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エルフ王国 決戦編
エルフ王国の決断
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「いや、実はあの魔法陣には秘密がある……転移結晶の周囲に設置された魔法陣は魔力を吸収し、転移魔法を発動させる仕組みなのはお前も目にしただろう?」
「ですからお兄様は魔術師を呼び集めようとしてたのですね」
「うむ、だがあの魔法陣は本来は森人族が乗り込むために作り出された物ではない。魔力を生み出す代用品を設置すれば問題なく発動出来る」
「という事は……魔石や魔水晶でも転移結晶は使用できるのですか!?」
国王の言葉にヤミンとデブリは驚き、どうしてそんな大事な事を今まで忘れていたのかと非難する視線を向けるが、国王は頭を抱えながら言い訳を行う。
「ち、違うのだ……忘れていたのは事実だが、この話は儂がまだ子供の頃に一度だけ聞いた話なのだぞ?400年も前の事なのだから思い出さなくてもおかしくはないではないか!?」
「そんな事を言っている場合じゃないですわ!!それならあの転移結晶を使えるのですか!?」
「ならばすぐに民だけでも避難させるべきです!!」
「うむ、お主達の言うとおりだ。だが、問題があるとすれば転移結晶で転移出来る重量は限られている。1度の転移で移動出来る者は10人程度、全員を避難させるには時間が掛かる……それに転移先を何処に指定すればいいのか……」
「指定先?という事は転移する場所も選べるのですか?」
「そうだ。但し、転移を行ったら元に戻る事は出来ない。もしも転移先に魔物や賊が待ち伏せて居ればとんでもない事になるだろう。それに転移先が遠方である程に消費する魔力量も変化する」
転移結晶は移動先を指定する事は出来るが、距離が遠いほどに魔力を消費する量が異なり、昆虫種が生息していない土地に飛ばすとなれば恐らくは外国まで転移させなければならない。仮に世界樹に避難した全員が避難する事に成功してもそれは王国を捨てた事に等しい。
人命を優先する場合は余分な荷物は持ち込めず、当然だが貴重品の類も置いていかなければらない。そうなればエルフ王国の民は着の身着のままの状態で外国に飛ばされる事になるが、魔王軍が仕掛けた爆発物がいつ引火するかも分からず、このまま籠城を続けたとしても生き残る保証はない。
「父上、ここはやはり皆で避難するべきです!!同盟国である帝国の領地に転移しましょう!!」
「ですが王子様、この世界樹には1万人近くの民衆と多数の兵士が存在します。全員を転移させるにしても相当な数の魔石や魔水晶を必要とします。現在、戦闘で使用していない予備の在庫を全て使い果たしても避難できるかどうか……」
「しかし、このまま何もしなければ僕達は全滅するのだろう!?魔石が足りないのなら僕達の魔力で補えばいい!!森人族は六種族の中で最も魔法に愛された種族、それが出来ないはずがない!!」
「確かにデブリの言う通りだが……」
転移結晶を発動するのに必要な魔術師の数は10人は必要だが、この世界樹には魔術師が数多く存在する。それに転移結晶を使用した際に疲労した者は転移する人間と交代すれば実質上は最後の10人になるまでは転移を繰り返す事が出来る。だが、いくら六種族の中で魔法の才に恵まれた森人族であろうと転移結晶の使用には相当な負荷が身体に掛かるだろう。
「デブリよ、お主の方法では転移する人間の中には大量の魔力を消耗した状態で送り込まれた者も現れるだろう。その者達が転移後に体調を崩した場合はどうする?そもそも転移先を何処に指定するのだ?」
「それは……そうだ!!白原です!!白原に転移すればいいのです!!あそこには帝国が作り出した要塞が存在する!!半壊はしましたが、それでもまだ避難先の場所としては十分なのでは!?」
「要塞というと……あの初級魔術師の勇者様が作り出した大きな要塞の事ですわね!!」
「ふむ、確かにあそこならば……」
白原には魔物の数は少なく、以前にルノが外部からの魔物の侵攻に備えて作り出した要塞が半壊の状態ではあるが残っていた。避難先としては妥当な場所だが、それでも民衆に大きな負担を与える事に変わりはない。
「……デブリよ、お主の言葉通りこのままでは我々は滅びる。だが、もしも何もかもを捨てて転移結晶で他国に逃げたとすれば我々はどうなる?エルフ王国はもう崩壊する事に等しいぞ」
「何を言うのですか!!王国は滅びるのならば新しい国を一から作ればいいのです!!お菓子がなければパンを作るように!!」
「そ、その喩えはよく分からぬが……お主にその覚悟は出来ているのか?」
「ここで死ぬぐらいならば最後まで惨めでみっともなくとも生きます!!父上が反対されるのならば力ずくでも……!!」
「分かった!!お主の覚悟は十分に伝わったぞ!?だからその鍛え上げた腕を下ろそうか?」
最後の決断に踏み切らない国王に対してデブリは筋肉を肥大化させて近づこうとするが、半ば脅される形ではあるが国王はデブリの提案に賛成し、世界樹を放棄して帝国の領地へ民衆と共に避難する事を決めた――
