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獣人国
閑話 〈ユニコーンの使役化〉
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「まあ、何はともあれ王女様はこれで完璧に治りましたね。良かった良かった~」
「は、はあっ……ちょっと釈然としませんが、確かに病気は治ったようですね。リーリス、勇者様、貴方のお陰です」
『ヒヒンッ』
「きゃっ!?こ、この子の事を忘れてました……どうしましょう?」
会話の最中にユニコーンが割込み、ジャンヌの頬を舐める。先ほどまでは敵とみなして襲い掛かってきたにも関わらずにジャンヌに懐いている姿を見てリーリスはある提案を行う。
「そうだ。この際にその駄馬……いえ、ユニコーンを使役化したらどうですか?」
「使役化!?このユニコーンを……そんな事が出来るのですか?」
「いくら性……じゃなくて聖獣と言われていようが所詮は魔獣です。魔物使いなら使役化出来るんじゃないですか?」
「所々にリーリスさんのユニコーンに対する悪意が感じられるんだけど……」
『ヒヒィンッ!!』
自分に対して煽るような発言を繰り返すリーリスにユニコーンは苛立ちを抱いたように鼻を鳴らすが、確かにユニコーンを使役化すれば頼りになる戦力となり、昆虫種にも対抗出来るだろう。だが、問題なのはジャンヌは魔物使いがどのような手段で魔獣を使役化させているのかを知らない。
「ですが、使役化といってもどのように扱えば……」
「大丈夫です。方法だけなら私も知っていますから王女様は私の言う通りに動いて下さい。まず、そのユニコーンの角を両手で掴んでおもいっきり引っ張ってください」
「こうですか?」
『ヒィンッ!?』
「痛がってますが!?」
「リーリスさん、本当にそれで合ってるの!?」
リーリスの言われた通りにジャンヌは動くが、ユニコーンは困惑した声を上げるだけで使役化する様子はなく、わざとらしくため息を吐きながらリーリスはナオに話しかける。
「仕方ないですね、なら今度はちゃんと答えます。あ、ナオさんは他の魔物が近寄ってこないのか見張りを任せていいですか?」
「それは構わないけど……さっきの方法、絶対に出鱈目を教えたでしょ」
「てへぺろっ」
「リーリス!!こんな時にふざけないでください!!」
『ヒヒンッ!!』
悪戯した子供のように舌を出すリーリスにジャンヌとユニコーンは本気で叱りつけるが、魔物使いがどのように魔獣と契約する方法を知っているのはリーリスだけなので今度こそ正規の方法を教えて貰う。
「分かりましたよ。じゃあ、今度は真面目に答えます。まずは――」
書物で調べた魔物使いの職業の知識を頼りにリーリスはいくつかの魔獣の契約方法をジャンヌに教えると、彼女はユニコーンの使役化を試す。数分後、どうにかユニコーンの首元に「契約獣」の証である「契約紋」が浮かび上がり、契約に成功したジャンヌはユニコーンの背中に跨る。
『ブルルンッ!!』
「わあっ……ど、どうどう」
『ブルルルッ……』
「あ、大人しくなった。命令を聞いたという事は成功したんですか?」
「よく分かりませんが、だけどこの子と心が通じ合ったような気分です」
「なら成功ですね」
ユニコーンは無暗に自分の背中に人間は乗せない生き物のため、ジャンヌが背中に乗ったという事は契約に成功した証拠である。彼女は戸惑いながらも自分の指示に従うユニコーンを見て笑顔を浮かべ、思いもがけずに強力な見方が出来た事を喜ぶ。
無事に病気を感知しただけではなく、ユニコーンを従える事に成功したジャンヌはナオの方に視線を向け、改めて自分を救い出してくれたお礼と時間は掛かったがエルフ王国への救援へ向かう事を誓う。
「ありがとうございます勇者様、私のためにここまで尽くしてくれて……この御恩は必ずお返しします」
「いえ、気にしないでください……それと、王女様が無事ならもう帝国軍と合流しても問題ないんですよね?」
「はい、お二人の件については私自らが上手くお父様を誤魔化します。どうかご安心ください」
「あ、その事なんですけど……私とナオさんはちょっと別行動してもいいですかね?」
「「えっ?」」
リーリスの意外な言葉にジャンヌは驚くが、このまま帝国軍と合流してエルフ王国へ向かう前にリーリスは帝都へ戻りたい事を伝えた。
「実は今回の旅で色々な物を手に入れたので、ここは強力な魔導兵器を開発しようと思うんです。そのためにはナオさんの協力が必要不可欠なんです」
「ま、魔導兵器?それはどういう……」
「詳しい内容は省きますが、昆虫種との戦闘で必ず役立つ物を作りますからどうか上手く王女様の方から皇帝陛下に伝えてくれませんか?」
「あの、どんな物を作るかだけでも教えてくれませんか……?」
不安げな表情を浮かべるナオとジャンヌに対してリーリスは自分が思い描く兵器の名前を告げた。
「火炎放射器です。さっきの爆発瓶を見て確信しました。火竜の経験石を有効利用すれば凄い火炎放射器が作りだせると思うんですよ」
「「絶対にダメ!!」」
性懲りもせずに火竜の経験石を利用してとんでもない兵器を作り出す事を宣言したリーリスに対してナオとジャンヌは同時に突っ込んだ――
