412 / 657
獣人国
ガウの決意
しおりを挟む
「まさか父上に隠し子が居たとは……ワン子と言ったね、君には色々と苦労を掛けたようだ」
「わう?」
「こうしてみると確かに妹と似ているな……お手」
「わぅんっ!!」
ガウが右手を差し出すとワン子は嬉々とした表情で左手を差し出し、その様子を見てガウは和んでしまうが、周囲からの視線に気づいて慌てて気を引き締める。
「おっと、こんな子をしている場合じゃなかった。ワン子さん、君とは後でゆっくりと話そう。ガオン将軍、それでそちらの二人は?」
「この二人は異国から訪れたワン子殿の友人だ。どちらも一騎当千の強者だぞ」
「どうも……バルトロス帝国から来たルノです」
「今の所はこいつの相棒をしているリディアよ。それとこの子は私が使役しているキバよ、挨拶しなさい」
「ガアアッ!!」
ガオンがルノとリディアを紹介を行い、相手が王子だからと言って舐められないようにリディアはキバを招き寄せると、ガウは驚いた表情を浮かべる。
「こ、こちらの牙竜は貴女が飼っているのですか?」
「そうよ。まあ、最近飼い始めたばかりだから言う事を聞かない事もあるけどね」
「それは大丈夫なのか!?」
「人間を襲わないようには注意してるわよ」
「……失礼ですが、王子に対してそのような口の利き方は無礼ではありませんか?」
驚愕の表情を浮かべるガウにリディアは自慢げに話すと、流石にガウの護衛を務めるコネコが口を挟むが、リディアは得に気にした風もなく言い返す。
「あんたが誰であろうと知った事じゃないわよ。そもそもこっちはあんた達の命を救ってやったのよ?こいつ赤毛熊を追い払わなければあんた達はここで全滅してたんじゃないの?」
「そういわれると言い返せないね。あはははは!!」
「トラネコ!!」
リディアの言葉にトラネコは笑い声をあげ、そんな彼女をコネコが注意するが、ガウは特に気にした風もなくリディアにお礼を告げる。
「確かに貴方の言う通りだ。まずは助けてくれた礼をこちらが言うべきだった……我々の命を救ってくれた事を感謝する」
「あら、意外と素直な王子ね。別にいいわよ御礼なんて……正直、報酬を貰う方が嬉しいわ。そうね、一人当たり銀貨1枚で良いわよ。王子様の場合は金貨10枚という所かしらね?」
「リディア……いい加減にしないと怒るよ」
「じょ、冗談よ」
流石にリディアの態度にルノが注意すると、彼女は焦ったように愛想笑いを浮かべ、そんな二人のやり取りを見たガウは不思議そうにルノに視線を向ける。
「そういえば貴方は帝国から訪れたと言っていたが、もしかして高名な魔術師ですか?」
「ふふん、聞いて驚かないでよ?こいつは帝国の英雄と呼ばれている初級魔術師のルノよ、名前ぐらいは聞いた事があるでしょ?」
「ルノ!?あの帝国の破壊魔導士と恐れられているあの……!?」
「竜殺しの英雄!?」
「え?ちょっと待ってください。この国では俺の存在ってどんな風に伝わってるんですか?」
聞き覚えのない渾名が外国に伝わっている事にルノは若干衝撃を受けるが、どうやら帝国でのルノの活躍も既に他国にも伝わっているらしく、ルノの正体を知ったガウは喜んだ表情を浮かべて握手を求めた。
「貴方の事はこの国でもよく耳にしています!!なんでも数体の竜種を屠り、日の国では魔剣使いを討ち取り、S級の冒険者達の信望を集めているとか……お会いできて光栄です!!」
「いや、間違ってはいないんですけどそんな事まで伝わってるんですか?」
「勿論です!!我が国でもルノ殿の名前は有名ですからね。亡き国王も一目会ってみたいとよく言ってました……」
国王という単語を口にした事でガウは興奮が収まり、自分の置かれている状況を思い出して溜息を吐く。だが、そんな王子の態度を見てガオンが安心させるように彼の肩を叩く。
「ガウ王子よ。いや、ガウ殿……これからは貴方達の事は我々が責任をもって守る事を誓う。共に王国の秩序を乱した者達を一掃しようではないか」
「おお、ガオン将軍……!!貴方が味方というだけで心強いです!!」
「だが、ガルル王子を止める前にどうしてもこちらの陣営に引き寄せなければならない人物がいる……その男がガルル王子に仕えている限り、我等に勝機はない」
「……ウォン大将軍の事ですね」
ガオンの言葉にガウとコネコは冷や汗を流し、獣人国の将軍を統括する「大将軍ウォン」の存在は誰もが脅威を抱かずにはいられない。現在のウォンはガルルに逆らった事で港町で幽閉されているはずだが、もしも脱走したガルルがウォンと合流した場合、状況は一変する。
幽閉されたとはいえ、ウォンが将軍の中で最も知友に長けた男である事は変わりなく、ガルファンの失態を知ったガルルならばウォンを解放して再び自分のために戦うように指示する可能性も高い。ウォンが捕まったのはガルル王子の命令に逆らったためだが、まだ彼がガルルに対する忠誠心が残っていた場合は面倒な事態に陥るだろう。
