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エルフ王国 決戦編

世界樹へ突入

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『ギギギギッ……!!』
「駄目だ、数が多すぎる!?」


回転氷刃で蟷螂の大群に攻撃を仕掛けるが、あまりにも数が多すぎて侵攻を食い止める事は出来ず、ルノは地上に接近して合成魔術を発動した。


「白雷!!」
『ギギィッ!?』
『ギィアッ!?』


広範囲に白色の電撃を浴びせて数十体の蟷螂を感電させる事に成功するが、恐らくは数千を超える大群の前では焼け石に水程度の効果しかなく、かといって世界樹の傍では「黒炎」や「黒炎槍」などの魔法は使用できない。強化スキルを解除してルノは氷塊の魔法で周囲一帯を凍り付かせようかとも考えたが、それでは世界樹にも悪影響を与えてしまう。

世界樹内に侵入を果たした蟷螂も放置できず、だからといって地上から信仰する蟷螂を防がなければ被害は増す。どうするべきかとルノは考えている間、更に蟷螂とは別の昆虫種が出現した。


『キィイイイッ!!』
「白蟻!?」


今度は世界樹の樹皮から大量の白蟻が出現し、地上に降りてきた。蟷螂よりも小柄な蟻の大群はルノに目掛けて接近すると、鋭い顎を突き出す。


『キイイッ!!』
「うわ、近寄るな……このっ!!」


迫りくる顎に向けてルノは掌を構て氷盾を生み出すと、攻撃を防ぎながら白蟻の様子を確認する。唐突に自分達の前に現れた白蟻の大群に蟷螂の群れは威嚇し、何体かはルノを放置して食らいつく。


『ギギィッ!!』
『キイイッ!?』
『キキイッ!!』


仲間に鎌を振り下ろした蟷螂に対して白蟻の群れは連携して襲い掛かると、逆に蟷螂を捕食する。こちらの世界の昆虫種は全て雑食らしく、容赦なく蟻の大群は蟷螂の大群と交戦を始めた。その様子を見てルノは戦闘に巻き込まれないように注意しながら駆け抜ける。


(凄い光景だな……自分が小さくなった気分だ)


世界樹の巨大さ、自分よりも体躯を遥かに上回る昆虫種の群れにルノは自分が小人になったような気分に陥るが、ここは現実である事を思い出して世界樹の根の上を駆け抜けて蟷螂が食い破った穴を目指す。あそこから中に入れると判断し、小回りが利く氷板を足元に生み出してルノは目指す。

移動の途中、何体かの昆虫種に狙われたが世界樹を傷づけないようにルノは風圧の魔法で吹き飛ばし、最も大きな穴の中に入り込む。その後を追うように昆虫種の大群がなだれ込もうとしたが、ルノは出入口で立ち止まると両手を構て魔法を発動させた。


「ここから先は立ち入り禁止だよ!!」
『ギキィイイイッ!?』


掌を前に突き出すと、巨大な氷塊の壁を生み出して出入口を塞ぎ、昆虫種の大群が壁に突っ込んで悲鳴をあげる。蟷螂は鎌を振り下ろし、白蟻は顎の牙を壁に食い込ませようとするが、その程度の攻撃はルノの氷の壁を破壊する事は出来ない。


「ふうっ……これで少しは時間を稼げるかな。でも、ここから先は派手な魔法は使えない」


出入口を塞いだことでしばらくの間は外部からの侵入を防ぐ事は出来るだろうが、それでも相当数の昆虫種が中に入り込んでいる事は間違いなく、ルノは警戒心を強めて氷鎧で全身を覆いこむ。そして昆虫種に対抗するため、氷塊の剣と盾を装備して向かう。


『上へ行けばいいのかな……よし、行くぞ!!』


世界樹の内部を氷鎧を装着したルノが駆け抜け、頂上付近に存在するはずの転移結晶が設置されている広間まで向かう。その途中、先に侵入した昆虫種に殺されたと思われる大量の森人族の兵士の姿を確認し、ルノは歯を食いしばる。


(皆喰い殺されている……あいつらにとって人間は餌なのか)


倒れている兵士達は昆虫種によって装備していた鎧や兜ごと食い千切られた後が存在し、まともな死体は一つも残っていない。その光景を確認しながらもルノは速足で坂道を駆け抜け、頂上に向かう。


『ギイイッ!!』
『ギギィッ!?』
『邪魔だ、退けっ!!』


行く手を阻む昆虫種に対してルノは氷塊の剣に「超振動」を引き起こし、邪魔をする昆虫種の身体を切り刻む。中にはルノに反撃を繰り出す個体も存在したが、氷鎧を破壊するどころか掠り傷さえも負わせられずに吹き飛ばされる。


『うおおおっ!!』
『ギギィイイイッ!!』


それでも狭い通路内を移動する以上、昆虫種の群れとの戦闘は避けられず、1体1体を相手にしながらルノは頂上へ向かうしかなかった。戦う度に時間を取られてしまうが、あまりに強すぎる魔法を使うと世界樹を傷つけてしまうため、出来る限りエルフ王国の居場所ともいえる世界樹を傷つけないようにルノは進む。


『退けぇえええっ!!』
『ギィアアアアッ!?』


いい加減に面倒になったルノは人間砲弾のように空を飛んで昆虫種の群れを吹き飛ばして先に進む。やがて世界樹の中腹部分まで辿り着くと、ルノの耳元に戦闘音が聞こえてきた。


「はあっ……くそっ、こいつら何匹居るんだ!?」
「弱音を吐くな!!腕を動かせ!!」
「畜生、ここは俺達の世界樹だ!!」


森人族の兵士らしき声が聞こえ、ルノは昆虫種を薙ぎ払いながら声の方角へ向かうと、そこには昆虫種と交戦を行う傷だらけの兵士の姿が存在した。
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