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エルフ王国 決戦編
脱出の準備
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「お、お前は……いや、貴方は帝国の英雄!?」
「何!?もしや、あの初級魔術師の……!?」
「おお、帝国最強の魔術師と言われているあの!?」
「援軍か!?遂に援軍が訪れたのか?」
ルノの正体に気付いた者達が歓喜の表情を浮かべ、たった一人とはいえ帝国軍が訪れた事から遂に援軍が到着したと希望を抱く。そんな彼等にルノは落ち着かせ、まずは状況を尋ねる。
「落ち着いて下さい、まずこの場所にはどれくらいの森人族が残っているんですか?」
「わ、分かりません……兵士の方々が我等を守るために出向いたのですが、戻って来たのは極僅か……恐らく、この場に300人程度の森人族しかいません」
「転移結晶は?」
「未だに転移を開始していますが、もう魔石を底に付きかけているそうです。だから魔石の変わりに魔力容量が大きい者達が代わりに魔力の提供を行っているようですが……」
残された森人族の人数を聞き、さらに転移が続けられている事を知ったルノは人々を掻き分け、扉の前に立つ。ルノが前に出てきたことで扉の前に集まっていた者達も道を開き、彼の行動を観察する。
「すいません!!声は聞こえますか?皆さんを助けに来ました!!ここを開けてください!!」
『むっ……そ、その声は!?』
扉の内側からルノにも聞き覚えがある声が響き、扉が開かれて疲弊した老人と兵士が現れた。それを見たルノは相手が国王だと悟り、一体中で何が起きていたのか全員の顔色が悪かった。
「お、おおっ……其方は帝国の、という事は援軍が間に合ったのか?」
「あ、あの……大丈夫ですか?気分でも悪いんですか?」
「うむ……魔石の代わりに我等が魔力を送り込んで転移結晶を発動させようとしたのだが、やはり老骨には答えるのう……3回分だけ送り込んだだけでこの様じゃ」
国王は兵士に肩を借りながら皆の前に姿を現し、中には他にも大勢の兵士達がへたり込んでいた。どうやら民衆を送り込むために兵士達が魔力を犠牲にしたらしく、全員が疲労困憊の状態に陥っている様子を見てルノは転移結晶に視線を向ける。
「これが転移結晶ですか?これを使えば帝国の白原にまで送り込めるんですよね?」
「ああ、その通りだが……ちょっと待て、どうしてそれをお主が知っておる?」
「既に息子さんから話を聞いています。送り込まれた森人族の方々は帝国が保護しているので安心してください」
「な、何と……!?」
援軍として赴いたとばかり思っていた国王はルノの思いもがけない言葉に動揺を隠せず、まさか既に帝国がエルフ王国の避難民を受け入れ、しかも転移結晶の存在を知っている事に驚きを隠せない。だが、彼の反応に気付かずにルノは転移結晶を覗き込み、そして日本語で記されている文章を発見して転移結晶の使い方を確認した。
転移結晶には周囲に複数の魔法陣が存在し、その内の一つにルノは近寄って掌を差し出すと、僅かながらに魔力を吸い取られる感覚を覚える。それを確かめたルノは魔力の吸収量から一つの魔法陣で吸収される量を推察し、この転移結晶を発動させるには魔法陣の数だけで人数かあるいは魔力を発する物体が必要である事に気付く。
「森人族以外でもこの上に魔石を置けば使用する事が出来るんですよね?」
「あ、ああ……確かにその通りだが、何をする気なのだ?」
「ちょっと実験を……光球!!」
ルノは掌を翳すと光球の魔法を発動させ、複数の光の塊を生み出す。ルノの行動に全員が不思議に思うが、やがて光球が全ての魔法陣の上に移動するのを確認すると、彼の思惑に気付く。
「まさか……!?」
「上手くいくかな……あ、いった」
「ぬおっ!?」
魔石の代わりに光球から放たれる光の魔力を魔法陣に吸収させる事で転移結晶が発動可能の状態に陥り、それを目撃した国王は慌てて身体の疲れを忘れて水晶の前に移動すると、転移が行えることを確認する。
「ま、まさか……こんな方法で転移結晶を発動する事が出来るとは!?」
「えっと、その転移結晶に書かれている文章によると魔法陣に設置するのは聖属性の魔石だけで十分なんですよ。一応は他の魔石もでも代用できるそうですけど、最も効率的なのは聖属性の魔石らしいので光球の魔法で代用出来ないのか試したんですけど……」
「お主、この文字を読めるのか!?」
「あ、はい。日本語だったので……」
ルノの言葉に国王は頭を抑え、まさか転移結晶の正しい使用法が今更ながらに発覚する。だが、落ち込んでいる暇はなく、国王は転移結晶が発動できる今のうちに残された者達の避難を再開させる。
「皆の者、一列に並んで魔法陣の前に移動するのだ!!決して焦らず争わず、女子供を優先して行動するのだ!!」
「ですが国王様、もう敵はそこまで……!!」
