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エルフ王国 決戦編
転移結晶の秘密
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――イヤンのクーデターが失敗に終ってから翌日、世界樹の内部では忙しなく兵士達が魔王軍のクズノが仕掛けた爆発物の探索を行うが、結果は最悪に終わる。確かに情報通りに爆発物と思われる魔石は発見されたが、その量は尋常ではなかった。
「国王様、下層の民衆の避難区にも爆発物が発見されました!!これで14つ目です!!」
「上層では既に15個の爆発物を発見しています!!」
「そうか……やはり、仕掛けられていたか」
「この調子では恐らく他にも爆発物が仕掛けられているでしょう。情報通りにこの世界樹を吹き飛ばす程の爆発物が仕掛けられたとすれば、恐らくその数は100を超えるかと……」
「つまり、最低でも70個近くの爆発物が発見されていないというのですか……!?」
世界樹を吹き飛ばし、昆虫種共々滅ぼそうと考えた魔王軍の策略に玉座の間に存在した全員が戦慄し、このままでは非常に不味い。魔王軍の残党がまだ世界樹内に残っていた場合、爆発物を発動させれば世界樹は壊滅的な被害を受けてしまう。
エルフ王国にとって世界樹という存在は王国の象徴だけではなく、彼等の最後の移住地でもある。ここを失えば国家として機能は出来ず、エルフ王国は滅びてしまう。だからこそ全ての爆発物を発見して処理する必要があるのだが、更に運が悪い事に外部へ調査に向かっていた兵士達の報告が届く。
「こ、国王様!!偵察部隊の調査によると、既に世界樹の外側にも爆発物を仕掛けられています!!その数、推定でも100以上!!」
「何だと!?」
「外側まで……だが、そんな物を取りつけて昆虫種が反応しないのか!?」
「どうやら昆虫種は火属性の魔石の魔力を恐れるらしく、樹皮に取り付けられた爆発物には接近さえしません。我々も回収を試みましたが、やはり昆虫種の目がある場所では派手に動く事も出来ず……」
「分かった。もう下がるがいい」
「父上……我々はどうすればいいのですか?」
既に世界樹の全体に爆発物が仕掛けられているという事実に流石のデブリも焦りを隠せず、今回ばかりはどうしようも出来ない。仮に全ての爆発物を回収する事が出来ても昆虫種に取り囲まれている状況は変わらず、エルフ王国は存亡の危機に陥っていた。
国王であるミャクは息子の言葉に頭を抱え、正直に言えば国王自身もこの問題を打破する方法が思いつかない。これでは悠長に帝国軍の援軍を待つ事も出来ず、今できる事は世界樹の内部に仕掛けられた爆発物の回収するしかない。だが、数日前から仕掛けられていたとしたら全ての爆発物を見つけ出すのは困難を極めるだろう。世界樹は全長が1キロを軽く超える巨大な天然の城のため、隠し場所はいくらでも存在する。
「リンよ、イヤンと兵士達の様子はどうだ?」
「今のところは洗脳の後遺症はないようですが、やはり自分達の行動に責任を感じ、現在は牢の中で大人しく過ごしています。どうにか洗脳時の記憶を思い出させようと色々と試していますが……」
「そうか、やはり難しいか……」
クーデターを起こしたイヤンと兵士達は現在は牢に隔離され、洗脳されていた時の記憶を取り戻す事が出来ないのか試していた。彼等が牢に入ったのは洗脳が残っている可能性があるためであり、決して罰則のためではない。正気を取り戻したイヤンも自分が牢獄送りされる事に不満はなく、むしろとんでもない事を仕出かしたという罪の意識から人が変わったように落ち込んでいた。
彼等を洗脳したクズノという男の情報は既に世界樹の兵士達に通達され、イヤン達以外にも挙動が怪しい兵士がいれば報告を行うように厳守された。それでもクズノに関する情報は集まらず、既に世界樹を離れている可能性が高い。
「お父様、これから私達はどうなるのですか……?」
「ヤミンよ、弱気になってはならん。ここで挫ければエルフ王国はどうなる?」
「父上、本当に方法はないのですか?例の転移結晶という聖遺物を使い、民と共に脱出する事は出来ないのですか?」
デブリの駄目元での提案に全員が黙り込み、当然そんな方法が行えるのならば国王が今まで黙っているはずがない。そう考えた全員が何も口にしない国王に視線を向けると、そこには驚愕の表情を浮かべた国王が存在した。
「で、デブリよ……お主、今なんといった?」
「え?いや、ですから転移結晶を使って皆で脱出は出来ないのですかと……まさか!?」
「し、しまったぁっ!!その手があったかぁっ!?」
『ええええっ!?』
今までに思いつかなかったとばかりに国王は玉座から立ち上がり、頭を抱えて膝を崩す。そんな彼の反応からデブリが提案した方法が実現出来るのかをリンが問う。
「国王様!?まさか、本当に転移結晶を使えば避難する事が出来るのですか!?」
「ああ、元々あの聖遺物は遠方に人を送り込むための魔道具だった……本来は使用が許されているのは王族だけだが、あれを使えば確かに安全な場所に避難させることが出来る……くそ、どうしてこのような事に気付かなかった!?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!!あの転移結晶の発動には10人の魔術師の魔力が必要なのでは!?」
