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巨人国 侵攻編
巨人国の侵攻
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「ほら、意識ありますか?」
「げほげほっ……ひ、ひいいっ!?」
「人の顔を見て悲鳴をあげるとは失礼な人ですね」
「ブモォッ」
ミノタウロスに抱えられた魔術師は慌てて逃げようとしたが、非力な魔術師の力ではミノタウロスの拘束から逃れる事は出来ず、みっともない姿を晒す魔術師にリーリスはため息を吐く。
「安心してください、私達に逆らおうとしなければ何もしませんよ。さあ、潔く財布と魔石を渡してください」
「え!?今、何もしないって言いましたよね!?」
「ちっ」
「キュロロッ……」
さり気無く魔術師から金品と魔石を回収しようとしたリーリスにロプスが呆れた声を上げるが、抵抗されるのも面倒なのでリーリスは男性から奪い取った杖を構え、もう一度質問を行う。
「私は帝国の魔術師です。貴方は何者ですか?どうして巨人国の軍隊と行動をしていたのかを教えなさい」
「ううっ……駄目だ、そんな事を話せば俺は殺される……」
「離さなければこのまま引き連れて帝国軍に引き渡しますよ」
「や、止めてくれ!!お願いだ、見逃してくれ……」
「駄目です、正直に話すかそれとも兵士の御縄になるか決めてください」
他国の軍隊と行動していた時点でリーリスは魔術師を見逃すつもりはなく、彼が何者でどうして巨人国の軍隊がこの帝国領地内に存在するのかを問う。将軍の立場としては今回の事態は見逃せるはずがなく、リーリスは魔術師が白状するまで逃がすつもりはなかった。
最初は抵抗の意思を見せていた魔術師もミノタウロスやサイクロプスに睨まれると顔色を青くさせ、やがて観念したのか自分の正体を話した。
「お、俺は近くの街で活動している冒険者だ……何日か前にこの地方の領主様から直々に指名依頼を受けて仕事をしていただけなんだ」
「領主?」
「あんたも名前ぐらい聞いた事があるだろ?帝国貴族のノーズ公爵だ」
「……ああ、そういえばそんな名前の公爵も居ましたね」
ノーズ公爵という言葉にリーリスは帝国の北方に広大な領地を任されている公爵である事を思い出す。何度か顔合わせをした事はあるが、あまり面識はなかったので思い出すのに少々時間が掛かった。
冒険者を自称する男の話によると彼はノーズ公爵に呼び出されたのは「支援魔術師」という特殊な職業が原因だったらしく、公爵の屋敷に招かれた男は強制的に連行され、巨人国の軍隊に引き渡されたという。
「お、俺も何が起きているのか分からないんだ……だが、巨人の奴等が俺達に協力しないと殺すって……」
「ふむ……支援魔術師は希少職ですからね。支援魔法で軍隊の強化を図ったんでしょうか……それにしてもノーズ公爵が巨人国の軍隊と繋がっていたとは……これは大問題ですよ」
「なあ、やっぱりこんな事不味いんだよな!?俺、どうすればいいんだよ……このままだと反逆罪で殺されたりしないのか!?」
「まあまあ、とりあえずは落ち着いて下さい。ひとまずは近くの街まで運んであげますから、そこから先は自由にしますよ」
「本当か!?た、頼む……俺だってこんな事したくないんだ!!」
男はリーリスの言葉を聞いて安堵した表情を浮かべ、どうやら本当に無理やり強力させられていたらしく、自由になれると聞いて安心した表情を抱く。その一方で男から事情を問い質したリーリスは悩み、彼女の記憶が確かならばユニコーンの発見したという情報を王都へ送り込んだのもノーズ公爵と親密な関係を築いていた将軍である事を思い出す。
今回の巨人国の軍隊の侵犯行為がノーズ公爵の手引きだった場合、彼は公爵家という立場でありながら帝国を裏切った事になる。しかも公爵直々が冒険者を招いて軍隊の元へ送り込んだという時点で疑いようがなく、ノーズ公爵自身の意思で軍隊を招き入れたのは間違いない。
(ノーズ公爵の事はあんまりよく知りませんけど、国境付近に存在する領地を任せられる程に帝国の中では信頼の厚い人物のはず……なのに巨人国の軍隊を引き寄せた。しかも帝国にユニコーンが発見したという虚偽の報告を行って帝都の主力を北方領地に引き寄せようとした……色々と謎が多いですね)
帝国を裏切って巨人国の軍隊を招くような行動を取りながらも、ユニコーンの目撃情報を報告して帝都の守備兵を誘き出すような真似をするノーズ公爵にリーリスは不思議に思い、狙いが見えない。仮に巨人国に寝返って帝国領地を奪わせようと考えたのならわざわざ王妃の病を救える可能性があるユニコーンの目撃情報を帝都へ報告して帝都の軍隊を招き寄せるような行動を犯す必要がない。そんな事をすれば折角内密に招き入れた巨人国の軍隊と帝国の守備兵が接触する可能性が高い。
(皇帝が自ら乗り込んでくると踏んで敢えてユニコーンを利用して帝都から軍隊を招き寄せた?そして事前に招き入れていた巨人国の軍隊を利用して皇帝を捕まえるつもりだったのか……いえ、流石にそれは無理がありますね)
皇帝が必ずしも軍隊に同行するとは限らない以上、わざわざ帝都から軍隊を招く必要性はない。それに巨人国の軍隊を潜伏させるのも難しく、人間よりも巨体で目立つ巨人国の兵隊を何時までも隠し続けられるはずがない。
