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巨人国 侵攻編

白騎士ダルク&黒魔術師ナオト (な、何者なんだ!?byルノ)

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――ヒヒィイイイインッ!!


草原に馬の雄たけびが響き渡り、何事かと兵士達は陣外に視線を向けると、巨大な白馬が防護柵を飛び越え、陣内に入り込む光景が映し出された。普通の馬よりも遥かに巨大な白馬の額には光輝く角が生え、その姿を見た兵士が叫び声を上げる。


「ゆ、ユニコーンだ!!どうしてここにユニコーンが!?」
「ば、馬鹿な……何故、超級の危険種がここに!?」
「馬鹿、大声を上げるな!!刺激するんじゃない!!」


唐突に陣内に出現したユニコーンに兵士達は怖気付き、彼等はユニコーンの恐ろしさを知っていた。巨人族の領地にもユニコーンは生息するが、刺激しなければ比較的に大人しく、人間に害はない魔獣と認識されていた。しかし、陣内に侵入したユニコーンの背中には二人の人間が乗り込み、それを見た兵士達は戸惑う。


「な、何だお前達は!?」
「……わ、我が名は白騎士ダルク!!ユニコーンを従える者!!」
「えっと……我が名は黒魔術師ナオト!!同じく、ユニコーンに乗馬する者!!」
「はあっ!?」


ユニコーンに跨ったまま騎士風の恰好をした「ジャンヌ」と魔術師らしい服装に着替えた「ナオ」は恥ずかしながらも事前に打ち合わせた台詞を告げる。突如として現れた二人組とユニコーンに兵士達は呆気に取られ、そんな彼等に羞恥心を抑えながらもジャンヌ改めダルクとナオトは彼等に告げる。


「貴方達を指揮する巨人は全員我等が捕まえました!!これ以上に抵抗するのならば彼等の命はありません!!大人しく国へ引き返しなさい!!」
「な、何だと!?」
「ふざけるな!!何を言ってやがる……うぎゃあっ!?」
「僕……じゃなくて、我々はこの地を守護する帝国の騎士と魔術師!!お前達の雑兵など本来は相手にする必要もないが、これ以上にこの地で暴れるようならば容赦はしないぞ!!」


口答えしようとした兵士にナオトが右手を向けた瞬間、まるで額に衝撃を受けたように兵士が地面に倒れ込み、それを見た他の兵士達には無詠唱で恐らくは風属性の魔法で兵士の頭部に強い衝撃を与えたと判断し、詠唱も行わずに魔法を発動させたナオトを凄腕の魔術師だと勘違いした。

実際の所はナオトは右手を向けた直後に左手に握りしめた小石を兵士の額に「指弾」の戦技を発動させて気絶させたのだが、高速発射された小石を見極める程の視力を持つ兵士はこの場には存在せず、全員が震えあがる。片方はユニコーンを従えさせる女騎士、片方は得体の知れぬ魔法を扱う魔術師だと知って兵士達に動揺が広がる。


「お、お前達は帝国の兵士なのか!?」
「無礼者が!!我々はこの地を守る帝国の騎士と魔術師!!これ以上にこの地で暴れるようならばこのユニコーンが貴方達を叩き伏せます!!」
「ヒヒィンッ!!」
「ひいいっ!?」


主人の命令にユニコーンが威圧するように鳴き声を上げると、怯えた兵士達は距離を取る。彼等はユニコーンの恐ろしさを良く知っており、巨人国では竜種と同等の扱いをされているユニコーンは兵士達に十分な恐怖を与えた。だが、それでも1万近くの兵士の中にはユニコーンに怖気つきながら抵抗しようとする者も存在した。


「お、怯えるな!!相手はたった二人とユニコーンだけだ!!これだけの数がいれば……!!」
「そ、そうだ!!将軍を捕まえたというのならお前等を捕まえて将軍の居場所を吐かせてやる!!」
「何と愚かな……ならば見せてあげましょう!!我が右腕の黒魔術師の力を!!」
「あ、はい……じゃなくて、み、見るがいい!!我が力を!!」


ダルクの言葉に素で返事をしそうになりながらもナオトは両手を広げた瞬間、ユニコーンの背後に黒渦が出現した。空間に出現した謎の黒色の渦巻に兵士達は驚愕の表情を浮かべるが、内部から出現した生物を見て更に悲鳴を上げる。


「キュロロロッ!!」
「ブモォオオッ……!!」
「ガアアッ!!」
『ウォンッ!!』
「な、何だ!?こいつら、何処から現れやがった!?」


黒渦の中から樹木を切り崩して作り出した棍棒を手にしたサイクロプスとミノタウロスが現れ、続けてルウを筆頭に黒狼種の子供達も出現した。その光景を見て兵士達は混乱の極致に陥り、相手を二人だけだと侮っていた兵士も黒渦から出現した魔物達を見て震えあがった。


「さ、サイクロプスにミノタウロス……それに黒狼種だと!?な、何なんだこいつら……」
「お、おい!!どうするんだ!?本当に戦うのか!?」
「まだ諦めないのですか!?言っておきますが我々が従えている魔物はこれだけではありません!!これ以上に抵抗するようならばこの場に牙竜を呼び寄せ、貴方達を餌にさせましょう!!」
「牙竜だと!?そんな化け物まで……」
「駄目だ、勝てっこない!!止めてくれぇっ!!」


実際には牙竜は従えていないのだが、ダルクの脅しは十分に通用したらしく、兵士達は戦意を喪失したように武器を下ろす。得体の知れない相手に自分達が見た事もない魔法を使われた事で冷静な判断力を失ったらしく、降伏とまではいかないが戦意を失わせただけでも十分な効果だった。
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