430 / 657
エルフ王国 決戦編
その頃、エルフ王国では……
しおりを挟む
――魔王軍によって大量の昆虫種の大群に襲撃を受けたエルフ王国では現在生きのこった民衆は世界樹と呼ばれる大樹に集まっていた。世界樹とは天まで届くのではないかと思われる程に巨大な樹木であり、今尚も成長を続ける巨木である。
エルフ王国に住む森人族は世界樹を中心に街を築き上げ、王族とその配下達は世界樹の内部をくり貫いて城の代わりに利用して暮らしていた。自然と一体化して暮らす事を信条とする森人族達は人間のような煉瓦製の建物は好まず、自然に育った木造製の建物か、あるいは大木をくり貫いて家とする事でしか暮らさない。
世界樹を囲むように形成された都には数万人の森人族が暮しいていたが、現在では半数近くの人数しか残っていない。その理由は昆虫種の大群の襲撃によって大勢の森人族が命を落とし、生き延びた者たちも世界樹に逃げ込むか国の外へ逃げ延びていた。
今現在ではエルフ王国の生き残りは全員が世界樹に集まり、昆虫種に取り囲まれた状態で他国からの援軍が到着するのを待ち続ける日々を送っていた。既にエルフ王国の軍隊は昆虫種によって壊滅状態に陥り、籠城を維持するのも限界が近い状態だった。
「父上!!このままでは我等は全滅です!!もう一刻の猶予もありません、脱出するしましょう!!」
「またその話か……」
世界樹の頂上に存在する玉座の間にてエルフ王国の国王であるミャクは、自分の息子であるイヤンの言葉に深いため息を吐き出す。数日程前から世界樹からの脱出を進言する息子に対して国王は痛む頭を抑えながら説明する。
「いい加減にせんかイヤンよ。我々はここで帝国からの援軍を待つ、そう決めたはずだぞ」
「しかし父上!!貧弱な人間が我が軍隊が敗れた昆虫種の大群に太刀打ち出来るはずがありません!!そのような援軍を待つぐらいならば我々だけでも脱出するべきです!!」
「お兄様、ですが帝国には例の魔術師様が居られますわよ?」
帝国からの援軍など期待していないイヤンに対して妹のヤミンが言い返すと、玉座の間に存在した全員の脳裏に2体の土竜を圧倒したルノの存在を思い出す。竜種を圧倒する力を持つルノならば昆虫種の大群が相手であろうと十分に対抗できるだろう。
「た、確かに奴ならば昆虫種も相手にならないだろうが……だが、既に援軍の要請をしてからどれほどの時が経過している!?もう既にナオの奴は帝国に辿り着いているはずだ!!なのに未だに援軍が訪れる気配もない!!」
「それは……そうかもしれませんけど」
イヤンの言葉に全員の顔色が変わり、エルフ王国は自分達が召喚したナオを帝国へ送り出してから既に一か月近くが経過していた。ナオが無事ならば帝国に辿り着いている事は間違いなく、帝国が援軍の派遣を行っているのならば既に到着していてもおかしくはない。
「イヤンよ、他国に軍隊を派遣するというのはそれなりに時間と準備を必要とするのじゃ。そもそも帝国は我等よりも広大な領地を持っているが、その分に土地を守るために大勢の兵士を必要とする。彼等が兵を集めるまでには時間が掛かるのは仕方ない事だ」
「父上は本当にそう思われるのですか?奴等がこの期を利用してナオを篭絡し、帝国に招き込んで我等が滅びるのを待っているとお考えにならないのですか!?」
「な、ナオ様はそのような方ではありません!!」
あまりにも失礼なイヤンの言葉にナオの恋人であり、国王の護衛騎士を任されているリンが言い返すが、イヤンは彼女の言葉に不機嫌そうに言い返す。
「ふん、たかが騎士風情が俺と父上の会話に張り込むな!!そもそも奴の事は前々から気にくわなかった……あんな貧弱な勇者に何が出来る!?」
「でも、兄上はナオ殿に何度も負けていらっしゃるのでは?」
「何だと!?貴様、誰に向かってそんな口の利き方を……で、デブリ?」
背後から聞こえてきたデブリの声にイヤンは振り返ると、そこには以前のようなオークと見間違える程の肥満体型だった弟の姿は存在せず、代わりに全身が筋肉の鎧で構成されているのではないかと思う程に見事な肉体美を誇るデブリの姿が存在した。
一体この数か月の間に彼の身に何が起きたのか、まるでボディビルダーのように露出の激しい恰好で現れたデブリに玉座の間に存在した全員が冷や汗を流し、変わり果てた息子の姿に国王は戸惑いながらも質問する。
「お、おおっ……デブリ、戻って来たのか」
「はい父上!!先ほど、樹皮を食い破って内部に侵入しようとしてきた昆虫種を1体仕留めてきました!!あ、破られた箇所は石材で封鎖してきたのでしばらくは大丈夫のはずです」
「そ、そうか……それはよくやったのう」
「ありがとうございます!!あ、これが先ほど仕留めた昆虫種の死骸です」
「ひいっ!?」
