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エルフ王国 決戦編
クズノからの提案
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『こ、この俺に何をさせる気だ!?』
『別にそれほど難しい事ではありません。そして貴方にも大きな利益がある話ですよ』
『利益だと……』
『イヤン王子、貴方がエルフ王国の国王になる時が来たのです』
『なん、だと……!?』
国王という言葉にイヤンは目を見開き、どうしてこの状況下で自分が国王になるのかと動揺を隠せないがクズノはステッキを振り回しながらイヤンに語り掛ける。
『この国はもう昆虫種によって壊滅寸前……仮に援軍が訪れたとしてもエルフ王国の軍隊ですら手に負えなかった昆虫種を他国の軍隊がどうにか出来るはずがない。それは理解していますか?』
『だ、だが……帝国にはルノがいる!!貴様等が送り込んだ土竜を殺した魔術師だぞ!?』
『ええ、確かにあの方ならばこの国を救う事が出来るでしょう。しかし、考えても見てください。どうしてあれほどの力を持つ存在が未だにここに現れないのか?』
ルノの力を知っているイヤンは彼ならば昆虫種が相手であろうと圧倒する強さを持っていると確信していた。しかし、クズノの言う通りに帝国に援軍の派遣要請を行ったが、未だにルノどころか軍隊が訪れる様子はない。
『彼の力ならば帝国からこのエルフ王国まで時間を掛けずに到着する事が出来るはずです。それこそ、あの氷の竜に乗ってすぐに駆け付ける事が出来るでしょう。なのにどうして現れないのか……それが重要です』
『何を言っている……?』
『ここまで話しても分かりませんか?帝国はあなた方を見限った。それだけです』
『馬鹿な!!帝国は我等の同盟国だぞ!?』
『あちらはそうは思っていないのではないですか?これまでにエルフ王国がどれだけ帝国に厄介事を持ち込んだと思っているんですか?無断に領地に侵入して大量の薬草の伐採、デブリ王子の儀式のために帝国の重要人物との交戦、何よりもエルフ王国で暴れていた土竜を帝国領地内に招きよせてしまった』
『くっ……全てお前達のせいではないか!!』
クズノの言葉にイヤンはこれまでのエルフ王国の失態は魔王軍の仕業である事を告げるが、クズノは悪びれもせずに彼の正論に対して詭弁を返す。
『確かにその通り、ですが帝国からすれば全ての責任が魔王軍にあると思いますか?本当にエルフ王国には何の否がないと?切っ掛けはどうであれ、貴方達は帝国に対して多大な迷惑を掛けたのは事実。そもそも薬草の伐採やデブリ王子の件は事前に帝国に協力を申し込めば良かった話です』
『ぐうっ……』
『既に帝国は貴方達を不要な存在と判断して見捨てるつもりですよ。他の二カ国と敵対しているエルフ王国に援軍がが送り込まれることはない。それとも日の国という小国に助けを求めますか?』
『…………』
イヤンはクズノの言葉に何も言い返すことが出来ず、エルフ王国とは親交がない日の国に救援を求めるなど出来るはずもなく、だからといってこのまま耐え続けても帝国からの援軍が本当に訪れるかも分からない。
冷静に考えれば考える程にイヤンは自分達の国の状況が不味い事に陥っている事を知り、一体どうすれば王国が生き残れるのか分からず、ステッキを振り回しながら自分の事を見つめるクズノに対してイヤンは助けを求めるように声を絞り出す。
『ならば……どうすればいい。お前達の目的は何だ』
『やっと自分達の状況を理解しましたか。ならば話は簡単です、貴方のやるべき事は国王の元へ訪れて自分を王位を引き継ぐことを宣言しなさい』
『俺が王位に……?』
『そうです。そして国王となった貴方が行うべき事はこの城の何処かに隠されている勇者の聖遺物を利用して脱出しなさい。そうすれば命だけは助かるはずです』
『聖遺物……そういえば前に父上から聞いたことがあるが、本当にそんな物があるのか?』
『必ず存在します。それを利用すればほんの一部の森人族が生き残れるはずです。ここから脱出を行った後、国王となった貴方が国を導くのです。その協力は私がしましょう』
『どうしてだ?お前はエルフ王国を亡ぼすといったばかりではないか』
『無論、私に服従するという条件ならば力を貸すという事です。この条件を受け入れれば魔王軍が貴方達を保護しましょう……貴方は新たな国の国王となり、同時に魔王軍の幹部として働いてもらいますよ』
『服従……だと?』
『嫌ならここで死ぬまで大人しく過ごす事です。あと数日もすればこの世界樹は昆虫種に食い尽くされるでしょうね』
服従しなければ死ぬだけだと暗に伝えてくるクズノにイヤンは歯を食いしばるが、彼の動かすステッキを見ていると不思議と頭が落ち着き、どうせ死ぬぐらいならば恥を忍んでクズノの要求を呑む事にした。
『一つだけ聞かせろ。俺が王になる、それでいいんだな?』
『約束しますよ。そうそう、既に国王の側近の兵士には話を伝えています。貴方の忠実な僕として動くでしょう』
