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エルフ王国 決戦編
ガルファンの捕獲(またですbyルノ)
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「待ちなさいこの変態……ぎゃああっ!?こっちに下着を投げるなぁっ!!」
「うおおおおっ!!」
「ガアアッ!!」
遂に全裸になってまで戦場を駆け抜けるガルファンに牙竜は迫り、生かしたまま取り抑える必要があるので力尽くで叩き潰すような真似は出来ず、仕方なく咆哮を放つ。
「アガァアアアッ!!」
「ぐおおっ!?」
背後から大声で怒鳴られたガルファンは目を見開き、たまらずに両耳を抑えて地面に倒れ込む。人間よりも聴覚が優れている獣人族なので牙竜の咆哮を間近で受ければ無事では済まず、頭を抱えたままうずくまる。
「ぐううっ……い、嫌だ。死ぬのは嫌だ……」
「諦めなさい!!あんたはもう終わり……ちょ、こっちを振り向かないでよ!?そんな粗末なもんを見せつけるな!!」
全裸の状態のガルファンにリディアは目のやり場に困り、牙竜も気味悪がるように距離を取る。その光景を他の兵士達は何とも言えない表情で見つめ、敵味方関係なく目の前の状況に困惑していた。
「おい、何が起きてるんだ?あれ、牙竜だよな?」
「どうしてこの地方に牙竜が……奴等は獣人国の領地にしか現れないはずだろ」
「それよりも上に乗っている女子は何者だ?見たところ、まだ年若い娘のようだが……」
日の国の軍隊は唐突に出現した牙竜とリディアに疑問を抱き、その一方で獣人国の軍隊も事情を掴めていない兵士は将軍の救援に向かうべきか悩む。だが、相手が竜種となると下手に刺激すれば命はなく、そもそも日の国の軍隊と対峙している状態で牙竜と交戦する余裕などない。
リディアは目元を抑えながら牙竜にガルファンを見張らせ、獣人国軍の陣に視線を向ける。既に火災の消火作業を終えたのか、氷板に乗り込んだルノが自分の元へ移動している事を確認し、後の事はルノに任せる事にした。
「ただいま……って、何この状況!?」
「おかえりなさい……まあ、一応は見つけたわよ。後の事は任せるわ」
「あ、ううっ……!?」
ルノの姿を確認した瞬間にガルファンは恐怖の表情を浮かべ、前回の決闘の際の惨めな敗北を思い出して慌てて後退る。だが、それを見たルノは氷板から降りると掌を地面に押し当てて土塊の魔法でガルファンの足元の地面を操作してアリジゴクのように変化させた。
「大人しくして下さい」
「うおおっ!?な、何だこれは……!?」
「……あれ、何故かしら?何となくだけどガイアの顔が思い浮かんだわ」
肉体が地面に飲み込まれ、首元の部分だけ地上に露出した状態のガルファンを見てリディアはガイアの事を思い出す。こちらも過去にルノと相対したときに地割れによって地中深くにまで閉じ込められた存在なので不意に思い出したのかもしれない。
首から下の肉体を地面に埋まったガルファンは必死に抜け出そうとするが、そんな彼の元にルノとリディアは近づき、笑顔を浮かべながら訪ねる。
「じゃあ、今度こそ降伏してくれますね?」
「ひいっ!?」
「嫌ならここでこいつの餌になるだけよ」
「ガアアッ!!」
ルノの言葉にガルファンは悲鳴をあげ、更にリディアが牙竜を指差して顔を近づかせると、ガルファンは顔色を青くして震えた声で了承した。
「わ、分かった……降参する、もう二度とお前達には……いや、貴方達には逆らわない!!だから、許してくれ!!」
「聞こえた?あんた等の大将は降伏したわよ!!それでも戦うという奴は今すぐにここに来なさい!!相手になってあげるわ!!」
『…………』
ガルファンの情けない降伏宣言に交戦中だった獣人国軍の兵士達は黙り込み、やがて一人が武器を地面に手放すと、他の面々も従って武器を下ろす。
「やってられるか……もうこんな奴の言う事を聞くなんて懲り懲りだ」
「こんな奴の言う事を聞いていた自分が情けない……」
「くそ、だから俺は嫌だって言ったんだ!!」
「あ~あっ……疲れた」
獣人国軍の兵士達が武器を手放すのを確認すると、対峙していた日の国の軍隊も警戒を解き、やがて大将を務める日の国の将軍がルノとリディアの元へ向かう。
「失礼致す!!拙者は此度の合戦の大将を任せられたタダカツと申す!!此度の助力、誠に感謝致す!!」
「あ、どうも……」
「別にあんた達に協力したわけじゃないけど……まあ、いいわ」
タダカツと名乗る30代の男性の将軍に礼を言われたルノとリディアは挨拶を交わすと、タダカツは地面に埋もれたガルファンを一瞥し、彼を地中に閉じ込めたルノに感心した風に頷く。
「いや、それにしても驚かされましたな!!お主はもしや妖術師か?いや、それとも異国の魔法使いとやらでござるか?」
「初級魔術師です。名前はルノと言います」
「何と!?その名前、もしや帝国の英雄殿ですか!?」
「あ、はい。前にそちらの国にも訪れた事があります」
「これは驚いた……だが、確かに噂通りの風貌をしている。それにこれほどまでの見事な妖術……いや、魔法か。本物で間違いないようですな」