「大丈夫です、俺が食い止めますから皆さんは避難してください」
広間に集まった森人族はルノの言葉を聞いて顔を見合わせ、ここは彼を信じて国王の指示に従い、避難の準備を行う。
「何!?もしや、あの初級魔術師の……!?」
「おお、帝国最強の魔術師と言われているあの!?」
「援軍か!?遂に援軍が訪れたのか?」
ルノの正体に気付いた者達が歓喜の表情を浮かべ、たった一人とはいえ帝国軍が訪れた事から遂に援軍が到着したと希望を抱く。そんな彼等にルノは落ち着かせ、まずは状況を尋ねる。
「落ち着いて下さい、まずこの場所にはどれくらいの森人族が残っているんですか?」
「わ、分かりません……兵士の方々が我等を守るために出向いたのですが、戻って来たのは極僅か……恐らく、この場に300人程度の森人族しかいません」
「転移結晶は?」
「未だに転移を開始していますが、もう魔石を底に付きかけているそうです。だから魔石の変わりに魔力容量が大きい者達が代わりに魔力の提供を行っているようですが……」
残された森人族の人数を聞き、さらに転移が続けられている事を知ったルノは人々を掻き分け、扉の前に立つ。ルノが前に出てきたことで扉の前に集まっていた者達も道を開き、彼の行動を観察する。
「すいません!!声は聞こえますか?皆さんを助けに来ました!!ここを開けてください!!」
『むっ……そ、その声は!?』
扉の内側からルノにも聞き覚えがある声が響き、扉が開かれて疲弊した老人と兵士が現れた。それを見たルノは相手が国王だと悟り、一体中で何が起きていたのか全員の顔色が悪かった。
「お、おおっ……其方は帝国の、という事は援軍が間に合ったのか?」
「あ、あの……大丈夫ですか?気分でも悪いんですか?」
「うむ……魔石の代わりに我等が魔力を送り込んで転移結晶を発動させようとしたのだが、やはり老骨には答えるのう……3回分だけ送り込んだだけでこの様じゃ」
国王は兵士に肩を借りながら皆の前に姿を現し、中には他にも大勢の兵士達がへたり込んでいた。どうやら民衆を送り込むために兵士達が魔力を犠牲にしたらしく、全員が疲労困憊の状態に陥っている様子を見てルノは転移結晶に視線を向ける。
「これが転移結晶ですか?これを使えば帝国の白原にまで送り込めるんですよね?」
「ああ、その通りだが……ちょっと待て、どうしてそれをお主が知っておる?」
「既に息子さんから話を聞いています。送り込まれた森人族の方々は帝国が保護しているので安心してください」
「な、何と……!?」
援軍として赴いたとばかり思っていた国王はルノの思いもがけない言葉に動揺を隠せず、まさか既に帝国がエルフ王国の避難民を受け入れ、しかも転移結晶の存在を知っている事に驚きを隠せない。だが、彼の反応に気付かずにルノは転移結晶を覗き込み、そして日本語で記されている文章を発見して転移結晶の使い方を確認した。
転移結晶には周囲に複数の魔法陣が存在し、その内の一つにルノは近寄って掌を差し出すと、僅かながらに魔力を吸い取られる感覚を覚える。それを確かめたルノは魔力の吸収量から一つの魔法陣で吸収される量を推察し、この転移結晶を発動させるには魔法陣の数だけで人数かあるいは魔力を発する物体が必要である事に気付く。
「森人族以外でもこの上に魔石を置けば使用する事が出来るんですよね?」
「あ、ああ……確かにその通りだが、何をする気なのだ?」
「ちょっと実験を……光球!!」
ルノは掌を翳すと光球の魔法を発動させ、複数の光の塊を生み出す。ルノの行動に全員が不思議に思うが、やがて光球が全ての魔法陣の上に移動するのを確認すると、彼の思惑に気付く。
「まさか……!?」
「上手くいくかな……あ、いった」
「ぬおっ!?」
魔石の代わりに光球から放たれる光の魔力を魔法陣に吸収させる事で転移結晶が発動可能の状態に陥り、それを目撃した国王は慌てて身体の疲れを忘れて水晶の前に移動すると、転移が行えることを確認する。
「ま、まさか……こんな方法で転移結晶を発動する事が出来るとは!?」
「えっと、その転移結晶に書かれている文章によると魔法陣に設置するのは聖属性の魔石だけで十分なんですよ。一応は他の魔石もでも代用できるそうですけど、最も効率的なのは聖属性の魔石らしいので光球の魔法で代用出来ないのか試したんですけど……」
「お主、この文字を読めるのか!?」
「あ、はい。日本語だったので……」
ルノの言葉に国王は頭を抑え、まさか転移結晶の正しい使用法が今更ながらに発覚する。だが、落ち込んでいる暇はなく、国王は転移結晶が発動できる今のうちに残された者達の避難を再開させる。
「皆の者、一列に並んで魔法陣の前に移動するのだ!!決して焦らず争わず、女子供を優先して行動するのだ!!」
「ですが国王様、もう敵はそこまで……!!」
「大丈夫です、俺が食い止めますから皆さんは避難してください」
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