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巨人国 侵攻編
巨人軍の襲撃
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「他に変わった事はないんですか?」
「そうね、変わった事と言えば冒険者のお客さんが最近減ったわね。特にお得意様だった高ランクの冒険者の人たちが尋ねなくなったわ」
「冒険者が……なるほど、ありがとうございます」
店主の話を聞いてリーリスは先ほどの支援魔術師の事を思い出し、どうやら彼以外にも高ランクの冒険者が姿を消しているらしく、恐らくはノーズ公爵の仕業だろう。事前に優秀な能力を持つ呼び集め、軍隊に送り込んでいるのかもしれない。
先ほどの魔術師は巨人国の軍隊に従ったが、他の冒険者も全員が従っているとは限らず、後々に脅威となると判断された冒険者は始末されているのかもしれない。店主に礼を告げてリーリスは買い物を終えると、外の様子が騒がしい事に気付く。
「ん?何でしょうか、外が騒がしくないですか?」
「そうね、言われてみれば確かに……」
「おい、イリーナさんはいるか!?」
外が騒がしい事に気付いたリーリスと店主が不思議に想うと、唐突に店の中に怪我をした兵士が現れ、店の中で倒れ込む。それを見た店主は慌てて兵士の元へ駆けつけ、どうやら店主はイリーナという名前らしい。
「ど、どうしたの?こんなにひどい傷……何があったの?」
「しゅ、襲撃だ……この街は巨人国の軍隊に囲まれた!!」
「巨人国の……!?」
軍隊という言葉にリーリスの脳裏に森で遭遇した軍隊の事を思い出し、まさか自分達を追跡してこの場所に辿り着いたのかと思ったが、それにしては行動が早すぎる。恐らくは元々この街を襲撃するつもりだったらしく、警備を行っていた兵士はイリーナに懇願する。
「頼む、イリーナさん……ここにある薬草と回復薬を譲ってくれ!!奴等の目的はこの街の物資だ……!!」
「物資?」
「あいつらは街を襲わない条件として街中の武器と食料と薬剤を要求してるんだ!!断ればこの街を攻め落とすって……」
「そ、そんな……」
兵士の言葉にイリーナは顔色を青くさせ、リーリスも巨人国の軍隊の要求を聞いて眉をしかめた。この状況で街が取り囲まれた以上は逃げ場はない。しかも頼りとなる冒険者ギルドの高ランク冒険者はノーズ公爵が事前に呼び出して巨人国の軍隊に送り付けていた。
「この街はもう駄目だ……警備兵だけじゃ軍隊から守り切れない。あいつら、とんでもない数だ」
「ど、どうにか出来ないの?他の街に救援を求めるとか……」
「そんなの無理だよ。あいつらは明日までに物資を渡さないと襲ってくると言ってるんだぞ!?もう、どうしようもないんだ……」
兵士は項垂れるとイリーナは慌てふためき、自分が丹精込めて育てた薬草や回復薬が軍隊に奪われるという事に彼女も涙目を浮かべる。だが、命には代えられず、軍隊の要求を聞き入れる以外に方法はない。
「分かったわ……すぐに兵士の人達を呼んでくれる?これだけの量の薬草を詰めるのは大変だから」
「すまないイリーナさん……くそ、巨人軍の奴らめ!!」
「あの、ちょっといいですか?」
兵士とイリーナの会話を聞いていたリーリスが会話に割り込むと、一体何者かと兵士は驚き、リーリスは彼に頼む。
「その巨人国の軍隊とやらを見せてくれませんか?街の外で待機してるんですよね?」
――リーリスの願いはあっさりと引き受けられ、兵士の案内の元で彼女は街の防壁へ移動すると、街を取り囲む軍隊の様子を確認した。リーリス以外にも大勢の住民が防壁に集まり、街を包囲する軍隊の姿を見て絶望の表情を浮かべた。
「ああっ……何てことだ、どうして巨人国の軍隊がこんな小さな街を!!」
「もうお終いだ……」
「あんなの敵いっこない、逃げようよ!?」
「駄目だ、包囲されているから逃げ場なんてない……俺達はもうお終いだ」
巨人国の軍隊の勇猛さは帝国に知れ渡っており、この街の警備兵や冒険者ではとても相手には出来ない数の軍隊に住民達は絶望する。その様子を傍目で見ながらリーリスは巨人国の軍隊の様子を伺い、やはりというべきか森の中で遭遇した部隊の兵士が装備していた鎧と同じ物を装着していた。
(これだけの数の兵士が集まっているという事は、多分ナオさんが偵察で見つけた軍隊の殆どが集まっているようですね。という事は最初からこの街の物資を狙っていた?やっぱり魔物を捕獲するだけじゃ軍隊全員分の食料を確保出来なかったんですかね)
巨人族や獣人族は普通の人間よりも大量の食料を必要とするため、街の食料を狙って包囲した可能性が高い。だが、そう考えるとやはり巨人国は本国からの救援物資を受け取っていない事になり、このような小さな街の食料を欲している時点でそれほど余裕がないらしい。
(巨人国の正規の軍隊なら本国から物資が送り込まれるはず。なのにこんな小さな街の食料まで狙うなんて……何か裏がありそうですね)
