最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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エルフ王国 決戦編

森人族の団結

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――転移結晶によって無事に転移した騎士達は周囲の光景を確認し、以前に訪れた事がある白原の要塞である事を確信する。2体の土竜とルノが戦闘した痕跡も残っている事から見間違えるはずがなく、即座にリン達は周囲に魔物が存在しないのか警戒を強めた。


「リン将軍、魔物の姿は見当たりません!!」
「感知のスキルにも反応はありません!!」
「よし、ならば第二陣が到着次第、物資の運搬の準備を行う!!合図を送れ!!」


安全を確認したリンは上空に向けて両手を広げ、転移結晶でこちらの様子を確認しているはずの国王に合図を送った。その結果、即座に上空から流れ星の如く次々とエルフ王国の騎士達が現れ、彼等は地面に衝突の寸前に身体が浮き上がり、ゆっくりと着地を行う。


「おっとと……て、転移に成功したのか?」
「凄い、まさか本当にこんな遠方の地に一瞬で辿り着けるなんて……」
「お前達、呆けている場合ではないぞ!!すぐに次の部隊が送り込まれる前に隊列を整えろ!!」
『は、はい!!』


初めての転移に騎士達は戸惑うが、リンの号令の元で慌てて騎士達はその場を離れて隊列を組む。やがて次々と新しい騎士達が送り込まれる。


「リン将軍、周囲の探索を終了しました!!やはり魔物の姿は見当たりません!!」
「1匹もか?」
「はい、何故かゴブリンの1匹も見当たりません」
「……まあ、こちらとしては都合が良いか」


偵察兵の報告にリンは疑問を抱き、これ程の広大な草原で魔物が1匹も見当たらないという事実に不思議に思うが、こちら側としては魔物が見当たらないというのは悪くはない。これで警備の兵士を削減して次の作業に移る事に集中出来た。

リンは送り込まれた騎士の数が100人を超えた時点で新しい合図を行うと、今度は上空から一般兵士が送り込まれ、彼等は持参していた「収納石」を取り出して物資を運び出す。


「将軍、こちらが数日分の食料が入った収納石です!!」
「薬品関係の物資はこちらです!!」
「武器、防具の類はこちらに収めています!!」
「分かった。ではすぐに防護柵と幕の準備を行え!!」


世界樹内の物資を収納石に収め、それを所持した兵士達が転移するとリンは彼等に指示を与えて荷物の運搬と魔物対策の防護柵を設置させる。その間にも次々と兵士が送り込まれ、全員が急いで1万人以上の民衆を受け入れられる陣の設営を行う。

昆虫種との戦闘で生き残った世界樹に滞在していた兵士の数は2000人程度に対し、民衆の数は1万近く存在する。なので兵士達だけでは陣の設営が間に合わず、無事に転移した一般人にも陣の設営に協力させるしかなかった。


「あの、将軍……我々はどうすればいいのですか?」
「は、はい!!」
「戦闘経験のある者は警備部隊と協力して周囲の状況を警戒しろ!!無暗に陣の外へ出ようとする者が出ないように見張れ!!」
「わ、分かりました!!」


リンの指示の元で送り込まれた兵士達と民衆は互いに協力して陣の設営を開始すると、彼等の様子を見てリンはこの調子ならば問題なく全員を避難させることが出来るかと安心しかけたとき、新しく転移してきた者達の中に見過ごせない姿をした森人族も存在した。


「どけっ!!この程度の荷物は僕が運ぶ!!」
「お、王子様!?何も王子様がそのような事をしなくても……」
「で、デブリ王子!?」


何故か送り込まれた兵士の中には上半身が裸の状態のデブリが紛れており、彼は防護柵の設置のために必要な木材を両手に抱えて兵士の手伝いを行う。どうして王族の王子が既に転移しているのかとリンは驚くが、デブリは彼女に気付くと元気よく駆けつける。


「リン将軍、この木材は何処へ運べばいいんだ?」
「え、あっ……そちらの方角にいる兵士に渡してくれれば問題ありませんが……いえ、それよりも何故王子がここに!?」
「ん?ああ、言っておくが僕の独断で訪れたわけじゃないぞ。ほら、あそこには兄上と姉上もいるぞ」
「ええっ!?」


デブリの言葉にリンは驚いた表情を浮かべると、確かに兵士達と共に木箱を運び込むイヤンと、女性達と共に食事の準備を行うヤミンの姿も存在した。


「王子様、もっと踏ん張ってください!!それでは荷物を落としますぞ!?」
「くそっ……なんで僕がこんな目に……」
「王女様、そのような事をなさらずとも私達に任せてくれれば……」
「大丈夫ですわ、こう見えても料理は得意な方ですのよ」


木箱を嫌々とした表情ながらも運び込むイヤンと、おにぎりを作るのを手伝うヤミンの姿にリンは呆気に取られ、慌てて王族である彼等にこのような真似はさせられないとリンはデブリに声を掛ける。


「王子様!!ここは我々だけで十分です、なにも王族である貴方様達がこのような事をしなくても……」
「何を言っている?国の危機であるからこそ王族が頑張らないといけないんだ!!うおおおっ!!次の荷物は何処へ運べばいい!?」
「ぎゃあっ!?」
「ああ、イヤン王子様がデブリ王子様の下敷きに!?」


リンの言葉を無視してやる気に満ちたデブリは進んで兵士の手伝いを行い、そんな彼等の姿にリンは止める事も出来ず、何がどうしてこうなったのか頭を抑えた。





※デブリ王子大活躍!!( ̄д ̄)ガンバレー
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