452 / 657
エルフ王国 決戦編
避難開始
しおりを挟む
――転移結晶を利用した国民の避難計画は即座に実行され、世界樹の内部に存在する全ての魔石が集められる。万を超える森人族が転移を行うには大量の魔石と膨大な時間を必要とし、さらに昆虫種の襲撃に備えて防備も維持しなければならない。
時間が経過する度に世界樹の樹皮を食い破って侵入を行う昆虫種の数も増え続け、このままでは数日も経たない内に世界樹の防備は保てなくなるだろう。そう考えれば悠長に帝国軍の援軍も待つ事も出来ず、国王は急いで民衆の避難を急がせる。
「全員1列に並べ!!余計な荷物は持ち込むな、必要な物資は既に用意している!!」
「余分な魔石を所有している者も居れば兵士に渡せ!!今は一刻も争う!!」
「焦らず、騒がず、落ち着いて行動しろ。そこ、横入りはするな!!」
兵士の引率の元、大勢の森人族が世界樹の頂上に向けて通路を移動し、転移結晶を利用して帝国への避難の準備を行う。既に転移結晶が設置されている広間には山盛りの魔石と魔水晶が運び込まれ、更に世界樹内に存在した魔術師の職業の人間が集まっていた。
「よし、これより転移を始める!!転移終了後は速やかに帝国へ援軍の要請を行い、救助を求めるのだ!!」
「魔物が存在した場合も想定して先に我々が転移し、障害となる魔物は全て排除する!!急げ、時間の余裕はないぞ!!」
「リン将軍、僕も行くぞ!!この筋肉を役立ててくれ!!」
「い、いや……流石に王子様も戦わせるわけには……」
転移結晶の前にはリンを含めた10人の騎士が集まり、一度で移動出来る人数は限られているので世界樹内でも優秀な力を持つ騎士達が先に転移を行い、白原に移動して安全地帯を確保する必要があった。転移結晶に国王が掌を翳すと、水晶に転移先の映像が映し出され、白原に存在する荒れ果てた要塞の様子を伺う。
「うむ、一応は砦としての体裁は保っているな……ではこれより転移を開始する!!第一陣を送り込んだ後、すぐに第二陣を送り込む!!準備はいいな?」
『はっ!!』
転移先を白原に指定したのはバルトロス王国とエルフ王国の領地の境目に存在するからであり、本音を言えば帝国の比較的に安全な領地に送り込みたいところだった。だが、あまりに遠方だと消耗する魔力量が増大するため、国王は転移結晶を操作して白原に指定すると発動させる。
「お主達も踏ん張れ!!出来る限り、魔石は消耗したくはない!!」
「は、はい……ですがこれは……」
「ま、魔力が……」
「ふぉおおおっ……!?」
転移結晶の周囲に存在する小型の魔法陣に魔法職の森人族が立つと、彼等の魔力を魔法陣によって吸い上げた瞬間、転移結晶が光り輝く。それを確認した国王は転移結晶に手を伸ばして発動の呪文を叫ぶ。
「スターゲート!!」
『っ――!?』
次の瞬間、転移結晶の前に立っていた兵士達の身体が光り輝き、流れ星のように変化して天井を通過すると世界樹の天頂から解き放たれる。その様子を見送った者達は神秘的な光景に唖然とするが、国王は転移結晶を確認して白原の様子を伺うと、上空から流れ星の如く兵士達が要塞内部に降り立つ姿を確認して歓喜の声を上げる。
「おおっ……成功したぞ!!」
「やりましたわ父上!!」
「ほ、本当に消えた……これが勇者の聖遺物なのか」
「凄い!!奇跡だ!!」
水晶には要塞内部に転移したリンと騎士達が戸惑いの表情を浮かべながら周囲を見渡す様子が映し出され、自分達が転移した事を確認した騎士達は上空に向けて両手を広げて合図を送る。それを見た国王は頷き、第二陣の兵士の転移を開始しようとした。
「うむ、どうやら成功したようだな。すぐに次の兵士を送り込むぞ!!準備を整えろ!!」
「待ってください父上!!魔術師の様子が……」
「ううっ……」
「がはっ……」
すぐに転移結晶を作動させようとした国王に対してデブリが引き留め、彼は魔法陣の上に立つ魔術師の職業の兵士達を指差す。たった一度の転移で根こそぎの魔力を奪われたのか、10人のうちの7人が魔法陣の中で気絶し、残りの者も意識は保っていたが既に立てる体力も残っていないのか座り込む。
彼等の様子を確認した他の兵士達が慌てて魔法陣から移動させ、容体を確認すると国王に首を振る。予想以上に転移には膨大な魔力を必要とするらしく、この調子では次の転移には彼等の肉体が耐えられないだろう。
「国王様、全員が魔力枯渇状態です!!これ以上は……」
「ぐうっ……その者達は医療室に運べ、代わりに予備の魔術兵を呼び寄せよ!!」
「はっ!!」
まさか一度の転移でエルフ王国の中でも精鋭の魔術師達が気絶するとは思わず、止む無く国王は彼等を治療するために運ばせ、待機させていた他の魔術師を呼び寄せる。だが、この方法ではあと何回もせずに魔術師の兵士が底を付き、そこから先は魔石や魔水晶を代用して転移を行わなければならない。
「国王様!!準備は整いました!!」
「うむ……すぐに第二陣を送り込む!!準備はいいな!?」
「はい父上!!」
「で、デブリ……お主は兵士ではないだろう!?」