デブリは背中に抱えていた人間並みの大きさを誇る蟷螂の死骸を地面に下ろし、その死骸の頭部は力尽くで握り潰された状態だった。
エルフ王国に住む森人族は世界樹を中心に街を築き上げ、王族とその配下達は世界樹の内部をくり貫いて城の代わりに利用して暮らしていた。自然と一体化して暮らす事を信条とする森人族達は人間のような煉瓦製の建物は好まず、自然に育った木造製の建物か、あるいは大木をくり貫いて家とする事でしか暮らさない。
世界樹を囲むように形成された都には数万人の森人族が暮しいていたが、現在では半数近くの人数しか残っていない。その理由は昆虫種の大群の襲撃によって大勢の森人族が命を落とし、生き延びた者たちも世界樹に逃げ込むか国の外へ逃げ延びていた。
今現在ではエルフ王国の生き残りは全員が世界樹に集まり、昆虫種に取り囲まれた状態で他国からの援軍が到着するのを待ち続ける日々を送っていた。既にエルフ王国の軍隊は昆虫種によって壊滅状態に陥り、籠城を維持するのも限界が近い状態だった。
「父上!!このままでは我等は全滅です!!もう一刻の猶予もありません、脱出するしましょう!!」
「またその話か……」
世界樹の頂上に存在する玉座の間にてエルフ王国の国王であるミャクは、自分の息子であるイヤンの言葉に深いため息を吐き出す。数日程前から世界樹からの脱出を進言する息子に対して国王は痛む頭を抑えながら説明する。
「いい加減にせんかイヤンよ。我々はここで帝国からの援軍を待つ、そう決めたはずだぞ」
「しかし父上!!貧弱な人間が我が軍隊が敗れた昆虫種の大群に太刀打ち出来るはずがありません!!そのような援軍を待つぐらいならば我々だけでも脱出するべきです!!」
「お兄様、ですが帝国には例の魔術師様が居られますわよ?」
帝国からの援軍など期待していないイヤンに対して妹のヤミンが言い返すと、玉座の間に存在した全員の脳裏に2体の土竜を圧倒したルノの存在を思い出す。竜種を圧倒する力を持つルノならば昆虫種の大群が相手であろうと十分に対抗できるだろう。
「た、確かに奴ならば昆虫種も相手にならないだろうが……だが、既に援軍の要請をしてからどれほどの時が経過している!?もう既にナオの奴は帝国に辿り着いているはずだ!!なのに未だに援軍が訪れる気配もない!!」
「それは……そうかもしれませんけど」
イヤンの言葉に全員の顔色が変わり、エルフ王国は自分達が召喚したナオを帝国へ送り出してから既に一か月近くが経過していた。ナオが無事ならば帝国に辿り着いている事は間違いなく、帝国が援軍の派遣を行っているのならば既に到着していてもおかしくはない。
「イヤンよ、他国に軍隊を派遣するというのはそれなりに時間と準備を必要とするのじゃ。そもそも帝国は我等よりも広大な領地を持っているが、その分に土地を守るために大勢の兵士を必要とする。彼等が兵を集めるまでには時間が掛かるのは仕方ない事だ」
「父上は本当にそう思われるのですか?奴等がこの期を利用してナオを篭絡し、帝国に招き込んで我等が滅びるのを待っているとお考えにならないのですか!?」
「な、ナオ様はそのような方ではありません!!」
あまりにも失礼なイヤンの言葉にナオの恋人であり、国王の護衛騎士を任されているリンが言い返すが、イヤンは彼女の言葉に不機嫌そうに言い返す。
「ふん、たかが騎士風情が俺と父上の会話に張り込むな!!そもそも奴の事は前々から気にくわなかった……あんな貧弱な勇者に何が出来る!?」
「でも、兄上はナオ殿に何度も負けていらっしゃるのでは?」
「何だと!?貴様、誰に向かってそんな口の利き方を……で、デブリ?」
背後から聞こえてきたデブリの声にイヤンは振り返ると、そこには以前のようなオークと見間違える程の肥満体型だった弟の姿は存在せず、代わりに全身が筋肉の鎧で構成されているのではないかと思う程に見事な肉体美を誇るデブリの姿が存在した。
一体この数か月の間に彼の身に何が起きたのか、まるでボディビルダーのように露出の激しい恰好で現れたデブリに玉座の間に存在した全員が冷や汗を流し、変わり果てた息子の姿に国王は戸惑いながらも質問する。
「お、おおっ……デブリ、戻って来たのか」
「はい父上!!先ほど、樹皮を食い破って内部に侵入しようとしてきた昆虫種を1体仕留めてきました!!あ、破られた箇所は石材で封鎖してきたのでしばらくは大丈夫のはずです」
「そ、そうか……それはよくやったのう」
「ありがとうございます!!あ、これが先ほど仕留めた昆虫種の死骸です」
「ひいっ!?」
デブリは背中に抱えていた人間並みの大きさを誇る蟷螂の死骸を地面に下ろし、その死骸の頭部は力尽くで握り潰された状態だった。
1
お気に入りに追加
11,318
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。