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エルフ王国 決戦編
帰還後……
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――無事にエルフ王国から国王を含め、数名の森人族と転移結晶の回収を果たしたルノは半日ほど費やして白原へと到着した。飛翔術と氷塊の魔法では移動速度に違いがあり、重力を加えれば氷塊の移動速度を上昇させる事も出来るが同乗者に大きな負担が掛かるため、移動に時間が掛かった。
また、移動の途中で王都から離れていた森人族の住民を発見次第に回収し、最終的には昆虫種から逃れた住民達を数百人も乗せた巨大な氷の船で白原へと到達した。既に帝国軍も白原に到着していたらしく、避難民が暮すために家作りを手伝っていた。
「父上!!デブリは生きていると信じていましたよ!!」
「で、デブリよ……お前の気持ちは嬉しいが、その、もう少し優しく抱きしめてくれんか……ぐああっ!?」
「デブリ!!父上が苦しがっているだろう!?早く離してやれ!!」
「本当に生きていて良かったですわ……」
白原に氷船が着陸すると、すぐに大勢の森人族が出迎えに訪れ、デブリは国王を抱きしめる。あまりの怪力に国王の背骨が軋むが、それでも生きて再会できた事を喜び合う。だが、そんな彼等の元に帝国の皇帝は駆け寄り、必死の表情でデブリから解放された国王を掴む。
「エルフ王国の国王よ!!」
「おお、帝国の皇帝……此度の件、誠に感謝する」
「そんな事よりも我が娘は!?我が娘は何処に居る!?」
「はっ?」
「陛下、落ち着いて下され!!」
唐突に詰め寄って来た皇帝に国王は戸惑いの表情を浮かべ、一体彼が何を取り乱しているのかは国王には分からなかった。すぐに皇帝の元に帝国四天王が赴き、彼を宥める。
「陛下、王女様の事は王国に赴いたルノ殿に尋ねればよろしいのでは?エルフ王国の方々も疲れているご様子ですし、話し合いは後で行う方がよろしいでしょう」
「そ、そうだな……すまぬ、エルフの王よ」
「いや、それよりも何かあったのか?出来れば儂等にも教えてくれんか?」
「申し訳ありませんがこちらは国家の重要機密です。他国の方に教えるわけにはいきません」
皇帝の取り乱し様に疑問を抱いた国王が質問するが、それをドリアが遮る。いくら同盟国とはいえ、帝国の皇位継承権を持つ王女が消えた事を話すわけにはいかず、彼等を誤魔化すために要塞の内部に案内を行う。
「さあ、そんな事よりも王国の方々もお疲れでしょう。あちらに皆様のために作り出した建物があります。そこでまずは身体を休ませてください」
「うむ……分かった。お言葉に甘えさせてもらおう」
国王はまだ何か言いたげな表情を浮かべるが、現在の自分達は帝国に保護される立場の人間である事を理解し、彼等の気分を害する行動を避けるために大人しく従う。その様子を見送ったドリアはため息を吐き出し、皇帝へと向き直る。
「陛下、今の態度はいけません。いくら王女様の事が心配と言えど、あれでは怪しまれてしまいます」
「すまん……だが、報告によればエルフ王国の王都は崩壊したと聞いている。そうなると娘はどうなったのだ……」
「それはルノ様に直接問いただした方がよろしいかと……」
「ちょっと待て、その坊主は何処に行ったんだ?」
「ヒカゲの姿も見えないのう?」
「えっ!?さっきまで確かにここに……」
消えた王女の行方を尋ねる前にレナとヒカゲが姿を消した事に皇帝たちは戸惑い、慌てて二人の姿を探すが既に二人は氷船から離れ、要塞の方へ移動していた――
――皇帝に見つかる前に一足先にヒカゲと合流して要塞内に隠れたルノは王女の件について彼女に相談し、現在の王女はリーリス達と共に行動してこの場には存在しない事を教える。
「かくかくしかじかわふわふ……という事で、王女様はリーリス達と行動しているんだよ。でも、この事を正直に話すとやっぱり不味いかな?」
「……なるほど、理解した」
ヒカゲは将軍の時に着込んでいる黒装束から着替え、現在は冒険者のコトネの恰好に戻ってルノから話を伺う。王女が無事である事、リーリスとナオが帝国軍をエルフ王国への援軍として彼女を利用して派遣させた事、現在の3人と他の魔獣達が帝国の北方の領地で発見されたユニコーンの捜索を行っている事を話す。
話を聞き終えたコトネは考え込むように腕を組み、ルノの危惧する通りにリーリス達の件を馬鹿正直に話せば彼女達は何らかの処罰は免れない。特に将軍のリーリスや他国の人間であるナオの場合は非情に不味く、国家反逆罪や王女誘拐の罪として重い罰を受ける可能性も高い。
「……確かにその事を話すとリーリスもナオも無事じゃ済まない。いくら陛下でも許してくれないと思う」
「だよね……どうすればいいかな?」
