最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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巨人国 侵攻編

城壁の異変

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「何か気になるのコトネ?」
「妙に兵士の数が多い……それに巨人国の兵士もいる」
「え?本当に?」


コトネは「暗視」と「遠視」の能力を持っているので夜間でしかも離れている場所でも見通す事が出来る。ルノは目を凝らすと確かに彼女の言う通りに帝国兵以外にも巨人族の兵士が城門の前でうろついているのを発見し、帝国兵の鎧とはデザインが異なる事に気付く。

どうして他国の兵士がノーズ公爵の収める街の城壁を守護しているのか気になったコトネはこのまま接近するのは不味いと判断し、自分が偵察に向かう事を伝える。


「……少し様子を見てくる。ルノ達はここに居て」
「それならこいつも連れて行きなさいよ。色々と役立つわよ」
「シャアッ?」

リディアの言葉にガーゴイルは自分の顔を指差し、それを見たコトネは少し不安そうな表情を浮かべるが、ルノが彼女の肩を掴んで頼りになる相手だと伝えた。


「大丈夫、ガー君はいい子だよ」
「シャウッ!!」
「……分かった。なら、君は空から移動して出来る限り目立つように動いて、その間に私が忍び込む」
「シャアアッ!!」


コトネの指示にガーゴイルは即座に従い、まずは先行して城壁へ向かう。すぐに兵士達は城壁に接近するガーゴイルはの存在に気付き、慌てて武器を構えた。


「が、ガーゴイルだ!!ガーゴイルが現れたぞ!?」
「馬鹿な!!どうして魔人族がここに!?」
「ちっ!!ぶっ殺せ!!」


帝国兵が慌てふためく中、巨人兵はガーゴイルを見て即座に武器を構え、勇猛果敢に挑む。実は巨人国にもガーゴイルは生息し、巨人兵は頻繁にガーゴイルと戦闘を行っている。なので恐れずにガーゴイルに戦闘を挑むが、彼等の誤算はガーゴイルを操作しているのが一流の魔物使いであるリディアという事だった。

リディアは感覚を共有化させる事でガーゴイルを遠方から操り、まずは城壁を照らす松明を狙う。次々と城壁に設置された松明を破壊すると、兵士達の視界は暗闇に襲われてしまう。


「うわっ!?何だっ!?」
「くそ、こいつ松明を……!!」
「何処だ!!何処に居やがる!!」
「ぎゃあっ!?ば、馬鹿野郎!!無暗に武器を振り回すな阿保が!!」
「あ、すまん……」


暗闇の中で混乱した兵士が武器を振り回した事で他の兵士に傷を与えてしまい、それを確認したガーゴイルは無言で兵士の集団に接近して体当たりを仕掛ける。


「うわっ!?な、何だ!?」
「おい、ぶつかるな!!」
「そっちがぶつかって来たんだろうが!!」
「くそ、敵は何処だ……ぎゃあっ!?」
「ひいっ!?そ、そこか!!」
「馬鹿、止めろ……ぎゃああっ!?」


暗闇で次々と悲鳴が上がり、それを聞いた他の兵士達は恐怖に襲われ、自分の身を守るために武器を構える。城壁の兵士達が混乱に陥っている間、別行動のコトネは鉤縄を利用して城壁を登り、そのまま反対側の方に移動してあっさりと侵入を果たす。


「……ないす」
「シャアアッ!!」


空を取ぶガーゴイルにコトネは親指を向けると、ガーゴイルもそれに応えるよう鳴き声を上げる。即座にコトネは街の中に侵入し、屋根の上を伝ってノーズ公爵の屋敷へ向かう。街は異様に静かで人の気配も感じられず、それを見たコトネは不安を覚えた。


(……調査を終えたらすぐに戻った方が良いかもしれない)


こういう状況では長居は不利だと判断し、コトネは屋根を移動して目的地である公爵の屋敷に到着すると、そこには想像以上の光景が広がっていた。屋敷の敷地内には大量の帝国兵が存在し、木箱に武器や兵糧を詰め込んでいた。しかも荷車の運搬は巨人兵が行い、倉庫へと移動させる。

まるで戦争でも仕掛けるかのように大量の武器と兵糧を木箱に収めている兵士達にコトネは慎重に観察し、その中にノーズ公爵が混じっている事に気付く。年齢は50代前半で年齢の割には非常に外見は若々しく、初見では30代後半の男性に見えるだろう。武闘家としても有名で大柄で筋肉質の大男のため、最初は巨人族かと勘違いしてもおかしくはない。


「ノーズ様!!街中から集めた武器は全て積み終わりました!!」
「うむ……近いうちに追加の物資が送り込まれる予定だ。それまでに新しい木箱を用意しておけ」
「はい!!それと、街の住民から反抗する人間が増加してきたので見回りの兵士を増員してもよろしいでしょうか?」
「問題ない。但し、住民への暴行は最小限に控えろ。彼等を無暗に傷つけるな」
「はっ……では失礼します」


聴覚を鍛えてあるコトネは屋敷の中にいるノーズ公爵と兵士の会話を聞き取り、その内容を知ってやはり彼等が戦の準備をしている事を知る。そして公爵の傍にはフードで全身を覆い隠した人物が存在した。


「ううっ……ああっ」
「おお、すまない。お腹が空いたのか?すぐに食事を用意させるからな……さあ、こっちだ」
「あおおっ……」


フードの人物が呻き声を上げるとノーズは慌てて屋敷の中に連れ込み、兵士達に作業を続けさせる。それを見たコトネは疑問を抱き、危険ではあるが屋敷の中に忍び込んで調査する事にした。
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