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巨人国 侵攻編
全員合流
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「……というか、ナオ君の能力で確認できるならその空間魔法とかいう奴でコトネを呼び出せないの?」
「あっ……言われてみれば確かに」
「木箱に入っているのなら今の内に回収すればばれないんじゃないですか?」
ルノの何気ない言葉にナオは納得し、千里眼で二人の入った木箱を確認しながら兵士達の隙を伺い、空間魔法を発動させて回収を行う好機を狙う。そして兵士達が木箱から視線を逸らした瞬間を逃さず、ナオは黒渦を木箱の正面に生み出す。
「よし、今ですデブリ王子!!」
「ふんぬらばっ!!」
デブリが黒渦の中に腕を突っ込むと、内部から人間が入れる程の大きさの木箱を引き抜き、すぐにナオは空間魔法を解除して黒渦を掻き消す。千里眼を発動させて屋敷の様子を伺うと、兵士達は特に気付いた様子もなく次の木箱を運び込む。
「ふうっ……どうにか成功したようだな」
「コトネさん、私達ですよ。出てきてください」
木箱を地面に置くとリーリスが声を掛けるが、中から返事は戻らず、間違って別の木箱を盗み出したのかと不安を抱いたがやがて蓋が動き出し、箱の中からコトネの声が響く。
『……助けて、出られない。運ばれるときに蓋をしっかりと固定された』
「何やってんですかもう……どうやって抜け出す気だったんですか」
「仕方ない奴だな……ふんぬっ!!」
デブリが木箱の蓋を掴むと力尽くで引き剥がし、内部からコトネとフードを纏った少女が現れる。レナ達は無事にコトネを救出した事に安心するが、彼女の連れている人物を見て全員が驚く。
「ちょ、誰ですかそれ!?」
「な、何でここにアンデッドがいるのよ!?早く離れなさい!!」
「な、何だと!?こいつがアンデッドなのか!?」
「ううっ……」
「……違う、この子は人間」
コトネが連れて来た公爵の娘であるミリアの姿を見てナオ達は警戒するが、ミリアが怯えたようにコトネの背中に隠れるのを見てルノとジャンヌは不思議に思い、二人は近づいてゆっくりと話しかける。
「あの、言葉が分かるのですか?」
「あうっ……」
「この感じ……皆、この子はアンデッドなんかじゃないよ。だって嫌な魔力を感じないから」
「えっ……言われ見てば確かに変わった魔力だが、嫌な感じはしないな」
「あ、本当だ」
「……えっ?あんたら、そんな事が分かるの?」
ルノの言葉に魔力感知の能力を持つナオとデブリはミリアから確かに僅かながら魔力を感じ取り、彼女から感じる魔力は嫌な雰囲気は感じなかった。だが、それだけにどうして彼女の姿が異様なのかが目立ち、一体この少女に何が起きたのかをコトネに皆が尋ねた。
「コトネ、この子は誰?屋敷の中から連れ出してきたの?」
「……そう。この子は公爵の一人娘のミリア」
「ミリアちゃんか……大丈夫、怖くないよ。ほら、そこから出てきなよ」
「うあっ……?」
自分の外見を見ても怯えた様子も見せずに手を差しだしてくるルノにミリアは戸惑い、コトネと共に箱から出てきた彼女に興味深そうにリーリスが覗き込む。
「ふむふむ……肌は腐敗化していますが、それでもはっきりと意識がありますね。私のいっている言葉か分かりますか?」
「あ、ううっ……!?」
「リーリス、その子が怯えてます。よしよし、もう大丈夫ですよ。私達は味方ですから……」
リーリスの言葉にミリアは困惑した表情を浮かべると、ジャンヌがすぐに彼女を抱き寄せて安心させるように優しく頭を撫でる。その行為にミリアは驚愕を隠せず、この姿になってからは誰もが彼女に触れたがろうとしないにも関わらずに躊躇なく自分を抱き寄せて慰めるジャンヌの優しさに彼女は目元を潤ませる。
ジャンヌに抱き寄せられて安らぐミリアの姿を見てコトネは安堵し、即座にリーリスに振り返って彼女の病気の事を話す。この中で不死病に詳しい人間が居るとしたら王国の医療魔導士も務めているリーリスに聞くのが一番だと判断した。
「……リーリス、この子の病気の名前は不死病だと思う。治す事が出来る?」
「不死病ですか、私も知識として知ってはいますが実際に目にしたのは初めてですね。とりあえず、この子の事は私と王女様が見ていますから、その間に他の皆さんに屋敷で調べた報告してください」
「分かった……でも、どうにか治してほしい」
「最善は尽くします」
――コトネはリーリスの言葉を聞いて頷き、彼女がミリアの容体を調べている間にコトネは自分が調べ上げた情報を他の皆に話す。まずは公爵が巨人国の軍隊を手引きした理由に魔王軍が関わっているらしき証拠を見つけた事、そしてミリアが病気になったのは魔王軍のクズノが関係しているかも知れない事を伝える。
「……以上が私の調査結果」
「クズノの奴が帝国のノーズ公爵の元にも訪れていたなんて……そんな事、私聞いてないわよ」
「うぬぬっ……許せん!!つまり奴のせいでこんないたいけな子供が病に侵されたというのか!?何て奴だ!!」
「……それが本当ならなんとしてもぶっ飛ばしたいね」
