477 / 657
巨人国 侵攻編
巨人軍の襲撃
しおりを挟む
「他に変わった事はないんですか?」
「そうね、変わった事と言えば冒険者のお客さんが最近減ったわね。特にお得意様だった高ランクの冒険者の人たちが尋ねなくなったわ」
「冒険者が……なるほど、ありがとうございます」
店主の話を聞いてリーリスは先ほどの支援魔術師の事を思い出し、どうやら彼以外にも高ランクの冒険者が姿を消しているらしく、恐らくはノーズ公爵の仕業だろう。事前に優秀な能力を持つ呼び集め、軍隊に送り込んでいるのかもしれない。
先ほどの魔術師は巨人国の軍隊に従ったが、他の冒険者も全員が従っているとは限らず、後々に脅威となると判断された冒険者は始末されているのかもしれない。店主に礼を告げてリーリスは買い物を終えると、外の様子が騒がしい事に気付く。
「ん?何でしょうか、外が騒がしくないですか?」
「そうね、言われてみれば確かに……」
「おい、イリーナさんはいるか!?」
外が騒がしい事に気付いたリーリスと店主が不思議に想うと、唐突に店の中に怪我をした兵士が現れ、店の中で倒れ込む。それを見た店主は慌てて兵士の元へ駆けつけ、どうやら店主はイリーナという名前らしい。
「ど、どうしたの?こんなにひどい傷……何があったの?」
「しゅ、襲撃だ……この街は巨人国の軍隊に囲まれた!!」
「巨人国の……!?」
軍隊という言葉にリーリスの脳裏に森で遭遇した軍隊の事を思い出し、まさか自分達を追跡してこの場所に辿り着いたのかと思ったが、それにしては行動が早すぎる。恐らくは元々この街を襲撃するつもりだったらしく、警備を行っていた兵士はイリーナに懇願する。
「頼む、イリーナさん……ここにある薬草と回復薬を譲ってくれ!!奴等の目的はこの街の物資だ……!!」
「物資?」
「あいつらは街を襲わない条件として街中の武器と食料と薬剤を要求してるんだ!!断ればこの街を攻め落とすって……」
「そ、そんな……」
兵士の言葉にイリーナは顔色を青くさせ、リーリスも巨人国の軍隊の要求を聞いて眉をしかめた。この状況で街が取り囲まれた以上は逃げ場はない。しかも頼りとなる冒険者ギルドの高ランク冒険者はノーズ公爵が事前に呼び出して巨人国の軍隊に送り付けていた。
「この街はもう駄目だ……警備兵だけじゃ軍隊から守り切れない。あいつら、とんでもない数だ」
「ど、どうにか出来ないの?他の街に救援を求めるとか……」
「そんなの無理だよ。あいつらは明日までに物資を渡さないと襲ってくると言ってるんだぞ!?もう、どうしようもないんだ……」
兵士は項垂れるとイリーナは慌てふためき、自分が丹精込めて育てた薬草や回復薬が軍隊に奪われるという事に彼女も涙目を浮かべる。だが、命には代えられず、軍隊の要求を聞き入れる以外に方法はない。
「分かったわ……すぐに兵士の人達を呼んでくれる?これだけの量の薬草を詰めるのは大変だから」
「すまないイリーナさん……くそ、巨人軍の奴らめ!!」
「あの、ちょっといいですか?」
兵士とイリーナの会話を聞いていたリーリスが会話に割り込むと、一体何者かと兵士は驚き、リーリスは彼に頼む。
「その巨人国の軍隊とやらを見せてくれませんか?街の外で待機してるんですよね?」
――リーリスの願いはあっさりと引き受けられ、兵士の案内の元で彼女は街の防壁へ移動すると、街を取り囲む軍隊の様子を確認した。リーリス以外にも大勢の住民が防壁に集まり、街を包囲する軍隊の姿を見て絶望の表情を浮かべた。
「ああっ……何てことだ、どうして巨人国の軍隊がこんな小さな街を!!」
「もうお終いだ……」
「あんなの敵いっこない、逃げようよ!?」
「駄目だ、包囲されているから逃げ場なんてない……俺達はもうお終いだ」
巨人国の軍隊の勇猛さは帝国に知れ渡っており、この街の警備兵や冒険者ではとても相手には出来ない数の軍隊に住民達は絶望する。その様子を傍目で見ながらリーリスは巨人国の軍隊の様子を伺い、やはりというべきか森の中で遭遇した部隊の兵士が装備していた鎧と同じ物を装着していた。
(これだけの数の兵士が集まっているという事は、多分ナオさんが偵察で見つけた軍隊の殆どが集まっているようですね。という事は最初からこの街の物資を狙っていた?やっぱり魔物を捕獲するだけじゃ軍隊全員分の食料を確保出来なかったんですかね)
巨人族や獣人族は普通の人間よりも大量の食料を必要とするため、街の食料を狙って包囲した可能性が高い。だが、そう考えるとやはり巨人国は本国からの救援物資を受け取っていない事になり、このような小さな街の食料を欲している時点でそれほど余裕がないらしい。
(巨人国の正規の軍隊なら本国から物資が送り込まれるはず。なのにこんな小さな街の食料まで狙うなんて……何か裏がありそうですね)
軍隊が物資を求める理由が本国から援助を受けられない状況であるのならばリーリスは何か打つ手があるのではないかと考え、急いでナオ達の元へ戻る。
