段から入れておいた上着と毛皮のマントを身に着ける。3人は着替えを負えて準備を整えると、今度こそ国境に向けて出発した――




――氷飛行機で移動を開始してから1時間ほどが経過すると、窓から映し出される光景が徐々に変わり始め、延々と広がる荒野を移動中に雪が降り始める。先に進めば進むほどに降り注ぐ雪の量が増加し、最終的には窓の視界を塞ぐほどに激しい吹雪と化す。

ルノは複数の氷飛行機を操作しながら吹雪の中を移動するが、視界が塞がっているせいで自分が何処を移動しているのかも分からず、助手席のコトネに相談する。


「う~ん……なんか、かなりふぶいてきたな。これだと前も見えないし、地図の何処を移動しているのかも分からないや」
「……雪が降る前に最後に確認した地図の位置はここ、そして移動を開始してからの時間を考慮すると、多分ここら辺にいると思う」
「それにしても凄い雪ね……こんな場所に本当に国境を守る城があるの?」


窓一面が吹雪によって遮られ、自分達が何処を移動しているのかも分かりにくく、地図を確認しながら何か目印になるような場所はないのかと探していると、前方の方角から大きな影を捉えた。


「うわ、何だ!?」
「雪山よ!!早く止まらないと衝突するわよ!!」
「……着いた。ここが帝国と巨人国の堺目に存在するホクヘキ山脈で間違いない」


慌てて氷飛行機を停止させると、ルノ達の目の前には地球のヒマラヤ山脈を想像させるような険しい山脈が存在し、まるで帝国と巨人国の堺目を示す様に存在する山脈の前で氷飛行機は停止する。唐突な停止だったので氷飛行機に閉じ込められた巨人兵や公爵の私兵の何人かは吐いてしまったが、別の氷飛行機に乗り込んでいるルノ達は気付かずに山脈の様子を確認する。

ホクヘキ山脈と呼ばれるこの場所には帝国が建設した小城がいくつか存在し、一定の間隔を開いて横並びに建設されている。その中で最も大きな城は最も大きな山の頂上部に建設され、どうやらそこに国境の警備を任されている帝国の将軍が滞在しているらしい。


「ルノ、あそこがホクヘキ山脈を任されたサムカ将軍の城。ギリョウと同年代の将軍で何十年も国境を守っている将軍」
「へえ……あそこだけ随分と大きな城だね」
「帝国がまだ建国される前から存在する古城……今は帝国が管理しているけど、元々は過去に召喚された勇者が作り出した城だと伝わってる」
「ちょっと待ちなさいよ、どんだけ高い場所に城を建ててるのよ……下から登るだけでも日が暮れそうじゃない」


コトネによるとサムカと呼ばれる将軍が滞在しているのはホクヘキ山脈の中でも最も高度が高く、山道が険しい場所に城が存在した。リディアの言葉通り、地上から移動するだけでも相当な苦労が必要に思える場所に城は存在し、普通の人間ならば登るだけでも苦労するだろう。

だが、空を飛ぶルノ達の場合は山道の険しさなど関係なく、城の規模から考えても公爵の私兵を乗せた兵士達も共に降りる事は可能だと判断し、ルノは城の上空に移動してまずは事情を伝えるために城内の人間に事情を伝えるため、コトネが開閉口の前に立つ。


「本当にここで開けても大丈夫?まだかなり地上と距離があるけど」
「……問題ない。この程度の高さなら私なら落ちても平気」
「じゃあ、行くよ!!」


城内に存在する中庭の上空付近にてルノは自分達が乗っている氷飛行機だけを移動させると、開閉口を解放して先にコトネを下ろす。
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