「簡単な事、3人と合流して全部魔王軍のせいにすればいい」
「あ、そうか。ともかく3人と先に合流すればいいのか」
帝国軍が3人を見つけ出す前にルノ達が先に合流し、口裏を合わせて全ての出来事が魔王軍の仕業だとリーリスもナオも罪を負うことはない。だが、そのためには3人と合流する必要があった。
また、移動の途中で王都から離れていた森人族の住民を発見次第に回収し、最終的には昆虫種から逃れた住民達を数百人も乗せた巨大な氷の船で白原へと到達した。既に帝国軍も白原に到着していたらしく、避難民が暮すために家作りを手伝っていた。
「父上!!デブリは生きていると信じていましたよ!!」
「で、デブリよ……お前の気持ちは嬉しいが、その、もう少し優しく抱きしめてくれんか……ぐああっ!?」
「デブリ!!父上が苦しがっているだろう!?早く離してやれ!!」
「本当に生きていて良かったですわ……」
白原に氷船が着陸すると、すぐに大勢の森人族が出迎えに訪れ、デブリは国王を抱きしめる。あまりの怪力に国王の背骨が軋むが、それでも生きて再会できた事を喜び合う。だが、そんな彼等の元に帝国の皇帝は駆け寄り、必死の表情でデブリから解放された国王を掴む。
「エルフ王国の国王よ!!」
「おお、帝国の皇帝……此度の件、誠に感謝する」
「そんな事よりも我が娘は!?我が娘は何処に居る!?」
「はっ?」
「陛下、落ち着いて下され!!」
唐突に詰め寄って来た皇帝に国王は戸惑いの表情を浮かべ、一体彼が何を取り乱しているのかは国王には分からなかった。すぐに皇帝の元に帝国四天王が赴き、彼を宥める。
「陛下、王女様の事は王国に赴いたルノ殿に尋ねればよろしいのでは?エルフ王国の方々も疲れているご様子ですし、話し合いは後で行う方がよろしいでしょう」
「そ、そうだな……すまぬ、エルフの王よ」
「いや、それよりも何かあったのか?出来れば儂等にも教えてくれんか?」
「申し訳ありませんがこちらは国家の重要機密です。他国の方に教えるわけにはいきません」
皇帝の取り乱し様に疑問を抱いた国王が質問するが、それをドリアが遮る。いくら同盟国とはいえ、帝国の皇位継承権を持つ王女が消えた事を話すわけにはいかず、彼等を誤魔化すために要塞の内部に案内を行う。
「さあ、そんな事よりも王国の方々もお疲れでしょう。あちらに皆様のために作り出した建物があります。そこでまずは身体を休ませてください」
「うむ……分かった。お言葉に甘えさせてもらおう」
国王はまだ何か言いたげな表情を浮かべるが、現在の自分達は帝国に保護される立場の人間である事を理解し、彼等の気分を害する行動を避けるために大人しく従う。その様子を見送ったドリアはため息を吐き出し、皇帝へと向き直る。
「陛下、今の態度はいけません。いくら王女様の事が心配と言えど、あれでは怪しまれてしまいます」
「すまん……だが、報告によればエルフ王国の王都は崩壊したと聞いている。そうなると娘はどうなったのだ……」
「それはルノ様に直接問いただした方がよろしいかと……」
「ちょっと待て、その坊主は何処に行ったんだ?」
「ヒカゲの姿も見えないのう?」
「えっ!?さっきまで確かにここに……」
消えた王女の行方を尋ねる前にレナとヒカゲが姿を消した事に皇帝たちは戸惑い、慌てて二人の姿を探すが既に二人は氷船から離れ、要塞の方へ移動していた――
――皇帝に見つかる前に一足先にヒカゲと合流して要塞内に隠れたルノは王女の件について彼女に相談し、現在の王女はリーリス達と共に行動してこの場には存在しない事を教える。
「かくかくしかじかわふわふ……という事で、王女様はリーリス達と行動しているんだよ。でも、この事を正直に話すとやっぱり不味いかな?」
「……なるほど、理解した」
ヒカゲは将軍の時に着込んでいる黒装束から着替え、現在は冒険者のコトネの恰好に戻ってルノから話を伺う。王女が無事である事、リーリスとナオが帝国軍をエルフ王国への援軍として彼女を利用して派遣させた事、現在の3人と他の魔獣達が帝国の北方の領地で発見されたユニコーンの捜索を行っている事を話す。
話を聞き終えたコトネは考え込むように腕を組み、ルノの危惧する通りにリーリス達の件を馬鹿正直に話せば彼女達は何らかの処罰は免れない。特に将軍のリーリスや他国の人間であるナオの場合は非情に不味く、国家反逆罪や王女誘拐の罪として重い罰を受ける可能性も高い。
「……確かにその事を話すとリーリスもナオも無事じゃ済まない。いくら陛下でも許してくれないと思う」
「だよね……どうすればいいかな?」
「簡単な事、3人と合流して全部魔王軍のせいにすればいい」
「あ、そうか。ともかく3人と先に合流すればいいのか」
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