441 / 657
エルフ王国 決戦編
冒険者の違和感
しおりを挟む
「あ、あの!!少しよろしいでしょうか!?」
「あん?お前等は確か冒険者の……」
「どうかしたのか?」
ギリョウと話しながら見回りを行っていたダンテの元に冒険者の集団が現れ、彼等は不安そうな表情を浮かべて何かを話し合う。そんな彼等の反応に二人は疑問を抱くと、同行した冒険者の中で最も年季が長い中年冒険者が代表して二人に話しかける。
「あの……実は我々は仕事柄、この地方はよく訪れるのです。それで少し気になる事がありまして……」
「ほう、何が気になるのだ?」
「魔物です。魔物が全く見えないんです」
「魔物だと?まあ、これだけの大人数で動いていたら近寄ってこないだけじゃねえのか?」
「いえ、それが妙なんです……ここまでの道中、本当に1匹も見かけていないんですよ。それが気になるんです」
集まった冒険者達は討伐の依頼などでこの地方によく訪れるらしく、彼等はこの地方で見かけるはずの魔物がこれまでに一度も見ていない事に不安を抱いていた。魔物と遭遇しない事は良い事ではあるのだが、それにしても1匹も見かけないという事が気になるらしく、不安を抱いて将軍達に相談に来たという。
知能が高い魔物ならば軍隊の行軍を妨げず、警戒して隠れるのはおかしくはない。だが、草原に訪れてから1匹も魔物を発見しない事など普通ならば有り得るはずがなく、この一帯に生息していた魔物が全て消えてしまったように感じられた。
「この地方にはオークやコボルトが生息しています。なのにここに訪れてから1匹も見当たないんです……勿論、魔物と遭遇しない事はいい事なんですけど、それがどうも気になって……」
「オークとコボルトか……確かにそれは気になるのう。どちらも知能が高いとはいえん、いくら我等が大軍と言っても恐れて姿を隠すとは考えにくいな」
「気にし過ぎじゃねえのか?いくら頭が悪くても、奴等も俺達に襲い掛かる程馬鹿じゃないんだろ?」
「それでも1匹も見当たらないのは異常ですよ!!あ、すいません……でも、本当におかしいんです」
「まあ、話は分かったけどよ……一応は他の隊にも伝えておくからお前等は持ち場に戻れ」
冒険者達の言葉にダンテとギリョウは部隊に連絡しておくことを約束すると、彼等を元の持ち場に戻してお互いの顔を見る。冒険者達が感じたという違和感に二人も気にかかり、試しに陣の外へ向かう。
「……ふむ、確かにここから見る限りでは魔物が見当たらんのう。まあ、今の儂はお主の顔もよく見えんのだが……」
「それ、ただの老眼じゃねえの?ていうか嘘つくんじゃねえよ、観察眼と遠視の能力を覚えてんだろ爺め……」
「ほほっ……冗談じゃよ」
会話を行いながらも二人は草原の様子を見まわし、確かに魔物らしき姿が見えない事に気付く。指摘されるまで気付かなかったが、広大な草原に魔物が一匹も見当たらないという事実は二人も違和感を抱き、この地方で何かが起きている事を予期する。
「……今夜は警戒を厳重に強めた方がいいかもしれん。ダンテ、お主は他の隊に連絡を伝えろ。儂は陛下に話しておく」
「分かったよ……それにしても魔物が見えないのに不安になるなんておかしな話だな。普通、あいつらがいない方が俺達にとっては都合が良いのによ」
「全くじゃ」
行軍の邪魔となる魔物が存在しない事は帝国軍にとっては好都合な話だが、結局は警戒心を高めてしまう事にダンテはぼやきながらギリョウは笑いながらそれぞれの役目を果たそうとした時、二人の耳に異音が届いた。
「む、これは……ダンテ!!」
「ああ、聞こえてるよ!!この嫌な羽音は……奴等か!!」
2人は草原から聞こえてくる虫が飛ぶときに聞こえてくる音に気づき、空を見上げた。徐々に夜を迎えようとしているので分かりにくいが、それでも緑色に輝く大群がこちらに接近している事を確認する。
――ギルルルルルルッ!!