ルノがガルファンを捕まえた光景を見たタダカツは感心したように頷き、ルノが帝国の英雄である事を認める一方、どうしてここに彼が訪れたのかを尋ねる。
「うおおおおっ!!」
「ガアアッ!!」
遂に全裸になってまで戦場を駆け抜けるガルファンに牙竜は迫り、生かしたまま取り抑える必要があるので力尽くで叩き潰すような真似は出来ず、仕方なく咆哮を放つ。
「アガァアアアッ!!」
「ぐおおっ!?」
背後から大声で怒鳴られたガルファンは目を見開き、たまらずに両耳を抑えて地面に倒れ込む。人間よりも聴覚が優れている獣人族なので牙竜の咆哮を間近で受ければ無事では済まず、頭を抱えたままうずくまる。
「ぐううっ……い、嫌だ。死ぬのは嫌だ……」
「諦めなさい!!あんたはもう終わり……ちょ、こっちを振り向かないでよ!?そんな粗末なもんを見せつけるな!!」
全裸の状態のガルファンにリディアは目のやり場に困り、牙竜も気味悪がるように距離を取る。その光景を他の兵士達は何とも言えない表情で見つめ、敵味方関係なく目の前の状況に困惑していた。
「おい、何が起きてるんだ?あれ、牙竜だよな?」
「どうしてこの地方に牙竜が……奴等は獣人国の領地にしか現れないはずだろ」
「それよりも上に乗っている女子は何者だ?見たところ、まだ年若い娘のようだが……」
日の国の軍隊は唐突に出現した牙竜とリディアに疑問を抱き、その一方で獣人国の軍隊も事情を掴めていない兵士は将軍の救援に向かうべきか悩む。だが、相手が竜種となると下手に刺激すれば命はなく、そもそも日の国の軍隊と対峙している状態で牙竜と交戦する余裕などない。
リディアは目元を抑えながら牙竜にガルファンを見張らせ、獣人国軍の陣に視線を向ける。既に火災の消火作業を終えたのか、氷板に乗り込んだルノが自分の元へ移動している事を確認し、後の事はルノに任せる事にした。
「ただいま……って、何この状況!?」
「おかえりなさい……まあ、一応は見つけたわよ。後の事は任せるわ」
「あ、ううっ……!?」
ルノの姿を確認した瞬間にガルファンは恐怖の表情を浮かべ、前回の決闘の際の惨めな敗北を思い出して慌てて後退る。だが、それを見たルノは氷板から降りると掌を地面に押し当てて土塊の魔法でガルファンの足元の地面を操作してアリジゴクのように変化させた。
「大人しくして下さい」
「うおおっ!?な、何だこれは……!?」
「……あれ、何故かしら?何となくだけどガイアの顔が思い浮かんだわ」
肉体が地面に飲み込まれ、首元の部分だけ地上に露出した状態のガルファンを見てリディアはガイアの事を思い出す。こちらも過去にルノと相対したときに地割れによって地中深くにまで閉じ込められた存在なので不意に思い出したのかもしれない。
首から下の肉体を地面に埋まったガルファンは必死に抜け出そうとするが、そんな彼の元にルノとリディアは近づき、笑顔を浮かべながら訪ねる。
「じゃあ、今度こそ降伏してくれますね?」
「ひいっ!?」
「嫌ならここでこいつの餌になるだけよ」
「ガアアッ!!」
ルノの言葉にガルファンは悲鳴をあげ、更にリディアが牙竜を指差して顔を近づかせると、ガルファンは顔色を青くして震えた声で了承した。
「わ、分かった……降参する、もう二度とお前達には……いや、貴方達には逆らわない!!だから、許してくれ!!」
「聞こえた?あんた等の大将は降伏したわよ!!それでも戦うという奴は今すぐにここに来なさい!!相手になってあげるわ!!」
『…………』
ガルファンの情けない降伏宣言に交戦中だった獣人国軍の兵士達は黙り込み、やがて一人が武器を地面に手放すと、他の面々も従って武器を下ろす。
「やってられるか……もうこんな奴の言う事を聞くなんて懲り懲りだ」
「こんな奴の言う事を聞いていた自分が情けない……」
「くそ、だから俺は嫌だって言ったんだ!!」
「あ~あっ……疲れた」
獣人国軍の兵士達が武器を手放すのを確認すると、対峙していた日の国の軍隊も警戒を解き、やがて大将を務める日の国の将軍がルノとリディアの元へ向かう。
「失礼致す!!拙者は此度の合戦の大将を任せられたタダカツと申す!!此度の助力、誠に感謝致す!!」
「あ、どうも……」
「別にあんた達に協力したわけじゃないけど……まあ、いいわ」
タダカツと名乗る30代の男性の将軍に礼を言われたルノとリディアは挨拶を交わすと、タダカツは地面に埋もれたガルファンを一瞥し、彼を地中に閉じ込めたルノに感心した風に頷く。
「いや、それにしても驚かされましたな!!お主はもしや妖術師か?いや、それとも異国の魔法使いとやらでござるか?」
「初級魔術師です。名前はルノと言います」
「何と!?その名前、もしや帝国の英雄殿ですか!?」
「あ、はい。前にそちらの国にも訪れた事があります」
「これは驚いた……だが、確かに噂通りの風貌をしている。それにこれほどまでの見事な妖術……いや、魔法か。本物で間違いないようですな」
ルノがガルファンを捕まえた光景を見たタダカツは感心したように頷き、ルノが帝国の英雄である事を認める一方、どうしてここに彼が訪れたのかを尋ねる。
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