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エルフ王国 決戦編
氷塊の剣士
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『邪魔ぁっ!!』
『ギギィッ!?』
『えっ!?』
兵士に襲いかかろうとしていた昆虫種の大群にルノは突っ込み、盾と剣を振りかざして吹き飛ばす。その光景を見た兵士達は驚愕の表情を浮かべ、見た事もない氷の鎧を身に着ける人間を見て動揺を隠せない。
『大丈夫ですか?』
「あ、ああっ……」
「待て、何者だ!?お前は誰だ!?」
「いや、待て……この声、何処かで聞いたような」
唐突に現れたルノに対して兵士達は警戒心を抱くが、兵士の一人が以前に王国会談の護衛として同行していたらしく、ルノの声に聞き覚えがあった。だが、今は彼等に説明している暇はないのでルノは押し寄せる昆虫種の相手をしながら逃げるように促す。
『ここは俺に任せて!!早く逃げてください!!』
「し、しかし……」
『いいから早く!!』
ルノに急かされて兵士達は顔を見合わせ、自分達の命を救った相手の言葉を信じ、この場をルノに任せて避難を行う。兵士達が逃げる姿を確認すると、ルノは通路全体に氷の壁を生み出して昆虫種の進行を阻む。
『通行禁止!!』
『ギギィッ!?』
氷の壁に阻まれた昆虫種は壁に向けて鎌や牙を放つが、その程度の攻撃では破壊する事は出来ず、ルノは移動を行う。上の階層に移動する程に通路も複雑となり、あらゆる場所から兵士達と昆虫種の声が聞こえてきた。
世界樹の頂上付近まで間もなく辿り着くと思われるが、既に昆虫種はここまで侵攻していたらしく、激しい戦闘が繰り広げられていた。兵士と昆虫種の死骸が通路を塞ぎ、その様子を見てルノは頂上へ急ぐ。
「いやああああっ!!誰か助けてぇっ!?」
「うわぁあっ!?」
「馬鹿!!何をしている、早く奥へ逃げろ!!」
悲鳴の中には一般人と思われる声もちらほらと聞こえ始め、兵士だけでは抑えきれなかった昆虫種が既に一般人にも襲い掛かっている様子だった。ルノは悲鳴のした方向に駆けつけると、そこには3体の昆虫種に1人の兵士が盾を構え、その後ろには男女の若い森人族が座り込んでいた。
状況を見てルノは兵士が二人の若者を助けるために昆虫種の注意を自分に引いていると気づくが、昆虫種を間近に見て戦意を喪失したのか、男女は逃げる事も出来ない。必死に兵士が盾を構て彼等に逃げるように促すが、昆虫種はそんな彼等に容赦なく襲い掛かる。
『ギルゥッ!!』
「うわぁっ!?た、助け……」
『助けます!!』
「えっ!?」
盾を鎌で切り裂かれた兵士は恐怖の表情を浮かべ、腰を抜かしてしまう。その隙に他の蟷螂が噛みつこうとした時、ルノが飛び出して蟷螂の頭部に蹴りを繰り出して吹き飛ばす。
『ギィイッ!?』
『今の内です!!早く逃げて!!』
「え、あっ……」
『行けっ!!』
突如として出現したルノに兵士は呆気に取られた表情を浮かべるが、ルノの怒声を耳にして慌てて立ち上がり、腰を抜かした男女の森人族を無理やりに立たせて逃げる。それを確認したルノは3体の蟷螂と向かい合い、氷塊の剣と盾を放つ。
『らあっ!!』
『ギィアッ!?』
『どっせい!!』
『ギギィッ!?』
剣で斬るというよりは力任せに振り回して蟷螂の頭部を叩き割り、別方向から近づいてきた蟷螂を盾で殴り飛ばす。最後の個体には倒した蟷螂の1体を持ち上げ、勢いよく投げつけて吹き飛ばす。
『一丁上がり!!』
『ギィアッ!?』
同族の死体に押しつぶされた蟷螂は悲鳴をあげ、その間にルノは逃がした森人族の後を追いかけ、やがて大きな広間へと辿り着いた。そこには300人近くの森人族と負傷した大量の兵士の姿が存在し、広間に現れたルノを見て驚愕と恐怖が入り混じった悲鳴が広間内に響き渡る。
「ひいっ!?な、何だ!?」
「おい、誰だあれは!?あんな鎧、見た事ないぞ!?」
「まさか敵なのか……!?」
『あの……』
広間にはどうやら生きのこった森人族が全員集まっているらしく、彼等を確認したルノは近づこうとした時、負傷した兵士達が傷を抑えながらも立ち上がり、武器を構えた。
「そ、それ以上近づくな!!何者だ貴様は!?」
「まさか、魔王軍か!!」
「我々を殺しに来たのか!!」
『いや、待ってください。俺は……』
『ギギィイイイッ!!』
ルノは武器を構える兵士達を落ち着かせようとした時、広間に存在する3つの通路から昆虫種の鳴き声が響き渡る。その声を聞いた森人族達は顔面蒼白となり、これから数秒後には訪れるであろう昆虫種の大群を想像して悲鳴をあげる。
「いやああああっ!!もう終わりよぉっ!!」
「くそ、まだ次の奴の転移は終わらないのか!?」
「頼む、ここを開けてくれ!!見捨てないでくれぇっ!?」
『転移……?』
広間には大きな扉が存在し、その門の前に森人族が押し寄せる姿にルノは不思議に思うが、今は通路から迫る昆虫種に対応するためにルノは氷鎧を解除して本当の姿を晒す。鎧の中から人間の少年が現れた事に兵士達は驚き、その中にはルノの正体に気付く者も居た。
