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エルフ王国 決戦編

帝都へ

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「そうね、そういう意味ではあんたとクズノは相性が悪いわ。でも、あいつ自身はそんなに強くないはずよ。弱いわけではないけど、能力的には他の幹部に劣るわ」
「そこまで知っているのなら魔王軍の本拠地なども教えて貰えると助かるがのう」
「本拠地なんてないわよ。時々、幹部同士が集まって話し合う事はあるけど、その場所も用意するのもクズノだったわ。私達は定期的にあいつの指示を受けて動いていただけで別に特定の拠点なんて持ち合わせていないわ」
「それを信じろ、と?」
「信じる信じないはあんた等の勝手よ……私が知っている限りの情報は話したわよ。それで、これからどうするのよ?」


リディアの言葉に全員が黙り込み、現状では軍隊を立て直す必要があるが、その後の行動はどうするのかが重要だった。昆虫種が既に帝国の領地で待ち伏せしていた以上、これからの行軍で昆虫種が襲い掛かる恐れがあり、既に魔王軍は帝国軍の援軍を予測して対策を立てていたのだろう。

仮にルノが訪れなければ昆虫種によって帝国軍は壊滅させられた事は間違いなく、このまま何も準備せずに進むのは危険すぎる。だが、これ以上に時間を掛ければエルフ王国が危うく、例の手紙が本当に魔王軍の仕業だとしたら悠長に時間は掛けられない。


「ともかく、まずは負傷者の治療と兵糧物資の点検を行わんとな」
「それなら俺は見回りに出るぞ。あんな化物が他に生き残っていたら厄介だからな」
「僕は付近の村や街の様子を調べます。ヒカゲさん、部隊の人員を分けてくれませんか?」
「分かった。好きなだけ連れて行って」


将軍達は自分の職務を果たすために動き、残されたルノは近くに会った岩の上に座り込んで考え込む。話を聞く限りではナオとリーリスが誘拐されたとは考えにくく、それに屋敷で待機していたスラミン達も消えたという報告にルノは引っ掛かった。


(ナオ君たちも心配だけど、スラミン達も何処へ行ったのかな……魔王軍に捕まってないといいけど)


魔獣達の事も心配だがルノとしては例の手紙に関して気にかかり、リディアの話から聞いたクズノという人物は慎重な性格らしく、わざわざエルフ王国へ軍隊を招くような真似をするはずがないという。だが、それならば今回の帝国軍に備えて配置させていた昆虫種の大群の存在が気にかかり、ルノは牙竜の相手をしているリディアに振り返る。


「リディア、ちょっと外を見てくるから協力してくれる?」
「え?何をするのよ?」
「他に昆虫種がいないのか気になる。少し調べてみよう」
「それなら心配ないわよ。ほら、先に偵察を出していたあいつに聞いてみなさいよ」
「シャアアッ!!」


ルノの言葉を聞いてリディアは上空を指差し、こちらに向けて効果するガーゴイルを指差す。戦闘では目立たなかったガーゴイルだが、ルノが昆虫種の殲滅を終えた後に念のためにリディアが周囲の探索を行わせていたガーゴイルから直接報告を受ける。


「シャウッ!!シャアアッ!!」
「ふむふむ、どうやら他に昆虫種はいないようね。ならしばらくの間は安全じゃないの?」
「そうか……ご苦労様ガー君」
「シャアッ♪」


褒められたガーゴイルは照れ臭そうに頭を掻く動作を行い、大分人間らしい行動を取るようになった自分の僕にリディアは呆れるが、昆虫種の伏兵が他に確認できない以上はしばらくの間は軍隊は安全だと判明した。しかし、負傷者の治療や物資の点検に時間が掛かるため、行軍は明日以降になるだろう。

ルノは軍隊が準備を整えるまでにこれまでの情報を整理し、姿を消したナオ、リーリス、ジャンヌ、その他の魔獣達が何処に消えたのかを考え、ある結論に至る。


「もしかして……」
「え?何よ?」
「いや、ちょっと帝都に戻ってみる。すぐに帰るからここを任せたよ!!」
「はあ!?ちょっと、何を言って……」


軍隊の護衛をリディアに任せてルノは飛翔術を利用して浮上し、帝都の方角へ向けて移動を開始する。あっさりと自分にこの場を任せて立ち去ったルノに対し、リディアは不満な表情を浮かべながらも呟く。


「何よもう……私がもしも敵だったらどうするのよ。こんな傷だらけの仲間を置いて大丈夫だと思ってるの?たく……」
『ガアッ?』


溜息を吐きながらリディアは軍隊に視線を向け、傷ついた彼等ならばリディアがその気になれば牙竜を利用して殲滅出来るだろう。それはルノも承知しているはずだが、それだけ自分が信頼されているのかと考えると不思議と気分は悪くなかった。


「全く、面倒な相棒を持ったわね……ほら、見回りにでも行くわよ」
『ガウッ!!』
「シャアッ!!」


言葉とは裏腹に少し上機嫌になったリディアは牙竜の背中に乗り込み、念のために陣内の周囲の探索に向かう――



※リディアも大分デレてきましたね( ̄ω ̄)
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