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エルフ王国 決戦編

冒険者の違和感

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「あ、あの!!少しよろしいでしょうか!?」
「あん?お前等は確か冒険者の……」
「どうかしたのか?」


ギリョウと話しながら見回りを行っていたダンテの元に冒険者の集団が現れ、彼等は不安そうな表情を浮かべて何かを話し合う。そんな彼等の反応に二人は疑問を抱くと、同行した冒険者の中で最も年季が長い中年冒険者が代表して二人に話しかける。


「あの……実は我々は仕事柄、この地方はよく訪れるのです。それで少し気になる事がありまして……」
「ほう、何が気になるのだ?」
「魔物です。魔物が全く見えないんです」
「魔物だと?まあ、これだけの大人数で動いていたら近寄ってこないだけじゃねえのか?」
「いえ、それが妙なんです……ここまでの道中、本当に1匹も見かけていないんですよ。それが気になるんです」


集まった冒険者達は討伐の依頼などでこの地方によく訪れるらしく、彼等はこの地方で見かけるはずの魔物がこれまでに一度も見ていない事に不安を抱いていた。魔物と遭遇しない事は良い事ではあるのだが、それにしても1匹も見かけないという事が気になるらしく、不安を抱いて将軍達に相談に来たという。

知能が高い魔物ならば軍隊の行軍を妨げず、警戒して隠れるのはおかしくはない。だが、草原に訪れてから1匹も魔物を発見しない事など普通ならば有り得るはずがなく、この一帯に生息していた魔物が全て消えてしまったように感じられた。


「この地方にはオークやコボルトが生息しています。なのにここに訪れてから1匹も見当たないんです……勿論、魔物と遭遇しない事はいい事なんですけど、それがどうも気になって……」
「オークとコボルトか……確かにそれは気になるのう。どちらも知能が高いとはいえん、いくら我等が大軍と言っても恐れて姿を隠すとは考えにくいな」
「気にし過ぎじゃねえのか?いくら頭が悪くても、奴等も俺達に襲い掛かる程馬鹿じゃないんだろ?」
「それでも1匹も見当たらないのは異常ですよ!!あ、すいません……でも、本当におかしいんです」
「まあ、話は分かったけどよ……一応は他の隊にも伝えておくからお前等は持ち場に戻れ」


冒険者達の言葉にダンテとギリョウは部隊に連絡しておくことを約束すると、彼等を元の持ち場に戻してお互いの顔を見る。冒険者達が感じたという違和感に二人も気にかかり、試しに陣の外へ向かう。


「……ふむ、確かにここから見る限りでは魔物が見当たらんのう。まあ、今の儂はお主の顔もよく見えんのだが……」
「それ、ただの老眼じゃねえの?ていうか嘘つくんじゃねえよ、観察眼と遠視の能力を覚えてんだろ爺め……」
「ほほっ……冗談じゃよ」


会話を行いながらも二人は草原の様子を見まわし、確かに魔物らしき姿が見えない事に気付く。指摘されるまで気付かなかったが、広大な草原に魔物が一匹も見当たらないという事実は二人も違和感を抱き、この地方で何かが起きている事を予期する。


「……今夜は警戒を厳重に強めた方がいいかもしれん。ダンテ、お主は他の隊に連絡を伝えろ。儂は陛下に話しておく」
「分かったよ……それにしても魔物が見えないのに不安になるなんておかしな話だな。普通、あいつらがいない方が俺達にとっては都合が良いのによ」
「全くじゃ」


行軍の邪魔となる魔物が存在しない事は帝国軍にとっては好都合な話だが、結局は警戒心を高めてしまう事にダンテはぼやきながらギリョウは笑いながらそれぞれの役目を果たそうとした時、二人の耳に異音が届いた。


「む、これは……ダンテ!!」
「ああ、聞こえてるよ!!この嫌な羽音は……奴等か!!」


2人は草原から聞こえてくる虫が飛ぶときに聞こえてくる音に気づき、空を見上げた。徐々に夜を迎えようとしているので分かりにくいが、それでも緑色に輝く大群がこちらに接近している事を確認する。



――ギルルルルルルッ!!



奇怪な鳴き声をあげながら推定3000は存在する昆虫種の大群が空から帝国軍の陣地に向けて接近し、その様子をいち早く確認したダンテとギリョウは周囲の兵士達に警戒するように注意した。


「皆の者、敵襲じゃ!!」
「ちっ!!森に入る前から襲撃を仕掛けて来たか……おいてめえら!!戦の時間だ!!」
『っ……!?』


2人の言葉に陣地の設営を行っていた兵士達は慌てて迎撃態勢の準備を行うが、昆虫種の大群の移動速度は素早く、空から無数の巨大蟷螂が襲い掛かろうとしていた。


「ちっ……これだけデカい昆虫と戦わされる事になるとはな!!腕が鳴るぜ!!」
「油断するなよダンテ、お主は実力はあるがどうも油断しやすいからのう」
「うるせえよ!!」


反鏡盾を取り出したダンテに対してギリョウは腰の刀に手を伸ばし、昆虫種の様子を伺う。数千の巨大蟷螂が接近する光景はかなりの迫力が存在したが、それでも火竜や土竜と比べれば十分に対応できる相手だと判断し、兵士達に指示を与える。


「皆の者、数は我等が勝る!!決して一人で戦おうとはせず、三人一組で挑め!!決して油断してはならんぞ!!」
『はっ!!』


ギリョウの命令に兵士達も覚悟を決めたように武器を構え、空中から迫る昆虫種に対して戦闘体勢に入り、遂に帝国軍は昆虫種の大群と衝突した――
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