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巨人国 侵攻編
捜索中
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――リーリス達が氷飛行機を発見した頃、ルノ達は飛行機の中で食事を行っていた。運転を行うルノは手を離せないため、コトネに手作りのサンドイッチを食べさせてもらう。
「……はい、あ~ん」
「あ~ん……ねえ、この食べ方凄く恥ずかしいだけど」
「駄目、運転に集中する」
助手席のコトネにサンドイッチを食べさせてもらいながらルノは後方を振り返ると、そこにはガーゴイルを背中に乗せた状態で腕立て伏せを行うデブリと、アイマスクをしながら座席で眠るリディアの姿が見えた。
「3456……3457……3458!!」
「シャアアッ……」
「ちょっと、うるさいわよ!!もう少し静かにしなさいよ!!」
「おお、すまんな……ふう、ちょっと休憩するか」
リディアに怒鳴られてデブリは鍛錬を中断すると、ナオから以前に渡してもらった「ぷろていーん」と呼ばれる飲み物を用意する。最近ではリディアからガーゴイルを借りて鍛錬に協力して貰う事が日課となり、ほんの数日でデブリは以前よりも発達した筋肉を確認して頷く。
「ふうっ……城に居たときは満足に食べられなかったからしぼんでいた筋肉も復活したようだな。感謝するぞルノ師匠!!」
「その師匠と呼ぶの止めてくれる?別に王子様のように俺は鍛えてないし……」
「何を言うのですか師匠!!この身体になってから僕に腕相撲で勝った人間なんて師匠しかいないのですぞ!!しかも師匠は外見全く変わっていないのにあれほどの怪力を誇るとは……!!」
「だから俺の場合はレベルの補正で身体能力が上昇しているだけだから、別に王子様のように身体を鍛えているわけじゃないって」
「それでも僕よりも強い事は確か!!それに師匠は僕の恩人です!!恩人ならば敬うのは当然の事でしょう!?」
「……暑苦しい」
少し前にデブリはルノと腕相撲を行い、あっさりと負けてしまった。短期間で見事な筋力を身に着けたデブリではあるが、成長の異能を持ち、しかも前人未到のレベル99の初級魔術師であるルノにはまだまだ及ばず、敗北して以来からルノの事を勝手に師匠と呼び出す。
ちなみにルノは普段からそれなりに身体を鍛えてはいるが、最近は色々な出来事が多すぎて鍛錬など一切やっていない。それでもレベル99であるルノの肉体は衰えを知らず、魔法以外の能力も相変わらず化物じみた力を維持していた。
「ねえ、そんな事よりもまだそのノーズ公爵という奴の元へ辿り着けないの?もうどれくらい移動してるのよ……」
「もっと速度を出していいなら早く辿り着けると思うけど?」
「嫌よ!!また身体が押しつぶされそうになるぐらいなら私は飛び降りるわよ!?」
「……それは同感」
「シャアアッ……」
北方領地に到着するまでに時間が掛かったのはルノ以外の同行者が氷飛行機の最高速度から生み出されるGに耐え切れず、結局は乗員に支障を与えない程度の速度で移動する事になったためである。こんな事になるのならばルノは自分一人で向かうべきだったのかと考えたが、やはり土地勘が無い場所で3人の捜索を行うのも無理があるため、他の人間に協力してもらうしかなかった。
現在、ルノ達は北方領地の大部分を治めるノーズ公爵の元へ向かい、彼に3人の捜索の協力を申し出るために向かっていた。もう間もなくすれば公爵の屋敷が存在する街へ辿り着けるため、ルノは見逃さないように街に視線を向けていると、不意に視界の端に何か黒い物を捉えた。。
「ん?何だ……?」
「どうしたの?」
「いや、一瞬だけど何か黒い渦のような物が見えた気がしたんだけど……」
「シャウッ!!」
だが、ルノが自分の視界に映った物の正体を掴む前に窓を覗いていたガーゴイルが鳴き声を上げ、地上を指差す。ガーゴイルの指差す方向にルノ達は視線を向けると、そこには大きな街が広がっていた。すぐにルノは氷飛行機を減速させ、街の様子を調べる。
「あそこかな?」
「……多分、間違いない。大きな屋敷が見える」
「この距離でそんな物まで確認出来るのあんた?大した視力ね……いや、遠視のスキルを使ったのね」
「えっへん」
「おお、あれが人間の街か……本当に木造製の建物が少ないのだな」
「シャアアッ……」
全員で窓を覗き込んで街の様子を確認すると、早速着地するためにルノは氷飛行機を近づけさせようとしたが、それをコトネが止める。
「……ルノ、この飛行機だと目立ちすぎる。街の外へ着地させた方が良い」
「そう?なら、あそこに停めようか」
コトネの提案を聞き入れてルノは街から離れた場所へ着地すると、徒歩で街へ向かう事にした。時間帯が既に深夜なので城門が開いていない可能性もあったが、将軍であるコトネも同行しているのできっと開けてくれるだろうと考えてレナは氷飛行機から目立たない氷自動車を作り出して向かおうとした。
「じゃあ、ここから先はこれに乗って。時間帯も遅いから、今日は何処かで止まって朝になったら公爵の元へ向かおうか」
「そうね、流石にベッドで休みたいわ」