国王の言葉にヤミンは言い返すと、国王は首を振って転移結晶の秘密を明かす。
※まさかの休日出勤……八つ当たりに今日は夜も投稿します(´・ω・)
「国王様、下層の民衆の避難区にも爆発物が発見されました!!これで14つ目です!!」
「上層では既に15個の爆発物を発見しています!!」
「そうか……やはり、仕掛けられていたか」
「この調子では恐らく他にも爆発物が仕掛けられているでしょう。情報通りにこの世界樹を吹き飛ばす程の爆発物が仕掛けられたとすれば、恐らくその数は100を超えるかと……」
「つまり、最低でも70個近くの爆発物が発見されていないというのですか……!?」
世界樹を吹き飛ばし、昆虫種共々滅ぼそうと考えた魔王軍の策略に玉座の間に存在した全員が戦慄し、このままでは非常に不味い。魔王軍の残党がまだ世界樹内に残っていた場合、爆発物を発動させれば世界樹は壊滅的な被害を受けてしまう。
エルフ王国にとって世界樹という存在は王国の象徴だけではなく、彼等の最後の移住地でもある。ここを失えば国家として機能は出来ず、エルフ王国は滅びてしまう。だからこそ全ての爆発物を発見して処理する必要があるのだが、更に運が悪い事に外部へ調査に向かっていた兵士達の報告が届く。
「こ、国王様!!偵察部隊の調査によると、既に世界樹の外側にも爆発物を仕掛けられています!!その数、推定でも100以上!!」
「何だと!?」
「外側まで……だが、そんな物を取りつけて昆虫種が反応しないのか!?」
「どうやら昆虫種は火属性の魔石の魔力を恐れるらしく、樹皮に取り付けられた爆発物には接近さえしません。我々も回収を試みましたが、やはり昆虫種の目がある場所では派手に動く事も出来ず……」
「分かった。もう下がるがいい」
「父上……我々はどうすればいいのですか?」
既に世界樹の全体に爆発物が仕掛けられているという事実に流石のデブリも焦りを隠せず、今回ばかりはどうしようも出来ない。仮に全ての爆発物を回収する事が出来ても昆虫種に取り囲まれている状況は変わらず、エルフ王国は存亡の危機に陥っていた。
国王であるミャクは息子の言葉に頭を抱え、正直に言えば国王自身もこの問題を打破する方法が思いつかない。これでは悠長に帝国軍の援軍を待つ事も出来ず、今できる事は世界樹の内部に仕掛けられた爆発物の回収するしかない。だが、数日前から仕掛けられていたとしたら全ての爆発物を見つけ出すのは困難を極めるだろう。世界樹は全長が1キロを軽く超える巨大な天然の城のため、隠し場所はいくらでも存在する。
「リンよ、イヤンと兵士達の様子はどうだ?」
「今のところは洗脳の後遺症はないようですが、やはり自分達の行動に責任を感じ、現在は牢の中で大人しく過ごしています。どうにか洗脳時の記憶を思い出させようと色々と試していますが……」
「そうか、やはり難しいか……」
クーデターを起こしたイヤンと兵士達は現在は牢に隔離され、洗脳されていた時の記憶を取り戻す事が出来ないのか試していた。彼等が牢に入ったのは洗脳が残っている可能性があるためであり、決して罰則のためではない。正気を取り戻したイヤンも自分が牢獄送りされる事に不満はなく、むしろとんでもない事を仕出かしたという罪の意識から人が変わったように落ち込んでいた。
彼等を洗脳したクズノという男の情報は既に世界樹の兵士達に通達され、イヤン達以外にも挙動が怪しい兵士がいれば報告を行うように厳守された。それでもクズノに関する情報は集まらず、既に世界樹を離れている可能性が高い。
「お父様、これから私達はどうなるのですか……?」
「ヤミンよ、弱気になってはならん。ここで挫ければエルフ王国はどうなる?」
「父上、本当に方法はないのですか?例の転移結晶という聖遺物を使い、民と共に脱出する事は出来ないのですか?」
デブリの駄目元での提案に全員が黙り込み、当然そんな方法が行えるのならば国王が今まで黙っているはずがない。そう考えた全員が何も口にしない国王に視線を向けると、そこには驚愕の表情を浮かべた国王が存在した。
「で、デブリよ……お主、今なんといった?」
「え?いや、ですから転移結晶を使って皆で脱出は出来ないのですかと……まさか!?」
「し、しまったぁっ!!その手があったかぁっ!?」
『ええええっ!?』
今までに思いつかなかったとばかりに国王は玉座から立ち上がり、頭を抱えて膝を崩す。そんな彼の反応からデブリが提案した方法が実現出来るのかをリンが問う。
「国王様!?まさか、本当に転移結晶を使えば避難する事が出来るのですか!?」
「ああ、元々あの聖遺物は遠方に人を送り込むための魔道具だった……本来は使用が許されているのは王族だけだが、あれを使えば確かに安全な場所に避難させることが出来る……くそ、どうしてこのような事に気付かなかった!?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!!あの転移結晶の発動には10人の魔術師の魔力が必要なのでは!?」
国王の言葉にヤミンは言い返すと、国王は首を振って転移結晶の秘密を明かす。
※まさかの休日出勤……八つ当たりに今日は夜も投稿します(´・ω・)
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