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巨人国 侵攻編

閑話 〈四天王〉

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――とある日、王城に存在する会議室では帝国四天王が勢ぞろいしていた。普段は各々に仕事があるのであまり全員が集まる機会は少なく、四天王といっても別に常日頃から行動を共にしているわけではない。しかし、今回の会議の議題を持ち込んだのはリーリスであり、彼女は急遽全員を呼び出してこれまで無視し続けていた重要な問題を話し合う。


「皆さん、よく集まってくれましたね。さあ、まずは席に座ってください」
「おい、一体何事だ?こっちは休暇中だったんぞ」
「僕も仕事の途中なのですが……」
「儂も護衛兵の指導を行っていたのだが……何か問題でも起きたのか?」
「……全員集まった」


リーリスの目の前にダンテ、ドリア、ギリョウ、ヒカゲが席に座ると、彼女は滅多に見せた事のない深刻な表情を浮かべ、その普段の彼女らしからぬ態度に4人は表情を引き締める。


「今回、皆さんに集まってもらったのは他でもありません……私達全員が関わる大きな問題です。なので全員で話し合い、解決する必要があります」
「何だよ、その問題って……」
「全員、という部分から察するに僕達全員が共通する問題なのですか?」
「心当たりは特にないがのう……」
「……いや、私はある」


ヒカゲだけはリーリスが告げる「問題」に関して心当たりがあるらしく、彼女が答える前に先にリーリスが帝国四天王全員が抱える大きな問題を口にした。




「私達は帝国四天王と呼ばれていますが……四天王なのに五人居る事に関して話し合う必要があります」
『はっ……!?』




リーリスの衝撃的な発言に会議室内の全員が驚愕の表情を浮かべ、今まで目を逸らしていた最大の矛盾に対して遂に向き合う時が訪れた。


「い、いやいや……ちょっと待て、別にそんな事どうでもいいだろうが!!」
「そ、そうですね。別に問題という程ではないと思いますけど……」
「う、うむ……別に四天王が五人居たとしても何も問題はないではないか?」
「……確かに」
「シャラップ!!」


だが、冷静になったリーリス以外の四人組は別にこの問題を解決する必要はないのではないかと訴えるが、そんな考えを持つ四人に対してリーリスは激しく叱りつける。


「私達が兵士達の間で何と呼ばれているのか知ってるんですか!?「あっれ~?四天王なのに五人組って、おかしくね?」という風に馬鹿にされてるんですよ!!」
「いや、別にそれは馬鹿にされているわけではないのでは……」
「だけど他国の人間が毎回訪れる度に「四天王……えっ?四天王?五人なのに四天王なんですか?」と聞かれると説目に困った事が皆さんもあるでしょう!!」
「それは……否定できんのう」


帝国四天王は仇名ではなく役職のため、リーリス達が自己紹介を行う度に初めて会う人間には「四天王なのに五人組」という点に疑問を抱かれる。実際に他国の話になるが巨人国の「四柱将」は四人組にも関わらず、帝国四天王に関しては五人組で通していた。


「というか、そもそもお前が四天王に抜擢されなきゃ問題なかったんだろうが!!疑問があるのならお前が皇帝陛下に直訴して将軍を辞めやがれ!!」
「私だってこんな役職辞められるのならとっくの昔に辞めてますよ!!でも、辞めちゃうと研究班の予算を削ると脅されているから仕方なく働いているんですよ!!」
「そ、そんな理由で……」
「ふむ、ならばここは功績を考えて最も国に貢献していない者を除外するのはどうじゃ?」
「……その理論だとダンテがいらない子」
「誰がいらない子だ!!ぶっとばすぞてめえっ!!そもぞも爺さんこそ隠居するんじゃなかったのかよ!!当たり前のように復活しやがって!!」
「いや、それがのう。この間にルノ殿が持ってきてくれた「ぷろていーん」というのを飲み始めてから身体の調子が良くなってな。お陰でほれ、こうも肉体の元気が有り余っとる!!」
「うわ、老人マッチョ!?というかルノさん、ナオさんから薬を貰ってたんですね……」
「……話が脱線している」


