最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

エルフ王国 決戦編

閑話 〈その頃の魔王 その２〉

――奇跡的に隕石に張り付いて帰還を果たそうとした魔王だったが、まさかの人工衛星との衝突で弾き出された魔王は未だに宇宙に漂っていた。宇宙空間の中で魔王は何も出来ず、元に戻る術もなく彷徨っていた。


『ああっ……退屈だ』


だが、宇宙空間に飛ばされたからといって魔王が死ぬ事はなく、延々と宇宙空間を虚しく漂う事に飽き飽きしていた。もう何か月も漂っている気分を味わうが、日数的にはまだそれほど経過していない。


『む？あの星は何だ？我が居た星ではないようだが……』


彷徨い続けてから一か月目、魔王は自分が存在した星とよく似た惑星を発見した。それを見た魔王はこのまま行けば進路方向上に存在するので着地出来るのではないかと考えた。


『もう、他の星でもいい。何でもいいから助けてくれ……』


不死に近い生物とはいえ、流石に何も出来ずに無意味に宇宙空間を彷徨う事を飽き飽きしていた魔王はどうか今度は無事に星に着陸できるよう祈ると、彼の願いが届いたのか魔王は星の引力に引かれて宇宙空間から引き寄せられていく。


『おおっ……！！』


引力の加速によって魔王は隕石の如く落下し、やがて最も大きい大陸に衝突した。幸いにも着地点が砂漠だったらしく、派手な砂煙を舞い上げながらも魔王は無事に星に着地出来た。


『や、やった……遂に動ける、自由に動けるぞ！！』


幸いにも重力に関しては魔王が存在した星と同じらしく、大気も存在するらしく、砂漠にはサソリらしき生物も存在した。最も魔王は呼吸は必要のない生物なのだが、何はともかく無事に生物が住める星に到着した魔王は歓喜の声を上げる。


『だが、ここは何なんだ？魔法の力が一切感じられぬ……これでは我の能力が封じられているのと同然ではないか』


この星から一切の魔力を感じられない事に気付いた魔王はここでは自分の魔力を吸収し、体内に蓄積・増幅させる能力が無い事を悟る。だが、仮に魔法が扱えずとも魔王は最強の硬度を誇る生物のため、どのような生物が現れても自分を殺せるはずがないと判断した。


『さて、まずは人間を探してみるか。悔しいが、奴等が一番が頭いいからな……何だ！？』


唐突に魔王の後方から派手な砂煙が舞い上がり、何事かと魔王は視線を向けると、砂漠の中から巨大な生物が姿を現した。それは外見は亀と酷似していたが、驚くべきなのはその巨体だった。全長が数百メートルは存在する程の巨大さを誇り、それを見た魔王は圧倒された。



――オオオオオッ……！！



亀のような生物は鳴き声を上げた瞬間、砂漠の至る箇所から巨大な亀形の生物が現れ、その数は１０や２０所ではなく、それを見た魔王は自分がとんでもない場所へ降り立ったことに気付く。


『何だ、この星はぁあああっ！？』
『オオオオオッ……！！』


亀形の生物がゆっくりと動き始め、それを見た魔王は全力で踏みつぶされないように駆け出すが、普段から走る行為を行わない魔王は砂に足を取られて転んでしまい、そんな彼の元に巨大生物の足が迫ると、呆気なく踏みつぶされてしまう――




※ま、魔王ぉおおおっ！！( ﾟДﾟ)