※デブリ王子、こんなに逞しくなって……!!( ̄д ̄)
「ですからお兄様は魔術師を呼び集めようとしてたのですね」
「うむ、だがあの魔法陣は本来は森人族が乗り込むために作り出された物ではない。魔力を生み出す代用品を設置すれば問題なく発動出来る」
「という事は……魔石や魔水晶でも転移結晶は使用できるのですか!?」
国王の言葉にヤミンとデブリは驚き、どうしてそんな大事な事を今まで忘れていたのかと非難する視線を向けるが、国王は頭を抱えながら言い訳を行う。
「ち、違うのだ……忘れていたのは事実だが、この話は儂がまだ子供の頃に一度だけ聞いた話なのだぞ?400年も前の事なのだから思い出さなくてもおかしくはないではないか!?」
「そんな事を言っている場合じゃないですわ!!それならあの転移結晶を使えるのですか!?」
「ならばすぐに民だけでも避難させるべきです!!」
「うむ、お主達の言うとおりだ。だが、問題があるとすれば転移結晶で転移出来る重量は限られている。1度の転移で移動出来る者は10人程度、全員を避難させるには時間が掛かる……それに転移先を何処に指定すればいいのか……」
「指定先?という事は転移する場所も選べるのですか?」
「そうだ。但し、転移を行ったら元に戻る事は出来ない。もしも転移先に魔物や賊が待ち伏せて居ればとんでもない事になるだろう。それに転移先が遠方である程に消費する魔力量も変化する」
転移結晶は移動先を指定する事は出来るが、距離が遠いほどに魔力を消費する量が異なり、昆虫種が生息していない土地に飛ばすとなれば恐らくは外国まで転移させなければならない。仮に世界樹に避難した全員が避難する事に成功してもそれは王国を捨てた事に等しい。
人命を優先する場合は余分な荷物は持ち込めず、当然だが貴重品の類も置いていかなければらない。そうなればエルフ王国の民は着の身着のままの状態で外国に飛ばされる事になるが、魔王軍が仕掛けた爆発物がいつ引火するかも分からず、このまま籠城を続けたとしても生き残る保証はない。
「父上、ここはやはり皆で避難するべきです!!同盟国である帝国の領地に転移しましょう!!」
「ですが王子様、この世界樹には1万人近くの民衆と多数の兵士が存在します。全員を転移させるにしても相当な数の魔石や魔水晶を必要とします。現在、戦闘で使用していない予備の在庫を全て使い果たしても避難できるかどうか……」
「しかし、このまま何もしなければ僕達は全滅するのだろう!?魔石が足りないのなら僕達の魔力で補えばいい!!森人族は六種族の中で最も魔法に愛された種族、それが出来ないはずがない!!」
「確かにデブリの言う通りだが……」
転移結晶を発動するのに必要な魔術師の数は10人は必要だが、この世界樹には魔術師が数多く存在する。それに転移結晶を使用した際に疲労した者は転移する人間と交代すれば実質上は最後の10人になるまでは転移を繰り返す事が出来る。だが、いくら六種族の中で魔法の才に恵まれた森人族であろうと転移結晶の使用には相当な負荷が身体に掛かるだろう。
「デブリよ、お主の方法では転移する人間の中には大量の魔力を消耗した状態で送り込まれた者も現れるだろう。その者達が転移後に体調を崩した場合はどうする?そもそも転移先を何処に指定するのだ?」
「それは……そうだ!!白原です!!白原に転移すればいいのです!!あそこには帝国が作り出した要塞が存在する!!半壊はしましたが、それでもまだ避難先の場所としては十分なのでは!?」
「要塞というと……あの初級魔術師の勇者様が作り出した大きな要塞の事ですわね!!」
「ふむ、確かにあそこならば……」
白原には魔物の数は少なく、以前にルノが外部からの魔物の侵攻に備えて作り出した要塞が半壊の状態ではあるが残っていた。避難先としては妥当な場所だが、それでも民衆に大きな負担を与える事に変わりはない。
「……デブリよ、お主の言葉通りこのままでは我々は滅びる。だが、もしも何もかもを捨てて転移結晶で他国に逃げたとすれば我々はどうなる?エルフ王国はもう崩壊する事に等しいぞ」
「何を言うのですか!!王国は滅びるのならば新しい国を一から作ればいいのです!!お菓子がなければパンを作るように!!」
「そ、その喩えはよく分からぬが……お主にその覚悟は出来ているのか?」
「ここで死ぬぐらいならば最後まで惨めでみっともなくとも生きます!!父上が反対されるのならば力ずくでも……!!」
「分かった!!お主の覚悟は十分に伝わったぞ!?だからその鍛え上げた腕を下ろそうか?」
最後の決断に踏み切らない国王に対してデブリは筋肉を肥大化させて近づこうとするが、半ば脅される形ではあるが国王はデブリの提案に賛成し、世界樹を放棄して帝国の領地へ民衆と共に避難する事を決めた――
※デブリ王子、こんなに逞しくなって……!!( ̄д ̄)
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