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エルフ王国 決戦編

魔王軍の目的とは?

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「そういえば気になる事があるが……屋敷の中に存在したルノ殿の飼育していた魔獣達が消えたという報告があるが、これは本当か?」
「はい。何度か彼の家に訪れましたが、屋敷の中で暮らしているはずのロプス、ルウ、ミノ、他に多数の黒狼種の狼たちの姿が見えないそうです。こちらも同時に調査しているのですが、未だに進展はありません」
「うむ。姿を消したといえば例のナオ殿とリーリスが消えた事も気になる……やはり、魔王軍が関与しているのか」


魔王軍という単語が出た途端に部屋の雰囲気が一変し、全員が険しい表情を浮かべる。ルノだけではなく、既に彼の飼育していた魔獣やエルフ王国からの使者であるナオ、そして帝国四天王の一人であるリーリスが行方を眩ませた時点でバルトロス帝国は魔王軍が動いているのではないかと疑う。

実際にこの予想は間違ってはおらず、彼等が消えた理由は魔王軍が関わっているのだが、どれだけの調査員を送り込んでも全員の消息が掴めないという点に先帝は不安を抱き、それは他の人間も同様だった。


「魔王軍の狙いはこの王国の打倒である事に違いはないが……遥か昔、魔王という存在を打ち破った勇者を呼び出したのはこの帝国だ。その魔王の配下の残党が魔王軍を結成し、この帝国を狙っているのがリーリスの見解だったが……」
「それにしても不可解な点がいくつかあります。まず、帝国の打倒を狙うのならばどうしてデキン大臣を利用して帝国の資金を調達していたのか、そもそもデキン大臣の立場ならばいつでも皇帝陛下やジャンヌ様を殺害するはずが出来たのに手を出さなかった事も気になります」
「うむ、その点は儂も気になっていた。どうしてデキンの奴は長年の間、この帝国に仕えていたのか……魔王軍の目的が帝国の壊滅ならばわざわざ儂や弟を殺せば良い話だ」


現在のバルトロス帝国の皇族は3人しか存在せず、魔王軍の手下として送り込まれていたデキンならば大臣という立場を利用して何時でも3人を殺す事は出来た。それにも関わらずにどうして彼が3人に手を出さなかったのか、それは3人が死ねば帝国が崩壊する事を見越して生かしていたのではないかと先帝とアイラは考えていた。


「死亡したデキンの屋敷を調べた結果、彼が不正に税金の価格を値上げして着服していた資金は魔王軍に流れているようでした。この事から魔王軍の活動資金はデキンが集めていた事は明白です」
「つまり、奴等は帝国を利用して金を集め、戦力を整えていたという事か……だが、奴等の目的が帝国の打倒ならばわざわざ金を集める必要がない」
「それに日の国でも鍛冶師と内密に連絡を取り合い、希少なアダマンタイト製の魔道具の開発に協力させています。この事から考えられるのは魔王軍は他国にも人脈があるという事です」
「日の国に働いていた例の鍛冶師の資料によれば、これまでに我々が発見した魔道具と同じ物を作り出している事は確認した。つまり奴等は帝国から流れた資金を利用して特殊な魔道具の制作も行っている。それにこれまでに方法は不明だが、竜種を誘導して襲撃を仕掛けたり、大量のゴーレムを操作しておったな」
「おいおい、話は聞いていたが本当にやばい奴等なんだな……」
「あの危険な竜種を操るとは……想像以上に厄介な組織ですな」


話を聞いていたガインとガジも食事を中断して魔王軍の存在の恐ろしさを思い知り、その一方で魔王軍の目的が掴めずに先帝とアイラは首を傾げる。


「これまでにデキンが儂等を殺さなかったのは魔王軍の活動資金を集めるためか?だが、ルノ殿の登場によってそれは阻止され、焦った魔王軍が帝国の侵略行為を本格的に始めた……そう考えれば筋は通らんか?」
「そうですね。ですが、予想以上にルノ殿の力が凄すぎて作戦は失敗続き、しかも大勢の幹部を失っています。魔王軍という組織がどの程度の規模なのかは分かりませんが、これまでの出来事で魔王軍の損失も馬鹿にはならないはず」
「だが、今回のエルフ王国の昆虫種の発生が魔王軍の仕業だとした場合、奴等は何を考えている?どうして帝国を狙わずにエルフ王国を狙った?ルノ殿が不在な事を奴等が知らないわけではあるまい」
「そこまでは分かりませんが、昆虫種という特別な存在がエルフ王国にしか存在しなかったという事が重要ではないでしょうか?昆虫種を暴走させてまずはエルフ王国を滅ぼし、次に帝国を狙うつもりでは……」
「どちらにしろ推測の域は出ないのう」


どれだけ議論を行おうと現状では魔王軍の目的を確かめる事は出来ず、今の帝国が出来る事は討伐軍の派遣と帝都の警備体制を強化する事しか出来ない。


「ふうっ……ルノ殿がここに居れば頭を悩ませずに済んだものを」
「そうですね。ですが、我々は彼に甘え過ぎていたのかもしれません。異世界から訪れた勇者に匹敵する英雄、そんな彼が傍に居たからこそ我々は知らず知らずに慢心していたのかもしれません。何があろうとルノ殿が存在すれば大丈夫だと」
「耳が痛い話だ……儂等はルノ殿に甘え過ぎていたのかもしれん」


アイラの言葉に先帝はまだ16歳の少年に自分達がどれほど甘えていたのかと考えると苦笑する事しか出来なかった。、
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