※新作「付与魔術師、最強を目指す」も投降しました。
『ギギィッ!?』
『えっ!?』
兵士に襲いかかろうとしていた昆虫種の大群にルノは突っ込み、盾と剣を振りかざして吹き飛ばす。その光景を見た兵士達は驚愕の表情を浮かべ、見た事もない氷の鎧を身に着ける人間を見て動揺を隠せない。
『大丈夫ですか?』
「あ、ああっ……」
「待て、何者だ!?お前は誰だ!?」
「いや、待て……この声、何処かで聞いたような」
唐突に現れたルノに対して兵士達は警戒心を抱くが、兵士の一人が以前に王国会談の護衛として同行していたらしく、ルノの声に聞き覚えがあった。だが、今は彼等に説明している暇はないのでルノは押し寄せる昆虫種の相手をしながら逃げるように促す。
『ここは俺に任せて!!早く逃げてください!!』
「し、しかし……」
『いいから早く!!』
ルノに急かされて兵士達は顔を見合わせ、自分達の命を救った相手の言葉を信じ、この場をルノに任せて避難を行う。兵士達が逃げる姿を確認すると、ルノは通路全体に氷の壁を生み出して昆虫種の進行を阻む。
『通行禁止!!』
『ギギィッ!?』
氷の壁に阻まれた昆虫種は壁に向けて鎌や牙を放つが、その程度の攻撃では破壊する事は出来ず、ルノは移動を行う。上の階層に移動する程に通路も複雑となり、あらゆる場所から兵士達と昆虫種の声が聞こえてきた。
世界樹の頂上付近まで間もなく辿り着くと思われるが、既に昆虫種はここまで侵攻していたらしく、激しい戦闘が繰り広げられていた。兵士と昆虫種の死骸が通路を塞ぎ、その様子を見てルノは頂上へ急ぐ。
「いやああああっ!!誰か助けてぇっ!?」
「うわぁあっ!?」
「馬鹿!!何をしている、早く奥へ逃げろ!!」
悲鳴の中には一般人と思われる声もちらほらと聞こえ始め、兵士だけでは抑えきれなかった昆虫種が既に一般人にも襲い掛かっている様子だった。ルノは悲鳴のした方向に駆けつけると、そこには3体の昆虫種に1人の兵士が盾を構え、その後ろには男女の若い森人族が座り込んでいた。
状況を見てルノは兵士が二人の若者を助けるために昆虫種の注意を自分に引いていると気づくが、昆虫種を間近に見て戦意を喪失したのか、男女は逃げる事も出来ない。必死に兵士が盾を構て彼等に逃げるように促すが、昆虫種はそんな彼等に容赦なく襲い掛かる。
『ギルゥッ!!』
「うわぁっ!?た、助け……」
『助けます!!』
「えっ!?」
盾を鎌で切り裂かれた兵士は恐怖の表情を浮かべ、腰を抜かしてしまう。その隙に他の蟷螂が噛みつこうとした時、ルノが飛び出して蟷螂の頭部に蹴りを繰り出して吹き飛ばす。
『ギィイッ!?』
『今の内です!!早く逃げて!!』
「え、あっ……」
『行けっ!!』
突如として出現したルノに兵士は呆気に取られた表情を浮かべるが、ルノの怒声を耳にして慌てて立ち上がり、腰を抜かした男女の森人族を無理やりに立たせて逃げる。それを確認したルノは3体の蟷螂と向かい合い、氷塊の剣と盾を放つ。
『らあっ!!』
『ギィアッ!?』
『どっせい!!』
『ギギィッ!?』
剣で斬るというよりは力任せに振り回して蟷螂の頭部を叩き割り、別方向から近づいてきた蟷螂を盾で殴り飛ばす。最後の個体には倒した蟷螂の1体を持ち上げ、勢いよく投げつけて吹き飛ばす。
『一丁上がり!!』
『ギィアッ!?』
同族の死体に押しつぶされた蟷螂は悲鳴をあげ、その間にルノは逃がした森人族の後を追いかけ、やがて大きな広間へと辿り着いた。そこには300人近くの森人族と負傷した大量の兵士の姿が存在し、広間に現れたルノを見て驚愕と恐怖が入り混じった悲鳴が広間内に響き渡る。
「ひいっ!?な、何だ!?」
「おい、誰だあれは!?あんな鎧、見た事ないぞ!?」
「まさか敵なのか……!?」
『あの……』
広間にはどうやら生きのこった森人族が全員集まっているらしく、彼等を確認したルノは近づこうとした時、負傷した兵士達が傷を抑えながらも立ち上がり、武器を構えた。
「そ、それ以上近づくな!!何者だ貴様は!?」
「まさか、魔王軍か!!」
「我々を殺しに来たのか!!」
『いや、待ってください。俺は……』
『ギギィイイイッ!!』
ルノは武器を構える兵士達を落ち着かせようとした時、広間に存在する3つの通路から昆虫種の鳴き声が響き渡る。その声を聞いた森人族達は顔面蒼白となり、これから数秒後には訪れるであろう昆虫種の大群を想像して悲鳴をあげる。
「いやああああっ!!もう終わりよぉっ!!」
「くそ、まだ次の奴の転移は終わらないのか!?」
「頼む、ここを開けてくれ!!見捨てないでくれぇっ!?」
『転移……?』
広間には大きな扉が存在し、その門の前に森人族が押し寄せる姿にルノは不思議に思うが、今は通路から迫る昆虫種に対応するためにルノは氷鎧を解除して本当の姿を晒す。鎧の中から人間の少年が現れた事に兵士達は驚き、その中にはルノの正体に気付く者も居た。
※新作「付与魔術師、最強を目指す」も投降しました。
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