「げほげほっ……ひ、ひいいっ!?」
「人の顔を見て悲鳴をあげるとは失礼な人ですね」
「ブモォッ」
ミノタウロスに抱えられた魔術師は慌てて逃げようとしたが、非力な魔術師の力ではミノタウロスの拘束から逃れる事は出来ず、みっともない姿を晒す魔術師にリーリスはため息を吐く。
「安心してください、私達に逆らおうとしなければ何もしませんよ。さあ、潔く財布と魔石を渡してください」
「え!?今、何もしないって言いましたよね!?」
「ちっ」
「キュロロッ……」
さり気無く魔術師から金品と魔石を回収しようとしたリーリスにロプスが呆れた声を上げるが、抵抗されるのも面倒なのでリーリスは男性から奪い取った杖を構え、もう一度質問を行う。
「私は帝国の魔術師です。貴方は何者ですか?どうして巨人国の軍隊と行動をしていたのかを教えなさい」
「ううっ……駄目だ、そんな事を話せば俺は殺される……」
「離さなければこのまま引き連れて帝国軍に引き渡しますよ」
「や、止めてくれ!!お願いだ、見逃してくれ……」
「駄目です、正直に話すかそれとも兵士の御縄になるか決めてください」
他国の軍隊と行動していた時点でリーリスは魔術師を見逃すつもりはなく、彼が何者でどうして巨人国の軍隊がこの帝国領地内に存在するのかを問う。将軍の立場としては今回の事態は見逃せるはずがなく、リーリスは魔術師が白状するまで逃がすつもりはなかった。
最初は抵抗の意思を見せていた魔術師もミノタウロスやサイクロプスに睨まれると顔色を青くさせ、やがて観念したのか自分の正体を話した。
「お、俺は近くの街で活動している冒険者だ……何日か前にこの地方の領主様から直々に指名依頼を受けて仕事をしていただけなんだ」
「領主?」
「あんたも名前ぐらい聞いた事があるだろ?帝国貴族のノーズ公爵だ」
「……ああ、そういえばそんな名前の公爵も居ましたね」
ノーズ公爵という言葉にリーリスは帝国の北方に広大な領地を任されている公爵である事を思い出す。何度か顔合わせをした事はあるが、あまり面識はなかったので思い出すのに少々時間が掛かった。
冒険者を自称する男の話によると彼はノーズ公爵に呼び出されたのは「支援魔術師」という特殊な職業が原因だったらしく、公爵の屋敷に招かれた男は強制的に連行され、巨人国の軍隊に引き渡されたという。
「お、俺も何が起きているのか分からないんだ……だが、巨人の奴等が俺達に協力しないと殺すって……」
「ふむ……支援魔術師は希少職ですからね。支援魔法で軍隊の強化を図ったんでしょうか……それにしてもノーズ公爵が巨人国の軍隊と繋がっていたとは……これは大問題ですよ」
「なあ、やっぱりこんな事不味いんだよな!?俺、どうすればいいんだよ……このままだと反逆罪で殺されたりしないのか!?」
「まあまあ、とりあえずは落ち着いて下さい。ひとまずは近くの街まで運んであげますから、そこから先は自由にしますよ」
「本当か!?た、頼む……俺だってこんな事したくないんだ!!」
男はリーリスの言葉を聞いて安堵した表情を浮かべ、どうやら本当に無理やり強力させられていたらしく、自由になれると聞いて安心した表情を抱く。その一方で男から事情を問い質したリーリスは悩み、彼女の記憶が確かならばユニコーンの発見したという情報を王都へ送り込んだのもノーズ公爵と親密な関係を築いていた将軍である事を思い出す。
今回の巨人国の軍隊の侵犯行為がノーズ公爵の手引きだった場合、彼は公爵家という立場でありながら帝国を裏切った事になる。しかも公爵直々が冒険者を招いて軍隊の元へ送り込んだという時点で疑いようがなく、ノーズ公爵自身の意思で軍隊を招き入れたのは間違いない。
(ノーズ公爵の事はあんまりよく知りませんけど、国境付近に存在する領地を任せられる程に帝国の中では信頼の厚い人物のはず……なのに巨人国の軍隊を引き寄せた。しかも帝国にユニコーンが発見したという虚偽の報告を行って帝都の主力を北方領地に引き寄せようとした……色々と謎が多いですね)
帝国を裏切って巨人国の軍隊を招くような行動を取りながらも、ユニコーンの目撃情報を報告して帝都の守備兵を誘き出すような真似をするノーズ公爵にリーリスは不思議に思い、狙いが見えない。仮に巨人国に寝返って帝国領地を奪わせようと考えたのならわざわざ王妃の病を救える可能性があるユニコーンの目撃情報を帝都へ報告して帝都の軍隊を招き寄せるような行動を犯す必要がない。そんな事をすれば折角内密に招き入れた巨人国の軍隊と帝国の守備兵が接触する可能性が高い。
(皇帝が自ら乗り込んでくると踏んで敢えてユニコーンを利用して帝都から軍隊を招き寄せた?そして事前に招き入れていた巨人国の軍隊を利用して皇帝を捕まえるつもりだったのか……いえ、流石にそれは無理がありますね)
皇帝が必ずしも軍隊に同行するとは限らない以上、わざわざ帝都から軍隊を招く必要性はない。それに巨人国の軍隊を潜伏させるのも難しく、人間よりも巨体で目立つ巨人国の兵隊を何時までも隠し続けられるはずがない。
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