「そうね、変わった事と言えば冒険者のお客さんが最近減ったわね。特にお得意様だった高ランクの冒険者の人たちが尋ねなくなったわ」
「冒険者が……なるほど、ありがとうございます」
店主の話を聞いてリーリスは先ほどの支援魔術師の事を思い出し、どうやら彼以外にも高ランクの冒険者が姿を消しているらしく、恐らくはノーズ公爵の仕業だろう。事前に優秀な能力を持つ呼び集め、軍隊に送り込んでいるのかもしれない。
先ほどの魔術師は巨人国の軍隊に従ったが、他の冒険者も全員が従っているとは限らず、後々に脅威となると判断された冒険者は始末されているのかもしれない。店主に礼を告げてリーリスは買い物を終えると、外の様子が騒がしい事に気付く。
「ん?何でしょうか、外が騒がしくないですか?」
「そうね、言われてみれば確かに……」
「おい、イリーナさんはいるか!?」
外が騒がしい事に気付いたリーリスと店主が不思議に想うと、唐突に店の中に怪我をした兵士が現れ、店の中で倒れ込む。それを見た店主は慌てて兵士の元へ駆けつけ、どうやら店主はイリーナという名前らしい。
「ど、どうしたの?こんなにひどい傷……何があったの?」
「しゅ、襲撃だ……この街は巨人国の軍隊に囲まれた!!」
「巨人国の……!?」
軍隊という言葉にリーリスの脳裏に森で遭遇した軍隊の事を思い出し、まさか自分達を追跡してこの場所に辿り着いたのかと思ったが、それにしては行動が早すぎる。恐らくは元々この街を襲撃するつもりだったらしく、警備を行っていた兵士はイリーナに懇願する。
「頼む、イリーナさん……ここにある薬草と回復薬を譲ってくれ!!奴等の目的はこの街の物資だ……!!」
「物資?」
「あいつらは街を襲わない条件として街中の武器と食料と薬剤を要求してるんだ!!断ればこの街を攻め落とすって……」
「そ、そんな……」
兵士の言葉にイリーナは顔色を青くさせ、リーリスも巨人国の軍隊の要求を聞いて眉をしかめた。この状況で街が取り囲まれた以上は逃げ場はない。しかも頼りとなる冒険者ギルドの高ランク冒険者はノーズ公爵が事前に呼び出して巨人国の軍隊に送り付けていた。
「この街はもう駄目だ……警備兵だけじゃ軍隊から守り切れない。あいつら、とんでもない数だ」
「ど、どうにか出来ないの?他の街に救援を求めるとか……」
「そんなの無理だよ。あいつらは明日までに物資を渡さないと襲ってくると言ってるんだぞ!?もう、どうしようもないんだ……」
兵士は項垂れるとイリーナは慌てふためき、自分が丹精込めて育てた薬草や回復薬が軍隊に奪われるという事に彼女も涙目を浮かべる。だが、命には代えられず、軍隊の要求を聞き入れる以外に方法はない。
「分かったわ……すぐに兵士の人達を呼んでくれる?これだけの量の薬草を詰めるのは大変だから」
「すまないイリーナさん……くそ、巨人軍の奴らめ!!」
「あの、ちょっといいですか?」
兵士とイリーナの会話を聞いていたリーリスが会話に割り込むと、一体何者かと兵士は驚き、リーリスは彼に頼む。
「その巨人国の軍隊とやらを見せてくれませんか?街の外で待機してるんですよね?」
――リーリスの願いはあっさりと引き受けられ、兵士の案内の元で彼女は街の防壁へ移動すると、街を取り囲む軍隊の様子を確認した。リーリス以外にも大勢の住民が防壁に集まり、街を包囲する軍隊の姿を見て絶望の表情を浮かべた。
「ああっ……何てことだ、どうして巨人国の軍隊がこんな小さな街を!!」
「もうお終いだ……」
「あんなの敵いっこない、逃げようよ!?」
「駄目だ、包囲されているから逃げ場なんてない……俺達はもうお終いだ」
巨人国の軍隊の勇猛さは帝国に知れ渡っており、この街の警備兵や冒険者ではとても相手には出来ない数の軍隊に住民達は絶望する。その様子を傍目で見ながらリーリスは巨人国の軍隊の様子を伺い、やはりというべきか森の中で遭遇した部隊の兵士が装備していた鎧と同じ物を装着していた。
(これだけの数の兵士が集まっているという事は、多分ナオさんが偵察で見つけた軍隊の殆どが集まっているようですね。という事は最初からこの街の物資を狙っていた?やっぱり魔物を捕獲するだけじゃ軍隊全員分の食料を確保出来なかったんですかね)
巨人族や獣人族は普通の人間よりも大量の食料を必要とするため、街の食料を狙って包囲した可能性が高い。だが、そう考えるとやはり巨人国は本国からの救援物資を受け取っていない事になり、このような小さな街の食料を欲している時点でそれほど余裕がないらしい。
(巨人国の正規の軍隊なら本国から物資が送り込まれるはず。なのにこんな小さな街の食料まで狙うなんて……何か裏がありそうですね)
軍隊が物資を求める理由が本国から援助を受けられない状況であるのならばリーリスは何か打つ手があるのではないかと考え、急いでナオ達の元へ戻る。
1
お気に入りに追加
11,307
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。