奇怪な鳴き声をあげながら推定3000は存在する昆虫種の大群が空から帝国軍の陣地に向けて接近し、その様子をいち早く確認したダンテとギリョウは周囲の兵士達に警戒するように注意した。
「皆の者、敵襲じゃ!!」
「ちっ!!森に入る前から襲撃を仕掛けて来たか……おいてめえら!!戦の時間だ!!」
『っ……!?』
2人の言葉に陣地の設営を行っていた兵士達は慌てて迎撃態勢の準備を行うが、昆虫種の大群の移動速度は素早く、空から無数の巨大蟷螂が襲い掛かろうとしていた。
「ちっ……これだけデカい昆虫と戦わされる事になるとはな!!腕が鳴るぜ!!」
「油断するなよダンテ、お主は実力はあるがどうも油断しやすいからのう」
「うるせえよ!!」
反鏡盾を取り出したダンテに対してギリョウは腰の刀に手を伸ばし、昆虫種の様子を伺う。数千の巨大蟷螂が接近する光景はかなりの迫力が存在したが、それでも火竜や土竜と比べれば十分に対応できる相手だと判断し、兵士達に指示を与える。
「皆の者、数は我等が勝る!!決して一人で戦おうとはせず、三人一組で挑め!!決して油断してはならんぞ!!」
『はっ!!』
ギリョウの命令に兵士達も覚悟を決めたように武器を構え、空中から迫る昆虫種に対して戦闘体勢に入り、遂に帝国軍は昆虫種の大群と衝突した――
「あん?お前等は確か冒険者の……」
「どうかしたのか?」
ギリョウと話しながら見回りを行っていたダンテの元に冒険者の集団が現れ、彼等は不安そうな表情を浮かべて何かを話し合う。そんな彼等の反応に二人は疑問を抱くと、同行した冒険者の中で最も年季が長い中年冒険者が代表して二人に話しかける。
「あの……実は我々は仕事柄、この地方はよく訪れるのです。それで少し気になる事がありまして……」
「ほう、何が気になるのだ?」
「魔物です。魔物が全く見えないんです」
「魔物だと?まあ、これだけの大人数で動いていたら近寄ってこないだけじゃねえのか?」
「いえ、それが妙なんです……ここまでの道中、本当に1匹も見かけていないんですよ。それが気になるんです」
集まった冒険者達は討伐の依頼などでこの地方によく訪れるらしく、彼等はこの地方で見かけるはずの魔物がこれまでに一度も見ていない事に不安を抱いていた。魔物と遭遇しない事は良い事ではあるのだが、それにしても1匹も見かけないという事が気になるらしく、不安を抱いて将軍達に相談に来たという。
知能が高い魔物ならば軍隊の行軍を妨げず、警戒して隠れるのはおかしくはない。だが、草原に訪れてから1匹も魔物を発見しない事など普通ならば有り得るはずがなく、この一帯に生息していた魔物が全て消えてしまったように感じられた。
「この地方にはオークやコボルトが生息しています。なのにここに訪れてから1匹も見当たないんです……勿論、魔物と遭遇しない事はいい事なんですけど、それがどうも気になって……」
「オークとコボルトか……確かにそれは気になるのう。どちらも知能が高いとはいえん、いくら我等が大軍と言っても恐れて姿を隠すとは考えにくいな」
「気にし過ぎじゃねえのか?いくら頭が悪くても、奴等も俺達に襲い掛かる程馬鹿じゃないんだろ?」
「それでも1匹も見当たらないのは異常ですよ!!あ、すいません……でも、本当におかしいんです」
「まあ、話は分かったけどよ……一応は他の隊にも伝えておくからお前等は持ち場に戻れ」
冒険者達の言葉にダンテとギリョウは部隊に連絡しておくことを約束すると、彼等を元の持ち場に戻してお互いの顔を見る。冒険者達が感じたという違和感に二人も気にかかり、試しに陣の外へ向かう。
「……ふむ、確かにここから見る限りでは魔物が見当たらんのう。まあ、今の儂はお主の顔もよく見えんのだが……」
「それ、ただの老眼じゃねえの?ていうか嘘つくんじゃねえよ、観察眼と遠視の能力を覚えてんだろ爺め……」
「ほほっ……冗談じゃよ」
会話を行いながらも二人は草原の様子を見まわし、確かに魔物らしき姿が見えない事に気付く。指摘されるまで気付かなかったが、広大な草原に魔物が一匹も見当たらないという事実は二人も違和感を抱き、この地方で何かが起きている事を予期する。
「……今夜は警戒を厳重に強めた方がいいかもしれん。ダンテ、お主は他の隊に連絡を伝えろ。儂は陛下に話しておく」
「分かったよ……それにしても魔物が見えないのに不安になるなんておかしな話だな。普通、あいつらがいない方が俺達にとっては都合が良いのによ」
「全くじゃ」
行軍の邪魔となる魔物が存在しない事は帝国軍にとっては好都合な話だが、結局は警戒心を高めてしまう事にダンテはぼやきながらギリョウは笑いながらそれぞれの役目を果たそうとした時、二人の耳に異音が届いた。
「む、これは……ダンテ!!」
「ああ、聞こえてるよ!!この嫌な羽音は……奴等か!!」
2人は草原から聞こえてくる虫が飛ぶときに聞こえてくる音に気づき、空を見上げた。徐々に夜を迎えようとしているので分かりにくいが、それでも緑色に輝く大群がこちらに接近している事を確認する。
――ギルルルルルルッ!!
奇怪な鳴き声をあげながら推定3000は存在する昆虫種の大群が空から帝国軍の陣地に向けて接近し、その様子をいち早く確認したダンテとギリョウは周囲の兵士達に警戒するように注意した。
「皆の者、敵襲じゃ!!」
「ちっ!!森に入る前から襲撃を仕掛けて来たか……おいてめえら!!戦の時間だ!!」
『っ……!?』
2人の言葉に陣地の設営を行っていた兵士達は慌てて迎撃態勢の準備を行うが、昆虫種の大群の移動速度は素早く、空から無数の巨大蟷螂が襲い掛かろうとしていた。
「ちっ……これだけデカい昆虫と戦わされる事になるとはな!!腕が鳴るぜ!!」
「油断するなよダンテ、お主は実力はあるがどうも油断しやすいからのう」
「うるせえよ!!」
反鏡盾を取り出したダンテに対してギリョウは腰の刀に手を伸ばし、昆虫種の様子を伺う。数千の巨大蟷螂が接近する光景はかなりの迫力が存在したが、それでも火竜や土竜と比べれば十分に対応できる相手だと判断し、兵士達に指示を与える。
「皆の者、数は我等が勝る!!決して一人で戦おうとはせず、三人一組で挑め!!決して油断してはならんぞ!!」
『はっ!!』
ギリョウの命令に兵士達も覚悟を決めたように武器を構え、空中から迫る昆虫種に対して戦闘体勢に入り、遂に帝国軍は昆虫種の大群と衝突した――
0
お気に入りに追加
11,323
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。