軍隊が物資を求める理由が本国から援助を受けられない状況であるのならばリーリスは何か打つ手があるのではないかと考え、急いでナオ達の元へ戻る。
「そうね、変わった事と言えば冒険者のお客さんが最近減ったわね。特にお得意様だった高ランクの冒険者の人たちが尋ねなくなったわ」
「冒険者が……なるほど、ありがとうございます」
店主の話を聞いてリーリスは先ほどの支援魔術師の事を思い出し、どうやら彼以外にも高ランクの冒険者が姿を消しているらしく、恐らくはノーズ公爵の仕業だろう。事前に優秀な能力を持つ呼び集め、軍隊に送り込んでいるのかもしれない。
先ほどの魔術師は巨人国の軍隊に従ったが、他の冒険者も全員が従っているとは限らず、後々に脅威となると判断された冒険者は始末されているのかもしれない。店主に礼を告げてリーリスは買い物を終えると、外の様子が騒がしい事に気付く。
「ん?何でしょうか、外が騒がしくないですか?」
「そうね、言われてみれば確かに……」
「おい、イリーナさんはいるか!?」
外が騒がしい事に気付いたリーリスと店主が不思議に想うと、唐突に店の中に怪我をした兵士が現れ、店の中で倒れ込む。それを見た店主は慌てて兵士の元へ駆けつけ、どうやら店主はイリーナという名前らしい。
「ど、どうしたの?こんなにひどい傷……何があったの?」
「しゅ、襲撃だ……この街は巨人国の軍隊に囲まれた!!」
「巨人国の……!?」
軍隊という言葉にリーリスの脳裏に森で遭遇した軍隊の事を思い出し、まさか自分達を追跡してこの場所に辿り着いたのかと思ったが、それにしては行動が早すぎる。恐らくは元々この街を襲撃するつもりだったらしく、警備を行っていた兵士はイリーナに懇願する。
「頼む、イリーナさん……ここにある薬草と回復薬を譲ってくれ!!奴等の目的はこの街の物資だ……!!」
「物資?」
「あいつらは街を襲わない条件として街中の武器と食料と薬剤を要求してるんだ!!断ればこの街を攻め落とすって……」
「そ、そんな……」
兵士の言葉にイリーナは顔色を青くさせ、リーリスも巨人国の軍隊の要求を聞いて眉をしかめた。この状況で街が取り囲まれた以上は逃げ場はない。しかも頼りとなる冒険者ギルドの高ランク冒険者はノーズ公爵が事前に呼び出して巨人国の軍隊に送り付けていた。
「この街はもう駄目だ……警備兵だけじゃ軍隊から守り切れない。あいつら、とんでもない数だ」
「ど、どうにか出来ないの?他の街に救援を求めるとか……」
「そんなの無理だよ。あいつらは明日までに物資を渡さないと襲ってくると言ってるんだぞ!?もう、どうしようもないんだ……」
兵士は項垂れるとイリーナは慌てふためき、自分が丹精込めて育てた薬草や回復薬が軍隊に奪われるという事に彼女も涙目を浮かべる。だが、命には代えられず、軍隊の要求を聞き入れる以外に方法はない。
「分かったわ……すぐに兵士の人達を呼んでくれる?これだけの量の薬草を詰めるのは大変だから」
「すまないイリーナさん……くそ、巨人軍の奴らめ!!」
「あの、ちょっといいですか?」
兵士とイリーナの会話を聞いていたリーリスが会話に割り込むと、一体何者かと兵士は驚き、リーリスは彼に頼む。
「その巨人国の軍隊とやらを見せてくれませんか?街の外で待機してるんですよね?」
――リーリスの願いはあっさりと引き受けられ、兵士の案内の元で彼女は街の防壁へ移動すると、街を取り囲む軍隊の様子を確認した。リーリス以外にも大勢の住民が防壁に集まり、街を包囲する軍隊の姿を見て絶望の表情を浮かべた。
「ああっ……何てことだ、どうして巨人国の軍隊がこんな小さな街を!!」
「もうお終いだ……」
「あんなの敵いっこない、逃げようよ!?」
「駄目だ、包囲されているから逃げ場なんてない……俺達はもうお終いだ」
巨人国の軍隊の勇猛さは帝国に知れ渡っており、この街の警備兵や冒険者ではとても相手には出来ない数の軍隊に住民達は絶望する。その様子を傍目で見ながらリーリスは巨人国の軍隊の様子を伺い、やはりというべきか森の中で遭遇した部隊の兵士が装備していた鎧と同じ物を装着していた。
(これだけの数の兵士が集まっているという事は、多分ナオさんが偵察で見つけた軍隊の殆どが集まっているようですね。という事は最初からこの街の物資を狙っていた?やっぱり魔物を捕獲するだけじゃ軍隊全員分の食料を確保出来なかったんですかね)
巨人族や獣人族は普通の人間よりも大量の食料を必要とするため、街の食料を狙って包囲した可能性が高い。だが、そう考えるとやはり巨人国は本国からの救援物資を受け取っていない事になり、このような小さな街の食料を欲している時点でそれほど余裕がないらしい。
(巨人国の正規の軍隊なら本国から物資が送り込まれるはず。なのにこんな小さな街の食料まで狙うなんて……何か裏がありそうですね)
軍隊が物資を求める理由が本国から援助を受けられない状況であるのならばリーリスは何か打つ手があるのではないかと考え、急いでナオ達の元へ戻る。
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