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巨人国 侵攻編
猛毒
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「ぐふっ……がはぁっ!?」
「おい、ここに薬師はいないのか!?早く呼んで来い!!」
「は、はい!!」
激しく咳き込むノーズを見てギルスは兵士に指示を出し、心配したルノ達もノーズの元へ近づこうとした瞬間、リディアがそれを止める。
「待ちなさい!!そいつに近付いちゃ駄目よ!!」
「えっ?」
「ど、どういう意味だ?」
「……嫌な臭いがする、皆下がって」
普通の人間よりも嗅覚が優れているリディアとコトネはノーズの身体から発せられる臭いを感じ取り、彼から離れるように指示を出す。やがてコトネが手袋を取り出してノーズを地面に横たわらせると、彼の服を膜って様子を伺う。その結果、身体の至る箇所に斑模様の黒いしみが浮き上がっていた。
「これは……王女様と同じ!?」
「間違いない、呪毒に侵されている……このままだと公爵は死ぬ」
「そんな!?」
「何とかならないのか!?」
「すぐにリーリスの元へ運ばなければならない。でも、この身体だと1時間もしない内に死んでしまう」
「1時間だって……!?」
ここから帝都まではかなりの距離が存在し、仮にルノが飛翔術を利用して急いで戻っても1時間以内に戻る事は難しい。しかも呪毒の治療薬を作り出す時間を考えるとどうしても間に合わない。ノーズ公爵を連れて移動するという方法もあるが、それだと身体への負担が大き過ぎて死亡してしまう。
「ど、どうにか出来ないのか!?」
「無理……今の状態じゃ薬は用意出来ない」
「ああっ……ど、どうして公爵がこんな事に」
「嘆くな!!嘆いている暇があれば助ける方法を探せ!!」
「がはぁっ!?」
既に意識も保てないのか血反吐を吐きながら公爵は呻き、その様子を見たルノはどうすればいいのかを考え、不意にある事を思い出す。
「コトネ、確か呪毒は聖属性の回復魔法を当てれば進行は遅らせる事が出来るんじゃ……」
「……出来る。でも、この場に治癒魔導士はいない」
「俺なら出来るかもしれない!!」
「ほ、本当ですか師匠!?」
「あんた、回復魔法まで使えるの!?」
ルノは以前に初級魔術師のレベルを99にまで上げたときに他の職業へ変更出来る事を思い出し、早速「治癒魔導士」の職業へ変更しようとした時、コトネがそれを止める。
「待って……この人の症状はもう最終段階まで至ってる。下手に回復魔法で身体を刺激すると逆に命が危ない」
「そんな……」
「なら、どうすればいいのだ!?」
「…………」
全員に問い詰められてコトネは困った表情を浮かべ、別に彼女も意地悪で反対しているわけではなく、救う方法が分からないのだ。ルノはどうしようもないのかと考えたとき、上空に浮揚する氷塊の飛行機を見てある方法を思いつく。
「冷凍睡眠……そうだ、冷凍睡眠ならどうだろう!?」
「冷凍……なに?」
「……?」
ルノの言葉に全員が戸惑い、この世界では存在しない医療技術らしく、簡単に説明を行う。
「えっと、俺の世界では人間を凍らせる事で動物の冬眠の様に長期間の間、眠らせる事が出来るんだ。だからそれを利用すれば病気の進行を抑えてリーリスの元へ運び出せるかもしれない」
「冬眠?そんな事が出来るの?」
「……分からない、でも他に方法が思いつかない。ここで俺の魔法で凍り付かせた後、帝都へ戻ってリーリスに蘇生して貰うしかないと思う」
「そんな一か八かの方法を試す気か!?貴様、ノーズ公爵が死んだらどうする!?」
「なら、他に方法があるんですか!?」
兵士達はノーズを氷結化させる方法に激怒するが、逆にルノに問い質されると何も言えず、どちらにしろこのままの状態ではノーズの命が危うい。しばらくの間は静寂が訪れ、やがて全員がルノに視線を向ける。
「……分かった、やってくれ」
「他に方法がないのなら……」
「どうか公爵を救ってください……」
「……はい」
兵士達はその場に跪いてルノに懇願し、ノーズの事を頼む。ルノはノーズ公爵の元へ赴き、まずは彼の服を脱がせて裸にさせ、全員を離れさせて掌を構えると魔法の力で彼の身体を凍り付かせた。
「氷塊……!!」
「うっ……」
強化スキルも発動させてルノは小さな氷塊をノーズの胸元に移動させると、全身に冷気が放たれ、徐々にノーズの肉体が凍り付く。やがて数秒後には氷像と化したノーズが存在し、ゆっくりと刺激を与えないようにルノは氷像を持ち上げ、収納石のブレスレットを利用して異空間へ預ける。
(やった、この状態なら異空間に預けられる!!)