「わう?」
「こうしてみると確かに妹と似ているな……お手」
「わぅんっ!!」
ガウが右手を差し出すとワン子は嬉々とした表情で左手を差し出し、その様子を見てガウは和んでしまうが、周囲からの視線に気づいて慌てて気を引き締める。
「おっと、こんな子をしている場合じゃなかった。ワン子さん、君とは後でゆっくりと話そう。ガオン将軍、それでそちらの二人は?」
「この二人は異国から訪れたワン子殿の友人だ。どちらも一騎当千の強者だぞ」
「どうも……バルトロス帝国から来たルノです」
「今の所はこいつの相棒をしているリディアよ。それとこの子は私が使役しているキバよ、挨拶しなさい」
「ガアアッ!!」
ガオンがルノとリディアを紹介を行い、相手が王子だからと言って舐められないようにリディアはキバを招き寄せると、ガウは驚いた表情を浮かべる。
「こ、こちらの牙竜は貴女が飼っているのですか?」
「そうよ。まあ、最近飼い始めたばかりだから言う事を聞かない事もあるけどね」
「それは大丈夫なのか!?」
「人間を襲わないようには注意してるわよ」
「……失礼ですが、王子に対してそのような口の利き方は無礼ではありませんか?」
驚愕の表情を浮かべるガウにリディアは自慢げに話すと、流石にガウの護衛を務めるコネコが口を挟むが、リディアは得に気にした風もなく言い返す。
「あんたが誰であろうと知った事じゃないわよ。そもそもこっちはあんた達の命を救ってやったのよ?こいつ赤毛熊を追い払わなければあんた達はここで全滅してたんじゃないの?」
「そういわれると言い返せないね。あはははは!!」
「トラネコ!!」
リディアの言葉にトラネコは笑い声をあげ、そんな彼女をコネコが注意するが、ガウは特に気にした風もなくリディアにお礼を告げる。
「確かに貴方の言う通りだ。まずは助けてくれた礼をこちらが言うべきだった……我々の命を救ってくれた事を感謝する」
「あら、意外と素直な王子ね。別にいいわよ御礼なんて……正直、報酬を貰う方が嬉しいわ。そうね、一人当たり銀貨1枚で良いわよ。王子様の場合は金貨10枚という所かしらね?」
「リディア……いい加減にしないと怒るよ」
「じょ、冗談よ」
流石にリディアの態度にルノが注意すると、彼女は焦ったように愛想笑いを浮かべ、そんな二人のやり取りを見たガウは不思議そうにルノに視線を向ける。
「そういえば貴方は帝国から訪れたと言っていたが、もしかして高名な魔術師ですか?」
「ふふん、聞いて驚かないでよ?こいつは帝国の英雄と呼ばれている初級魔術師のルノよ、名前ぐらいは聞いた事があるでしょ?」
「ルノ!?あの帝国の破壊魔導士と恐れられているあの……!?」
「竜殺しの英雄!?」
「え?ちょっと待ってください。この国では俺の存在ってどんな風に伝わってるんですか?」
聞き覚えのない渾名が外国に伝わっている事にルノは若干衝撃を受けるが、どうやら帝国でのルノの活躍も既に他国にも伝わっているらしく、ルノの正体を知ったガウは喜んだ表情を浮かべて握手を求めた。
「貴方の事はこの国でもよく耳にしています!!なんでも数体の竜種を屠り、日の国では魔剣使いを討ち取り、S級の冒険者達の信望を集めているとか……お会いできて光栄です!!」
「いや、間違ってはいないんですけどそんな事まで伝わってるんですか?」
「勿論です!!我が国でもルノ殿の名前は有名ですからね。亡き国王も一目会ってみたいとよく言ってました……」
国王という単語を口にした事でガウは興奮が収まり、自分の置かれている状況を思い出して溜息を吐く。だが、そんな王子の態度を見てガオンが安心させるように彼の肩を叩く。
「ガウ王子よ。いや、ガウ殿……これからは貴方達の事は我々が責任をもって守る事を誓う。共に王国の秩序を乱した者達を一掃しようではないか」
「おお、ガオン将軍……!!貴方が味方というだけで心強いです!!」
「だが、ガルル王子を止める前にどうしてもこちらの陣営に引き寄せなければならない人物がいる……その男がガルル王子に仕えている限り、我等に勝機はない」
「……ウォン大将軍の事ですね」
ガオンの言葉にガウとコネコは冷や汗を流し、獣人国の将軍を統括する「大将軍ウォン」の存在は誰もが脅威を抱かずにはいられない。現在のウォンはガルルに逆らった事で港町で幽閉されているはずだが、もしも脱走したガルルがウォンと合流した場合、状況は一変する。
幽閉されたとはいえ、ウォンが将軍の中で最も知友に長けた男である事は変わりなく、ガルファンの失態を知ったガルルならばウォンを解放して再び自分のために戦うように指示する可能性も高い。ウォンが捕まったのはガルル王子の命令に逆らったためだが、まだ彼がガルルに対する忠誠心が残っていた場合は面倒な事態に陥るだろう。
2
お気に入りに追加
11,307
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。