最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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巨人国 侵攻編

ノーズの異変

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氷自動車が屋敷の玄関の前に着地すると、即座に武装した兵士達が槍をルノ達に構える。彼等は警戒しながらもいつでも攻撃に移れる体勢に入り、警備隊長を務める男性がルノ達の正体を問い質す。


「な、何者だ!!お前達は何処から来た!?」
「ちょっと、止めておきなさいよ。あんたら、こいつが誰だか知らないの?」
「師匠に刃を向けるとは何と失礼な奴等だ!!」
「……ルノさん、やっておしまいなさい」
「水戸黄門かっ」


ルノ達は氷自動車から降りると兵士達は慌てて槍の刃先を向けてくるが、ルノは怯えた様子も見せずに警備隊長の元へ近づき、ノーズ公爵を出す様に申し付ける。


「帝都からやって来たルノと言います。急いでいるので公爵を呼んでくれませんか?」
「帝都からだと……いや、待て!!今、ルノといったのか!?まさかあの……!?」


この北方領地でもルノの名前は知れ渡っていたらしく、兵士達は困惑の表情を浮かべる。噂では竜種を単独で圧倒する最強の初級魔術師と聞いていたが、目の前のルノはどうしてもただの少年にしか見えず、どう見ても噂に聞くような凄腕の魔術師には見えなかった。

だが、実際に奇怪な氷の魔法を駆使してこの場に訪れた事は間違いなく、現在も上空には巨大な飛行物体が複数浮揚しており、もしもあれほどの物体が街に降りてきたら大惨事を引き起こす。警備隊長は冷や汗を流しながらもルノが本当に例の噂の人物なのかを確かめる。


「お、お前は本当にあの……いや、貴方は噂に聞く初級魔術師殿なのですか?」
「どんな噂が流れているのかは知りませんけど、多分そうですよ」
「……ならば証拠を見せてくれ。噂に聞く初級魔術師は竜種を屠る程の実力者だと聞いている。それが本当ならば我々のその力を見せてくれ」


実際に警備隊長は竜種を屠れる程の力を持つ魔術師が存在するとは考えておらず、ルノの噂はあくまでも帝国が流した大げさな噂だと思い込んでいた。だが、実際に上空に浮揚する巨大な氷塊の飛行物体を確認すると噂が真実なのではないかと考え始め、ルノに実力を示す様に申し込む。

最も実力を示せと言われたルノは困り果て、一体どのような魔法を見せれば兵士達を納得できるのかと考えたとき、一人だけ氷自動車の中で項垂れていたギルスが立ち上がって二人の元へ赴く。その手元には嘔吐物を収める袋が握りしめられ、顔色を悪くしながらもギルスは二人の間に立つ。


「ま、待て……ぐふっ、俺から説明する……ルノ殿は下がってくれ」
「な、何だ貴様は……いや、まさか貴方は!?」
「ギルス将軍!?どうしてここに!?」


ギルスの顔を確認した警備隊長と警備兵は騒ぎ出し、すぐに荷物の運搬を行っていた巨人族の兵士も集まる。数日前に軍隊を率いて行動を開始したギルスがこの場に存在する事に動揺が走り、一体何が起きたのかを問う。


「ギルス将軍!!どうして貴方がここに……」
「ちょっと待ってくれ、まだ気分が悪くてな……少しだけ休ませてくれ」
「気分が悪い……まさかお体を壊したのですか!?」
「いや、そういうわけではないが……大分落ち着いてきた。もう大丈夫だ」


車酔いの影響で弱っていたギルスも地上に降りた事で回復したらしく、冷静に周囲の兵士達を呼び集めて事情を説明する。


「我々の軍隊はこのルノ殿に敗れ、現在は上空のあの氷の塊の中に待機している……この後、本国へ送り返してもらう予定だ」
「な、何だって!?」
「あの変な乗り物の中に……!?」
「いや、それよりも降伏とはどういう意味ですか将軍!?まさか、本当にこんなガキにあんたは降伏したんですか!?」
「口に気を付けろ!!この御方の力は計り知れん……例え、10万の軍隊であろうと圧倒できる戦力を保持しているのだぞ!!」
「桁が一桁足りないんじゃないの?」
「……いや、ルノなら二桁は足りない」
「二人とも、俺を何だと思ってるの?」


ギルスの言葉に巨人族の兵士は衝撃を受けた表情を浮かべ、そんな彼等の反応を楽しむようにリディアとコトネはヤジを飛ばしてルノに注意され、その彼等の態度を見た兵士は納得できずにルノに掴みかかろうとした。


「俺は信じないぞ!!こんなガキに俺達が負けるはずがねえ!!」
「うわっ!?」
「止めろ!!その男に手を出すな!!」


気性の荒い巨人族の兵士がルノの身体を掴み上げて持ち上げ、そのまま顔を覗き込んで怒りの表情を抱くが、慌ててギルスが止める暇もなく兵士の悲鳴が屋敷内に響き渡る。


「もう、離してください!!」
「あだだだっ!?」
「だから止めろと言っただろうが……!!」


ルノは自分の服を掴む巨人族の兵士の腕を軽く握りしめると、兵士は情けない悲鳴を上げて腕を抑え、まるで万力に締め付けられたように掴まれた腕を抑える。その光景に他の兵士達は唖然とした表情を浮かべ、巨人族が人間に力負けする光景を見て動揺を隠せない。
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