『ちっ……何から何まで準備済みというわけか。いいだろう、お前の話に乗ってやる』
『ああ、ですが今から行動するのは止めてください。貴方にはまだ準備すべき事がある』
『なんの準備だ?』
『……この世界樹ごと昆虫種を亡ぼす手があります』
クズノの言葉にイヤンは目を見開き、そんな彼の顔を見てクズノは笑みを浮かべ、その恐るべき手段を伝えた――
『別にそれほど難しい事ではありません。そして貴方にも大きな利益がある話ですよ』
『利益だと……』
『イヤン王子、貴方がエルフ王国の国王になる時が来たのです』
『なん、だと……!?』
国王という言葉にイヤンは目を見開き、どうしてこの状況下で自分が国王になるのかと動揺を隠せないがクズノはステッキを振り回しながらイヤンに語り掛ける。
『この国はもう昆虫種によって壊滅寸前……仮に援軍が訪れたとしてもエルフ王国の軍隊ですら手に負えなかった昆虫種を他国の軍隊がどうにか出来るはずがない。それは理解していますか?』
『だ、だが……帝国にはルノがいる!!貴様等が送り込んだ土竜を殺した魔術師だぞ!?』
『ええ、確かにあの方ならばこの国を救う事が出来るでしょう。しかし、考えても見てください。どうしてあれほどの力を持つ存在が未だにここに現れないのか?』
ルノの力を知っているイヤンは彼ならば昆虫種が相手であろうと圧倒する強さを持っていると確信していた。しかし、クズノの言う通りに帝国に援軍の派遣要請を行ったが、未だにルノどころか軍隊が訪れる様子はない。
『彼の力ならば帝国からこのエルフ王国まで時間を掛けずに到着する事が出来るはずです。それこそ、あの氷の竜に乗ってすぐに駆け付ける事が出来るでしょう。なのにどうして現れないのか……それが重要です』
『何を言っている……?』
『ここまで話しても分かりませんか?帝国はあなた方を見限った。それだけです』
『馬鹿な!!帝国は我等の同盟国だぞ!?』
『あちらはそうは思っていないのではないですか?これまでにエルフ王国がどれだけ帝国に厄介事を持ち込んだと思っているんですか?無断に領地に侵入して大量の薬草の伐採、デブリ王子の儀式のために帝国の重要人物との交戦、何よりもエルフ王国で暴れていた土竜を帝国領地内に招きよせてしまった』
『くっ……全てお前達のせいではないか!!』
クズノの言葉にイヤンはこれまでのエルフ王国の失態は魔王軍の仕業である事を告げるが、クズノは悪びれもせずに彼の正論に対して詭弁を返す。
『確かにその通り、ですが帝国からすれば全ての責任が魔王軍にあると思いますか?本当にエルフ王国には何の否がないと?切っ掛けはどうであれ、貴方達は帝国に対して多大な迷惑を掛けたのは事実。そもそも薬草の伐採やデブリ王子の件は事前に帝国に協力を申し込めば良かった話です』
『ぐうっ……』
『既に帝国は貴方達を不要な存在と判断して見捨てるつもりですよ。他の二カ国と敵対しているエルフ王国に援軍がが送り込まれることはない。それとも日の国という小国に助けを求めますか?』
『…………』
イヤンはクズノの言葉に何も言い返すことが出来ず、エルフ王国とは親交がない日の国に救援を求めるなど出来るはずもなく、だからといってこのまま耐え続けても帝国からの援軍が本当に訪れるかも分からない。
冷静に考えれば考える程にイヤンは自分達の国の状況が不味い事に陥っている事を知り、一体どうすれば王国が生き残れるのか分からず、ステッキを振り回しながら自分の事を見つめるクズノに対してイヤンは助けを求めるように声を絞り出す。
『ならば……どうすればいい。お前達の目的は何だ』
『やっと自分達の状況を理解しましたか。ならば話は簡単です、貴方のやるべき事は国王の元へ訪れて自分を王位を引き継ぐことを宣言しなさい』
『俺が王位に……?』
『そうです。そして国王となった貴方が行うべき事はこの城の何処かに隠されている勇者の聖遺物を利用して脱出しなさい。そうすれば命だけは助かるはずです』
『聖遺物……そういえば前に父上から聞いたことがあるが、本当にそんな物があるのか?』
『必ず存在します。それを利用すればほんの一部の森人族が生き残れるはずです。ここから脱出を行った後、国王となった貴方が国を導くのです。その協力は私がしましょう』
『どうしてだ?お前はエルフ王国を亡ぼすといったばかりではないか』
『無論、私に服従するという条件ならば力を貸すという事です。この条件を受け入れれば魔王軍が貴方達を保護しましょう……貴方は新たな国の国王となり、同時に魔王軍の幹部として働いてもらいますよ』
『服従……だと?』
『嫌ならここで死ぬまで大人しく過ごす事です。あと数日もすればこの世界樹は昆虫種に食い尽くされるでしょうね』
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『ああ、ですが今から行動するのは止めてください。貴方にはまだ準備すべき事がある』
『なんの準備だ?』
『……この世界樹ごと昆虫種を亡ぼす手があります』
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