誰が四天王を辞めるかで揉め、言い争いの結果、最も国に対して貢献していない者が四天王を辞職する事が決まる。


「私は王国のためにどれだけ役立つ魔道具を作り出したと思ってるんですか?それにお姫様の病気を治したのも私ですからね!!」
「貴方の魔道具の開発のために僕がどれだけ実験体になったと思ってるんですか!!」
「それにお前がお姫様を治せたのはあの坊主が持ち込んだ調合本のお陰だろうが!!お前のやった事なんて本に書いてあった薬を作っただけじゃねえか!!」
「何ですと!!薬の調合がどれだけ大変なのか知らない癖に!!」
「まあまあ……」
「どうどう」


リーリスの発言にドリアとダンテが抗議を行い、ギリョウとヒカゲが抑え込む。


「僕は魔術師部隊の指導官として日夜彼等と共に魔法を鍛えています。最近ではドリス様も迎えて共に魔法の研究を行っていますよ」
「まあ、その魔法に関しても活躍する機会は全てルノさんが独占してますけどね……」
「確かにのう」
「おい、辞めろよ。ドリアが涙目になっちまっただろうが!!」


ドリアの発言にリーリスとギリョウがルノに活躍の機会を奪われている事を指摘すると、ドリアは言い返す事も出来ずに涙目で顔を伏せる。


「はんっ!!それなら俺は日夜この王都を守るために警備兵と共に働きまくってるぜ!!俺が居る限りはこの王都の平和は誰にも壊させねえ!!」
「この人、何言ってんですか?」
「うむ、ルノ殿が最初にこの城に訪れたときの事を忘れておるのか?」
「……説得力がない」:


王都の警備を任されているダンテの発言に全員が冷たい視線を向け、ルノが王城に訪れたとき無謀にも考え無しに突っ込み、真っ先に敗れていた事を指摘するとダンテは全身から冷や汗を流す。


「儂は兵士の指導を任されておる。そろそろ引退しようかと考えておったが、レナ殿のお陰で身体の不調も治ったしのう。まだまだ現役じゃ」
「そうですね、ギリョウさんに居なくなられると困りますね」
「……でも、兵士から指導がきついという苦情が届いてる」
「この爺さんの指導はスパルタだからな……」


最古参であるギリョウに関しては特に年齢の問題で引退するのではないかと心配されていたが、本人はまだまだやる気十分だった。


「……私の場合は普段から色々と情報収集している。それに私はあくまでも日の国の人間、雇われているだけだから別に役職なんて必要ない」
「という事はヒカゲさんは帝国四天王でなくとも構わないんですね?」
「ですが、やはり日の国との関係性を考えた場合、他に妥当な役職はありませんね……」


ヒカゲに関しては別に四天王の座には興味はないが、彼女は日の国の日影の頭領のため、それ相応の役職を与えなければ国家間の関係に問題が生じる可能性がある。結局色々と話し合った結果、どうしても現状は五人組の状態で四天王を名乗り続けるしかなかった。


「仕方ないですね、もうしばらくの間は五人組で四天王を名乗るしかありませんね」
「そうですね……やはり、こんな方法で四天王の中から一人を辞めさせる方が問題があります」
「爺さんがぽっくり逝けば問題解決するんじゃねえのか?」
「ほほう、生意気な口を言うではないか小僧が……今ここでお主を切り捨てても構わんぞ?」
「……喧嘩は駄目、皆仲良くしないといけない」


会議の結果、やはり四天王はこの五人組だからこそ成り立つと判断し、もうしばらくの間は現状を維持する事が決まった――




――だが、彼等は知らなかった。まさか自分達以外に四天王の称号を与えられる人間が現れる事を。



『いや、不吉な終わり方するなっ!!』


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