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エルフ王国 決戦編

世界滅亡へ導く力

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「まさか俺がいない間にそんな事になってるなんて……でも、ナオ君とリーリスが魔王軍に連れ去られたんでしょうか?」
「そこが気になるのう。ナオ殿はともかく、あのリーリスが簡単に不覚を取るとは思えん」
「そうですね、リーリスさんが誘拐されるとは考えにくいですが……」
「でも、二人が消えたのは本当。日影の情報収集力でも二人の跡は掴めなかった」
「あ~……その事なんだけどよ、実は俺はあいつらが城の外に抜け出したのを見てるんだわ」
「何じゃと!?」


ダンテの言葉に全員が視線を向け、彼は言いにくそうに最後に二人が帝都から離れる時の状況を話した。


「言い忘れたんだが、あの二人が帝都を離れる所を見てたんだよ。時期はだいたい王女様が誘拐される前か後だったかな?詳しい事は覚えてねえけど……」
「そんな重要な情報をどうして黙っていた!?」
「いや、それは……」


ナオとリーリスが立ち去る場面を見ていたダンテは二人が何か考えがあっての行動だと思い、敢えて黙っていたのだがこの状況では話さないわけにいかず、当然だが皇帝は激怒する。しかし、彼の気持ちを読み取ったように他の将軍達が庇い立てする。


「陛下、今はダンテを責める前に消えた二人の事よりも軍隊を立て直す必要があります。ルノ殿のお陰で昆虫種は殲滅しましたが、我が軍の被害も大きいです」
「うむ、負傷者も多い。ここは兵士達に休息を与える必要があるのう」
「ぬうっ……分かった。そなた達に任せよう、ダンテよ!!今後は報告を怠ってはならんぞ!?」
「はい、すいません……いや、申し訳ない」


皇帝の言葉にダンテは謝罪を行い、その態度を見て皇帝は鼻を鳴らしながらも馬車へ戻る。彼が起こるのも無理はなく、本来ならばダンテの行動は許される事ではない。だが、今は一刻も早く軍隊を立て直してエルフ王国へ向かうのが先決のため、罰則を与えない。

叱られたダンテはため息を吐きながらも他の将軍とルノ達に向き合い、苦笑いを浮かべる。そんな彼の態度からダンテもナオ達の行動の意図は読めなかった事を悟り、全員が話し合う。


「えっと……ここまでの情報をまとめると、俺が消えた後にナオ君が訪れて帝国へ救援を求めた。だけど、北方の領地からユニコーンが出現したという報告を受けて援軍の派遣を断った後、ナオ君とリーリスが帝都から立ち去った後に王女様が魔王軍に誘拐された……で合ってますか?」
「だいたいは間違ってない」
「え、いやおかしいでしょ?何で魔王軍が……というか、クズノの奴がわざわざ帝国軍をエルフ王国へ誘い込むのよ。意味わかんないけど」
「ほう、そのクズノとやらが魔王軍の支配者か?」


リディアの言葉にギリョウは瞳を鋭くさせて睨みつけると、リディアは慌ててルノの背中に隠れて自分の知る限りのクズノの情報を話す。ここまで来た以上は魔王軍に戻る事も出来ず、彼女はルノ達に味方する事を決めた。


「く、クズノは用心深い男よ……昆虫種を利用してエルフ王国を壊滅させようとしているのなら、きっとあいつなら外部からの救援が送り込まれないように配慮するはずよ。なのにわざわざ王女を誘拐して軍隊を招き込むような真似なんてしないわよ」
「手紙によれば軍隊の他に帝国の所有する神器を運ぶように記されていますが……」
「神器が狙いならわざわざ軍隊なんて同行させないわよ。そもそも王女が誘拐されたのならあいつの性格なら王女に洗脳を施して国を裏から操ろうとするわよ」
「洗脳?それがクズノの能力なの?」
「そうよ。あいつは産まれたときから「洗脳」と呼ばれる希少スキルを所持しているの、あいつは人と話すだけてその人間の心を刺激して自分の思い通りの人形へ変化させる事が出来るわ……魔王軍の幹部の大半は少なからずあいつに洗脳されていたようね」
「……確かに前と会った時と比べると性格が違う」
「ええ、そうでしょうね。あの時の私はおかしかったわ……あいつのせいで自分が自分じゃない感覚に陥っていた気がする」


王国会談の時のリディアと今現在のリディアは性格が大きく異なり、彼女の話によると魔王軍の幹部が潜入任務を行うとき、クズノが洗脳の能力を利用して人格を変化させるという。しかも魔王軍に不利な情報は漏らさないように最悪の場合は自決するように命じられていたらしい。


「でも、今のリディアは洗脳されてないんでしょ?」
「あいつの能力の弱点は時間よ。あまりに洗脳を施してから時間が経過し過ぎると効果が薄れて最終的には洗脳は解除されるわ。それでも一か月ぐらいは保つらしいけど……」
「厄介な能力じゃのう、洗脳のスキルとは……」
「そうですね、もしもルノ殿が操られていたら……帝国は滅ぶかもしれません」
「……世界が滅亡するかもしれない」
「いや、それは言い過ぎでしょ」
「言い過ぎじゃねえよ!!周りの状況を見て見ろ、こんな事を仕出かす奴が世界を滅せないはずがないだろうが!?」


ダンテの言葉にルノは周囲を見渡すと、無数の昆虫種の死骸が横たわり、中には氷竜に押し潰された個体や空中で氷結化して地上に墜落して砕け散った死骸も存在した。言われてみれば確かに自分の力は国を滅ぼす程の力にまで「成長」したと自覚させられる。
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