再び転移結晶を発動させようとすると、兵士達の中にちゃっかり紛れ込んでいたデブリに国王は慌てて転移結晶の発動を中止させる。
時間が経過する度に世界樹の樹皮を食い破って侵入を行う昆虫種の数も増え続け、このままでは数日も経たない内に世界樹の防備は保てなくなるだろう。そう考えれば悠長に帝国軍の援軍も待つ事も出来ず、国王は急いで民衆の避難を急がせる。
「全員1列に並べ!!余計な荷物は持ち込むな、必要な物資は既に用意している!!」
「余分な魔石を所有している者も居れば兵士に渡せ!!今は一刻も争う!!」
「焦らず、騒がず、落ち着いて行動しろ。そこ、横入りはするな!!」
兵士の引率の元、大勢の森人族が世界樹の頂上に向けて通路を移動し、転移結晶を利用して帝国への避難の準備を行う。既に転移結晶が設置されている広間には山盛りの魔石と魔水晶が運び込まれ、更に世界樹内に存在した魔術師の職業の人間が集まっていた。
「よし、これより転移を始める!!転移終了後は速やかに帝国へ援軍の要請を行い、救助を求めるのだ!!」
「魔物が存在した場合も想定して先に我々が転移し、障害となる魔物は全て排除する!!急げ、時間の余裕はないぞ!!」
「リン将軍、僕も行くぞ!!この筋肉を役立ててくれ!!」
「い、いや……流石に王子様も戦わせるわけには……」
転移結晶の前にはリンを含めた10人の騎士が集まり、一度で移動出来る人数は限られているので世界樹内でも優秀な力を持つ騎士達が先に転移を行い、白原に移動して安全地帯を確保する必要があった。転移結晶に国王が掌を翳すと、水晶に転移先の映像が映し出され、白原に存在する荒れ果てた要塞の様子を伺う。
「うむ、一応は砦としての体裁は保っているな……ではこれより転移を開始する!!第一陣を送り込んだ後、すぐに第二陣を送り込む!!準備はいいな?」
『はっ!!』
転移先を白原に指定したのはバルトロス王国とエルフ王国の領地の境目に存在するからであり、本音を言えば帝国の比較的に安全な領地に送り込みたいところだった。だが、あまりに遠方だと消耗する魔力量が増大するため、国王は転移結晶を操作して白原に指定すると発動させる。
「お主達も踏ん張れ!!出来る限り、魔石は消耗したくはない!!」
「は、はい……ですがこれは……」
「ま、魔力が……」
「ふぉおおおっ……!?」
転移結晶の周囲に存在する小型の魔法陣に魔法職の森人族が立つと、彼等の魔力を魔法陣によって吸い上げた瞬間、転移結晶が光り輝く。それを確認した国王は転移結晶に手を伸ばして発動の呪文を叫ぶ。
「スターゲート!!」
『っ――!?』
次の瞬間、転移結晶の前に立っていた兵士達の身体が光り輝き、流れ星のように変化して天井を通過すると世界樹の天頂から解き放たれる。その様子を見送った者達は神秘的な光景に唖然とするが、国王は転移結晶を確認して白原の様子を伺うと、上空から流れ星の如く兵士達が要塞内部に降り立つ姿を確認して歓喜の声を上げる。
「おおっ……成功したぞ!!」
「やりましたわ父上!!」
「ほ、本当に消えた……これが勇者の聖遺物なのか」
「凄い!!奇跡だ!!」
水晶には要塞内部に転移したリンと騎士達が戸惑いの表情を浮かべながら周囲を見渡す様子が映し出され、自分達が転移した事を確認した騎士達は上空に向けて両手を広げて合図を送る。それを見た国王は頷き、第二陣の兵士の転移を開始しようとした。
「うむ、どうやら成功したようだな。すぐに次の兵士を送り込むぞ!!準備を整えろ!!」
「待ってください父上!!魔術師の様子が……」
「ううっ……」
「がはっ……」
すぐに転移結晶を作動させようとした国王に対してデブリが引き留め、彼は魔法陣の上に立つ魔術師の職業の兵士達を指差す。たった一度の転移で根こそぎの魔力を奪われたのか、10人のうちの7人が魔法陣の中で気絶し、残りの者も意識は保っていたが既に立てる体力も残っていないのか座り込む。
彼等の様子を確認した他の兵士達が慌てて魔法陣から移動させ、容体を確認すると国王に首を振る。予想以上に転移には膨大な魔力を必要とするらしく、この調子では次の転移には彼等の肉体が耐えられないだろう。
「国王様、全員が魔力枯渇状態です!!これ以上は……」
「ぐうっ……その者達は医療室に運べ、代わりに予備の魔術兵を呼び寄せよ!!」
「はっ!!」
まさか一度の転移でエルフ王国の中でも精鋭の魔術師達が気絶するとは思わず、止む無く国王は彼等を治療するために運ばせ、待機させていた他の魔術師を呼び寄せる。だが、この方法ではあと何回もせずに魔術師の兵士が底を付き、そこから先は魔石や魔水晶を代用して転移を行わなければならない。
「国王様!!準備は整いました!!」
「うむ……すぐに第二陣を送り込む!!準備はいいな!?」
「はい父上!!」
「で、デブリ……お主は兵士ではないだろう!?」
再び転移結晶を発動させようとすると、兵士達の中にちゃっかり紛れ込んでいたデブリに国王は慌てて転移結晶の発動を中止させる。
0
お気に入りに追加
11,312
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。