※これで閑話はひとまず終わりです。次章からは「エルフ王国 奪還編」になります。
「は、はあっ……ちょっと釈然としませんが、確かに病気は治ったようですね。リーリス、勇者様、貴方のお陰です」
『ヒヒンッ』
「きゃっ!?こ、この子の事を忘れてました……どうしましょう?」
会話の最中にユニコーンが割込み、ジャンヌの頬を舐める。先ほどまでは敵とみなして襲い掛かってきたにも関わらずにジャンヌに懐いている姿を見てリーリスはある提案を行う。
「そうだ。この際にその駄馬……いえ、ユニコーンを使役化したらどうですか?」
「使役化!?このユニコーンを……そんな事が出来るのですか?」
「いくら性……じゃなくて聖獣と言われていようが所詮は魔獣です。魔物使いなら使役化出来るんじゃないですか?」
「所々にリーリスさんのユニコーンに対する悪意が感じられるんだけど……」
『ヒヒィンッ!!』
自分に対して煽るような発言を繰り返すリーリスにユニコーンは苛立ちを抱いたように鼻を鳴らすが、確かにユニコーンを使役化すれば頼りになる戦力となり、昆虫種にも対抗出来るだろう。だが、問題なのはジャンヌは魔物使いがどのような手段で魔獣を使役化させているのかを知らない。
「ですが、使役化といってもどのように扱えば……」
「大丈夫です。方法だけなら私も知っていますから王女様は私の言う通りに動いて下さい。まず、そのユニコーンの角を両手で掴んでおもいっきり引っ張ってください」
「こうですか?」
『ヒィンッ!?』
「痛がってますが!?」
「リーリスさん、本当にそれで合ってるの!?」
リーリスの言われた通りにジャンヌは動くが、ユニコーンは困惑した声を上げるだけで使役化する様子はなく、わざとらしくため息を吐きながらリーリスはナオに話しかける。
「仕方ないですね、なら今度はちゃんと答えます。あ、ナオさんは他の魔物が近寄ってこないのか見張りを任せていいですか?」
「それは構わないけど……さっきの方法、絶対に出鱈目を教えたでしょ」
「てへぺろっ」
「リーリス!!こんな時にふざけないでください!!」
『ヒヒンッ!!』
悪戯した子供のように舌を出すリーリスにジャンヌとユニコーンは本気で叱りつけるが、魔物使いがどのように魔獣と契約する方法を知っているのはリーリスだけなので今度こそ正規の方法を教えて貰う。
「分かりましたよ。じゃあ、今度は真面目に答えます。まずは――」
書物で調べた魔物使いの職業の知識を頼りにリーリスはいくつかの魔獣の契約方法をジャンヌに教えると、彼女はユニコーンの使役化を試す。数分後、どうにかユニコーンの首元に「契約獣」の証である「契約紋」が浮かび上がり、契約に成功したジャンヌはユニコーンの背中に跨る。
『ブルルンッ!!』
「わあっ……ど、どうどう」
『ブルルルッ……』
「あ、大人しくなった。命令を聞いたという事は成功したんですか?」
「よく分かりませんが、だけどこの子と心が通じ合ったような気分です」
「なら成功ですね」
ユニコーンは無暗に自分の背中に人間は乗せない生き物のため、ジャンヌが背中に乗ったという事は契約に成功した証拠である。彼女は戸惑いながらも自分の指示に従うユニコーンを見て笑顔を浮かべ、思いもがけずに強力な見方が出来た事を喜ぶ。
無事に病気を感知しただけではなく、ユニコーンを従える事に成功したジャンヌはナオの方に視線を向け、改めて自分を救い出してくれたお礼と時間は掛かったがエルフ王国への救援へ向かう事を誓う。
「ありがとうございます勇者様、私のためにここまで尽くしてくれて……この御恩は必ずお返しします」
「いえ、気にしないでください……それと、王女様が無事ならもう帝国軍と合流しても問題ないんですよね?」
「はい、お二人の件については私自らが上手くお父様を誤魔化します。どうかご安心ください」
「あ、その事なんですけど……私とナオさんはちょっと別行動してもいいですかね?」
「「えっ?」」
リーリスの意外な言葉にジャンヌは驚くが、このまま帝国軍と合流してエルフ王国へ向かう前にリーリスは帝都へ戻りたい事を伝えた。
「実は今回の旅で色々な物を手に入れたので、ここは強力な魔導兵器を開発しようと思うんです。そのためにはナオさんの協力が必要不可欠なんです」
「ま、魔導兵器?それはどういう……」
「詳しい内容は省きますが、昆虫種との戦闘で必ず役立つ物を作りますからどうか上手く王女様の方から皇帝陛下に伝えてくれませんか?」
「あの、どんな物を作るかだけでも教えてくれませんか……?」
不安げな表情を浮かべるナオとジャンヌに対してリーリスは自分が思い描く兵器の名前を告げた。
「火炎放射器です。さっきの爆発瓶を見て確信しました。火竜の経験石を有効利用すれば凄い火炎放射器が作りだせると思うんですよ」
「「絶対にダメ!!」」
性懲りもせずに火竜の経験石を利用してとんでもない兵器を作り出す事を宣言したリーリスに対してナオとジャンヌは同時に突っ込んだ――
※これで閑話はひとまず終わりです。次章からは「エルフ王国 奪還編」になります。
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