「俺も許せない……子供を利用する屑野郎が」
話を聞いた全員が魔王軍に対する怒りを抱き、同時に公爵が巨人国と手を結んだ理由は魔王軍が関わっている事を確信した。
「あっ……言われてみれば確かに」
「木箱に入っているのなら今の内に回収すればばれないんじゃないですか?」
ルノの何気ない言葉にナオは納得し、千里眼で二人の入った木箱を確認しながら兵士達の隙を伺い、空間魔法を発動させて回収を行う好機を狙う。そして兵士達が木箱から視線を逸らした瞬間を逃さず、ナオは黒渦を木箱の正面に生み出す。
「よし、今ですデブリ王子!!」
「ふんぬらばっ!!」
デブリが黒渦の中に腕を突っ込むと、内部から人間が入れる程の大きさの木箱を引き抜き、すぐにナオは空間魔法を解除して黒渦を掻き消す。千里眼を発動させて屋敷の様子を伺うと、兵士達は特に気付いた様子もなく次の木箱を運び込む。
「ふうっ……どうにか成功したようだな」
「コトネさん、私達ですよ。出てきてください」
木箱を地面に置くとリーリスが声を掛けるが、中から返事は戻らず、間違って別の木箱を盗み出したのかと不安を抱いたがやがて蓋が動き出し、箱の中からコトネの声が響く。
『……助けて、出られない。運ばれるときに蓋をしっかりと固定された』
「何やってんですかもう……どうやって抜け出す気だったんですか」
「仕方ない奴だな……ふんぬっ!!」
デブリが木箱の蓋を掴むと力尽くで引き剥がし、内部からコトネとフードを纏った少女が現れる。レナ達は無事にコトネを救出した事に安心するが、彼女の連れている人物を見て全員が驚く。
「ちょ、誰ですかそれ!?」
「な、何でここにアンデッドがいるのよ!?早く離れなさい!!」
「な、何だと!?こいつがアンデッドなのか!?」
「ううっ……」
「……違う、この子は人間」
コトネが連れて来た公爵の娘であるミリアの姿を見てナオ達は警戒するが、ミリアが怯えたようにコトネの背中に隠れるのを見てルノとジャンヌは不思議に思い、二人は近づいてゆっくりと話しかける。
「あの、言葉が分かるのですか?」
「あうっ……」
「この感じ……皆、この子はアンデッドなんかじゃないよ。だって嫌な魔力を感じないから」
「えっ……言われ見てば確かに変わった魔力だが、嫌な感じはしないな」
「あ、本当だ」
「……えっ?あんたら、そんな事が分かるの?」
ルノの言葉に魔力感知の能力を持つナオとデブリはミリアから確かに僅かながら魔力を感じ取り、彼女から感じる魔力は嫌な雰囲気は感じなかった。だが、それだけにどうして彼女の姿が異様なのかが目立ち、一体この少女に何が起きたのかをコトネに皆が尋ねた。
「コトネ、この子は誰?屋敷の中から連れ出してきたの?」
「……そう。この子は公爵の一人娘のミリア」
「ミリアちゃんか……大丈夫、怖くないよ。ほら、そこから出てきなよ」
「うあっ……?」
自分の外見を見ても怯えた様子も見せずに手を差しだしてくるルノにミリアは戸惑い、コトネと共に箱から出てきた彼女に興味深そうにリーリスが覗き込む。
「ふむふむ……肌は腐敗化していますが、それでもはっきりと意識がありますね。私のいっている言葉か分かりますか?」
「あ、ううっ……!?」
「リーリス、その子が怯えてます。よしよし、もう大丈夫ですよ。私達は味方ですから……」
リーリスの言葉にミリアは困惑した表情を浮かべると、ジャンヌがすぐに彼女を抱き寄せて安心させるように優しく頭を撫でる。その行為にミリアは驚愕を隠せず、この姿になってからは誰もが彼女に触れたがろうとしないにも関わらずに躊躇なく自分を抱き寄せて慰めるジャンヌの優しさに彼女は目元を潤ませる。
ジャンヌに抱き寄せられて安らぐミリアの姿を見てコトネは安堵し、即座にリーリスに振り返って彼女の病気の事を話す。この中で不死病に詳しい人間が居るとしたら王国の医療魔導士も務めているリーリスに聞くのが一番だと判断した。
「……リーリス、この子の病気の名前は不死病だと思う。治す事が出来る?」
「不死病ですか、私も知識として知ってはいますが実際に目にしたのは初めてですね。とりあえず、この子の事は私と王女様が見ていますから、その間に他の皆さんに屋敷で調べた報告してください」
「分かった……でも、どうにか治してほしい」
「最善は尽くします」
――コトネはリーリスの言葉を聞いて頷き、彼女がミリアの容体を調べている間にコトネは自分が調べ上げた情報を他の皆に話す。まずは公爵が巨人国の軍隊を手引きした理由に魔王軍が関わっているらしき証拠を見つけた事、そしてミリアが病気になったのは魔王軍のクズノが関係しているかも知れない事を伝える。
「……以上が私の調査結果」
「クズノの奴が帝国のノーズ公爵の元にも訪れていたなんて……そんな事、私聞いてないわよ」
「うぬぬっ……許せん!!つまり奴のせいでこんないたいけな子供が病に侵されたというのか!?何て奴だ!!」
「……それが本当ならなんとしてもぶっ飛ばしたいね」
「俺も許せない……子供を利用する屑野郎が」
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