「師匠がそういうのなら僕は賛成ですぞ!!」
「……待って」
「シャアッ?」
氷自動車に乗り込もうとした3人と1匹をコトネは引き留め、彼女は何かに気付いたように防壁の様子を伺う。
「……はい、あ~ん」
「あ~ん……ねえ、この食べ方凄く恥ずかしいだけど」
「駄目、運転に集中する」
助手席のコトネにサンドイッチを食べさせてもらいながらルノは後方を振り返ると、そこにはガーゴイルを背中に乗せた状態で腕立て伏せを行うデブリと、アイマスクをしながら座席で眠るリディアの姿が見えた。
「3456……3457……3458!!」
「シャアアッ……」
「ちょっと、うるさいわよ!!もう少し静かにしなさいよ!!」
「おお、すまんな……ふう、ちょっと休憩するか」
リディアに怒鳴られてデブリは鍛錬を中断すると、ナオから以前に渡してもらった「ぷろていーん」と呼ばれる飲み物を用意する。最近ではリディアからガーゴイルを借りて鍛錬に協力して貰う事が日課となり、ほんの数日でデブリは以前よりも発達した筋肉を確認して頷く。
「ふうっ……城に居たときは満足に食べられなかったからしぼんでいた筋肉も復活したようだな。感謝するぞルノ師匠!!」
「その師匠と呼ぶの止めてくれる?別に王子様のように俺は鍛えてないし……」
「何を言うのですか師匠!!この身体になってから僕に腕相撲で勝った人間なんて師匠しかいないのですぞ!!しかも師匠は外見全く変わっていないのにあれほどの怪力を誇るとは……!!」
「だから俺の場合はレベルの補正で身体能力が上昇しているだけだから、別に王子様のように身体を鍛えているわけじゃないって」
「それでも僕よりも強い事は確か!!それに師匠は僕の恩人です!!恩人ならば敬うのは当然の事でしょう!?」
「……暑苦しい」
少し前にデブリはルノと腕相撲を行い、あっさりと負けてしまった。短期間で見事な筋力を身に着けたデブリではあるが、成長の異能を持ち、しかも前人未到のレベル99の初級魔術師であるルノにはまだまだ及ばず、敗北して以来からルノの事を勝手に師匠と呼び出す。
ちなみにルノは普段からそれなりに身体を鍛えてはいるが、最近は色々な出来事が多すぎて鍛錬など一切やっていない。それでもレベル99であるルノの肉体は衰えを知らず、魔法以外の能力も相変わらず化物じみた力を維持していた。
「ねえ、そんな事よりもまだそのノーズ公爵という奴の元へ辿り着けないの?もうどれくらい移動してるのよ……」
「もっと速度を出していいなら早く辿り着けると思うけど?」
「嫌よ!!また身体が押しつぶされそうになるぐらいなら私は飛び降りるわよ!?」
「……それは同感」
「シャアアッ……」
北方領地に到着するまでに時間が掛かったのはルノ以外の同行者が氷飛行機の最高速度から生み出されるGに耐え切れず、結局は乗員に支障を与えない程度の速度で移動する事になったためである。こんな事になるのならばルノは自分一人で向かうべきだったのかと考えたが、やはり土地勘が無い場所で3人の捜索を行うのも無理があるため、他の人間に協力してもらうしかなかった。
現在、ルノ達は北方領地の大部分を治めるノーズ公爵の元へ向かい、彼に3人の捜索の協力を申し出るために向かっていた。もう間もなくすれば公爵の屋敷が存在する街へ辿り着けるため、ルノは見逃さないように街に視線を向けていると、不意に視界の端に何か黒い物を捉えた。。
「ん?何だ……?」
「どうしたの?」
「いや、一瞬だけど何か黒い渦のような物が見えた気がしたんだけど……」
「シャウッ!!」
だが、ルノが自分の視界に映った物の正体を掴む前に窓を覗いていたガーゴイルが鳴き声を上げ、地上を指差す。ガーゴイルの指差す方向にルノ達は視線を向けると、そこには大きな街が広がっていた。すぐにルノは氷飛行機を減速させ、街の様子を調べる。
「あそこかな?」
「……多分、間違いない。大きな屋敷が見える」
「この距離でそんな物まで確認出来るのあんた?大した視力ね……いや、遠視のスキルを使ったのね」
「えっへん」
「おお、あれが人間の街か……本当に木造製の建物が少ないのだな」
「シャアアッ……」
全員で窓を覗き込んで街の様子を確認すると、早速着地するためにルノは氷飛行機を近づけさせようとしたが、それをコトネが止める。
「……ルノ、この飛行機だと目立ちすぎる。街の外へ着地させた方が良い」
「そう?なら、あそこに停めようか」
コトネの提案を聞き入れてルノは街から離れた場所へ着地すると、徒歩で街へ向かう事にした。時間帯が既に深夜なので城門が開いていない可能性もあったが、将軍であるコトネも同行しているのできっと開けてくれるだろうと考えてレナは氷飛行機から目立たない氷自動車を作り出して向かおうとした。
「じゃあ、ここから先はこれに乗って。時間帯も遅いから、今日は何処かで止まって朝になったら公爵の元へ向かおうか」
「そうね、流石にベッドで休みたいわ」
「師匠がそういうのなら僕は賛成ですぞ!!」
「……待って」
「シャアッ?」
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