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巨人国 侵攻編

巨人軍の撤退

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「これで大丈夫……とは言えるか分からないですけど、帝都へ戻れば公爵を治す事が出来るかもしれません」
「ほ、本当ですか!?」
「だけど、公爵を送り届ける前に巨人国の人達は自分の国へ帰ってもらいます。問題ないですか?」
「いや、それは……」
「ああ、問題ない。我々を国境まで運んでくれれば本隊へ合流し、この国を攻める事を止めるように進言する」


ルノの言葉にギルスは即座に従い、その言葉を聞いた屋敷内の巨人兵は驚いた表情を浮かべるが、彼等に対してギルスは命令を下す。


「街に残った全ての兵士をこの場に呼び集めろ。我々は撤退する……全ての責任は俺が取る」
「ですがギルス将軍!!今更引き返すなんて……」
「これは命令だ!!もう我々は負けたのだ……全員をすぐに呼び集めろ!!」
「は、はい……」


ギルスの命令に巨人兵は戸惑いながらも街の中に残った兵士達を屋敷に呼び集め、その間にコトネもノーズに仕える私兵達に命令を与える。


「……貴方達にもノーズ公爵の代わりに色々と聞きたいことがある。嘘偽りなく答えてもらう」
「は、はい……分かりました」


ノーズをルノ達が抑えている以上、彼に仕える兵士達は逆らう事が出来ず、観念したようにこれまでのノーズの行動を全て話す。彼がどのような方法で巨人国の軍隊を引き寄せ、まるで帝都の異変を見計らったかの様に巨人国の軍隊を動かしたのかを説明を行う。

コトネが聞き込みを行っている間、リディアは街の調査をさせていたガーゴイルを呼び寄せ、ルノに情報を伝える。どうやら無人だと思われていた街中の民衆は大きな建物に匿っている事が発覚した。。


「ねえ、街の住民を発見したわよ。どうやら街の北部に存在する大きな建物に匿っているらしいわ」
「建物?」
「ああ……街の人間達は一時的に公爵が創設した建物の中で隔離している。数日程前から彼等が情報を漏らさぬように街の住民達を外に出さないように隔離する必要があった」
「そうだったのか……なら、とりあえず住民の人達は解放してください。もう隔離する必要もないですし……」
「いや、しかし……」
「師匠、もしも民衆が暴動を起こしたら問題ですぞ。下手をしたら公爵や兵士を殺してしまうかも……」


ルノの言葉に公爵配下の兵士達は顔色を悪くし、デブリが彼等が心配する理由を言い当てる。確かに民衆にしてみればいきなり街を選挙され、自分達を閉じ込めた兵士達に不満を抱いているのは間違いなく、もしも建物を解放すれば怒り狂った民衆が反乱を企てるかもしれない。

だからといって民衆を放置するわけにもいかず、彼等を解放しなければ負担を強いる事になる。だが、解放すれば兵士の身が危うく、かといって解放しなければ何の罪もない民衆が苦労を負う。そう考えたルノはある方法を思い出す。


「じゃあ、公爵の配下の兵士の皆さんも一緒に付いてきてください。そうすれば問題ないでしょ?」
『えっ?』


まさかのルノの発言に兵士達は唖然とした表情を浮かべ、またとんでもない事を言い出したルノにリディアは頭を抑える――




――1時間後、夜が明ける頃には街中に解放された民衆が溢れかえり、代わりに上空には新しい大型飛行機の氷塊が浮上していた。乗組員は公爵配下の兵士達であり、彼等も公爵と共に帝都へ連れて行く事にしたルノは兵士達を先に避難させ、解放した民衆に呼びかける。


「皆さんを隔離した公爵配下の兵士達は既に帝国軍が捕縛しています!!公爵は病に倒れたのでもう皆さんは安全です!!巨人国の軍隊もここに戻る事はないので安心してください!!」
「近日中には帝都から食料が送り込まれる予定よ!!その間、あんた達の街はこの筋肉男とあたしの魔獣が守ってあげるわ!!」
「ふんっ!!安心するがいい、どんな敵が現れようとお前達は僕が守ってやる!!」
「シャアアッ!!」


街の広場に集まった民衆にルノ達は演説を行い、もうノーズ公爵も巨人国の兵士達もこの街から退去した事を話し、代わり街を守る人間が送り込まれるまでの間は冒険者の恰好をした状態でポージングを行うデブリと、彼の隣で同じく力こぶを作るガーゴイルが立っていた。


「お、おい……あれ、森人族なのか?なんか、凄い筋肉してるけど……本当は森人族のふりをした小柄な巨人族じゃねえの?」
「あれってガーゴイルだよな?あんな危険な魔獣を従えているのか?」
「本当にあいつらだけで俺達を守れるのか?」
「でも、街の何処にも公爵の兵士の姿が見えないわ……この人達が嘘を吐いているようにも思えないのよね」


広場に集まった民衆はルノ達の言葉に半信半疑だったが、実際に街の何処にも兵士の姿は見えず、上空に浮かぶ巨大な飛行物体の光景を見て戸惑いを隠せない。そんな彼等を安心させるようにルノは公爵の屋敷に存在した物資と、事前に巨人軍から押収しておいた物資を提供する。


「食料だけは大量にありますので今から配布を行います!!たくさんあるので焦らず、並んで受け取ってください!!」
「人手が足りないからあんた達も手伝いなさいよ!!ほら、あんた達もさっさと運びなさい!!」
「く、くそっ……何でこんな事に」
「いいからさっさと運べ!!」


割烹着を身に着けた巨人兵達が大量の物資を運び込み、配給を開始する。彼等はギルスに命じられてルノ達が戻るまでの間はデブリとガーゴイルと共に街の警備を任せられた兵士達であり、渋々と民衆に配給を行う。
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