最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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巨人国 侵攻編

巨人軍の恐怖

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「探せ!!陣の外に出ていないのならきっと何処かにいるはずだ!!」
「分かってる!!その何処を探してもいないんだろうが!!」
「一体どうなってるんだ?何で急にこんな事に……」


兵士達は姿を消した将軍と隊長たちを捜索するが、どれだけ時間を費やそうと消えた人間の手掛かりすら見つからず、まさかとは思うが陣の外に抜け出したのかと考える。だが、どうして自分達に何も言わずに姿を消した理由が分からない。


「お、おい……どうするんだ?俺達だけでこれからどうするんだよ?」
「これからも何も、作戦を考えていた将軍が消えたんだぞ?」
「まずは将軍を探し出せ!!おい、酔いつぶれている馬鹿を叩き起こせ!!」
「俺に命令するんじゃねえ!!てめえだって下っ端だろうが!!」
「何だと!?」


残された兵士達は自分達を指揮をする上司が全員失踪した事で混乱の極致に陥り、新たに指示を出そうとする兵士が現れても他の兵士が納得いかない。自分と同じ階級の兵士に命令されるというだけで我慢できず、あちこちで言い争いが始まる。


「落ち着け馬鹿共!!!こういう時は年上の人間の言う事を黙って聞け!!」
「うるさい!!俺はお前よりも先に軍に入ってたんだぞ!?」
「何だとこのガキが!!」
「止めろ!!こんな事で言い争ってどうする!?」


殴り合いを始めようとした兵士を他の者達が抑えつけ、この場の混乱を収めるために兵士の一人が提案を行う。


「なあ、俺達に言い争う暇なんてあるのか?まずは消えた将軍達を探す方が先決だ。陣内に見つからないなら他の奴等に攫われたとしか考えられないだろ?もしかしたら他にも奪われている物があるんじゃないのか?」
「奪われている物って……なんだよ?」
「武器とか兵糧、薬剤や馬とか色々あるだろ?そっちの方を調べてみてもしも何か減っていたらこれは敵の仕業だろ!!」
「敵って……誰だよ?帝国軍はまだ動いていないんだろ?」
「だからそれを確かめるために調べる必要があるんだって!!ともかく、まずは物資の確認をしよう!!」
「お、おう……」


冷静な兵士の言葉に陣内の物資の点検が行われ、確認の結果は兵糧の類は無事だったが武器、薬剤の類は前回の点検の時よりも量が大幅に減っている事が発覚した。この結果、巨人軍は何者かによって攻撃を受けている事を知る。


「ど、どうなってるんだ……武器が殆ど残ってねえ!!それに薬剤も!!見張り役は何をしていた!?」
「ま、待ってくれ!!俺達だって訳が分からないんだよ!?気付いた時には無くなってたんだ!!嘘じゃない!!」
「ふざけんな!!武器も薬も無しでまともに戦えると思ってんのか!?」
「落ち着け!!武器も薬も調達すればどうにでもなる!!今は仲間割れしている場合じゃないだろ!?」


戦争において武器と薬剤の重要性は高く、特に薬剤は戦を挑む前に十分な量を確保しておかなければ大きな被害を受けるだろう。それに敵は帝国軍だけではなく、これから訪れる街の冒険者や一般人も抵抗を受けるのは間違いなく、一番の問題は魔物である。それに流行り病に襲われれば薬剤が無い状態では何も出来ない。

冷静に自分達の状況を理解した兵士達は顔色を青くさせ、必然的に街の方角に視線を向ける。住んでいる住民の数はたかが知れているが、それでも街の中には食料も武器も薬剤もあるのは間違いなく、兵士達は明日の朝に住民達が大人しく降伏するのか不安を抱く。


「おい、どうするんだ?やっぱり、今から街に攻め入るか?」
「いや、大丈夫だろ。あんな小さな街なら俺達に抵抗するはずがいるはずがねえ……きっと朝には物資を運んでくるだろ」
「でも、もしも抵抗してきたら……」
「その時は力ずくで奪い取ればいい。元々、将軍が猶予を与えただけだ。わざわざ降伏を待つ必要なんてねえだろ」
「そ、そうだな……」


兵士達は物資が奪われても街から運ばれてくる物資があればどうにかなると考えるが、そもそも彼等はどうやって将軍や物資を奪われたのか理解出来なかった。宴会を行っていたので警備が緩んでいた事は確かだが、それでも敵が侵入してくれば気付かないはずがない。

更に奪われた物資の量から推測する限り、敵の数は少なくとも数百人は存在しなければ短時間で1万の軍隊の物資の半分近くを奪えるはずがない。だが、実際に兵士の中に敵の姿を見た者は存在せず、誰も気付かぬうちに将軍を筆頭に数十名の兵士と大量の物資が奪われたという事実に変わりはない。


「なあ……本当に大丈夫なのか?もしも街から物資が運ばれてきても、また知らない間に奪われたりしたら……」
「だ、大丈夫だろ……見張りの数を増やせばいいんだ」
「そ、そうだな……まあ、もしかしたら将軍達も誘拐されたんじゃなくて偵察のために外に出向いているだけかもしれねえしな……」
「そうだ!!きっとそうだよ!!何だよ将軍達もせっかちだな、俺達に一言ぐらい言い残してくれればいいのに……」
『あはははっ……』


兵士達は現実逃避するように今現在の自分達の状況に目を逸らして笑い声をあげるが、そんな彼等に追い打ちをかけるように陣の外から馬の鳴き声が響き渡った。
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