本来、収納石や空間魔法で開く異空間には生物を送り込む事は出来ない。しかし、今回の場合はノーズは全身を氷漬けにされ、生命活動を停止しているのが理由なのか問題なく異空間に飲み込まれ、これで時間経過の影響を受けない。すぐに帝都へ引き返して身体を溶かして蘇生させれば助かる可能性はあり、ルノは皆に振り返る。
「おい、ここに薬師はいないのか!?早く呼んで来い!!」
「は、はい!!」
激しく咳き込むノーズを見てギルスは兵士に指示を出し、心配したルノ達もノーズの元へ近づこうとした瞬間、リディアがそれを止める。
「待ちなさい!!そいつに近付いちゃ駄目よ!!」
「えっ?」
「ど、どういう意味だ?」
「……嫌な臭いがする、皆下がって」
普通の人間よりも嗅覚が優れているリディアとコトネはノーズの身体から発せられる臭いを感じ取り、彼から離れるように指示を出す。やがてコトネが手袋を取り出してノーズを地面に横たわらせると、彼の服を膜って様子を伺う。その結果、身体の至る箇所に斑模様の黒いしみが浮き上がっていた。
「これは……王女様と同じ!?」
「間違いない、呪毒に侵されている……このままだと公爵は死ぬ」
「そんな!?」
「何とかならないのか!?」
「すぐにリーリスの元へ運ばなければならない。でも、この身体だと1時間もしない内に死んでしまう」
「1時間だって……!?」
ここから帝都まではかなりの距離が存在し、仮にルノが飛翔術を利用して急いで戻っても1時間以内に戻る事は難しい。しかも呪毒の治療薬を作り出す時間を考えるとどうしても間に合わない。ノーズ公爵を連れて移動するという方法もあるが、それだと身体への負担が大き過ぎて死亡してしまう。
「ど、どうにか出来ないのか!?」
「無理……今の状態じゃ薬は用意出来ない」
「ああっ……ど、どうして公爵がこんな事に」
「嘆くな!!嘆いている暇があれば助ける方法を探せ!!」
「がはぁっ!?」
既に意識も保てないのか血反吐を吐きながら公爵は呻き、その様子を見たルノはどうすればいいのかを考え、不意にある事を思い出す。
「コトネ、確か呪毒は聖属性の回復魔法を当てれば進行は遅らせる事が出来るんじゃ……」
「……出来る。でも、この場に治癒魔導士はいない」
「俺なら出来るかもしれない!!」
「ほ、本当ですか師匠!?」
「あんた、回復魔法まで使えるの!?」
ルノは以前に初級魔術師のレベルを99にまで上げたときに他の職業へ変更出来る事を思い出し、早速「治癒魔導士」の職業へ変更しようとした時、コトネがそれを止める。
「待って……この人の症状はもう最終段階まで至ってる。下手に回復魔法で身体を刺激すると逆に命が危ない」
「そんな……」
「なら、どうすればいいのだ!?」
「…………」
全員に問い詰められてコトネは困った表情を浮かべ、別に彼女も意地悪で反対しているわけではなく、救う方法が分からないのだ。ルノはどうしようもないのかと考えたとき、上空に浮揚する氷塊の飛行機を見てある方法を思いつく。
「冷凍睡眠……そうだ、冷凍睡眠ならどうだろう!?」
「冷凍……なに?」
「……?」
ルノの言葉に全員が戸惑い、この世界では存在しない医療技術らしく、簡単に説明を行う。
「えっと、俺の世界では人間を凍らせる事で動物の冬眠の様に長期間の間、眠らせる事が出来るんだ。だからそれを利用すれば病気の進行を抑えてリーリスの元へ運び出せるかもしれない」
「冬眠?そんな事が出来るの?」
「……分からない、でも他に方法が思いつかない。ここで俺の魔法で凍り付かせた後、帝都へ戻ってリーリスに蘇生して貰うしかないと思う」
「そんな一か八かの方法を試す気か!?貴様、ノーズ公爵が死んだらどうする!?」
「なら、他に方法があるんですか!?」
兵士達はノーズを氷結化させる方法に激怒するが、逆にルノに問い質されると何も言えず、どちらにしろこのままの状態ではノーズの命が危うい。しばらくの間は静寂が訪れ、やがて全員がルノに視線を向ける。
「……分かった、やってくれ」
「他に方法がないのなら……」
「どうか公爵を救ってください……」
「……はい」
兵士達はその場に跪いてルノに懇願し、ノーズの事を頼む。ルノはノーズ公爵の元へ赴き、まずは彼の服を脱がせて裸にさせ、全員を離れさせて掌を構えると魔法の力で彼の身体を凍り付かせた。
「氷塊……!!」
「うっ……」
強化スキルも発動させてルノは小さな氷塊をノーズの胸元に移動させると、全身に冷気が放たれ、徐々にノーズの肉体が凍り付く。やがて数秒後には氷像と化したノーズが存在し、ゆっくりと刺激を与えないようにルノは氷像を持ち上げ、収納石のブレスレットを利用して異空間へ預ける。
(やった、この状態なら異空間に預けられる!!)
本来、収納石や空間魔法で開く異空間には生物を送り込む事は出来ない。しかし、今回の場合はノーズは全身を氷漬けにされ、生命活動を停止しているのが理由なのか問題なく異空間に飲み込まれ、これで時間経過の影響を受けない。すぐに帝都へ引き返して身体を溶かして蘇生させれば助かる可能性はあり、ルノは皆に振り返る。
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